災害とペット

ペットの命を救うことは確かに大切。
でも、「犬は家族同然」という言葉で、何でも許されるものなのだろうか?


 2004年夏、集中豪雨による災害、地震による災害、全国で被害が相次ぎ、避難所で暮らした人も大勢います。避難所では、「ペットを連れてこないで」「タバコを吸わないで」とトラブルになったところもあります。天災大国日本としては、災害時のことを考えるのは大切なことです。

 今ほどのペットブームではなかった時期に起きた阪神大震災でも、ペットは悲惨な目にあっています。こういったことからでしょうか、現在、ペットに関する法律・条令には、「災害時のペットの扱い」に関する条項が盛られ、「災害でペットが死なないように保護すること」「他人の迷惑にならないように避難すること」などが書かれています。マンション内のペット規約でも、災害時のことが書かれているものが多くなっています。

 阪神大震災、三宅島噴火、有珠山噴火など、長期にわたる避難所生活を強いられた人々も少なくなく、そこでのペットの問題も報告されています。三宅島の犬に関しては、テレビで特集されたこともあったので、ご覧になった人も多いでしょう。そういった過去の例など見ながら、NPOなりに災害時のペットのことを考えてみたいと思います。


 <阪神大震災>

 近畿地方では未曾有の大災害で、規模も範囲も大きく、大勢の人が避難所生活を強いられました。人間を救うだけで手一杯で、とてもペットを救うような余裕はありませんでした。

 「犬やネコは、足手まといになり、道に捨てられたり、崩れた家に残されたりした。たとえペットと一緒に逃げようと思っても避難所で他人の迷惑になるからと、泣く泣く首輪を解き、ペットたちが自力で生き延びることを天に祈って放した人もいる。「安楽死」という選択肢をとった人もいた。
 震災当日、避難所となっている近くの小学校へ避難した。広い体育館も、夕方にはほぼ満員。早く来た人は、自分たち一家のスペースを確保していたが、遅れて来た人はわずかな隙間に肩を寄せ合い、座るのがやっとだった。後からやって来た家族は、猫を二匹連れてきた。飼い主のそばでじっとしていた。小さな声で鳴く程度で、私は気にならなかった。しかし、周囲の人たちは、うるさいとか、臭いと言い、非常識だと、わざわざ声高に話す人もいた。私は悲しくなった。普段、人間に潤いや明るさを与えてくれるかけがえのないペットたち。それが、震災時には人間優先の理屈で、どれだけの「人災」を被ったか。・・・・」

 この人の言うことは理解できます。飼主としたら、ペットは家族、避難所に連れて行くのは当然でしょう。静かにしているのに文句を言われるのも心外でしょう。

 ただ、”普段、人間に潤いや明るさを与えてくれる・・・”と思いこんでいるのは飼い主であって、ペットが嫌いな人は、ふだんから嫌な思いをしています。それが、避難所というすし詰めの状況、プライバシーのかけらもない狭い環境下、精神的にもダウンしているところに、自分のすぐそばにペットが来たら、本当に耐えられません。小さな鳴き声であっても気になるでしょうし、もちろん飼主にとってはまったく気にならない臭いも非飼主にとっては非常に不快です。長時間いれば排泄もするでしょう。「こんな場所にまでペットを持ち込んで迷惑をかけるなんて非常識」と思うのは当然かと考えます。「家族同然」という言葉を免罪符にして人間扱いするロジックを強引に用いず、ペットが苦手な人のことを考えて欲しいです。

 なお、阪神大震災の避難所では、行政がきちんと準備をしていなかったせいか、「ペット持ち込み可能」「持ち込み不可」の避難所があり、対応がマチマチだったそうです。「避難所のリーダーの気持ち次第」と批判されています。ただ、あの状況下、人間を救うことだけでも十分にできなかったなか、「ペット不可」にするのは当然で、非難すべきではないでしょう。


<北海道 有珠山噴火>

「突然の避難でペットを置き去りにした人も多くいました。避難した人たちの生活が長引くにつれてペットに関する悩みも深刻になっています。避難所での生活が長引くにつれて家に置いてきたペットを心配する声が高まっています。おととい、きのうと伊達市は避難地域に置き去りにしたペットを救出するためのバスを運行しました。避難地域にいる時間はおよそ20分、ペットを連れて来たりエサをあげたりすればすぐ避難所に戻る時間です。飼い主の見つからないペットは市の職員から数日ぶりのエサをもらいました。」

「ペットと一緒に避難した住民にも悩みがあります。避難所ではペットと一緒に生活する余裕がなくほとんどはペットを車の中に置くなど窮屈な状態で飼っています。避難生活が長引くにつれてペットにも大きなストレスがかかっていくことが心配されています。きのう、獣医師会では避難した住民たちのペットを無料で預かる施設を伊達市内に開き、多くの人が犬などを預けていきました。ペットをケアする動きはまだ一部で出始めたばかりですがこうした活動は単に動物を助けるということだけではなく避難生活が長期化する中住民たちの「心の安定」にもつながっています」


 有珠山噴火では、上記のとおり、十分とは言えないものの。ペットに対するケアが行なわれています。行政だけではなく、動物ボランティアも活躍し、犬用の避難小屋を作るなどの活動を行っています。非常に良いことだと思います。ただ、ひねくれもののジョンとしては、「行政側にそんな余裕があるなら、もっと他の困っている人間を助けて欲しい」と思います。実際、そう思う人たちとのトラブルもあったそうです。行政が動くには税金が投入されます。犬頭税を徴収し、非常時に備えてあれば文句はいいませんが。


<避難所の体制>

 阪神大震災以後、日本全国各自治体では防災体制を整えています。避難所に関しても細かな規定ができあがっており、災害に備えています。
東京大田区の、ある中学校の例を示します。

  本校は災害時に、A町会とB町会の避難所となります。避難所として使用する教室&収容人員は各町会ごとに細かく決まっており、夜でもわかるように教室の入口に蛍光色のシールが貼られています。

 犬、猫などのペットを室内に入れることは禁止します。避難所のペットの管理責任は飼育していた者にあることを原則とします。避難所にペットを連れてきた避難者は窓口で用紙に記入し、衛生担当者に届け出るものとします。また、交代でペットの世話をするものとします。大型動物や危険な動物を避難所に伴うことはできません。ペットの飼育場所を決定し、飼育ル−ルとともに飼育者および避難者に徹底を図ります。

 避難所にはペットを連れてこれるようになっています。ただし、人間と同じ居室には入ることは出来ません。これは当然の処置でしょう。おそらく、グランド等に飼育場所を設定するのではないでしょうか? (小学校であれば、鶏小屋やウサギ小屋など、金網に囲まれた飼育スペースもあります) 飼主が協力して世話をするようにしています。

 渋谷区では、同じ居室に入れるかどうか明記していないのですが、「飼っている人と飼っていない人で建物や部屋を分ける」となっているので、もしかすると、連れ込めるのかもしれません。いずれにしろ、避難所の敷地内に連れこめるのは確かですが、その以後のことは自治体によって異なるようです。


<防災訓練にもペット参加>

 東京の板橋区では、防災訓練にペットも参加しています。(ジョンの住む自治体でも、公には”ペット参加”とは謳っていないですが、事実上、ペット参加の訓練になってしまっています)

 

 新しい試みとしては、災害時の動物救援活動について板橋区と協定を結んでいる板橋区獣医師会の協力により、災害時の動物避難と救護が行われます。これは、ペットが飼い主とともに最寄の避難所まで避難し、ボランティアがその受け入れを担当するという、公式の避難訓練では初めて行われる画期的なものです。
今回はおよそ10匹の犬猫が参加していますが、飼い主とともに徒歩で避難所へ向かい、板橋区獣医師会によるペット救護の模擬受け付けをして完了となります。
 ペット同行避難訓練は、「今後のために問題点を抽出する」ことが当面の目的で、飼い主自身の準備、避難の進め方、動物の様子、動物を苦手とする人への配慮など、これを機によりよい防災訓練になればという願いがこめられています。


 実際の災害時に”ボランティア”さんが、他人の世話を見る余裕があるかは疑問ですが、いい試みです。特に”動物を苦手とする人への配慮”を徹底的に学習していただきたいと思います。この記事内の写真では犬と人間がいっしょに歩いていましたが、災害時は避難所への道は人でいっぱいのはずです。そんなところで犬と遭遇したら犬が苦手な人は道を譲らなければなりません。興奮した犬に噛みつかれることもあるでしょう。できれば、小型犬は背中のリュックサック内に入れて、外から見えなくするなどの方策をとっていただきたいです。


<ペット避難時の持ち物>

○ペットフード・・・ 保存性・携帯性に優れることから、ドライフードがおすすめ。
災害食料は、ペットの分まで計算しておらず、あくまでも人間のみです。

○ペット用の水

○携帯用ペットボウル・・・携帯用のペットのお皿。水やフードをあげるときに便利。

○ゴミ袋とトイレットペーパー、ペットシーツ・・・ゴミ袋は寒いときにクレートの周りに巻いて風よけにしたり、いろいろなゴミをとりあえず入れておいたりとなにかと使える。犬のウンチ処理用に、トイレットペーパーは2ロールくらい必要。当然、ウンチ袋も。

○携帯用カイロ 冷却シート・・・犬は種類によっては暑さ・寒さに弱いため、温度調節が大事。
自然変化に弱い犬は大変です。

○Tシャツなどの衣類・・・保温及び毛の飛散防止。
これは有用。


○ブラシ・・・季節の変わり目は特に毛が抜けます。こまめにブラッシングしましょう。
ブラッシングすると他人に迷惑ではないでしょうか?

○足拭き用の雑巾・・・散歩から帰ってきた時用に
避難所生活でも犬に散歩させるんですか? 余裕あるなあ。

○折りたたみ式のクレート(犬小屋)や犬用キャリーバッグ
これは、避難所内で人間と暮らすことを想定している場合。犬自身と犬が苦手な人の両方のためにも、全体を覆うことができて、目隠しになるものが望ましい。ネコは当然キャリーケースに入れておかないと逃げ出します。

○清浄綿 犬用目薬・・・ほこりで結膜炎になる可能性がある

○おもちゃ 長持ちするおやつ・・・犬が退屈して騒ぐのを防ぐため

○迷子札 鑑札票・・・避難所では迷子になったり、逃げ出す可能性があります。
今は鑑札票をつけた犬が少なくなりました。法律で決まっているはずなのに。

○予防接種証明書
受けていない犬が多いですから、病気をめぐって飼主同士でもトラブルになる可能性もあります。きちんと受けている証拠を提示しましょう。
病気のペットは薬も必需品。


○写真・・・迷子の時に便利

確かにこれは必要かも。 言葉で説明されてもわからないから。でも、ミニチュアダックスブームなど、一部の犬種に集中している状況下、写真があっても識別できない可能性は高い。

犬1匹でもこれだけの荷物が必要です。用意周到なのはけっこうですが、はたしてこれだけのものを、自分自身の避難持ち物の他に持っていけるのでしょうか? 避難所内で置く場所があるのでしょうか? 多頭飼いの家庭もかなり増えましたが、何頭分もの持ち物を持っていけるのでしょうか? 疑問です。


<避難所で他人に迷惑をかけないようにするためには>

○吠えないようにする・・・ふだんと違う環境下、ふだんからおとなしい、躾の行き届いた犬でも、落ち着かずに吠えることは考えられる。どんな状況でも飼主の言うことを聞いて、すぐに静かになるような躾が必要。「噛み付かない」、これも常識。

○リードにつなぐ・・・これは当然。

○クレートトレーニング・・・クレート(臨時犬小屋)内でおとなしくしていられるように日頃から訓練をしておく。

○非常食に慣れさせる・・・避難生活では乾燥ドッグフードを食べなければいけないでしょう。前もって慣れさせておく必要があります。

○他の犬、他の人に慣れさせる・・・大勢の人間、大勢の犬の中で生活します。集団生活に慣れさせておかなければなりません。

○避妊・去勢手術をしておく・・・避難所では他の犬と接触する機会が増大します。

○日頃の健康管理・・・・病気の動物は移す可能性もあります。また、ノミ・ダニなどの駆除もきちんと行なっておかないと、周囲が迷惑します。

○防災計画を知っておくこと・・・どこの自治体でも現在は細かな計画を制定済みのはずです。あらかじめ頭に入れておきましょう。

<まとめ>

 いろいろな自然災害、避難所生活の経験を生かし、日本の各自治体ではペットの避難のこともきちんと計画にいれているようです。現在は、阪神大震災のころよりはずっと進歩しているのではないでしょうか? 飼主側も入念な準備を行なっておけば、かわいいペットといっしょに快適に避難生活を遅れるかもしれません。

 ただ、やはり思うのは、「緊急時は人間の命が最優先。動物のことは二の次」「行政がこれだけの準備・対策をするのにも多額の税金がかかる。それは非飼主の税金も含まれている」「これだけの多くの荷物を持ってはたして避難できるのかどうか。狭い避難所にそんな荷物を置けるのか?」など、動物も生き延びて欲しいと思うものの、否定的な考えも頭に浮かびます。小型犬1匹だけなら、まだわかりますが、いまは、大型犬もものすごく増え、多頭飼いも多いです。こういった人が避難所にやってきて、うまくやっていけるのか、疑問です。何より、飼主の中には綱吉がたくさんいます。また、ふだんはじっと我慢しているペット公害被害者も、極限状態では爆発するかもしれません。
 ペットも元気なものばかりではありません。老犬も当然増えています、。介護が必要な犬も多いでしょう。病気の犬もいるでしょう。こういったすべてペットのことを考えなければなりません。これは大変なことです。

 結論としては、「日本は災害の国である。災害になれば、人間のみならずペットも被害者となり、不幸な目に遭う。そんな目に遭わせないためには、”ペットを飼わないことが一番”である。ペットの幸せを第一に考えるなら、飼うのはやめよう」「ペットがいなければ、ペットの心配をする必要はなく、もちろん、ペット被害者も生まれない」という考えに行き着きました。

 「また極論だよ」と批判する人もいるでしょう。現実的な妥協案としては、「ペットから税金を徴収する。そのお金で災害対策を準備する。避難所に指定されている施設にはあらかじめ、ペットの生活スペースを用意しておく。災害時のペット対策に関する勉強会も積極的に開催する」ということでしょうか。ただ、いくら行政や動物愛護団体が努力しても、「飼育頭数の伸びが急激過ぎる」「綱吉率が高すぎる(飼育免許制度がないのが一番の原因)」など、なかなかうまくいかないかもしれません。

 とにかく、行政の職員の皆さん、大変ですけど、がんばって下さい。