■■下部尿路疾患■■

猫の下部尿路疾患は、FUSまたはFLUTDとも言われます。 飼い主さんの記憶にあるとしたら、フード売り場で  「FLUTD対応」と書いてある袋を見た、 などでしょう。猫の下部尿路疾患は複雑で、尿石症、膀胱炎、尿道炎、尿道閉塞などなど含まれるのですが、 要するにシモの病気と簡単に理解しておいてください。飼い主さんにとって重要なのは、 上記のような下部尿路疾患に含まれる病気の病名や種類ではありません。この病気にかかったら、 一体猫がどうなるのか、我々はどうしたらいいのか、ということを理解することです。下部尿路疾患は、 何度も何度も膀胱炎を繰り返す猫や、膀胱などにできた石が特にオス猫の陰茎の先につまってオシッコが出せなくなってしまうなど、 排尿に関する障害を繰り返し起こすことを言います。

■■症状■■

猫が室内でオシッコをするように飼育している場合、オシッコやウンチの状態がどうであるか飼い主さんは観ることができます。下部尿路疾患の猫は、一般 に何回も何回もトイレに行き(頻尿)、ちょこっとずつオシッコをします。オシッコは血尿のこともありますが、そうでないこともあります。何回もトイレに行ってふんばったような格好をするので、飼い主さんによっては便秘と間違える人もいます。外でオシッコをする猫はこの異常になかなか気がつきにくいのですが、この病気は比較的太った猫にみられるため、野外で走り回ってスリムに育ってる猫ではそんなに多くなさそうです。膀胱炎尿石症を起こしている猫では、排尿時の痛みなどもあると思われ、飼っている猫が痛みに弱ければ、それだけで御飯を食べなくなったり、じっとして動かなかったりすることもあるでしょう。また、オシッコが頻繁になるので、トイレでオシッコができず他のところでしてしまうこともあり、それを「そそう」と間違えてしまうこともあります。

 

■■原因■■

はっきりした原因はわかっていないません。膀胱炎、尿石症などがないのに、繰り返しオシッコつまってしまう猫もいます。膀胱炎、尿石症がみられる場合の原因についてはそれぞれの項を参照して下さい。繰り返し起こる膀胱炎をおこす猫について、原因がわからないから下部尿路疾患という用語を使う、という感覚もあるので、このへんの順序についてはややこしいところがあります。また、生後6ヵ月以内に去勢手術をしたオスではその後の尿道の発達が悪く、さらに去勢により肥満になりやすいことから尿道閉塞(尿道に石がつまる、尿道が狭くなる、ふさがる)になりやすいという説が言われていましたが、現在ではそれは関係ないという説が主流のようです。ただ、実際に病院にくる猫をみていると、早期に去勢をしている太った猫の割り合いは多い気がしますが・・・。

 

■■検査■■

まず猫にとって一番大事なのは、尿がでているかでていないかです。特にオス猫は尿石症を伴って下部尿路疾患になることが多く、その場合、石が陰茎の先につまってしまうことがあります。オシッコがでないという症状を示す他の病気は腎不全など「オシッコが作られない」病気があります。下部尿路疾患でオシッコがつまって出ない場合は、お腹をさわるとパンパンに膨らんだ膀胱があるのですぐわかります。次に必要な検査は尿検査です。尿は病院で採尿してもらうか、または病院の指示に従って飼い主さんが採尿します。自分で採尿するにあたって大切なのは、尿を汚さないこと。正常な尿は無菌です。尿だけなら私達の手よりも清潔なのです。でも、例えば尿を採った容器が汚れていたり(よくあるのは軽く洗ったヨーグルトの容器に入れてくる人。ヨーグルトは菌がいっぱいですね)、猫の尿道口も既に汚染されています。汚れた尿では「操作による汚染」なのか「感染」なのか、わかりにくくなることがあります。また、採尿したら一刻も早く検査をしなければなりません。時間がかかる時は冷蔵庫へ保管しておきましょう。室温で放置しておくと、尿のpHがかわってしまい、正しい検査ができません。もし病院で容器を貸し出してくれているなら、是非それを使うといいでしょう。
尿検査だけでなく、血液検査やレントゲン、エコー検査などをすることもあります。オシッコがつまってしまっている場合は、必ず血液検査をして腎臓の機能を調べなくてはなりません。もし2日も3日もオシッコがでていない、なんてことになれば多分腎臓の機能を示す値は高くなっており、即入院・点滴でしょう。

 

■■治療■■

ここでは特にオス猫のオシッコがつまってしまった場合について説明します。膀胱炎、尿石症により頻尿・血尿がみられる場合の治療についてはそれぞれの項に譲ります。また、下に示した治療法は単独で行うものではなく、組み合わせて行います。さらにこれら以外にもやり方は色々あるでしょう。

膀胱穿刺

まず膀胱にパンパンにたまったオシッコを出します。その場合、お腹を軽く押して出なければ、膀胱穿刺といって、お腹から針を刺して尿を直接抜きます。「お腹を押す」と簡単に書いてはいますが、飼い主さんは絶対にやらないでください。お腹を押して出ない場合というのは尿道に石がつまったり、尿道が炎症を起こしてふさがってしまったりして、尿の出口がないことをしめしています。そんな時に無理矢理お腹を押しては、膀胱がお腹の中で破裂して、腹膜炎を初めとするとんでもない事態になってしまうからです。

点滴

血液検査で腎臓機能に異常がでてしまっていた場合、膀胱穿刺により膀胱をある程度楽にしたら、あるいはそれより先に点滴を開始します。尿が長期間体内にとどまっていたことと、極度の脱水により腎臓の機能は落ちてきています。一刻も早くその状態を脱出しなくてはいけません。

尿道カテーテル

膀胱穿刺で尿を抜くことができても、膀胱には石や結晶があることが多いため、ほとんどの場合は尿道カテーテルを挿入して膀胱の中を何度も洗います。ただし、炎症を起こした尿道は狭くなっていたり、ふさがっていたり、途中に石がつまっていたりするので、簡単にカテーテルが入らない場合もあります。カテーテルが入ったら、膀胱を洗うことで、多少は砂が洗い流されて減ると思われますが、完全になくすことは難しいでしょう。尿道閉塞を起こした(つまってしまっていた)猫では、しばらくカテーテルをつけたままにし、オシッコを垂れ流しの状態にしておきます。炎症を止めるための薬を投与して、落ち着いた後にカテーテルをぬ きますが、当然またつまってしまうこともあります。

カテーテルを使用するこの方法には、色々な議論があります。カテーテルを入れることで感染が起きやすい状況をつくってしまったり、尿道を傷つけて逆に炎症を広げてしまったり。鎮静剤を使うか使わないかも獣医師によって違います。けれど、下部尿路疾患における尿道栓塞の場合は緊急を要するため、上記のようなリスクをおっても命を救う方が先であると考えます。

食餌療法

尿道がふさがってしまう原因にはもちろん腫瘍や炎症による閉塞など様々ありますが、猫の場合はほとんどが尿石症による尿道の閉塞が原因で、膀胱炎も細菌感染よりは石により膀胱粘膜が傷ついておこることのほうが圧倒的に多いようです。したがって、尿石症と同じような食餌管理あるいは薬による治療が必要になってきます。ややこしいけれど、尿石症になることで膀胱炎になりやすく、また逆に(特に犬の場合細菌感染による)膀胱炎になることで、尿石症になりやすくもなります。

外科手術

何度も何度も「またオシッコがつまった」といって病院へ通 うことになってしまう猫には、外科手術をする場合があります。オス猫の場合はメス猫よりも膀胱から尿道口までの距離(尿道)が長く、石が詰まりやすい構造になっています。そのため、陰茎を切って先のほうの細い尿道をなくしてしまう(早い話が女の子のような状態にしてあげる)ことで、石の詰まる確率を下げてあげるというものです。ですが、術後の管理が大変で、感染性の膀胱炎を起こしやすくなり、それを繰り返すということも少なくないため、現在ではあまり勧められていません。尿道はどんなに狭くても、その子のサイズであって、今まで尿がでていたのですから、炎症が起きる前の状態に戻してやれば、理論的には尿がでるということになります。ですから、陰茎マッサージをしたり、内科的な治療をしたりするのが第一選択であると思います。

内服

薬は主に炎症を抑える薬が使われます。猫の場合細菌感染による膀胱炎は犬より少ないので、抗生物質は使われないこともありますが、尿道カテーテルを入れたり、手術をして尿道をいじったりしている場合は、大事をとって抗生物質が処方されることもあるでしょう。

 

■■まとめ■■

この病気は非常に治りにくい病気のひとつだと思います。外科手術をすると、 比較的経過はいいように感じます。いったん回復したあとも、定期的に尿検査を受けるのがいいでしょう。 また、肥満を解消するなどして、オシッコがつまる原因のうち関わりがあるだろうとわかっているものだけでも、 減らしていってあげたいものです。