■■猫の尿石症■■

猫の尿結石・腎結石は、人間でいう胆石などのように腎臓や尿管、膀胱、 尿道などに石(あるいは石になる前の結晶、砂)ができる病気です。 石には最もポピュラーなストルバイト尿石(リン酸アンモニウムマグネシウム)、 シュウ酸カルシウム尿石のほか、これら2つの混合、尿酸塩尿石、リン酸カルシウム尿石、 シスチン尿石、成分不明の尿石などがあります。また、尿結石と腎結石を併発している場合、 必ずしも両者が同じ成分の石とは限りません。腎臓にはシュウ酸カルシウム結石ができていて、 膀胱内にはストルバイトなんてこともあります。猫では主にストルバイト尿石、シュウ酸カルシウム尿石の2種類がみられます。

 

■■症状■■

血尿のほかに、何度も何度もトイレに行くけれど、出る尿の量 はちょっとずつだとか、オシッコをするときに変な格好をしているように見えたり(痛がっている)、重症になるとオシッコが出ない、陰茎をしきりになめる、元気がない、食欲がないなどの症状があります。オシッコが出ないという症状はオス猫で特にみられますが、2日も3日もそんな状態が続いていたら命にかかわるので緊急で診てもらって下さい。人でも男性では尿結石はみられることがあり、そういった経験のある方はわかるかもしれませんが、オシッコをするときに痛みを伴うこともあります。腎臓に石ができた場合は慢性腎不全のような症状がみられます。

 

■■原因■■

はっきりした原因はわかっていないのが実状ですが、一般 に言われているものとして飲水量の減少、ミネラルバランスの不均衡、ビタミン不足、餌の種類、尿のpH、肥満、陰茎・膣からの感染、体の抵抗力の低下などが考えれられます。これらは単独ではなく、いくつかが合わさってでてくることもあります。

飲水量 の減少
冬場は特に飲水量 が減り、尿の濃度が濃くなると思われます。尿は腎臓で作られ、腎臓から尿管、膀胱、尿道のゴミを洗い流す作用もあります。尿が濃くなると、全体的に尿の量 が減って、極端に言えばドロドロ状態で流れるので、きれいに洗い流す機能が完全に果 たせなくなってしまい、結果的に感染しやすくなってしまいます。また、ドライフードのみの猫は、缶 詰めタイプの餌を食べている猫に比べ、水分摂取量が少ないとも言われますが、 反対に、ドライフードは喉が乾くので、かえって水を飲むという意見もあり、マチマチです。
ミネラルバランスの不均衡
尿結石の成分はマグネシウムやリン、カルシウムなどのミネラルで、 このバランスが崩れると、結石(結晶)ができやすくなると言われています。 ミネラルを多くとる、とか制限するのではなく、バランスが大事なようです。
ビタミン不足
ビタミンAやビタミンB6など、粘膜を新しくしたり状態を保つ作用のあるビタミンの不足は、 粘膜の強度を弱くしたりはがれやすくしたりするため、尿結石の核(芯)になりやすいと言われています。 また、ビタミンCはとりすぎるとシュウ酸塩(結石の原因の1つ)の尿中の濃度をあげるため、 尿石症を悪化させるという説もありますが、必ずしもシュウ酸塩の濃度があがるというわけではないようです。
餌の種類
一般 に、市販量販フードは、尿結石の成分となると言われているトウモロコシや大豆で作られています。 トウモロコシや大豆は安価であるため、市販のフードは安いわけですが、猫は偏性肉食性ですし、 特に尿石症の猫には肉主体のものがいいという意見があります。また自家製のフードはどうしてもバランスがくずれがちです。 猫は野菜からはビタミンを吸収できません。もともと犬や猫の祖先は狩りをして、 草食動物の内臓から骨まで丸ごと食べて、草食動物や雑食動物がビタミンや繊維を上手に分解し、 吸収しやすくされたもの、あるいは吸収されたものを頂戴していたわけです。 そういった意味では健康のためにと野菜を入れても、 ただ肥満防止のため「満腹感をだす」あるいは「便の出をよくする」ぐらいしか役に立たないと言っても過言ではないと思います。 しかも野菜食は尿のpHをアルカリ性にし、ストルバイト結石という、 最もポピュラーな尿石ができやすい環境になってしまいます。
尿のpH
餌の種類の項でも説明したように、尿のpHで結石が溶けたり析出したりします。 化学の授業を覚えている人は、なんとなく想像がつくかもしれません。 酸性の物質はアルカリ性で溶けてなくなりますが、同じ酸性の液体の中では溶けることができません。 犬猫で最も多いストルバイト結石は正しくはリン酸アンモニウムマグネシウムといい、アルカリ性で析出します。 尿のpHは草食動物ではアルカリ性、肉食動物では酸性に傾いているのが普通ですが、猫は一般 には弱酸性〜中性です。猫では比較的少ないと思われますが、 膀胱などに感染があると感染している菌によりpHがアルカリ性になってしまいます。 また、野菜を多く与えている猫ではアルカリ性に傾いているかもしれません。ただし、 ミネラルバランスや体の防御機構などにもよりますし、 野菜を与えているからといって必ずしも尿石症になるとは限りません。
肥満
原因はわかりませんが、肥満の猫は非常に尿石症になりやすいようです。 逆に尿石症で特に尿石が尿道につまってしまい、オシッコがでなくなって来院した猫は、 ほとんどが室内飼いで太っているといっても過言ではないかもしれません。肥満によって尿道が狭くなるとか、運動量 が減って膀胱内の浄化作用がうまくいかないだとか、色々な説があります。
陰茎・膣からの感染
普通 、ちょっとした感染ぐらいでは人間も含めて動物の体はビクともしません。けれど、 膀胱の粘膜がちょっと傷ついていたり、栄養不足で粘膜の状態がベストでなかったりした場合に、 普段の感染防御機構が崩れてしまい、膀胱炎になってしまうことがあります。 膀胱粘膜の炎症により、はがれた粘膜が尿結石の核(芯)になりやすいのです。 また、感染した菌が尿のpHを変化させるので、ある種の尿結石ができやすい状態になります。 犬では圧倒的に感染による尿石症が多いのにくらべ、猫では体質や肥満など他の原因のほうが多い傾向にあります。

 

■■検査■■

一番必要な検査は尿検査です。尿検査をすることで、石あるいは結晶の種類もほぼわかります。尿は病院で採尿してもらうか、または病院の指示に従って飼い主さんが採尿します。自分で採尿するにあたって大切なのは、尿を汚さないこと。正常な尿は無菌です。尿だけなら私達の手よりも清潔なのです。でも、例えば尿を採った容器が汚れていたり(よくあるのは軽く洗ったヨーグルトの容器に入れてくる人。ヨーグルトは菌がいっぱいですね)、紙タイプの猫砂を持ってくる人もいます。汚れた尿では「操作による汚染」なのか「感染」なのか、わかりにくくなることがあります。また、採尿したら一刻も早く検査をしなければなりません。時間がかかる時は冷蔵庫へ保管しておきましょう。室温で放置しておくと、尿のpHがかわってしまい、正しい検査ができません。もし病院で容器を貸し出してくれているなら、是非それを使うといいでしょう。
尿検査だけでわからないときは、血液検査やレントゲン、エコー検査などをすることもあります。尿石症の猫にこのような検査をあえてする場合は、「尿石症ではない別 の病気」を除外するためと考えて下さい。血尿は様々な病気でみられるので、本当にそれらの病気ではないかを確かめる必要があるからです。また、尿石症の場合でもレントゲンで結石がわかることがあり(結晶、砂はわからない)、腎結石がみられる時もあります。エコー検査では砂がふわふわと浮いているのがわかることがあります。
血液検査はこの病気だけをターゲットにした場合、腎臓の機能をみたり、白血球の数をみて、感染の具合を調べたりすると思われます。検査は病院によってその「進め方」と「勧め方」が違うので、しっかり獣医師の話を聞いて下さい。
最終的にはできている石あるいは結晶の成分を推定することが必要です。それにより治療が違ってくるからです。

 

■■治療■■

尿検査や他の検査で、いよいよ尿結石あるいは腎結石だとわかり結石または結晶の成分がわかったら、治療方法については飼い主さんと相談になると思います。治療の選択肢はいくつかありますが、急を要する場合は選択の余地はありません。まず最初に、「尿が出ている尿石症」についての治療について考えていき、急を要する「石がつまって尿が出ない尿石症」は、下部尿路疾患の項を参照して下さい。

尿酸化剤

ストルバイト尿石だった場合、尿のpHを酸性にして石を溶かそうという薬です。尿のpHを長期にわたり酸性に保つことは、体全体(血液は尿の原料)を酸性にすることなので、あまり進めたくありませんが、食事療法で管理できない場合は尿酸化剤に頼ります。尿酸化剤は石がレントゲンで確認できなくなってからも、さらに1ヵ月は続けて下さい。

食事療法(病院処方食)

ストルバイト尿石の場合は、処方食であるヒルズのs/dは石を溶かす作用がありますが、維持食ではないので石が溶けたらc/dに切り替えます。シュウ酸カルシウム尿石の場合はヒルズならc/d-o、ウォルサムからはpHコントロールがでていますが、シュウ酸カルシウムの場合は管理が非常に難しく、薬もないのが実状です。pHコントロールはストルバイト尿石にも処方されます。スペシフィックからはストルバイト尿石溶解用としてFSW、維持食としてFCDおよびFCW(Dはドライ、Wは缶 )が出ています。どれがベストということはありません。食べてくれるならどれでもいいです。猫は餌の好みがはっきりしてるので、なかなか処方食を食べてくれないと思います。処方食の与えはじめは今までの餌と混ぜて、少しずつ割り合いを増やしていくなど、徐々に変えていってもよいでしょう。ただし最終的には処方食しかあげないようにして下さい。当然おやつもストップです。処方食は石がレントゲンで見えなくなっても、それから1ヵ月は続けて下さい。人間の処方食同様、健康的な食事はマズイものです。無理に処方食を与えても、食べずに体を壊してしまっては意味がありませんが、この病気にかんしては、なんとしてもまず処方食を試してほしいのが本音です。けれど、この病気になる猫は肥満であることがおおく、肥満の猫は食餌をまったくとらずに3日以上いると、肝臓を悪くしてしまいます。飼い主さんの根気も必要ですが、見極めも必要で、猫の餌を変えるということはどんな場合でも簡単ではありません。

食事療法(自家処方食)

はっきり言って、これはあまりお勧めしません。自家製でフードを作ろうと思ったら、処方食だけでなく一般 職でもそうとう難しいものです。かなり高度な栄養学の専門知識が必要になるでしょう。もちろん人とは栄養の要求量 も違います。尿石症の場合、石の種類によっても違いがでてきますが、pHの調整、蛋白質の制限、マグネシウムの制限、カルシウムとリンの調節、ビタミンの添加など色々なことを考慮しなくてはなりません。果 たしてそういった食餌を毎日作れるでしょうか?

基本的な考え方としては、まず水分摂取量 を多くして尿を薄めることです。そのため処方食のうち石を溶解する目的のものは塩分が多くなっており、喉が乾くようにしてあるので、長期間は処方できないのです。特に猫は腎臓が弱く、塩分の多い食餌はあまり長期間あげたくありません。次に、マグネシウムや蛋白を制限して尿結石の成分を少なくすることです。さらに、尿を酸性化して石を溶かしてしまおうということです。ですから極端な話、「自家処方でやりたい」という人には、「尿が酸性になるなら何をあげてもいいですよ」と答えることができます。

外科手術

膀胱内や腎臓に、砂や結晶ではなく大きな石がある場合には、手術によって取り出すこともあります。また大きな石でも、まず尿酸化剤や処方食などを1ヵ月以上試してみたけどやっぱり溶けない、といった場合に手術することが多いようで、最初からいきなり手術しましょう、ということにはならないと思います。また、外科的な治療つまり取り出しただけでは再発が多いようです。結局それ以降は処方食などによる維持管理も必要でしょう。

 

■■まとめ■■

最後に、尿石症は治りにくい病気の一つでもあります。特に膀胱炎を併発している猫では、膀胱炎になったり治ったりを繰り返す子もいます。しばらく尿の調子がよくても、冬場になったり年をとったりすると再発することもあります。「体質」であるという先生もいますが、それだけではないにしても間違いではないでしょう。オス猫では特に、石が陰茎の途中や先につまったりして激痛を伴い、オシッコが出ないという状態になることがよくあります。オシッコは体内の毒を流してくれるものなので、オシッコが膀胱にパンパンにたまった状態が何日も続くと、命に関わることもあります。尿石症が疑われれる症状がみられた場合にはすぐに病院へ行き、症状がなくなるまで、かつなくなってからも、しっかりとした管理をしていきましょう。

 

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