学名の発音について

学名に関して書き出せばきりがないので、この場はひとまず当サイト上で直接関わってくる部分についてのみ解説する。 学名はラテン語である、ゆえに発音も本来のラテン語の発音でなされるべきである。 たとえば「Cichla ocellaris」という学名がある。もちろんこの学名が表わすのはいわゆるアイスポットシクリッドである。 これを「キクラ・オケラリス」と発音する人と「キクラ・オセラリス」と発音する人と「シクラ・オセラリス」と発音する人がいる。 では、本来のラテン語の発音ではどうなるのか? ラテン語では子音は基本的に我々が日ごろから慣れ親しんでいるアルファベットの音価通りの発音をする。 すなわち英語通りということである。 しかし、「c」という子音はやや例外的扱いを受けている。 具体的に言うと、「c」は常に「k」(ク)で発音し決してシやチとは発音しない。 また「ce」はケ、「ci」はキで、セやシではない。 例えば 「cascus」(カスクス:古い,原始的な、の意) 「centralis」(ケントラーリス:中心の、の意) 「cinereus」(キネレウス:灰色の,灰色に似た、の意) などである。 この発音方法に従えば「cichla」はキクラと読むのが正しい。 ちなみにラテン語のch,ph,rh,thはギリシア語を書き換えたものでこれらはhをないもの扱いしてそれぞれk,p,r,tで読む。 まぁとりあえず「cichla」がラテン語本来の発音で読めばキクラであることは分かったと思う。 では「ocellaris」はどうなのか? 上記の発音に従えばオケラリスとなるはずである。 つまりラテン語の発音という観点から見れば「キクラ・オケラリス」が正解ということになる。 しかし、実際問題、英語圏の学者は英語風に読むし日本の学者はローマ字風に読むのだ。 例えばカエデの属名は「Acer」でラテン語の正しい発音からするとアケルと読む。 ところが日本の植物学界では、アーサー,アーセル,アセル,エーサーが一般的である。 同様に ブナ「Fagus」をフェーガス,フェイガス(本来はファーグス) クマバチ「Xylocopa」をザイロコーパ(本来はクシュロコパ) などと呼ぶことが多い。 この学名発音の英語化の動きは近年細菌学会にも広がっている。 例えば、放射菌「Actinomyces」はアクチノマイセス、枯草菌「Bacillus subtilis」はバシラス・サチリスと読む。 これは日本細菌学会選定・日本細菌学会用語選定委員会編「微生物学用語集 第3版」(1985)に示されている。 ラテン語本来の発音でいえば、アクティノミュケス、バキッルス・スプティーリスとするべきところである。 一方で「Bacillus」は農学関係者の間ではバチルスと読まれている。 このような現状では学名の読み方について考えるだけ無駄であろう。 ただし、当HPで「Cichla ocellaris」を「キクラ・オケラリス」ではなく「シクラ・オセラリス」としているのは英語読みしているのではない。 現地人あるいは現地業者の方々が使っている発音をそのまま採用しているのである。 ただし、もちろん現地の発音を僕が知らない種類も多数おり、それらに関してはラテン語読みすることにしています。 例外はゲオファーグスで、現地業者はジェオファーゴと呼ぶらしい。 あまりにもなじみがないので、これだけはラテン語的にゲオファーグスとさせていただいた。ご理解ください。 ここまで書いてきてなんだが、結局学名なんて相手に伝わるのならそれでいいと思う。 学者じゃないんですから