アジサイ科の染色体数

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  アジサイ科とアジサイ属日本産の主な野生種
アジサイ科に属する種の染色体数を集めてみました。残念ながら、中国産のタマアジサイ近縁種アスペラ類、ジョウザン類、中南米産常緑つる性のコルニディア類、ハワイ産のBroussaisia属 など興味深い植物の染色体数を見つけることができませんでした。染色体の形(核型)については不勉強でほとんどわかりません。

アジサイ科の体細胞染色体数2n

*この表の分類区分は複数の資料を基に組み立てたものであり、学問的な意味はありません。
A.アジサイ属の中に近縁とされるいくつかの属を便宜的に含めています。
染色体基本数は私の判断です、参考程度にご覧下さい。表の作成は2007.8.です。
1.アジサイ族   2n 基本数 備考
 A.アジサイ属 Hydrangea 属        
  a.アジサイ節        
    i.アジサイ亜節        
  ガクアジサイ 36 x=18 2n=54の3倍体品種がある
  エゾアジサイ 36 x=18  
  ヤマアジサイ 36 x=18 2n=36と40〜50のキメラと思われる個体の報告がある。
  リュウキュウコンテリギ 36,72 x=18  
    ii.ガクウツギ亜節        
  ガクウツギ 36 x=18  
  コガクウツギ 36 x = 18  
  H. chinensis 36 x=18  
  ヤクシマアジサイ 36 x=18  
  トカラアジサイ 36 x=18  
  コアジサイ 36 x=18  
  ヤエヤマコンテリギでは2n=約144と約180が報告されている
    iii.ジョウザン亜節        
       Dichroa 属 ジョウザン 栽培品種と思われる個体で2n=100以上が報告されている
         
  b.ノリウツギ節        
    i.ノリウツギ亜節        
  ノリウツギ 36,72,108 x=18 3倍体と思われる2n=54の個体が野生で発見されている。
  H. heteromalla 36 x=18 中国産、ノリウツギ近縁種
  カシワバアジサイ 36 x=18 北米産、染色体小型
  アメリカノリノキ 36,38 x=18 北米産、染色体小型、園芸品種アナベルで2n=36と38が報告されている。
       Schizophragma 属 イワガラミ 28 x=14  
    ii.タマアジサイ亜節        
  タマアジサイ 30   染色体が大型。タマアジサイを含む
  H. aspera 類 section Aspereae で2n=30,34,36が観察されている
  ツルアジサイ 36 x=18 H. anomala 近縁種
  H. altissima 36 x=18 台湾産。H. anomala 近縁種
  ヤハズアジサイ 36 x=18  
       Platycrater 属 バイカアマチャ 34    
    iii.クサアジサイ亜節        
       Cardiandra 属 クサアジサイ 30    
       Deinanthe 属 ギンバイソウ 34    
         
2.バイカウツギ族        
 A.バイカウツギ属
    Philadelphus 属
       
  バイカウツギ 26 x = 13  
  P. coronarius 26 x = 13  
 B.ウツギ属 Deutzia 属        
  ヒメウツギ 26 x = 13  
  ウツギ 26,52,78,130 x = 13 品種・変種などを含む
  オオシマウツギ 52 x = 13  
 C.キレンゲショウマ属
    Kirengeshoma 属
キレンゲショウマ 54    
 D.Fendlerella 属 Fendlerella utahensis 26   北米産の種
         

アジサイ族アジサイ属アジサイ節の、アジサイ亜節・ノリウツギ亜節とも多くの種は2n=36であることが観察されています。

アジサイ科の染色体はラン科ほど小さくはないのですが、ユリ科のように大きくはありません。アジサイの18本の染色体を、顕微鏡観察で1本1本区別するのはたいへんなようです。

アジサイ亜節では野生の倍数体の報告は断片的です。

ノリウツギ亜節では日本産のノリウツギについて船本常男等による、集中的な研究が行われ、多くの倍数体が野生で分布していることが明らかにされています。普通の2倍体の他に4倍体や6倍体が広く分布しています。少数の3倍体の株も発見されています。2倍体と4倍体の雑種の可能性が考えられます。

ノリウツギの2倍体は四国、鳥取など限られた地域にだけ分布しています。中部から北では主に6倍体が、中国地方かは西では主に4倍体が分布て、近畿ななど中間地帯では4倍体と6倍体が混在しているようです。
ノリウツギの近縁種は世界に広く分布しています。他の種ではどうなっているのでしょう。

タマアジサイはノリウツギ亜節に分類されることが多いですが、2n=30で染色体が大型という他にない特徴を持っています。さらに、タマアジサイを含むアスペラ類で2n=30、34、36が観察されていますが論文が入手できないので詳細はわかりません。

進化の過程で、タアマジサイへの分岐のどこかで2n=36から2n=30への変化があったと考えられます。3対の染色体がそっくり消失したのでは生存は困難と思われます。3対の染色体は転座などによって、他の染色体の1部分となったようにおもえます。このような染色体の再編成がどのような要因で引き起こされたのか、タマアジサイに聞いてみたいです・・・
タマアジサイ類に2n=30、34、36の種があるということなので、染色体減少の過程や染色体再編成の過程が解き明かされるときが来るかもしれません。

バイカウツギ族はアジサイ族とは異なり、多くの種が2n=26です。
バイカウツギ属・ウツギ属とも多くの種が2n=26です。ただ、ウツギは他の種と同様に2n=26が元ですが多くの倍数体品種、変種が発見されています。

ウツギは変異の幅が広く、分布も広いので、多くの近縁種、亜種、変種、品種などが記録されています。そのためか多くの倍数体が観察されています。2倍体の2n=26以外に、52、78、130が報告されています。それぞれ、基本数x = 13 の4倍体、6倍体、10倍体になります。  

アマチャにキメラ個体がある?・・・ヤマアジサイに属するアマチャの染色体で、たいへん面白い観察例があります。
長野県の元アマチャ栽培畑に放置されていた株から得た挿し木個体の根端細胞の観察で、2n=36の細胞以外に極小型の染色体を含み2n=40〜50になる細胞が観察されています。 この極小型の染色体の由来はわかりません。遺伝的に異なった2種類の細胞が1個体を作っているようです。キメラと呼んでよい状態のように思います。

この、「アマチャ」 は論文の記述からみて、観賞用に流通している「アマチャ」より葉が大型のように感じられます。アマチャの仲間は品種が多く、品種名を確定することはたいへん難しく、手元にあるアマチャがキメラだとは言い切れません。

ガクアジサイ系に大型の装飾花をつける三倍体品種「ブルースカイ」があります。ブルースカイと他のアジサイ品種との交配は低い稔性ですが可能です。
ブルースカイ 2n=54 x アマギアマチャ2n=36の雑種,1個体の染色体数は、2倍体で2n=36という報告があります。ブルースカイにn=18の卵ができたことになります、n=36の卵もできる可能性があります。ということは3倍体の雑種個体ももちろん可能ということ。

種間交雑から異数体ができた(工藤 暢宏他)。
ガクアジサイ系品種ブルースカイ2n=54(3倍体) x アメリカノリノキ品種アナベル2n=38という交雑の報告があります。交雑で得られた個体は1個体のみ、体細胞染色体数は根端細胞で2n=42が観察され異数体と考えられています。

「交配後放置したのでは、発芽能力のある種子が得られないので、早期に胚をを取り出し胚培養をしましたがそれでも発芽力のある胚が得られませんでした。培養した胚の子葉の一部からカルスを誘導し、そのカルスから芽を再分化させたたところ1系統だけ鉢上げ可能な苗が得られ、開花させることに成功したとあります。」論文に写真もあります。開花株の外観は写真ではガク系のように見えます。

この一連の過程のどの段階でなぜ2n=42の細胞ができたのかはわかっていません。

アメリカノリノキの品種アナベルの染色体数は2n=36という観察もあります(藤井敏男)。また品種アナベルの原種Hydrangea arborescens の染色体数は2n=36という報告もあります。なぜこのような染色体数の異同が生じたのかは今後の研究にゆだねられています。

・Tsuneo Funamoto 他、「A cytogeographical study in Hydrangea paniculata Sieb. (Saxifragaceae s.l.) in Japan 」、Chromosome Science 6 ,2002 ・・・日本産ノリウツギの染色体数に関してのたいへん詳しい報告です。調査地点の分布図、染色体の写真などもあります。

・M. Cerbah他、「Genome size variation and species relationships in the genus Hydrangea 」 、TAG Theoretical and Applied Genetics 、 Volume 103, Number 1 / 2001.7.・・・ この中にsection Aspereae , 2n = 30, 34 and 36. の記述があります。

・藤井敏男、「高品質の甘茶品種育成」・・・この中に染色体観察の項があり、写真も掲載されている。染色体が観察された品種はアマチャ・アマギアマチャ・コアマチャ・ヤエノアマチャ・マイコアジサイ(ヤマアジサイ系)、ブルースカイ(ガクアジサイ系)、ヨウラクタマアジサイ(タマアジサイ系)、アナベル(アルボレッセンス系)、ヤエカシワバアジサイ(カシワバアジサイ系)。

・藤井敏男他、「うどんこ病に抵抗性のアマチャ系統の育成」・・・この中にブルースカイxアマギアマチャの交雑がある。

・工藤 暢宏他 、「Production of Interspecific Hybrid Plants through Cotyledonary Segment Culture of Embryos Derived from Crosses between Hydrangea macrophylla f. hortensia (Lam.) Rehd. and H. arborescens L.」、1999年
胚珠培養由来胚の子葉片培養法によるセイヨウアジサイとアメリカノリノキとの種間雑種の作出・・・異数体の雑種ができたことの報告。本文は英文で和文の要約があります。

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