即席セイザー小説。かなり短い読みきり文書。 戻る

番外  ××と虫かごと私



「天馬さん、起きてください。風邪引いちゃうよ」
 ソファーで寝ていた天馬を蘭が揺すって起す。
「‥‥ちょっとさぁ、天馬。どーしたよ。それ」
 仁が、ひっどいねーよっぽど美味しいんだなと笑う。そいやまぶたが痒い、小指が痒い、唇も痒い。耳たぶも、ほっぺたをポリポリして「?」と思い指の平で丹念に触った。
 パチーンと辰平が手を叩いた。
「やぶ蚊だ」
「うわっ手のひらにべっちょり血。絶対こいつのだぞ、お前O型だろ。O型、蚊にとってうまいって話だぞ」
 気持ち悪ーいと、引く仁。
 足元のノーマットの蚊取り線香を炊く。そしてホレと、ポケットの中から手鏡を取り出して天馬に渡す。
 顔面やら、いやに「むかつく」トコロを散々刺されえらい事になっているまぶたとか唇は、反則だ。ぐぇぇと唸った。
「蚊に刺されてばっかりだ、おれ」
 昨日も刺された、この間も刺されて今日もだ、とうるさく喚く。
「まだいいじゃん、オレ様なんてこの間、ハチに追い回されて、仕方ないから装着して逃げた」
「仁さん、それってOKなのー」
 と蘭が聞く。
「命あってのナントやら。一回刺されているから怖いんだよ、テレビとかでやってんじゃん、ショック症状で死んじゃうやつ」
「アナフィラキシーショック」
 辰平と剣が口をそろえていった。
「つか、きっと仁さんがいつも黒い服着ているし」
「それに、仁さんいつもコロンつけてるでしょう、あれはハチが興奮したり喜んだりするらしいよ、いつも黒い服着てるし、急所だと思って飛んでくるってテレビでいってたよ」
「‥‥グランセイザーでよかったなぁって、シミジミ思ったね、アン時。超便利」
「って悪用じゃん」
 剣が『蚊に刺されたときは、冷やすのが一番』と常に置いてあるアイスノンにタオルを巻いて渡す。
「直人ってさ、いっつも山じゃん。どーしてるのかな。山とかヤバイ虫とかいっぱいだし」
 アイツ何型だったっけ、と天馬が蘭に聞いた。「A型」と答える。
「さあ」
 蘭も、ごめんなさい直人さんと最近会っていないと答える。
「刺されない‥‥かも」
 剣がアゴに手を当て考えるポーズをとる。
「筋肉が多い人って蚊のストロー部分が貫通しないってウワサあるよ」
 たぶん、ヒルはダメだろうけどと付け足す。
「筋肉ってやっぱ、すごいんだなぁ。オレも頑張れば蚊に刺されないかもなぁ」
「さあ、どーだろうねぇ」
 迷信かもよ天馬さんと剣。
 ボリボリとひげをいじっていた辰平が、
「そいや、おれってあんまり刺されたことないっスよ」
「うっそだー。絶対ウソ。だってお前O型で、しかもそんな『身』が出てて刺されないってこたぁぁーねぇーだろ」
 天馬と仁がウソだウソだと波状攻撃しかけてくる。まいったなぁと独り言する辰平。
「あ‥‥そういうことか」
「どうしたの、剣ちゃん」
「うん、なんで辰平さんが蚊に刺されないのか分かったんだ」
「ほー」
 全員でハモる。
「毛深いじゃん、辰平さん。虫がさあ、血を吸おうって皮膚についても毛に阻まれてもがいていて体力消耗して死んじゃうって話、聞いたことあるよボク」
 可愛い顔して、目を輝かせて恐ろしいこという剣だった。
 事実関係は実証されていない。


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