即席セイザー小説。かなり短い読みきり文書。 戻る

番外 二月の悪夢


 たしか……えーと。
 取引先とついつい飲んじまって……って。だったかな記憶が不透明で。
 最近はこんなんばっかだ。ちょい昔が懐かしい。あんときは、仕事はボロボロだったけど(パリコレ落としたのは大ダメージ)それなりに充実して、恋愛は……聞くな、いうな、ほっといて。
 あー、やだやだ。着替えもしねーで、おれ寝てるよーなきがするなぁ。寝心地最悪だけど睡魔にゃ勝てませんよ。

 

 夢を見た。リアルだ。たぶん夢だ。
「なんか、太ってねぇ?」
 天馬が直人に対していった。筋肉太りなら大いにありえる年中マッスルファイター・松坂直人。バカ天馬の直撃の指摘でよーくみたら顔の輪郭がなんとなくまん丸。
「それって……しあわせ太りってのかな」
 剣が笑う。にひゃぁっと直人が照れ笑い。幸せ糖分120グラム(ギャー)
「涼子の作る料理が美味くて」
 あははと笑って受け答え(ヒー)。
 いつもと同じ堀口博士の住処。炎の連中が揃い踏み、なぜか大地も揃ってる。
 が、おれはソイツを見ているだけで、登場はしていない。ナゼだっハブかよっ。
「りょ〜チャンは(なんなんだよ、その呼び名っ)毎日、愛してるよとか好きだよとか言ってくれるし、山から帰ったらお帰りーって飛びついてくるし。可愛いし(言わないでよっ、オマエは帰ってくんな、涼子さん迎えないでぇ。可愛いはヨシ。チュー禁止、絶対だ)」
「直人さんったらね、直ちゃん、ナオタンって呼ばれてるんだってー」
と蘭。(涼子さん……おれ号泣)
「なあ、豪。最近合コンしねーのかよ、幹事お前だろ。『安定職で保母さんな彼女げっとだぜー』っていってたじゃん」
と天馬。
「ああ、すまん。つい先輩から別件の合コンに付き合ってて、誘うの忘れてた。そういう目でこっち見るなよ。安心しろ、リストはすでにある。あとは場所決めと電話とメールだけだ」
 とPDAをポケットから出す豪。(アナログが……つか合コンってなによ)
「さすがっ」
と天馬。
(岩石な豪はどこに消えた。つか、ファッションセンスが渋谷兄ちゃん……ありえねぇ)
 研究所のすべてが、いつもの逆だった。電話は光のテレビ電話。資料はみっちりファイルされてる。壁の怪しいインテリアはない。未加はおとなしいし(しかもロングスカートにブラウス……学校の音楽の先生みたいだし)なのに、弟と蘭は変わらず。
 直人は若干丸くなり。(ファッションセンスはあんまり変化なし)
 豪ははじけてしまっていて、いや通り越して破片も皆無。あれでは警官は務まらない。ちょっとオッサン入った渋谷系。ハチ公付近でタムロってても違和感なし。つか、顔をじっとみなきゃ豪だってことすら分からない。言葉使いは変わらないが背中がだらんとしてて、んかヤバイ、ヤクザな若幹部かよオイ。
 天馬はなぜか、スーツを着ている。(気味が悪い)
「やっぱ、安定職ってのはいいよなぁ。オレもも少し真面目にガッコいってたら公務員にでもなれたかなぁ」
「天馬さんちゃんと働いてるじゃない。凄いよなぁ外資系サラリーマン」
(はぁ?)
「危ないから、剣はやめとけよ。外資は首になったら最後自分の机にすら触らせてはくれないぞ。六大学入ってないと人間扱いされねーし。やんなるぜ」
(天馬ぁぁぁ、飛びすぎだぞーーー。あの中華ファミレスがお前の外食MAXだろー)
「天馬、合コンはどうかと……」
 蚊の泣くような声で未加が言う。合コンって言葉だけで泣きそうな顔している。(あーあ。でもこういう未加も可愛いな)
 酷い頭痛がしてきた。コメカミがビリビリ。後頭部じゃ祝福も受けていないのにでかい教会の鐘を間近で聞いたみたいな衝撃度。
「ちゅーか丸くなりすぎだし直人。お前から筋肉と格闘技取ったらなにが残るんだよ」
「りょ〜チャンが残るもん」
 天馬の質問に対しての直人のお答え。
 山に帰って冬眠しろっ、松坂直人。たぶんそこにはいないだろう自分は、幸せスマイル満開のチョイ丸くなった直人に一撃を加えた。
 痛い、痛いよ。頭が痛い。チャンポンが不味かったのかなぁ。出されたカルーアミルクの配分がダメだったの? 喉の奥にコーヒーの味が引っかかっていた。

 

 夢を見た。なんなんだ。たぶん夢だ。
 誠が泣いている。子供のように……ちゅか漫画みたいにエグエグ泣いている。
 彼の目の前には、愛がいた。傍目からして態度がでかい。化粧もけばい。いつだったか蘭がいっていたオトリってやつで変装したってときの格好によく似ている。真っ赤なエナメルのジャケットを着ている。愛はもっと清楚なほうが似合うと思うよ、ねぇ。つか誠。なにガラにもなく泣いてるのよ。
「愛〜」
 元凶はどうやら彼女のようだ。
「なによ誠、なんか文句あるの」
 口調は、日ごろの涼子さん+キレたときの蘭+天馬を怒鳴っている未加をたして割ったみたいな感じ。つまりは凄く関わりたくない雰囲気だ。こんな風景に出くわしたら、回り道するね絶対。
 愛の脇におどおどする変な生き物がいた。髪の毛がフサフサで、出ている手足の肌がツルツルぴかぴか。博士の頭みたいな……辰平だ。別人百八号。
「誠の切り込んでいくタイミングが遅いのよ、中距離の辰平からの応援とか私の後方攻撃とか考えて行動してよね。正直いってあたし達のトライブが一番戦力的に標準的で無駄がないんだからもっと有効的に行動しなきゃいけないのよ。なのに誠ったら無駄に被弾するし……超ウザイ」
 ……いっていることは結構正論。態度は正反対。白衣の天使帰ってきてよね。
 いつだったっけ。天馬かなんかが愚痴ってたなぁ。誠と知り合った当時アイツ、リーダーリーダーうるさかったって。軍隊を間近で見ていたからってことだけど……ねぇ。だいたいテキトーに年功序列でいんじゃないの? あ、それでいくと炎のリーダーは未加になっちゃうか。あんまり変わらないからいっか。
「そんなにズケズケ言わなくてもいいじゃないか」
「フン何様のつもり誠。ちゃんと動いてから話聞いてあげるわよ。そんなことばかりしているから他のトライブに舐められるのよ」
「そこまでいわなくなくても……いいんじゃねーか愛」
「ちゃんと必殺技だせてからモノ言いな」
 のけぞる迫力。強い愛は怖いなぁ。辰平は直視してると笑いがこみ上げてくるので視界に入らないようにしている。
 嫌だ、嫌だ。こんな水のトライブ。
 あ〜背中に巨大ナメクジを這わせたような悪寒がする。どーしたんだろ、おれ。いや、まじで。

 

 夢を見た。なんだかなぁ。たぶん夢だ。
 えーっと見覚えあるなココ。どこだったっけ。えーとうーと。ああ、国防省その……いくつだったっけ。国防省の秘密基地でいいや、ソレ。
 御園木さんと沖田くん。が暗ーい部屋に二人で長机にちょこんとついて、反対側にどうみても偉そうな制服着たオジサンが対面している。渋い顔で分厚い資料を見ている。紙がすれる音を御園木、沖田両名は小さくなって様子を伺っていた。
「半年で特別予算を使い切っただと」
 偉そうな人が眉毛の上を指でマッサージしながらいう。
「防衛のためであります」
と沖田君。
「専守防衛と正反対だとおもうがね。攻撃衛星の手配ならびに使用。NASAへの要請判明しているので三回。ならびに、計画は前々から上がっていた五式支援機士ユウヒの開発運用並びに、無断使用……まだまだあるぞ、アケロン人なる宇宙人の借用、ならびにコード名・ダイロギアンなる巨大二足歩行ロボットの私的保管……いつから君のセクトは対宇宙用になったんだ……それ以前に堀口一郎なる宇宙考古学者……宇宙考古学という学問がそもそもあるのかも怪しいところだが……。御園木、ひとつ聞いてもいいか?」
「はい」
「……裏金でも作っていたのか? お前。予算取りがうますぎるが」
 あーあ。……いーつかは聞こうって思ってて……いや、聞く勇気もねぇが。ちびぃっと思っていたのよ、おれなりに。
 あのお二人さんって、おれらが覚醒する前って何してたんだろってね。もしかしたら、おれたちが知らないときに色々、ちょくちょくそーいうヒマで無駄に野心モリモリのヤクザ、チンピラ級の宇宙人とか来てたのかもしれないが、もしもそんなヤツがいなかった、今回、宇宙人との遭遇って初めてですよってのを想定してだ……ねぇ。御園木さん。どーよ。これ、夢か?? リアルか?? どっちにしても、可哀相だなぁ。頑張れぇロボフェチ・コンビ。少なくてもキャラクター商品の版権は国防省が持って置けよ。けっこう身になるぞ。
 時計がなるような音が遠くでした。ああ、朝になるのかな。

 


 夢を見た。……。たぶん夢だ。
 洸だ。微笑んでいる。気色悪い。涼子さんだ。いつもながらに美人だ。
 って……なに、なんなんだ。
「涼子、愛してる」
(はぁ?)
「なに言ってるのよっ、私はナオタンと結婚してるの、直ちゃんのこととぉぉぉっても愛してるの」
(あー。聞きたくねー。涼子さぁん。おれは耳を塞いだ。効力はゼロ)
「ずっと前から、君のことが……」
「ちょっと待ってよ、それってカリンのときからってこと? 二股じゃない」
「だからどうしたというんだ」
「違うわね、二股じゃないわよね。だって相手宇宙人なんだもの。なに、私を宇宙人と同列させるの、アンタどうかしてるわ」
(倫理はともかく、涼子さん頑張れっ、洸をやっつけろ)
「恋愛に倫理も宇宙人も関係ない」
(……洸なら、いいかねない。いかんせヒーローの条件その壱、変身中に攻撃しちゃいけません。って項目ムシしたもんね、コイツ。怖い医者だよ。まったく)
「最悪ね、アンタ」
(まったくだっ)
 白衣の洸はスーツの内ポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
「よぉっく見ろ、涼子」
 涼子さんに突き出した書類……かな、なになに。げっ。
「……え?」
「私は開業医になる。京南の患者はみんな私のものだ。選手生命の短い格闘家では絶対到達できない本物のセレブな生活を、涼子に約束するのだ」
(コレは……なんとかに刃物だ。いや、とんでも医者にメスだ。……こいつの場合メス持たせると有能なんだよね、どーしてか。……セレブっそれ出しちゃうの。おれと結婚したってセレブになれると思うけどなぁ……涼子さぁん。貴女が不倫するなら地獄の底まで付いていきます)
「あっ洸……」
(ちょっと待てぇー、んなものでクラってこないでください!!!)

 

「涼子さぁぁぁぁーーーーん」
 ジェットコースターとかの落っこちる系の乗り物乗ったかのような負荷が身体全体に襲い掛かり、皮膚がこわばった。
「伝通院先生、意識が回復しました。よかったぁ……仁さん」
 ヘナヘナと愛の身体から力がなくなった。
「仁、アンタ大丈夫?」
 照明の影響からだろうか、青ざめた顔色の涼子さんがおれの手を握ってこっちを見ている。隣で愛と洸が日陰を作りながら覗き込んでいた。
「伝通院先生の機転で涼子さんからの呼びかけだったら、反応するかもって……涼子さんに来てもらって……仁さん。あまり心配かけさせないでください」
 冷たい塩化ビニールのベッド。消毒薬の匂い。腕に刺さった点滴チューブ。耳障りなテンポで音を刻む機械たち。めまいがするが見回すと、病室だ。愛と洸が白衣を着ている。つまりは京南病院。なんで、病院なんだ。
「アンタさっきまで意識がなかったのよそれで、病院にいるの」
「おれ、病気なんて持ってませんよ。クルマだって事故ってないし」
「……ある意味では事故なんですよねぇ」
 愛がキログラム級のため息をついた。
「今日は雪が降ったな、かなりたくさん」
 唐突に洸がいう。はぁ、と返事をした。声が絡んで喉の奥が甘くて苦い。
「仁、お前は堀口博士からオーダーされたジャケットを届けにいった」
 ……そーいや、そーだった。博士が今度学会に着ていくから、カッコよく見えるのをって……無理な注文をつけたヤツだ。
「ああ……そーだ。そーだよ」
「そのとき、不運にも東亜大学構内で……天馬たちが雪だるま作成などををしていた」
「そいや剣と蘭がはしゃいでいたなぁ」
「お前は『寒いの嫌なの』と答えて近くの自販機から缶コーヒーを購入」
「ああ、これコーヒーの味か……」
「で、被弾した。後頭部に直撃だった。不運な事故だ。意識不明になってここに運ばれてきた」
「え? 何の話だよソレ」
 涼子さんが、無理やり首を掴んで持ち上げる。チカチカと銀色のチョウチョが視界を舞っている。ガラス越しに、天馬、未加、剣、蘭、直人、豪、辰平、誠……って全員揃って張り付いてこっちを見て、ほぼ全員でゴメンポーズをとっている。
「わりぃ雪合戦しててさぁ、オレ直人狙うために雪球に石いれてよぉ」
 と天馬。
「わたしと剣ちゃんが、雪だるまの鼻に使う雪球かと思って混ぜちゃったら」
 剣と蘭が泣いている。
「誠がさぁ、直人さんやっつけようと躍起でさ、ソレ強奪して」
「ピカピカになるまで握ったのお前だろーがっ」
「……応援に来てくれた未加さんです」
 えっ、私? と引きつる未加は顔面蒼白。
「雪を見てはしゃいだ直人にそれを奪われ、天馬めがけて投げたらノーコンで……仁、お前の頭にあたったんだ」
 豪は、仁が生き返ったと大泣きしている。
「……。流石はグランセイザーだ」
 なにかに納得して直人は頷いていた。
 ……雪球に石混入でも十分反則だ。それをピカピカになるまで握ったのを直人が投げた。
「奇跡だ」
 洸は短くいう。
 怒りと痛みを通り越して、真っ白になった。おれ、やっぱ運がいいのかないのか分からない。
 さっきまで漂っていた夢のなかでのことを思い出し、思わず笑いを噴出した。
「先生っ」
 愛が即座に反応した。
「気管に遺物が詰まったのかのかもしれない、魚住君」
「はい、先生」
 どたばたと走り回る愛に向かって、
「違う、頭いてーけど、なんでもないって……ああ、CTにはかけてよね。個室じゃないとヤダからね。おれ繊細にできてるんだからさ。もちろん治療費はそこに張り付いている人たちの折半で」
 変わらない姿のいつもの面子に指差した。



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