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#38 動物の権利運動は(たとえば『ディープ・エコロジー』(*1)などの著書の
          中に見られるような)環境哲学に相反するものではないのでしょうか?
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相反するものではありません。このFAQに出てきた回答の多くからも、
#92に出てきた多くの参考文献をよく読むことによっても、動物の権利
の哲学や目指すところは、現在主流となっている環境保護運動の目指す
ところと相互に補い合うものであることは、明らかです。
マイケル・W・フォックス氏は、動物の権利運動と環境保護とは、(人
間、人間以外を問わず)個体の権利は重要だという考えと、この生物圏
を完全な状態にしたいという考えを融和させようとする二つの弁証法的
な側面であると考えています。

「個体には権利がある」という考えに基づいた道徳観は、「地球の生物
圏は神聖である」といった様な全体論的な環境概念に基づく道徳観とは、
必然的に対立するものだという人もいます。しかし、無生物をも含めた
すべての個体を視野に入れた環境倫理を発展させることは、可能なはず
です。

その倫理では、地球の生物圏を構成する各個体に敬意を払うとともに、
生物圏全体に対しても敬意を払うことによって、全体論的な環境保護主
義の目的が達成されるでしょう。権利という概念が、必ずしも全体論か
ら見た意見と矛盾するものではないということは明らかです。ディープ
・エコロジーとその概念が動物の権利運動を否定的に見ているという主
張は、根拠の無いものだとフォックス氏は考えています。

以下に引用するのは、マイケル・W・フォックスDGの著書『Inhumane Society
(思いやりの無い社会)』です。

               DG



ディープ・エコロジストは、自然な生態系の中での植物や動物の数量や
多様性を保護しようという考えを支持しています....ディープ・エコロジ
ストは、工業化された、リサイクルのきかない、野生の動植物からの搾
取に反対すべきです....それはエコロジーの立場からみれば根本的に間違
ったことです。なぜなら、ある種を他の種よりもひいきすると、個体数
が不均衡になることや、望まれない種が絶滅してしまうことが避けられ
なくなるからです。

著作「ディープ・エコロジー」の中で、著者のビル・デヴァルとジョー
ジ・セッションズは、動物の権利運動の哲学者、トム・レーガンを批判
しています。レーガンは、同様の考えの人たちと共に、「全体論的なエ
コロジーの倫理は、結局一種の全体主義やエコロジー・ファシズムにな
ってしまう」という意見を表明しています。しかしその著書の追記の中
で、ジョージ・セッションズは、次のように強く提唱しています。哲学
者は、全体主義的論理を用いずに解決方法を模索する必要がある。「さ
らには(人間、人間以外を問わず)すべての個体が健全であることに敬意
を払う一種の全体論的な環境倫理が、おそらく将来には必要になるだろ
う」ということです。
 

著者たちは、動物の権利運動に非常に批判的であるのに、皮肉なことに
(ほぼ間違いなくディープ・エコロジー運動の創始者である)アルネ・
ネスの文を引用しています。たとえばネスは次の様に述べています。
「生命中心主義的な平等とは直感的には、生物圏にいるすべての生き物
が生きて花咲き、それぞれ独自の発展と自己実現に到達する権利を平等
に持っていることを意味する」

     マイケル・W.フォックス(米国動物愛護協会副会長)

 参照: #28#59


      訳注)*1. ディープ・エコロジー
       人間の利益のためではなく、生命の固有価値が存在すると考えるゆえに、
       環境の保護を指示する思想。1972年にアルネ・ネス(ノルウェー)によっ
       て提唱された。ネスによると、すべての生命存在は、人間と同等の価値を
       持つ。従って、人間が、生命の固有価値を侵害することは許されないとさ
       れる。ディープエコロジーにとって、環境保護は、それ自体が目的であり
       人間の利益は結果にすぎないのである。しかし、生命の固有価値の存在を
       どのようにして証明できるのかという問題がある。解答のひとつとしては
       原生自然体験や理性的直感によるというものがある。
       


...............

#38 Isn't AR opposed to environmental philosophy (as described, for example, in 
"Deep Ecology")?

No. It should be clear from many of the answers included in this FAQ, and from 
perusal of many of the books referenced in question #92, that the philosophy and 
goals of AR are complementary to the goals of the mainstream environmental 
movement. Michael W. Fox sees AR and environmentalism as two aspects of a 
dialectic that reconciles concerns for the rights of individuals (human and 
nonhuman) with concerns for the integrity of the biosphere. Some argue that a 
morality based on individual rights is necessarily opposed to one based on holistic 
environmental views, e.g., the sanctity of the biosphere. However, an environmental 
ethic that attributes some form of rights to all individuals, including inanimate ones, 
can be developed. Such an ethic, by showing respect for the individuals that make 
up the biosphere, would also show respect for the biosphere as a whole, thus 
achieving the aims of holistic environmentalism. It is clear that a rights view is not 
necessarily in conflict with a holistic view. In reference to the concept of deep 
ecology and the claim that it bears negatively on AR, Fox believes such claims to be 
unfounded. The following text is excerpted from "Inhumane Society", by Michael W. 
Fox. DG 


Deep ecologists support the philosophy of preserving the natural abundance and 
diversity of plants and animals in natural ecosystems... The deep ecologists should 
oppose the industrialized, nonsubsistence exploitation of wildlife because...it is 
fundamentally unsound ecologically, because by favoring some species over others, 
population imbalances and extinctions of undesired species would be inevitable. In 
their book "Deep Ecology", authors Bill Devall and George Sessions... take to task 
animal rights philosopher Tom Regan, who with others of like mind "expressed 
concern that a holistic ecological ethic...results in a kind of totalitarianism or 
ecological fascism"...In an appendix, however, George Sessions does suggest that 
philosophers need to work toward nontotalitarian solutions...and that "in all 
likelihood, this will require some kind of holistic ecological ethic in which the 
integrity of all individuals (human and nonhuman) is respected". Ironically, while the 
authors are so critical of the animal rights movement, they quote Arne Naess 
(...arguably the founder of the deep ecology movement)...For instance, Naess states: 
"The intuition of biocentric equality is that all things in the biosphere have an equal 
right to live and blossom and to reach their own forms of unfolding and self-
realization..." Michael W. Fox (Vice President of HSUS) 


SEE ALSO: #28, #59 


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