1999年 旅行記


ギリシア編 その2



ミコノス

 7月4日朝、サントリーニを発ちフライング・ドルフィンとよばれる水
中翼船(村上春樹氏は『遠い太鼓』の中で「根性の曲がった水生動物」と
形容している)でミコノスに向かう。あちこちの島に立ち寄ったのち午後
1時ごろミコノスにつく。

 ミコノスはエーゲ海観光の中心地ともいえる島である。もう完全にバカ
ンス・シーズンに入っているし宿がみつかるか心配して行ったのだが港に
は客引きがたくさんいた。場所はミコノス・タウンから歩いて5分と言っ
たおばちゃんについて行くが車はかなりの距離を走った(結果的には徒歩
15分はかかる距離だった)ちょっと腹が立ったがまた探しなおすのも大
変なのでそのままそこに決めた。結局、うそをついたもん勝ちということ
になってしまうのかもしれない。まあみんなこの時期に稼ごうと必死なの
だろうが。

 街を歩いてみても特には好きになれない。どうもこの島とは相性が悪い
気がするがまあここの目玉はビーチなので、とにかくビーチに行くことに
する。



パラダイス・ビーチ

 すごい名前だが確かにここは良いビーチだった。特に泳ぐのには良い。
魚も多いし地形に変化もある。

 ギリシアのビーチではトップレスは当たり前だがここはその上ヌーディ
スト・ビーチでもある。でも皆が裸というわけではない。裸の人は海にむ
かって右側の方に固まってるみたいだ。特にきまりがあるわけではなくな
んとなく住み分けができるのだろう。事前の情報(?)によるとさすがに若
いねえちゃんで裸の人は見かけなかったということだったがそんなことは
なかった。割と平気で裸になっていた。でも午後になってビーチがこみあ
ってくると着だす人が多いみたいだ。

 一度、裸で泳いでみたかったので私もやってみる。なるほど、こいつは
気持ちいい。ちょっと無防備な気がしなくもないが。。でも陸にあがっち
まうとやっぱり恥ずかしいのでパンツをはく。パンツをぬいだりはいたり
してる方が恥ずかしいかもしれないけど。

 
 まあとにかく誠に良いビーチだったのだが夕方になると、とんでもない
難点があることが発覚した。

 このビーチにある "Tropical Beach Bar" というバーがとんでもない音
量で音楽を流すのだ。ビーチ中どこにいても、のがれ様のないくらいの音
量だ。

 さらに問題なのがその流している音楽だ。

 ああいうのはなんと言うのだろう。ハウスだかテクノだかユーロビート
だかしらないがとにかく気色の悪い音楽なのだ。バスドラムが四分音符を
延々と打ち続ける上に「キューイーン」・・というかなんというか気色の
悪いシンセの音がかぶさるのだ。もしも人を発狂させる目的で音楽を作る
としたらこういうもんになるかもしれない。ドラッグでもやってあんなの
をきいたら実際に発狂してしまうんじゃないだろうか。公共の場であんな
音楽を大音量でかけるのはほとんど犯罪に近いんじゃないかと思う。演歌
を大音量でかける方がまだしも犯罪性はない。もちろんそれも勘弁してほ
しいけど。

 かくして平和で静かだったビーチは夕方になるとぶちこわされる。一体
なにを考えてるんだろう。それにまわりの人も文句を言わないのだろうか。
あのバーにビーチ全体をぶちこわしにする権利があるのだろうか。

 陽も長いことだしもうちょっとゆっくりしていたかったがあきらめて退
散する。やれやれ。





スーパー・パラダイス・ビーチ

 パラダイス・ビーチのとなり(と行っても間は崖なので直接移動はでき
ないが)がスーパー・パラダイス・ビーチである。さらにすごくてたいそ
うな名前だ。でも確かにその名に恥じない(名前自体はちょっと恥ずかし
い気もするが)素晴らしいビーチだった。落ち着いた雰囲気で水も素晴ら
しくきれいだ。まあ泳ぐぶんにはパラダイス・ビーチの方が面白い気はす
るが。

 ここもヌーディスト・ビーチだがスーパーがつくだけあってさらにすご
い。このビーチはゲイが多いことでも有名なのだ。だから当然、ゲイのカ
ップルが手をつないで全裸でねそべってたりもする。なかなか壮観・・と
いうか何と言うか。噂通り(?)ゲイにはなかなかかっこいい人が多い。
もちろん例外も多数いるが。

 このビーチの場合は裸になる人はビーチ全体に分布している様だ。その
かわりゲイの人とそうじゃない人の住み分けがされているみたいだ。海に
向かって右側がゲイ・ゾーンだった。ちなみに。

 問題は夕方だなと思ってると案の定、ここのバーも大音量で音楽をかけ
はじめた。でも最初のうちはただのレゲエだったのでまだ良かったのだが
そのうちにパラダイス・ビーチと同じ例の正気の沙汰とは思えない音楽に
かわってしまった。仕方なくここも退散する。一体、ミコノスはどうなっ
てんだろう。昔からこんなんだったのだろうか。他の島のビーチじゃこん
な馬鹿げたことはなかったのだが。。



 別の日には1日、スクーターを借りて島内を走ってみた。
  東のはずれにあるビーチ(名前は分からない)は良かった。交通の便が
悪い分、本当に静かでのんびりしてた。静かなところが好きな人はこのへ
んに長期滞在するんだろう。夕方までいなかったから分からないがここで
はさすがにあんな音楽をかけることはないと思う。



************

 村上春樹氏の『遠い太鼓』に出てくる『ソマス・バー』にも行ってみた。


『ソマス・バー』はけっこう癖のあるバーだった。ソマスはトルコ生まれ
だが、キプロス紛争の際にイスタンブールを追われ(トルコ政府がギリシ
ャ系住民を強制移送したのである)、ほとんど無一文でギリシャに移住し
た。そしてそういう人々がおうおうにしてそうであるように、彼は政治に
対してはひどくシニカルで個人主義的だった。背は高くないが、いかにも
アグレッシヴな顔つきをしていた。若い頃は世界中をうろつき、六カ国語
をマスターした。
<中略>
..生まれ故郷のイスタンブールの話をするときだけは、彼はとても素直な
顔をした。イスタンブールの魚がどんなに美味しいか、そこで育つことが
どんなに愉快なことか、そこを追われた時にどんなに悲しかったか。                       


 これを読むと村上氏とはそうとう話し込んだ様に見えるのだがソマスさ
んは村上氏のことをおぼえていないらしい。

「あの頃はむちゃくちゃ忙しかった。同時に何人もの人と話していた。
 話したことなんてほとんどおぼえてないよ」

「でも本のおかげで店に来る日本人がふえたんじゃないですか」

「いや、たいていの日本人は店の前まで来て、写真だけとって帰って
  いくね。なかなか中には入ってこないね。シャイなんだろうね」

 この晩のソマスさんはとても陽気だった。奥さんはハワイ出身だそうで
頭に花輪をのせてはしゃいでいた。この日は私のほかに日本人が4人いて
(新婚カップルが一組と女の子二人連れ)ソマスさんはサイコロを使った
ゲームを教えてくれた(というより無理やりおしえられた様なかんじだが
これはなかなか面白いゲームだった。トランプの「ダウト」にちょっと似
てるゲームだ)負けた人はシャンペンのボトルを注文しろよと言っていた
が自分が負けるとカクテルでごまかしていた。あるいはわざと負けてくれ
たのかもしれないが結構本気でやっている様にみえた。普通の陽気で女好
きのおっさんというかんじだった。

 その翌々日、夜中のフェリーが出るまで時間があったのでもう一度行っ
た。

 その晩は時間が早かったせいもあって他に客はいなかった。ソマスさん
はこの前とはうってかわってものしずかで何かしきりに書き物をしていた。
私はハワイ出身の奥さんと話をしていた。

 イスタンブールから入ってカッパドキアに行ってからギリシアにきたと
言ったが、どうもカッパドキアというのが通じない。奥さんがソマスさん
にカッパドキアのことをたずねた。

 突然、ソマスさんは気分を害したようにみえた。あんな危ないところと
んでもない。あのへんには人殺しがいっぱいいる・・

 その晩のソマスさんはたしかに村上春樹氏が書いていたような人物に見
えた。



 ミコノスの滞在は5日くらいできりあげた。私はやっぱりミコノスとは
相性が悪いみたいだ。ソマス・バーは良かったが。

 次の島、ギリシア最後となる島はサモスだ。べつにソマスにひっかけた
わけじゃないけれど。







サモス
 
 ミコノスを深夜に出たフェリーは翌7月9日朝7時サモスについた。

 なんせ持っている航空券はイスタンブール往復なのでもう一度トルコに
戻らなくてはならない。サモス島に行ったのは基本的にはここからトルコ
にもどるためだったのだが結果的にこの島はとても気に入り、一週間ほど
滞在した。

 サモスはこれまで行ったロードスやサントリーニやミコノスほどの、ば
りばりの観光の島ではない。もちろん観光客はくるのだが基本的にはかな
りのんびりしている。この島だけは日本人に一人も会わなかった。


 ここでも1日、バイクを借りて走ってみた。これはなかなか面白かった。

 島の南側にあるエフパリノスのトンネルは紀元前6世紀に作られたとい
う水路用のトンネルで見学ができる。立派なトンネルだった。

 島の中央部にはカルヴォヌス山(カタカナ表記は適当)という1140mある
山があって一応山頂までバイクでのぼれる。オフロード・バイクだったか
ら、やっとこさのぼれたようなとんでもない悪路だったが。

 島の西側の方の道は行き止まりになってしまうが景色は本当にすばらし
かった。でもあちこち行き過ぎたせいで帰りはすっかり夜道になってしま
い、ヘッドライトはほんの申し訳程度の明るさしかなくてかなりこわかっ
た。


 この島のビーチも素晴らしい。

 特にツァマンドゥ・ビーチ。

 すっかり気に行ってしまって4日間も通ってしまった。ここもヌーディ
スト・ビーチなのだが島の雰囲気を反映してとてものんびりしたムードだ
った。同じヌーディスト・ビーチでもミコノスの場合はもうちょっと思想
性というか信念というかそういうのが残っている様に感じられるが、ここ
にはそんなものは何もない。

「裸のほうが気持ちいいけん、ぬいじゃうもんね」

というかんじだ。私もここではまわりに日本人がいそうにないこともあっ
て(日本人がいるとやっぱり恥ずかしい。むこうも嫌だろうし)ずっと裸
でとおした。やってみると気持ちいい。くせになりそうでこわい。

 でもここでも裸になる人とならない人の住み分けはある様で裸になる人
は海にむかって右に集まっていた。どうもどこに行っても「海にむかって
右」がキーになるみたいだ。どうしてだろう。

 このヌード地区と非ヌード地区のちょうど境目あたりに売店があって全
裸で買い物をしている人もいた。私もちょっと生まれてはじめての「全裸
で買い物」という体験をしてみたかったのだがさすがに恥ずかしくてでき
なかった。むこうは何とも思わないのかもしれないが。
 
 まあとにかくこのビーチは今回の旅行では一番、気に入った。のんびり
した雰囲気に加え海も景色も言うことなしである。気違いじみた音楽をた
れ流すバーなんてもちろんないし。だいたい夕方になるとみんな早めに帰
ってしまう。



 サモスの町からこうしたビーチはだいぶ離れているのでバスにのらなけ
ればいけない。だが、この島のバスは行先をギリシア語表記しかしていな
いのだ(これまで行った島では英語式表記を並記していた)

 もうじきギリシアを離れようとするのに今更という気もしたがバスの待
ち時間も暇だし、ちょっと『地球の歩き方』をみてギリシア語のアルファ
ベットを勉強してみることにした。意外に簡単で1時間たらずで大文字だ
けなら(バスの行先の表記は大文字だけなのだ)だいたい読める様になっ
た。帰国した今はまたすっかり忘れてしまったが。

 まず読み方はともかく発音として普通のアルファベットと共通の文字が
ある。これは問題ない。

A,E,Z,I,K,M,N,O,T
といったとこがそうである。

(※この先、少しギリシア文字を書きますが文字化けしてたらすみません)

 普通のアルファベットと違う文字でもかなりの部分が数学で使われたり
その他なんだかんだでなんとなくおなじみになっている。

Γ(ガンマ)、Δ(デルタ)、
Π(ピィー・・円周率だとパイだけど)、Σ(シグマ)、Ω(オメガ)

などで、順に G,D,P,S,O といった音に対応するので分かりやすい。



 一番困るのが文字がアルファベットと共通で発音が違うものだ。

BはVに、HはIに、PはRに、XはCHに相当する。


 しかし、ガンマだのデルタだのシグマだのオメガだのとギリシア語のア
ルファベットの読み方ってなんかかっこいい。商品名やら会社の名前やら
に使われるのも響きがかっこいいせいかもしれない。でもギリシア人はそ
ういう商品名やら会社名やらをみるとどんな感じがするんだろう。特にど
うとも思わないのかな。サモスにもオメガの店はあったけど。




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