1999年 旅行記


マレーシア編




 6月4日(金)出発。まずはマレーシアに飛び4泊する。

 イスタンブール行きの航空券が安いのはマレーシア航空だった。他には
アエロフロートという選択肢もあったのだが、モスクワに一泊しなければ
ならずそのホテル代(約1万円)は自己負担になるとのことだった。それ
でもモスクワ観光ができると言うのなら面白そうだが観光するにはやはり
ビザがいるとの事で面倒だからやめにした。マレーシアには正直言ってあ
まり興味がわかない。でも行ったことがない国だし、せっかくだからと行
きしなに4泊する事にした。

 このクアラルンプール行きの便には「最高VIP」も搭乗するとかで通
常のセキュリティー・チェックに加え、搭乗の直前にも入念なボディーチ
ェックをされた。最高VIP? そう言や、マレーシアの首相(マハティ
ールさんだったっけ?)が来日中というニュースを聞いた気がするけど
・・失礼だけどマレーシアぐらいだったら専用機なんてないのかもしれな
いし...
 好奇心が強いものでついボディーチェックをしている兄ちゃんに「首相
が乗るんですか?」と聞いてしまったら、すごーーく嫌な顔をされて「そ
ういう事は航空会社の人に聞いてくれ」と言われた。それくらい教えてく
れてもいいじゃん。ケチ。でも本当に知らなかったのかもしれない。

 さて、マレーシア航空に乗るのも当然始めてである。まあ飛行機なんて
どこの航空会社でも似た様なものと言えば似た様なものなのだが、細かい
ところでは少し驚くこともある。
 まず食事前に配られるメニューである。マレーシア語と英語と日本語で
メニューが書いてあるのだがその下に次の様な記述がある。

 「機内でのお食事はすべてハラルミートでございます」

 イスラム教徒は豚を食べないのはもちろんだが、それ以外の動物につい
てもイスラムの律法にのっとって屠殺されたもの以外は食べてはいけない
事になっている。具体的には:
「意識がある状態の動物の頚動脈と気管をめがけて鋭いナイフで一突きする」
・・のが正しいらしい。動物にとっては余り歓迎できる戒律ではない。
 イスラムというのは、かなり実利面を重視した宗教で酒を禁じたのは酒
によるトラブルが余りにも多かったため、豚を食べるのを禁じたのは豚肉
であたる人が多かったためという説もある。そこから類推するとこの戒律
も出どころのはっきりしない肉は(あたるから)食べるなという事から来
ているのかもしれない。
 まあとにかくハラルミートとはそうしたイスラムの律法にのっとって屠
殺された動物の肉の事である。ハラルミートと言われてどれだけの日本人
が分かるのか、そもそも日本人にどれくらいイスラム教徒がいるのかは疑
問だけど、さすがマレーシア航空という感じはする。こんな調子ではビー
ルも出てこないのではないかと心配したが、かろうじてコップについだも
のを出してくれた。でもせめて缶で欲しかった。おかわりを頼める様な雰
囲気ではないし。
 不思議だったのは降りる前にこのメニューを回収することである。後日、
ある日本人とその話をしてみたが、やっぱり「再使用するため」という理
由以外には考えられないんじゃないかという結論になった。うーむ。まあ、
どうでもいいんだけど。


  機内で配られたマレーシアの入国カードに書かれた次の一文もなかなか
の迫力だった。

Be forewarned death for drug traffickers under Malaysian law.
  
「麻薬を所持していた者はマレーシアの法律において死刑に処せられる事
  を 前もって警告する」
といったところだろうか。それにしても、もってまわった英語だ。そうい
う恐ろしいことはもうちょっと分かりやすく書いてほしいと思う。
 もしかしたら機内でこれを読んでびびって飛行機のトイレに捨てに行く
人も結構いるかもしれない。そしてトイレの清掃業者と政府が実は裏で結
託していて・・なんて事はないんでしょうね。まあ、とにかく外国人でも
平気で死刑にしてしまうというのは事実みたいである。


 ペナンを経由してクアラルンプール空港に到着する。「地球の歩き方」
を見て市内へ行く47番か61番のバスというのを探すが一向にそれらしきも
のは見つからない。しばらく空港内をうろうろして、ようやく市内に行く
バスを見つける。切符がやけに高いがよく分からないのであきらめて買う。
バスは高速道路をひた走る。暗くて良く分からないがまわりはゴム園みた
いだ。行けども行けども人家が出て来る気配がない。おかしい。これじゃ
成田並み・・と言うか、もしかして成田より遠いんじゃないか。「歩き方」
にはそんなに遠い様なことは書いていない。バスが走っている方角も変だ
(私はいつも磁石を持ち歩いている)

 そこでやっと気づいた。
 マレーシアにはせいぜい5日くらいしかいないんだからと「地球の歩き
方 マレーシア編」は古本屋で何年か前の版を買った。まあこれで十分だ
ろうし、マレーシアを出る時には捨ててしまってもいいやと思って。

 でもその間に新しい空港ができていたのだ。そう言や、ニュース・ステ
ーションで「アジアのハブ空港をめざした新空港が開港」とか言うニュー
スを見た気がする。すっかり忘れていた。確かにやたらと立派な空港だっ
た。本当にこの国にこんな空港がいるのかという感じだった。空港の巨大
さに比べると人の数が少なくて閑散とした印象を受けた。成田と総とっか
えしたら、ちょうどいいかもしれない。一旅行者としてはこんなに立派な
空港はいらないからもう少し市内に近いところに作って欲しいと思う。土
地はいくらでもありそうに見えるのだが。

 マレーシアはここ数年の変化が本当に激しい様だ。この古い「歩き方」
にはクアラルンプールのペトロナス・ツイン・タワー(目下、世界一の高
さのビル)の事もKLタワー(こちらは世界で4番、アジアで1番のタワ
ー)の事もニュートラム(と言うのだろうか、東京で言えば「ゆりかもめ」
みたいなやつ)の事ものっていない。
 しかし、教訓として「ガイドブックはなるべく新しいものを買いましょ
う」と言う事になるかと言うと私は必ずしもそうは思わない。ガイドブッ
クが古いせいでどうしようもなく困ったなんて事は別になかったからだ。
ガイドブックなんてその程度でいいんじゃないかと思う。何もなしだとや
っぱり困るけど。
 それにしてもマレーシアの変化の速度はいくらなんでも早すぎるんじゃ
ないだろうか。なんでも近代化すりゃいいというものではないと思うのだ
が。日本も他所のことを言える様な国では、さらさらないけど。


 まあともかく、バスはようやく市内に入って行く。何故か良くわからな
いが、途中でミニバスに乗り換えさせられてから各一流ホテルに寄って客
を降ろしていく。泊まるとこも決まっていないし一流ホテルにもまるで縁
のない私は「チャイナタウンで適当におろしてくれ」と頼んだら最後にま
わされてしまった。

 窓から前述の世界一のビル、ペトロナス・ツイン・タワーが見える。他
に大して高いビルがないせいもあって、闇夜にそびえ立つ姿はなかなかの
迫力である。
片方のタワーを韓国の企業が、もう片方を日本の企業が受注して作ったら
しい。どうせならデザインもそれっぱく、別のものにしたら笑えると思う
のだが残念ながら同じデザインである。そびえたつ2本のタワーはモスク
の尖塔をイメージしたものでイスラムの栄光を表わすらしい。私にはどち
らかと言うと建築会社の栄光を誇示するものにも見えるが。
  それにしてもクアラルンプールは割と土地がすかすか・・というかゆっ
たりと言うか・・していてこんなビルを作る必要があるとは思えない。空
港と言い、このビルと言い、マレーシアというのは随分、見栄っ張りな国
の様な気がする。財政は大丈夫なのだろうか。余計なお世話だが。

 なんとかチャイナ・タウンに宿をみつける。一泊、約2000円。あん
まり安くないけどまあ、やれやれである。シャワーをあび、近くの屋台で
食事しビールを飲んで寝る。

 次の日はクアラルンプールを観光する。ペトロナス・ツイン・タワーは
オフィス・ビルで展望室の様なものはないそうである。失礼な話である。
世界一、高いビルを作ったんだったら、ちゃんとした展望室を作るのが国
際的礼儀と言うものである(ホンマかいな)とにかく高いとこが大好きな
私はご立腹である。仕方なくKLタワー(KLとはクアラルンプールのこ
と)にのぼる。高いことは高いのだが今ひとつ面白くない。その後、博物
館(これもいまひとつ)に行き、インド人街に行ってバナナの葉にのった
カレーを食べる。とても美味しそうに見えたが食べたらまるで期待はずれ
だった。

 マレーシアではそこらの屋台料理みたいなものが一番美味しかった。腹
一杯食べても200円もかからない。大体はとても辛い。タイ料理に近い
ものがあるかもしれない。ビールにはぴったりという味なのだが問題はマ
レーシアは基本的にはイスラム国でそういうところにはビールを置いてな
いことだ。中華系の店になると置いている事が多いのだが、料理の値段は
だいぶ高くなるし特別美味しいというわけでもない。困ったもんだ。


 クアラルンプールをうろうろしたのは結局一日だけだったが、その一日
の間に三回も怪しげな男から声をかけられた。パターンとしては大体、皆
同じだった。

「実はもうじき妹が(姉が)クラブの歌手として日本に働きに行くことに
  なっている。妹は(姉は)行く前に日本の事を色々と知りたがっている。
  もし良かったら今からちょっとうちに来て日本の事を教えてやってくれ
  ないか」
といった感じである。もうちょっとオリジナリチーちゅうもんがないんか、
おめーら、と言いたくなる。

 私も好奇心が強いので「いいですよ」とついて行ったらどういう展開に
なるのかかなり興味があったが、さすがに遠慮しといた。バンコクあたり
だとこの先は
「実は今、金持ちでアホで博打好きな外国人が来てる。二人で組んでイカ
  サマ賭博をやってそいつからカモってやろう。あれは、ほんまのアホや
  から楽勝だぜ」
とか誘われて、誘いにのると結局「金持ちでアホな外国人」とは自分の事
だったと分かるという事になるのが一般的らしい。オリジナリティーのな
さという観点から言えばどうも同じ展開になるのではないかという気がす
る。
 誤解のない様に言っておきたいが、私がマレーシアにいたのは5日間だ
けだったが、マレーシアの人は総じて親切だったし別にトラブルもなかっ
た。怪しげな連中に気をつけさえすればそれ程、危険な国ではない・・と
思う、多分。

 それはともかく、クアラルンプールは歩き回るにはちょっと暑すぎる。 湿度も高い。日本の真夏という感じだ。殺伐とした道を車がびゅんびゅん 走っている様な所が多くて歩いて楽しいような街並みでもない。すっかり 嫌気がさしたので次の日はバスで2時間程の海沿いの町、ポートディクソ ンに移動することにした。マラッカ(マラッカ海峡のマラッカ、古都らし い)に行く事も考えたが何となくめんどくさくなってやめた。  苦労してポートディクソン行きのバス乗り場を探しあて11時発のバス を待つが12時をすぎてもやって来ない。待つ事自体は全然構わない。別 に急いでいるわけでもないし日本を出るとそういう事には寛容になれる。 問題はこのバス乗り場がターミナルビルの内部に位置し、殆ど屋内と言っ ていい様な場所にある事だ。排気ガス充満しまくりである。こんなとこに 1時間以上いて死なないものかと思ったがなんとか死にはしなかった。ま わりで特に死んでいる人も見かけなかったからとりあえず死にはしないと いう事なのだろう。それにしてもひどいもんだ。一体、何考えてこんな設 計したんだろ。何も考えてなかったのかもしれない。  ポートディクソンは「地球の歩き方」には一応、「ビーチリゾート」と 書いてあるがビーチリゾートと言うよりも「海水浴場」と言った方がぴっ たりな雰囲気のところである。クアラルンプールから近いこともあり地元 の人がたくさん来る。わざわざこんなところに来る外国人は余りいない。 着いた日は日曜日で海岸はずいぶんにぎわっていたが、翌月曜日になると 一気に閑散とした。ここには2泊した。特に何もないところだったが、の んびりできて良かった。持って行った宮部みゆきの「火車」を読んだ。面 白かったが気の毒な話でもあった。朝の涼しいうちは山側の方へ散歩した。 これがいかにも「アジアの田舎」という感じでなかなか良かった。鶏がそ のへんを歩きまわり、バナナの木が生い茂っていた。(えーと他にも色々 生い茂ってたのですが、なんせ植物の名前を知らないもので)アリの行列 なんてものをじっくり見たのも久しぶりだった。見てるとつい、ちょっか いを出したくなる。行列の途中に障害物(木片)を置いてみる。彼等は迂 回はせずに木片を乗り越えて進んでいく。「実直」の二文字が頭に浮かぶ。 でもこの人達は私と違って忙しいんだろうから余りこんな事をして遊んで はいけないな。  6月8日(火)クアラルンプールに戻り、少し時間をつぶしてから空港 に向かう。クアラルンプールではスコールがあった。ものすごいどしゃ降 りである。こういうのは熱帯らしくて好きだ。まあ、のんびり雨をながめ る余裕がある状況での話だが。あとから知ったのだが新しい空港とポート ディクソンはかなり近い。わざわざクアラルンプールに戻る必要もなかっ たかもしれない。まあ、近いからと言ってバスがあったかどうか分からな いが。 とにかく夜半近くに出る便に乗り本来の(?)目的地であるトルコにむ かう。
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