ヤマトヌマエビ繁殖法

〜浮游幼生期を汽水で過ごす小卵型エビの繁殖〜

発眼したタマゴ。

 

 


 

1.母エビ抱卵 

母エビ抱卵〜タマゴが発眼(白から灰色へ変化)

 抱卵したからと言って、すぐに隔離してはイケマセン!.....すぐに隔離しても何も無いことが多いのですが....もしもタマゴが未発達のまま放出したとしたら、孵化までの日数がかかってしまい、タマゴがカビにまみれたりして大変なのです。

 今のうちに道具を揃えましょう!さらに、別水槽に70%汽水(海水を70%に薄めたもの)を入れて、しばらくは蛍光灯をつけっぱなしにして、微小生物の発生を待ちましょう。(保温、スポンジフィルタにエアレーション。冬なら直射日光も時々当てるといいッス。)汽水のもとになる海水は、自然海水を熱帯魚用のアミで濾したモノがいいでしょう。薄める淡水は熱帯魚の水槽からとります。水槽ガラス面に茶ゴケみたいなモノがつけばGood!でしょう。餌生物の発生などを考えれば、天然海水を使用するのがBESTですが、手に入らないなら、人工海水を上に書いた濃度に調整するか、エビを飼っていた水槽の水1リットルに対して塩(海水を天日乾燥させた天然塩をつかいましょう。精製塩はダメですよ〜!)を23グラム溶かしてもOK。さらにウイローモスをたっぷり入れておくと、溶けたものが微生物の栄養塩になるし、コケの基材として、水流調整用の障害物としても便利です。

お母さんの状態

 


 

2.母エビ隔離 

発眼から2週間

 発眼から2週間(または抱卵から3〜4週間)ぐらいしたら、水槽に浮かべたプラケース(水の出入りがないものがGood。グッピー用の産卵ケースは、孵化したゾエアが抜け出てしまうのでダメです)にお母さんを隔離します。このとき、ブライン孵化器(ペットボトルブライン孵化器の作り方はこちら)に隔離しても問題ないです。ただし、エアレーションは激しくしないでください。たいていのお母さんは、水質が変化するとタマゴを放出します(多くの場合は隔離した晩)。 

...隔離した晩に放出しない場合もありますが、隔離ケース中の水質が悪化しないよう換水をしつつ...

母エビがタマゴを放出するのを待ちましょう.....( ̄^ ̄)

※僕自身の経験と、HPに寄せられた数々の体験談によると.....ヤマトの抱卵〜孵化には、月齢周期と密接な関係があるような気がします。すなわち、月齢14〜15(満月)のときに抱卵して、翌月の月齢14〜15に孵化する可能性が高い.....ということです。現在の月齢を知りたいヒトはこちらを参照のこと。


 

3. 卵放出&孵化 

母エビ隔離の日or翌日ぐらい 

 母親エビがタマゴを放出(抱卵していたタマゴを体から離す)したら、親エビだけを元の水槽に水あわせをしながら戻しましょう。タマゴを入れたプラケースは激しいエアレーションをかけて、頻繁に水換えして、タマゴがカビないようにしましょう!(この時点でブラインシュリンプ孵化器にタマゴを移してしまうのがベターです。)大部分のタマゴが孵化※1したのを見計らい、プラケースの中身を仔エビ水槽にそそぎ込みます。(このとき慎重な水あわせは不要!)孵化した幼生は1〜3日以内に塩水につけないと死ぬ※2そうです。

 まともに行けば数100〜数1000匹もの幼生が孵化します!!

...でも大丈夫!全てが親になるわけじゃないです(汗)。安心して孵化させて下さい!(爆)

側面・背面

※1 孵化したゾエアはボウフラを小さくしたように見えます。(体長1.2ミリぐらい)

※2 .....実は.....淡水中で繁殖可能なヤマトヌマエビの地方集団が存在する....との情報もあります。詳細については又の機会に....

 

 タマゴが放出されたものの、幼生がなかなか孵化しない場合もあるようです。タマゴをブライン孵化器(ペットボトルブライン孵化器の作り方はこちら)に移して、激しい水流に曝してタマゴがカビるのを防ぎましょう。で、ときどきエアを停めて、孵化した子供だけピペットで汽水水槽に移しましょう!

親が放出したタマゴは、カビてしまうまで孵化するチャンスがアリマス!辛抱強く待つべしっ!

 


 

4.幼生飼育 

ウイローモスを入れるとGood。

ゾエア幼生初期(体長1.5〜2.0ミリ)

 幼生がたくさん餓死する時期です。遊泳力が弱いので、エアレーションの水流には注意して下さい。強い流れがあると餌を食えません。1日に何度か水槽の中身を攪拌して、底にたまった有機物を吹き上げてやりましょう。餌を毎日多めに与えて、水換えも毎日やると良いです。

側面・腹面・背面

ゾエア幼生後期(体長3.0〜4ミリ))

 厳しいゾエア幼生初期の試練をくぐり抜けた仔エビたちは、体長3ミリぐらいで赤くなります。かなり丈夫。遊泳力も相当なもので、漂っているデトライタスを見つけると、泳いで取りに行ったりできるし、底に落ちている餌を拾って喰うこともできます。

着底した仔エビ出現(体長5ミリぐらい)

 仔エビがゾエア期最後の脱皮をして本物のエビ(5ミリ程度)になります。体色が赤から透明になります。こうなればエサも親と一緒のものです。\・\・/

 


 

5.淡水化開始 

着底した仔エビが半数を超える...

 まだゾエア期の仔エビもいますが、徐々に水槽の水を淡水化していきます。毎日1/10ぐらいずつ淡水化するのがいいのでは?15〜20日後には淡水化終了です。

 


完全淡水化完了!小さくてもエビはエビ。親と何ら変わりありません。

さあ!お母さんエビのいる水槽にお帰りなさい!

...とはいきません....他の魚のいいエサです。産卵ケースなどで大きくなるのを待ちましょう....


 

●小卵型と大卵型

 ヤマトヌマエビやヒメヌマエビなど、卵の直径が0.5ミリ前後で、多数(つまり肉眼で数え切れない程度っすね \・\・/)抱卵するタイプのエビを小卵(小卵多産)型エビ、逆に、卵形1ミリを越える大型の卵を少数(20〜100個ぐらい)抱卵するタイプ(ミナミヌマエビとかビーシュリンプなんかです)を大卵(大卵少産)型エビと呼んでいます。基本的に卵が大きければ、産まれた子供は良く発達した段階で産まれてきます。逆に、卵が小さいヤマトなどでは、産まれた子供は未発達なゾエア幼生(浮游幼生で塩分がないと死んでしまう...)の段階で産まれてきてしまう訳です。正体不明のエビが抱卵した場合、タマゴの大きさをみれば、繁殖方法の大きなヒントになります。

●母親隔離の時期・方法

 母エビは抱卵から30日ぐらい経つとタマゴを放出してしまうそうです。他の魚が暮らす水槽中で幼生が放出されれば、当然魚にとってはいいオヤツです....さらに、遊泳力の弱い幼生は、アッという間に濾過器に吸われて居なくなってしまいます.....。

 だからといって、抱卵してすぐに母親を隔離してしまうと、タマゴを放出しなかったり、放出したタマゴからゾエア幼生が孵化するのが遅れてしまい、ほとんどのタマゴがカビにまみれてしまうなど、面倒なことになりがちです。

 発眼※から2週間(もしくは抱卵から3〜4週間)を目安に母親を隔離※するといい結果が得られるようです。

※発眼とは、タマゴの中で単細胞の胚が卵割を繰り返し.....やがて器官形成が着々と進み.....眼が形成された状態のことを言います。タマゴの中に小さな眼がすけて見えます。(このページの一番上の写真の状態).....でも、眼は小さいので、慣れないと解らない....カモ。

※母親を隔離する水槽の水は汽水ではないですよ。まだ淡水です。別にお母さんが死んじゃったりするわけではないですが.....(何度か質問メールを頂いたもので....汗)

●タマゴの放出

 ヤマトヌマエビの繁殖例をいろいろ調べてみましたが、「母親を隔離したらすぐに脱卵or産卵?した」というケースが多いです。ヤマトヌマエビの成体は川の渓流部で生活し、その場で産卵します。生まれたゾエア幼生は1〜2日の内に海まで流れることが出来なければ死んでしまうそうです。子供たちが出来るだけ生き延びられるように、母エビが雨で水かさが増したときに産卵するのは理にかなっていると思います。ショックで卵を脱卵したのではなくて、親が降雨で水かさが増したものと勘違いしたのではないでしょうか。

 逆に考えれば、産卵を控えたヤマトヌマエビがいる水槽でうかつに水換えをすると、お母さんエビが産卵してしまうということになりかねないのではないでしょうか。

 一方で、隔離してもなかなかタマゴを放出しないお母さんも結構居るようです。(大抵は隔離の時期が早すぎだったんじゃあないかと思うんですけど......)隔離したままで、こまめに換水を続けてみて下さい。徐々に放出しますので、タマゴはブライン孵化器(ペットボトルブライン孵化器の作り方はこちら)にうつし、孵化したゾエアは汽水水槽にうつして下さい。

●仔エビ水槽の立ち上げについて

 なるべく大きな水槽がGoodです。このHPでは30センチ水槽を標準と考えています。60センチ水槽ぐらいの大きな水槽を、日当たりのいい場所(直射日光はダメですよ)に設置できると、無給餌・無換水の飼育ができるかも.....逆に、どうしても新規水槽を設置することができないのなら、2リッターペットボトルの上部をカットして、それを親水槽の内部に設置するのも可です。(繁殖日記はここ

 用意する汽水は自然海水と熱帯魚水槽の淡水(濾過器の中のドロドロ汁を混ぜるのも効果的です。)とを7対3で混ぜたモノを入れるのが理想的だと思います。これは、仔エビのエサとなる微小プランクトンの発生を考えたときに有利だからです。このときにウイローモスを入れておくとプランクトンの発生が促進されるし、強い水流を緩和してくれます。スポンジフィルターにゆるめのエアレーションで酸素を補給し、強い光※(温度上昇に気をつければ日光も有効)を当てておきましょう。

※日本でも盛んに養殖が行われているクルマエビの幼生飼育では、たたき池と呼ばれる海水の池に海水を張り、直射日光に当てて、プランクトンを大量に発生させてから幼生を入れるそうです。たたき池の出来上がり具合は水の色(緑色=やや良、茶色=最良)で判断します。これが上手く行くと、幼生の歩留まりがよく、ウイルス性の伝染病も発症しにくいそうです。

●汽水の準備・換水

 天然海水を使うときには、他の生物が混入しないようネットで濾して下さい。肉食動物(ヤムシ・クラゲetc)が混じると悲惨です。汲みに行くのが困難な場合は人工海水でもOKです。また、換水時には必ずカルキ抜きをした水を使用して下さい。さらに....河口近くの海水はすでに塩分濃度※が低く、どの程度薄まっているかを知ることは困難です。なるべく濃い海水を汲める場所で採水したほうがいいカモ....

※市販の塩ですが、天日干しの天然塩と称して売っているモノなら使用可能ですが、精製塩の混入などが恐いので、やっぱりお勧めできません。是非ペットショップで人工海水のもとを購入して下さい。

※海水中の塩分とは、NaCl以外塩類を含めた総塩類濃度のことです。標準海水で確か35パーミル(=3.5パーセント:1リットルの水に35gの塩類が溶けている)くらいで、ヤマトヌマエビの繁殖に最適な濃度の汽水とは、だいたい21パーミル程度です。まあ、この辺の濃度はアバウトで問題ありません。エイヤッ−=≡卍\(-_-) とね。

●必要な器具

 仔エビ水槽を作る場合 大きい水槽・ヒーター・エアポンプ・スポンジフィルター・蛍光灯(冬季なら日光でもよいと思う)・ぴったりサイズの水槽フタ(塩水が飛び散るのはイヤですよね)・ウイローモス

 仔エビ水槽を作る予算・場所がない場合 ペットボトルの注ぎ口のあたりをぶった切ったやつ・エアポンプ・エアストーン・ウイローモス

●仔エビ(幼生期)のエサについて

 デトライタス(生物の死体が泥状になったもの。バクテリアなどのカタマリ)や浮游性珪藻類(ガラス面に茶色く付着するものの仲間)を食べるようですが、これらを安定増殖させるのは至難の業です。これに変わるモノとして、熱帯魚の餌を良くすりつぶして、うっすら濁る程度に溶かし与えると良いでしょう。(当然水の汚れが激しいので、水換えを頻繁にしましょう。)特にゾエア幼生の初期段階では体力がないので、たくさん餌をやって、たくさん水換えをするのがいいようです。(ゾエア幼生の後期にはブラインシュリンプも食べるのではないかと思いましたが、食べませんでした....)

●エアレーションと水流の強さ

 小さいプランクトンは例外なくエサ不足に弱いです。体が小さくて、常に餌を食い続けていなければならないのです。ゾエア幼生の主食は、おそらくプランクトンとデトライタスがふわふわ漂っているものではないかと思います。ところで彼らは酸欠にも弱い.....

 だからエアレーションによって水槽の水をかき混ぜ続けてやるのがいいのではないか?と思い、強いエアレーションをかけていました。ゾエアとエサが一緒に水槽の中をぐるぐる回っている状態です。だけど、これってエサを食えるのだろうか?と、ふと心配になってしまいました。ふつう海の中ってあまり強い流れはないものです。沿岸域では潮の引満によって一日に4〜5回強い攪拌が起きるだけです。ゾエアが暮らしている場所の物理条件を水槽内に再現してやることは非常に困難ですが(プログラムタイマーで一日に4〜5回/30分ずつぐらい強いエアレーションをかけるとか)。エサを食える範囲の水流にとどめてやることが大事なのではないでしょうか?

 具体的にいえば、エアレーションを弱くして、水流を秒速1センチ以下におさえる。一日2回朝晩にでも棒か何かで水槽の中身を思いっきり攪拌する。このぐらいがいいのでは?

●淡水化作業

 仔エビは着底すると川を遡るので、徐々に水槽の水を親エビ水槽の水で淡水化してやればいいと思います。仔エビの成長はバラバラで、淡水化開始時期を見極めるのは困難ですが、幼生を徐々に淡水化しても死ぬことはないと思います。ただし急激な淡水化は危険が伴うので、毎日1/10を淡水で置き換えるとか、ゆっくりやるといいでしょう。ちなみに、仔エビへと変態完了して、しばらく汽水で飼育※しても何ら問題はないです。

※ヤマトヌマエビは汽水中での飼育も可能です。が、脱走(本来の生息地である上流を目指す?)が頻発します。フタをしっかりとしてください。

●水温について

 僕の場合は23.5、26、28度と3パターンでやってみました。23と26度では、だいたい40日で成体になりました。28度の場合は若干早いような気もしますが、エビは基本的に高温に弱いものなので危険だと思います。

●他のエビについて

 僕が繁殖に挑戦した両側回遊型エビはヤマトヌマエビですが、トロピカルシュリンプ(=台湾産ヤマト)やミゾレヌマエビについても、まったく同じ方法で繁殖が可能です。また、ヒメヌマエビなんかもいけるんちゃうか....と思います。

●参考Web

下関水産大水産無脊椎動物学研究室(LAIZ)のHP 〜ヤマトヌマエビの生活史に関して詳細な説明があります

CHRYSTAL RED 〜「ヤマトヌマエビ繁殖情報」はヒントがいっぱい....

KO'S Home Page 〜ゾエア初期の給餌の問題を素晴らしいアイデアで乗り切りました!必見です。

パーポーえび日記 〜トロピカルシュリンプの繁殖をペットボトルで成功させました!もう必見デス!

Home Page of つ田 〜僕の昔のHPデス。ヤマトヌマエビの繁殖日記を読むことができます。