葵新伍自伝「俺は青信号」


○月×日
遂にイタリアに到着だ。親戚のコネでインテルに入団しようとしたが、いつのまにか俺の爺さんが逝っちまってやがった。とりあえずミラノ市にある2つのクラブ、ACミランとインテルを訪ねてみたが、あえなく撃沈。
 これからどうなるかと思ったが、人相の悪いババァが「家賃さえ払えればここに置いてやっていい」とか言う。将来の日本代表のエースになろうとしている人間に何という扱いだよ、全く。

○月△日
 何か知らねえが、インテルの役員らしきヤツが「インテルの入団テストを受けないか」と俺に声をかけてきた。
 このまま何もできず飢え死にするよりマシだと思い、200万リラをそのおっさんに渡した。そのおっさんは俺にインテルの監督を紹介した瞬間、車で逃走しやがった。
 インテルの監督に聞けば、「うちの入団テストは当分ないよ。それに今のはうちの役員なんかじゃない」と・・・。
 俺のこの足でおっさんを追っかけて車を叩き壊し、ぶん殴ってもよかったが、この世界、イタリアは冷遇されているし、俺の技術が少々及ばないにしても、まず間違いなく成功できるから、気にはしていない。

●月×日
 いくら俺がサッカーの天才でも、さすがに金がないと生きていけない。どうしようかと思っていたが、噴水広場に靴磨き用具一式が落ちていたので、それで生計を立てることにした。
 しかし、靴磨きだけではどうにも生活費がたまらない。そこでリフティングショーをすることにした。やっぱり俺は天才なんだなあ。あっという間に生活費がたまった。
 んで、このショーだけで食べていけるなと確信したら、近くの客が「日本は本物のサッカーになるとてんでダメ」とかぬかしやがる。
 おいおいそこのイタリア人、そんなことは日本に勝ってから言ってほしいもんだな、ヘタレ大国の癖に。
 あ、そんなこと言ってたらどこかのサッカー馬鹿を思い出しちまった。鬱だ、もう寝る。

†月∠日
 靴磨きがきっかけでインテルの用具係に抜擢された俺。人数が足らないから紅白戦に参加できることになった。よし、ここいらでイタリアサッカーのレベルを見てやるか。
 味方が全然信用できないから俺一人でゴールまで行こうと思った。何だ、用具係の俺一人でディフェンス全員かわせたじゃないか。GKもひどいな。あっさり決めちまった。
 なにィ?やつがイタリアのNo1GKだぁ?やっぱりイタリアサッカーのレベルは大したことないな。

×月∂日
 なんか、最近になって急にチームメイトのディフェンスがきつくなった。みんな、あの時の紅白戦の屈辱を反省して練習を重ねた訳か。いい傾向だ。
 俺の味方は相変わらずヘタレだから、俺がドリブルで切れ込むしかない。厳しいディフェンスに対してさすがの俺も体がボロボロだ。
 しかし、ヘタレな味方のために一人頑張る俺・・・。いい響きだぜ。

△月♪日
 ジェンティーレの奴には、俺の真の力を見せておかなければならないようだ。早速ヤツに勝つため直角フェイントの練習を始めた。これが完成すればセリエAでも成功間違い無しだな。
 練習後、カリメロから手紙を受け取った。
 日本から帰国要請か・・・。なになに・・・、この俺様に「バカ!早く日本に戻ってこい!!」だと?
 賀茂、お前は俺の友達じゃないんだ。なれなれしい手紙を送りつけるんじゃねえ。ボケが。今帰国してセリエAに昇格できなかったらあのおっさんを訴えてやる。
 その手紙には記事も付いていた。読んでみると「主力7人、不出場決定、一次予選敗退のピンチ」?
 何やってんだ、あのおっさん、自業自得じゃねえか。まあいい、イタリアにばかりいるのも退屈だし、日本に帰国してやるか。

 〆月―日
 今日のタイ戦、どうやら俺がいれば楽勝みたいだったから、面白いことをやってみようと思った。タイ戦にわざと遅刻して試合をよりドラマチックにしようというものだ。
 うむうむ、グッドタイミングで渋滞だ。そうこうしてるうちに俺の思惑通り、日本が前半で1−4とタイにリードを許していた。
 そろそろ俺が行かなきゃならないようだ。スーパーダッシュで試合会場にかけつけた。これも試合をドラマチックにするためだ。試合も俺の活躍で逆転勝利だ。
 試合終了直前に逆転ゴールを決めたし、これ以上ない最高のドラマができた。ポカポカゴールを決められた森崎を始め、ヘタレDF陣のみんな、ありがとう。

∞日‖日
 直角フェイントをマスターして迎えたアジア二次予選、俺の活躍もあり、ウズベキスタン、UAEに連勝し迎えたサウジ戦。
 試合には勝ったが、俺はイエローカード累積2枚目で次の中国戦は出場停止になってしまった。
 くそ。早田のやつは1試合2枚のイエローで退場になったのに次の試合では何食わぬ顔で出てやがった。なんで俺だけ・・・。まあいい、次の試合までゆっくり休むか。

@月⌒日
 データ馬鹿の奴が、俺を無理矢理中国ユースの練習場に引っ張って行きやがった。俺は行きたくないって言ったのに。
 畜生。データ馬鹿のせいでケガしちまったじゃねえか。賀茂のおっさんには怒られるし、全く最悪な一日だったぜ。

★月◇日
 その後、アジア二次予選は俺の活躍により全勝で本戦出場を決めることができた。しかし、岬が交通事故に遭うとは・・・。これであのサッカー馬鹿とコンビを組むのが俺になっちまったじゃねえか。
 まあ、そうでもしないと日本がぶっちぎりで勝ってしまうからな。いいハンデになるだろう。
 それより今日はレセプションパーティがあった。こういう場では絶好の機会だ。俺の真の実力を見せるときがきた。俺の本職、リフティングショーだ。
 こういうのを見せると俺の実力を妬むやつがいるかなと思ったら、案の定だ。
 またイタリア人か。弱いやつほどよく吠える。俺も丸くなった。ここはジェンティーレに華を持たせてやろう。俺ってなんて優しい人間なんだ。
 やっと収まったかと思えばまたメキシコの奴らが絡んできた。俺の直角フェイントを見せようと思ったら、本物のサッカー馬鹿と金髪サッカー馬鹿が、
「サッカー戦士の戦場はフィールドの上だけだ!!」
 とかぬかしやがる。
 あいつら二人に俺の見せ場を取られちまった。鬱だ、帰って寝る。

*月〜日
 今日はワールドユース開幕のメキシコ戦だ。
 1点を先制されたロスタイム、コーナーキックのチャンス、キッカーは俺。サッカー馬鹿の野郎、腹を押さえてやがる。よし、あいつをたたきのめすチャンスだ。
 サッカー馬鹿のどてっ腹にクリーンヒット!!流血だ。しかもその後俺がゴールを決めた。最後のワンプレイにも日向があのサッカー馬鹿をのしてくれた。あのサッカー馬鹿をKOして、試合にも勝ったし、最高の一日だった。

』月℃日
 グループリーグ2戦目のウルグアイ戦、試合前、いきなり日向のやつが俺を殴りやがった。
 日向のやつが「次は俺の頬を張れ」とかぬかす。オイオイ、お前はマゾか。と思いつつ俺も思いっきりひっぱたいてやった。
 しかし、仲間達にホモかと疑われかけたじゃないか。日向のボケが。今日はもう寝る。
∝月&日
 今日は予選の第3戦目、イタリア戦だ。俺達は2戦終了時点で予選突破決定だってのに、イタリアは2戦終了時点でもう予選敗退決定か。さすがはヘタレ大国。
 だから俺が言っただろ。弱いやつほどよく吠えるって。日本を馬鹿にするからこうなるんだ。
 やっぱり今日の試合も歯ごたえがなかったな。ジノもジェンティーレもほとんど出てないせいか、新田までもがゴールを挙げやがった。奴らがフルタイム出ていたとしても結果は変わらなかっただろうが。
 ここまでイタリアがひどいとなると、俺のサッカー選手としての価値が疑問視されちまうだろ。
 イタリアよ、口だけ達者なのはもういいから、日本に勝つだけの実力をつけてくれ。

〒月+日
遂にワールドユース優勝だ。しかし、決勝トーナメントに入ってからはサッカー馬鹿の独壇場だったから、特に感慨深いものはない。
 しかしこれからどうしよう。イタリアでやるのは少々飽きてきたし、そうだ、移籍しよう。移籍のオファーは・・・オファーはない・・・。
 しょうがない、今はインテルに残ってセリエA昇格目指してサッカーをやるしかないか。でもただイタリアでやるのもつまらないし、イタリアに帰化してみるのも悪くないかな。


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