来生、滝、高杉自伝『リアル修哲トリオ』


○月×日
 いままでは我慢してきたがついに絶えきれなくなってあの3人に不満をブチまけた 『おい、何でオレだけ仲間はずれにするんだよ、俺も仲間に加えて修哲カルテットにしてくれよ』

 ……場の雰囲気が急に暗くなった、どうやらオレは言ってはいけないこと言ってしまったらしい。
井沢『……いや、あのなんて言うかさ、なあ来生』
来生『ああ、なんつーか……』
 井沢も来生もすごく言いづらそうにしている、すると滝がこう言った

滝一『だってお前ルックスよくないじゃん』
 
 お前にだけは言われたくねえ、デッ歯の癖に。この日以降あいつらとオレとの間に深い溝が出来た事はいうまでもない。特に滝と


○月×日
 今日Jrユースのスタメンが発表された。オレはもちろんスタメン入りだ。サル崎まで選ばれているのが気に食わないが、まあディフェンダーは四人しか選ばれてないから当然か。ふと見ると隅っこの方で例の3人が神妙なツラをしていた。そしてオレが見ていることに気付いたのかこっちに近づいてきた。
井沢『お、おめでとう、高杉』
来生『や、やったな、スタメンゲット』
 ちょっとぎこちないものの井沢も来生も祝福してくれた。だが滝だけは違った。
滝一『ふざけんなよ、何でお前がスタメンでオレがスタメンじゃねーんだ』
 と言って掴みかかってきた。俺はすかさず滝の手を振り払ってこう言った。
『なれなれしいんだよボケ、これからは敬語で呼べザコ』

 めちゃスッキリした。今日は人生最良の日だ。


○月×日
 今日はイタリア戦だ。試合前にスタメンの発表があったのだが、イヤな予感の通り俺はスタメンを外された。松山はともかくサル崎に負けるとは……畜生、これというのも三杉のヤツ『松山はDFにコンバートですね』なんて言うからだ。
 こんな事なら3年前の読売ランドで肘打ちのついでに膝蹴りまでかまして三杉に止めを刺しておけばよかった。今にして思えばあの時の俺は爪が折れて檻に入れられた熊だ。くそう、今の俺ならあいつの心臓を突き破ってもボールを奪ったのに……

 そんな事を考えているとどこからともなく『ククク……』という陰湿な笑い声が聞こえてきた。声のした方を見てみるとやっぱり滝だった。このヤロウ

 俺はいっそのことDF陣が大量失点して俺の株があがらないかなとか思いながら試合を見ていたが、イタリアの攻撃陣は思った以上にヘタレで若島津から点を奪えそうに無い。とか思っていたら後半開始早々カウンターを食らって先取点を奪われた。次藤と早田のアホがあがりすぎたせいだ。
『まったく、経験の浅いヤツを使うからだ、経験豊富な俺様を使っておけばこんなことにはならなかったのに、三上のアホめ』
 おれがおもわずそう呟いたのをよりによって滝に聞かれてしまった。おまけに滝のやつは若林さんに告げ口しやがった。あとで俺が若林さんに説教を食らったのはいうまでもない……。滝めぇ


○月×日
 今日はアルゼンチン戦だ。開始10分でディアスにハットトリックを決められ勝つ見こみがゼロに等しくなったため応援をやめてオレと奴らに若林さんを加えた五人で雑談を始めた。まさに修哲同窓会だ。思えばあの頃はよかった、全国大会を無失点で優勝して静岡に修哲ありと言われたものだ。それが今じゃみんな仲良くベンチウォーマーとはな……。と、そんな事をいいながらしんみりしていると井沢が監督に呼ばれた。どうやらケガした立花兄弟のかわりらしい。ちょっとねたましかったもののオレ達四人は井沢を修哲の代表として快く送り出してやった。友情万歳
 ……余談だが井沢がピッチに出て行く時に滝が『チッ』って舌打ちしたのをオレは聞き逃さなかった。


○月×日
 今日はフランス戦だ。この試合でも井沢は出場した、しかもスタメンだ。正直かなりうらやましかった。滝の奴なんかは
『おい、今日からみんなで井沢をシカトな』
 とか言った。そしたら若林さんがめちゃ怒った。あぶないあぶない、あやうく滝に賛同する所だった。しかしやっぱり妬ましい事には代わり無かったため
『井沢ー ケガしろ〜』
とか思っていたらホントにケガして引っ込んだ。ちょっと複雑な気分だった。その後は昨日と同じように修哲同好会で盛り上がった。正直メチャ楽しかったので試合なんかどうでも良いやと思った。


○月×日
 今日、西ドイツを破ってJrユース大会で優勝した。俺は滝のような(滝一にアラズ)を流した。みんなはオレが嬉し泣きをしていると思っていたようだが真実はそうではない。ケガで引っ込んだサル崎のかわりのDFがオレではなくMFの井沢だった事が死ぬほどくやしかったのだ。
 くそう、結局試合に出れたのはハンブルクとブレーメンとの練習試合の時だけだったな。何の為にヨーロッパまで来たんだ。
 そんな事を考えながら周りを見ると、オレ以上に出番のなかった来生と滝がめっちゃ喜んでいた。来生はまるでVゴールでも決めた時のような豪快なガッツポーズをしていた。滝に至っては出っ歯ズラを下げて両手でピースサインを出してバカ丸だしだった。おまけに何を勘違いしたのかウイニングランでは翼を差し置いて先頭を走っている。  まったく、こいつらにはプライドというものが無いらしい。だが、下には下がいるものだなとか思ってちょっとだけ救われた気分になった。


○月×日
 今日はリアルジャパン7との練習試合、負けたら7名が入れ替わりで合宿から追い出されるのでみんな必死だった。しかしボロ負けした、まあ追い出されるのは俺達ではなかったから良かったものの。オレは
『ロングスローしか出来ないデブは全日本にはいらねーんだよ』
とか言われずに済んだのでとりあえずホッとした。後で聞いてみると来生と井沢も
『点の取れない点取り屋はいらねーんだよ』
『なんの取り柄もないロンゲはいらねーんだよ』
といわれなくてホッとしたと言っていた。フッ、考える事はみんな同じだな。しかし滝だけは違った。
『えっ、オレが追い出されるわけ無いだろ』
 オレ達3人は同時にツッコミをいれた

『ライン際のドリブルしか能の無い出っ歯は全日本にはいらねーんだよ!』

高杉晋吾自伝 『四人目の修哲トリオ』 より


○月×日
 今日は全中大会ニ回戦、相手は名前を覚えるまでもないほどのザコチームだ。当然快勝した。それはいいのだがちょっとムカつくことがあった。来生の奴が
『点取り屋来生哲平、ノーマークを決められなきゃ、一生の恥だ!』
 と叫んだ事だ。別に点取り屋じゃなくてもノーマークで外したら恥だぞ。それ以前に誰がお前の事点取り屋って認めたんだ? 得点はオレや井沢より1、2点多いだけじゃねーか、調子乗ってんじゃねーぞこのアフロヤロウ。


○月×日
 今日は比良戸中戦だった。めっちゃ苦戦したが何とか勝てた。それはいいのだがやっぱりムカつくことがあった。来生の奴が決勝ゴールを決める時
『元修哲の点取り屋、今は南葛の点取り屋だ!』
 と叫んだ事だ。ただ無人のゴールに蹴りこんだだけで何言ってやがんだこのタコ。あの翼ですら苦戦した次藤の股間をスライディングで潜り抜けてパスというオレの芸術的なアシストのおかげじゃねーか。調子に乗ってんじゃねーぞおばさんパーマめ。
 そもそも南葛の得点王はCFのお前じゃなくてMFの翼じゃねーか、どうどうと経歴詐称してんじゃねーよ!


○月×日
 ついにJrユース大会で西ドイツを破って優勝した。それはいいが結局練習試合を通じて一度も出番がなかった、なにしにヨーロッパにきたんだか……。まあFWは競争が激しいから仕方ない、競争率が一倍のDFでスタメンからはずされ本戦では出番のなかった高杉よりはマシだしな、プッ。
 そんな事を思いながらふと来生のほうを見るとヤツは何を勘違いしたのかまるでVゴールでも決めたかのような豪快なガッツポーズをしていた。
『いや、試合で目立てなかったから最後ぐらいアピールしようかと思って……』
 おもわず質問した俺に来生はそう答えた。くそったれ、お前だけには負けるものか。
 そう思った俺は最後のビクトリーランで得意のダッシュ力で先頭を走る翼を追い越し、さらに欽ちゃんのような華麗なジャンプをかましながら両手でピースをして観客にアピールした。
 フフフ、来生はおろか翼達より目立ってるぜ。


○月×日
 Jrユース大会も終わって日本に帰ってきた。残り短い休みに宿題に追われる毎日、そんなとき来生のやつから電話がかかってきた。なんかオレと来生と高杉に関して大事な話があるらしい。
 翌日,来生に指定されたグラウンドにつくとヤツはさっそく話を切り出した。
『修哲メンバーの中で井沢だけ試合に出してもらえた劣等感をバネに特訓してリアル修哲トリオを結成しよう』
 どっかで聞いたような話だな。だが確かに俺達の中で井沢だけが目立っているのは気に食わないなと思って来生の案に賛同した。3人で話あった結果とりあえずは各自バラバラに練習して各々の個性を磨く事にした。オレはライン際のドリブルに磨きをかけるぜ。しかし他の二人は何を磨くつもりなんだ? あいつら個性無いだろ……


○月×日
 あれから2週間後、オレは陸上部に出稽古に行く事によってライン際のドリブルのスピードをさらに増してきた。高杉のヤツはハンドボール部に出稽古にいってロングスローにさらに磨きをかけてきた。
『そんなにロングスローする機会はないだろう』
 と俺がツッコんだら高杉のヤツは『ハッ』という顔をした後半泣きになってしまった。  ウーム、ヤツのたった一つしかない取り柄を否定してやるのは酷だったか。
 まあそれはいいのだが問題は来生だ。ヤツは何を勘違いしたのかアフロヘアーを以前の3倍の大きさにしてきやがった。
『これで目立って監督にアピールしてやるぜ!』

 ……アピールのしかた間違ってるだろ……。ルックスでアピールしてどうする、と思ったが全日本のスタメンはみな個性的なルックスだったな、俺も出っ歯を3倍の大きさにでもしようかな……


滝一自伝 『ライン際のチャンピオン』



○月×日
 特訓の成果を試すため大友中カルテットと試合する事にした。あいつらなら俺達リアル修哲トリオの格好の噛ませ犬だしな。大友中のグラウンドに乗りこんでさっそく試合開始。
 どうでもいいがヤツらは何故か妙にニヤついていた。そりゃ確かに滝の出っ歯ズラは何年見ても笑えるがそこまでしたら滝がキズつくだろう……。
 そんな事を思っていたら俺にボールが回ってきたので俺はこう叫んだ。

『高杉はハンドボールの手首の使い方を学んできた!
滝は陸上部にいってライン際のドリブルのスピードに磨きをかけた!
母校修哲の名誉にかけてこの勝利はわたさん!』
 
 ……なんだか知らんが大友中カルテットがハラを抱えてうずくまったのでそのスキにゴールに蹴りこんできた。俺ってカッコイイ
 しかしよくみると滝と高杉もうずくまっている。まったく、真面目に試合する気あるのかお前等は……


 ……序盤こそ俺の大活躍によってリードしたものの後半に入って何故か大友中の動きが急によくなって押され出した。くそう、俺達の特訓はムダだったのか。
 防戦一方になる俺達、そんな時、浦辺のシュートをブロックにいった高杉の腕にボールが当たってしまった。くっ、これでハンドの反則によってPK、絶体絶命だ。
『くっ、こんな時若林さんがいてくれたら……』
 俺達3人がそう思ったその時!

『まてェ! キーパー交代だァ!』

『な、なにィ! お、お前は!』
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………森崎だった。
『来生!滝! 取ったらパスいくぜ!』
 誰も期待してねーよ!
『ズバン!』
 あっさりPKを決める浦辺、そしてここで試合終了だ。
『やった、勝ったぜひゃっほう!』
 歓喜する大友中カルテット、そして浦辺が俺達にこう言った

『おいお前等、約束どうり明日から俺達のパシリな』

 泣きたくなった、鬱だ。



来生哲平自伝 『俺はてっぺい』


―おまけ―
 Jr.ユース編クライマックス 西ドイツ戦のハーフタイムで
「すいませんねぇ先輩マッサージしてもらっちゃって」とか新田にいわれながら肩・足をせっせと揉む滝・来生とみんなの分のタオルを当たり前のように配っている高杉と森崎の姿はいつも涙なしには見れません。(BY みーや女史)


ハロマ:あのシーンはJrユース編でもトップクラスの爆笑シーンでした。どうせ役に立たない新田の足もんでどうするんだか。これを見てふと気になったのでリアル修哲トリオとSGGK(頑張る方)のJrユース編での活躍を調べてみました

高杉 対ハンブルク戦で若島津の邪魔をする。本戦は出番なし

来生 新田の足をもむ。本戦はおろか練習試合も出番なし。

滝一 新田の足をもむ。本戦はおろか練習試合も出番なし。若林に出っ歯といわれる

SGGK シュナイダーのシュートを怖がらない。本戦は当然出番なし


―おまけ2、滝について―
 無印36巻の感動のビクトリーランのシーン、何故か滝だけ妙に浮いています。スタートの時には真ん中へんを走っていたのに見開きでは先頭に立っています、翼を差し置いて。ポーズもなんか変だし。これはおそらく陽一先生が全員分の絵をいれ終わった後に滝だけ描き忘れた事に気付いて無理やり空いてるスペースに放り込んだからおきた現象ではないでしょうか、あくまで推測ですが。
 まあそれはともかくどんな時でも空いているスペースに走りこむことを考えている滝はほんとに凄いフォワードですね、なんて誉め殺しをしないように。