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日向小次小次郎自伝『猛虎』


○月×日
 今日はいよいよイタリアへわたる日だ。インタビューの時には
「カテナッチオは俺が崩す! 」
 とリップサービスでいきまいてやったが、所詮ヘタレ大国イタリアのプロリーグ如き雷獣シュートをつかうまでもなく得点王になれるだろうな。なにしろ猛虎とまで呼ばれた男だし。

 空港へいくとたくさんの女性ファンと報道陣が俺を見送りに着ていてくれた。フフンさすがは俺、どっかのデブキーパーではこうはいかないぜ。
 だが……
『反町さんガンバって!』
『健さまを応援し隊』
 よく見るとほとんどが俺を見送りに来た反町と若島津のファンだった。ちょっと泣きたくなった。
 しかも若島津達も見送りの品と言って手渡してくれたのがコーラとせんべいだけだった。お前等これついさっきコンビニかどっかで買ってきただろ……。一人あたま100円ぐらいしか使ってねえな、この猛虎をなめていがやる。
 さすがに文句のひとつもいってやろうと思ったが、あいつらの取り巻きがいる上報道陣に
『猛虎! 空港でも大暴れ! 』
 とか書かれてはたまらないから言えなかった、鬱だ。
 こんな下らん物を荷物にしてもしょうがないから機内でさっそく食べる事にする俺。そしたら……
 バシュウッ!!!
 蓋を空けようと力を入れた瞬間にコーラの瓶が爆発してコーラまみれになっちまった。さてはあいつら死ぬほど振ってやがったなチクショウ。怒りのあまり瓶を叩き割る俺。そしたら香さん似のフライトアテンダントが飛んで来て死ぬほど叱られた、鬱だ。


○月×日
 ユーベの練習に初参加した。日本でのつらい日々は忘れてここから始まる俺のばら色のサッカー人生を謳歌する事にするか。
 そしたらなんかしらんが一人なれなれしく
「まさかお前と同じチームになるとはおもわなかったぜ」
 と話しかけてくるやつがいた。俺は引っ込み思案だから勘弁して欲しい。
 よくみたらそいつはイタリアユースのリベロ、サルバトーレ・ジェンティーレだった。こいつは確かヘルナンデスとそろって火野の野郎に潰されたザコだったな。いかにこの猛虎が温厚でもこんなやつにタメ口を聞かては困るぜ。
 そこで俺は
「あァ! 手前なんか眼中にねえんだよジェンティーレ! 」
 と言おうとしたのだが、この猛虎の知能を持ってしてもイタリア語は『私はウサギが好きです』しかマスターしてなかったためついうっかり
「私はジェンティーレが好きです」
 と言ってしまった……。
 
 翌日、練習に行くと俺がホモであるという噂で持ちきりになっていた。チームメイトの9割が俺を白い目で見ている。残りの1割のチームメイトはなんだか怪しい目つきでオレのケツのあたりを見まわしている、死にたい……。


○月×日
 めでたく一軍に上がる事になったので精密検査を受けた。そしたらユーベのフィジコのマッツとか言う男が
「なんだこの体は! ジョカトーレ失格だァ! 」
 とかイチャモンをつけてきた。なんだよジョカトーレって、ジョジョの奇妙な冒険第七部の主人公か? そんなもん失格でもぜんぜんかまわねえだろ。
 わけのわからん因縁をつけられて黙っていては猛虎の名折れ、そう思った俺は生まれ変わったニュー猛虎のワイルドさをアッピールするためにもマッツの襟元をつかんでこう叫んでやった。
「俺はともかく俺の仲間たちをバカにするのはゆるさねえぜ!」
 フフッ、これで俺が仲間思いな所もアピールできて一石二鳥だぜ。
 だが後ろの方からジェンティーレの奴が
「誰もお前の仲間なんかバカにしてねえだろバーカ」
 とか言うのが聞こえてきた。ハッ、そういえばそうだ。ちょっと恥ずかしいぞ俺。ここはマッツの奴をブン殴ってごまかすとしよう。しかし俺が振りかぶった瞬間にカウンターの右ストレートが飛んできて逆に吹っ飛ばされてしまった。鬱だ


○月×日
 今日は俺のプロデビュー戦だった。新技のタイガージェット芯改めワイルドタイガーショットでゴールを量産してやるぜ、とか思っていたのだが俺のマークについたトラムという男はとんでもない奴だった。なにしろ身の丈が楽に3Mを超えている。こんなやつどうやって突破しろというのだ。
 チームメイトはチームメイトで
「よし、いけェ日向ァ!」
 とか言ってけしかけるだけでフォローの一つもしやがらない。トラムのあまりの恐ろしさにちょっと後ろに下がったら
「アァ! 日向ァ! 逃げるのかコラァ! 」
 とか脅してきやがる。俺にどうしろというのだ……。
 仕方が無いから足首がめちゃ痛くなるため封印していた雷獣シュートを使うことにする俺。まずは一発目をトラムのどてっ腹にえぐり込んでやった。
 さしもの伝説巨人も苦しそうにしている、さすが俺。フッ、今度はゴールに雷獣シュートをつきさしてやるぜっ! そして2発目の雷獣シュートを振りかぶる俺、だが……
 バシィッ!
『はれっ?』
 俺の渾身の力をこめた雷獣シュートはトラムの足一本で防がれてしまった。あまりの事に腰を抜かしてその場にへたり込む俺、いろんなものを漏らしていたのはいうまでもない。そして交代が告げられた……

 結局試合は俺の代わりに入ったトレセガの得点で勝利した。くそう、今日はヒドイ日だったな。全然活躍できないし、チームメイトにはボロクソに言われるし、敵の伝説巨人は魔闘気を出して猛獣達の住むサバンナの幻影を見せるし、その中に何故かアルマジロが混ざっていておもわずホンワカしてしまうし……。
 まあいい、いかにセリエAといえどあんなバケモノは二人といないだろう、次の試合こそゴールを奪ってやるぜ。そう思っていたら監督が近づいてきてこう言った。
「おい日向、お前明日から二部な」
 薄暗いロッカールームの中で明日がどっちかわからなくなった、鬱だ。


○月×日
 二部に落とされた俺は同じく二部におとされた翼の野郎の哀れな姿でも見てやろうと思いチームに内緒でバルセロナまでバカンスにやってきた。やっぱり突然の失踪あっての猛虎だよな。
 そしたら翼の奴は二部におとされた腹いせに、いきなり6ゴール4アシストなんかかまして対戦相手を思う存分蹂躙していた。さすが翼だ。しかも相手チームの奴らが半泣きになっているところに
『やっぱり10ゴール10アシストは無理だったか、まあ君達もよく頑張ったよね、二部にしては』
 なんてわざわざ言いにいって止めを刺していやがった。ウーム相手チームの奴らはこれがトラウマになって一生サッカーができないだろうな。無神経で知られる葵真吾の奴もかつて翼のいた南葛にボロボロにされてサッカーをやめようと思ったらしいし。
 それはそうと翼の奴が活躍できたのはオフの時にしっかりと自主錬をしていたからだそうだ。シーズンオフは酒飲んだり合コンしたり雑誌のインタビューに答える為にあると思っていた俺にはちょっとカルチャーショックだった、これからはまじめに練習するとしよう。


○月×日
 バルセロナから帰ってきた俺を待っていたのは鬼コーチマッツの厳しいトレーニングだった。左右のバランスを矯正するためにファミリートレーナーによく似たハードトレーニングをこなす俺。ふと、昔ファミリートレーナーが欲しかったけど貧乏で買えなかった過去を思い出して鬱になったりもしたが、ここは三食昼寝つきなのでもうちょっと頑張ろうと思う


○月×日
 俺にセリエA三部のレッジーナから移籍のオファーが来た。さすがに二部を通り越して三部に落ちるのはこの猛虎のプライドが許さなかったが、ガキの頃あれほどやりたかったファミリートレーナーにもいいかげん飽きてきたし、翼の奴が二部の試合で6ゴール4アシストを決めるんなら俺なら三部だと一試合100ゴールくらい決めれそうだから快くOKしてやることにした。とりあえずレッジーナの食事がどんなのか今からか楽しみだ、おやつもつけてくれると嬉しいなァ。
 宿舎を出て行く時に鬼コーチのマッツが
『帰ってきたらワシにたらふくピザをおごるんじゃぞ! 』
 と恐喝してきた。一部には早く上がりたいがここには2度と戻ってきたくない。


(いそいで作った為表記がおかしな所が多少あるかも知れませんが勘弁してください)ハロマ

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