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大空翼自伝JY編『勝利』



○月×日
 今日はイタリア戦だった。当然勝つには勝ったが見上のへぼ監督が岬を温存していたおかげで苦戦させられちまった。日向の野郎はちょっとマークがついたぐらいで弱音を吐いていたし。エースストライカーが厳しいマークに会うのは当然じゃねーかよっ!
 しかも日向の野郎は俺が必死こいてお膳立てしたチャンスボールをチョコンと蹴りこんで点を取っただけで
『これからは世界一のストライカーを目指すぜっ』
 とか身のほど知らずなことをほざきやがった。お前にゃ無理だ日向。
 しかもなんなんだネオタイガーショットって、ただ思いっきり蹴りこんだだけのシュートにタイガーなんてつけたかと思えば全然変わってねーのにネオって・……バカじゃねーかっ?


○月×日
 今日は試合がないのでイタリア対アルゼンチン戦を観戦した。いくらヘルナンデスがいないとはいえアルゼンチンのエースのディアスとかいう南米版来生君が五点も取った時はビビったぜ。イタリアはサッカー大国と聞いていたが、サッカーヘタレ大国の間違いだったのだろうか? 


○月×日
 今日はアルゼンチン戦だった。南米版来生君が側転、バク転、バク宙からのシュートを決めた時は作者が今泉伸二に変わったのかと思ったが、その後それをさらに上回るスカイラブツインシュートなる超トンデモ技が出てくるあたりやっぱり陽一だなと思わされてしまった。
 その上若島津の奴が浴びせ蹴りで南米版来生君をふっ飛ばしたり、敵DFのガルバンがゴールポストにフライングラリアートをかました時なんかは陽一はちょっとハジケすぎと思ってしまった。おっと、オレは一体何を口走っているのだ。ちなみに当然の如く南米版来生君のアクロバット技もパクらせてもらった、さすがオレ。
 しかし、勝ったから良かったものの、若島津の野郎はなんなんだ? まさか開始10分でハットトリックを決められるとは、森崎でもやったことないぜ。しかもなんだか知らんがその失点はオレのせいみたいに言われてるし。どう考えてもディフェンス陣と若島津が悪いんじゃね―か。


○月×日
 今日はフランス戦だった。なんつーか、相手キャプテンのピエールは試合会場に白馬に乗って現れた挙句にファンの投げ込んだ薔薇を口に咥えて陶酔に浸るような変態だった為ものすごく苦戦させられた。まさかPKにまでもつれ込むとは。しかし、あれは今にして思えば奴の作戦だったのだろう。恐らくアレは48の前振り技の一つ『ベルサイユの薔薇』だな。実際、後半に出されたエッフェル攻撃とかいう技には笑い転げてフォローに行けなかったし。余談だが松山の野郎はエッフェル攻撃というネーミングセンスに感銘を受けて動けなかったそうだ。
 まあしかしいい事もあった。あのザルの若島津が怪我してくれた事だ。これで源三のやろうがキーパーになってくれるぜっ。
 しかし、宿舎に帰ると森崎のやろうが
『若林さんのかわりはこの森崎が務めて見せますっ! 』
 とか身のほど知らずなことをほざいてやがったので
「じゃあ練習しなくちゃね! 」
 といってドライブシュートを森崎の顔面に打ちこみまくって再起不能にしてやった。これで明日は晴れて最強のメンバーで試合に望めそうだ。


○月×日
 ついに西ドイツを倒して優勝した。これで俺達は世界一だっ。たかがJr、それも10数国しか参加してない大会でそんなことを言っちまうのもどうかと思うが、まあ俺の脳内ではそういう事にしておこう。
 表彰式のあと俺にインタビューが来たので
『早田のアホや若島津のザルやその他の役立たずどもに足を引っ張られたり、審判のロコツ過ぎるフランスびいきには苦しめられましたが、俺一人の力で優勝できました。この調子で将来はスペインリーグに乗り込んできて一試合で10ゴール10アシストなんか決めちゃってヨーロッパサッカーの歴史を思う存分蹂躙しようと思います』
 と正直に言ったのだが、通訳した岬の奴が変に気を聞かせて
『みんなと力を合わせたおかげで勝てました。でもヨーロッパサッカーの壁はスゴイと思いました』
 と勝手に直しやがった。畜生。
 まあフランスのホームでこんなことをいったらサポーターに袋叩きにされた可能性も否めなかったからまあいいが。あ、それと、昨日確かに再起不能にしたはずの森崎がケロッとビクトリーランに参加していたのにはビビった。


○月×日
 今日は祝勝会があったのだがその場で嫌なことが起こった。なんだか知らんが松山が俺に
「オレノワザダ、カッテニツカウナヨ」
 とかわけのわからん事を言い出したのだ。
 確かに俺はパクリの天才と名高いが、松山の技なんぞパクった覚えはないぞ。そもそも松山にオリジナル技ってなんかあったっけ? 
 とはいえあまりの松山の迫力に思わずいろんな物を漏らしそうになったのでとりあえず謝っておいた。



○月×日
 今日は俺が晴れてブラジルに旅立つ日だった。しかしなんつーかまたしても鬱になるような事があった。ロコツに見送りに来てくれというのも恥ずかしいからみんなにはさりげなく俺が出発する日をアピールしておいたのだが、結局見送りに来た奴は昨日の晩に電話で知らしておいた早苗一人とは……。
 くそう、日向や三杉はともかく南葛の手下仲間達まで見送りに来やがらないとは……俺って実は人望なかったんだな……。
 バスに乗るとき俺がちょっとだけ涙を流したのは別れの寂しさのせいでないということは言うまでもない。
 あまりにもくやしいから得意の脳内妄想で全日本の手下仲間達を呼び出して見送りしてもらった。
「ガンバレよ翼! 」
「お前なら世界一になれる! 」
「頑張るタイ! 」
「俺の技だ! 」
 おもわず大阪にいる早田や九州の次藤、はては西ドイツにいてどうやっても日本に見送りにくるわけなんかない若林まで召還しちまったけど、それを以ってしても俺の心の傷は癒されなかった。鬱だ、この腹いせは俺が入る事になるであろうサンパウロのチームメイトにぶつけてやる。
 ところで幻になってまで妙な因縁をつけてくる北国野郎はいったい……。



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