若林源三自伝WY編 『SGGK』
 



○月×日
 今日正式にハンブルグとプロ契約した。これで晴れて俺はブンデスリーリーガーだ。弱冠15歳でブンデスリーリーガーになるとはさすが俺。それにしても語呂悪いよな、ブンデスリーリーガーって。


□月×日
 今日はFCケルンと対戦した。相手チームにサイボーグ009のそっくりさんがいたから必殺技に加速装置でも使うんでは? とか思っていたらホントに加速装置でカルツをかわしていたのでかなり笑った。ジャパニメーションもワールドワイドになったものだ。
 しかし笑い転げていた隙にペナルティエリアに突っ込んできたレビンにレビンスペシャルだかなんだか知らん技でオランダ戦で痛めた右手に続いて左手までブっ壊されてしまった。どうやらあの加速装置はセクシーコマンドーの前振り技だったようだ、どんな名前かは知らんが。
 しかし、残った左手までブチ壊されたおかげで大好きなベーゴマも出来やしない、チクショウ、この借りは必ず返す!


○月×日
 最近ボクシングを始めた。拳のリハビリともっともらしい理由を付けたが、本当の所は若島津に対抗する為だ。何しろあいつのカラテ技の前では得意技の闇討ちをもってしてもかないそうにないからな。
 とりあえずサンドバッグに若島津の写真を貼ってぶん殴りまくるオレ。脳内BGMはもちろんあしたのジョーだ。
「サンド、バァッグにぃ〜」
 フフ、この歌唱力を持ってすれば歌手デビューも夢じゃないぜ。
 練習をしていると他のジムメイトになんだかジロジロ見られたけど、まァブンデスリーで大活躍のキーパーさまなら気になっても仕方がないよな。


○月×日
 今日はアジア一次予選最終戦のタイ戦だった。相手は強敵だったが、ピンチにオレ様がさっそうと登場したおかげで劇的逆転勝利をかました。さすが俺。
 しかしまあなんつーか、ちょっとだけやっちまった事がある。森崎のやろうが珍しくっていうか一生に一度のファインセーブをしたのでつい勢いで『お前こそ日本のスーパーガンバリゴールキーパーだ!』とシャウトしちまったのだ。


○月×日
 今日はアジア二次予選初戦のウズベキスタン戦だ。翼の野郎が相手に屈辱を与える為に大ハッスルしたためかなり楽だった。おかげで後半からは両腕を怪我している俺を下げて森崎を投入するという余裕まで見せる全日本。
 しかしこれではまるで『両腕を負傷したオレ>>>>>>>>>>完調の森崎』みたいではないか、ちょっとだけ森崎の事が可哀想になったが、よく考えたらそんなことは日本国民の全員が知っている事だったな、気にして損した。


○月×日
 つ、ついにやっちまった。中国エースの肖の手によって俺のSGGK伝説が崩れ去っちまった。俺の心にポッカリと穴があいちまった気分だぜ。しかしなんていうか、あれは反則だろう。日向のシュートを蹴り返したと思ったらいきなり空中に龍が飛び出してくるんだもん、だれでもビビるって。
 しかもその龍が陽一の画力のせいでよりによって日本昔話調だったんだもん。おもわず腹がよじれて反応できなかったじゃねーかよっ。
 しかし、どんな理由があろうともペナルティエリア外から決められた事には違いない、鬱だ。
 しかも俺が落ち込んでいたら森崎の野郎が
「ペナルティエリア外から決められたくらいたいしたことないですよ。オレなんかしょっちゅう決められてます。あ、でもさすがに相手陣地内から決められた事はないですけどねっ」
 と、慰めるふりをしてトドメを刺しに来やがった。ブッ殺すぞてめえ。


○月×日
 宿舎で落ち込んでいるオレの元に親父から電話がかかってきた。
『よう源三、この間は残念だったな。だが安心しろ、若林財閥の力であのゴールはなかった事にしてやったから、それじゃあ元気でな』
 はて、どうやってあの屈辱的ゴールをなかった事にしたのだろうと気になってこの間の試合のビデオを見てみたら、例のシーンのキーパーが森崎に摩り替わっていた。どうやら後でCG合成をしたようだ、っっても帽子を取り除いただけだが。
 しかしこれはさすがに他のチームメイトから文句がくるだろうと思っていたが、ゴールを奪われた事にされた当の森崎はその後のオレのファインセーブも森崎の手柄にすりかえられていたからむしろ喜んでいやがった、つくずくプライドのない男だ。他の連中も、修哲トリオと高杉はオレの手下だから文句を言うはずないし、翼は自分の勝利以外はきにしない男だし、松山は自分の技以外は気にしない、岬は平和主義者、早田と次藤にはオヤジが金を握らせたらしくむしろ満足そうな顔をしていやがった。
 唯一日向の野郎だけは
『おい、あれは一体どうなってやがるんだ! 』
 と文句を言ってきたが、うっとうしいので3年前のあの時のようにカウンターパンチで黙らせてやった。日向はちょっと涙目になっちまったけど、オレの伝説を守る為だからしょうがあるまい。
 しかしこの場に若島津がいなくてつくづくよかった。あいつだけはどんな買収や恐喝にも応じないだろうから……


○月×日
 めでたくアジア二次予選を全勝で突破した。オレの活躍はどんな風に取り上げられているのか気になってスポーツ新聞を買ってみるオレ。一面は翼の活躍がデカデカと取り上げられていた。まあ当然といえば当然だな。そして、2面の見出しが『SGGK大活躍』だったため期待に胸を膨らませてページをめくるオレ。
 しかしそこにあったのは……

『森崎君のスーパーガンバリセービング!! 全日本の危機を救う!!』

 ……森崎の記事だった。そこにはオレが反動蹴速迅砲を防いだシーンをCG合成して森崎の顔に差し替えた写真がでかでかと載っていたのだっ!

 どうやらオヤジが気を聞かせて合成した例のシーンの後のファインセーブが日本でスポーツ番組の最高視聴率をマークしたとかで森崎はヒーローになっちまったらしい。お、おれがヒーローになるはずだったのにっつ!!
 しかもトドメをさすかのように、3面目の記事は若島津が大会最優秀キーパーに選ばれた事だった。コノヤロウ重要な試合にはいっこも出てないくせに最優秀キーパーに選ばれるとはどういうことだっ。その夜、オレが枕を涙でぬらしたのは言うまでもない。


○月×日
 予選を終えて静岡に帰ってきた。TVはあいかわらず全日本全勝のフィーバーをしている。翼や日向は当然にTVにひっぱりだこだ。だが、オレへの出演依頼は一つもなかった。かわりに森崎のやろうがヒーローとしてTVにでまくっていた。オレはすかさずTVをブチ壊した。


○月×日
 俺は見てしまった。両腕の怪我が完治した事だし、本大会からはオレを起用するようにガモウに言意に行ったら、ガモウがTV局のプロデューサーに金を貰っている現場をっ!
 なんでも若島津の方が顔が良くて視聴率が見こめるから出来るだけ若島津を使って欲しいとの事だった。ガモウの野郎も最初はしぶっていたが、札束を見せられたとたんに態度を豹変させやがった。ブッ殺すぞ手前ら。


○月×日
 今日はメキシコ戦だった。ガモウというかTV局の若島津贔屓のおかげで俺は試合に出れなかった。チクショウ。だがまあメキシコチームに002のソックリさんがいたからもしや……と思っていたらやっぱり空を飛んでくれたのがウケたのでよしとしよう。やっぱりジャパニメーションは偉大だ。
 それに、俺が出ていてもどうせエスパダスが飛び出してきた時にゴールを奪われてだろうからむしろ出なくて正解だったな。「ナイス判断だ若島津! 」とか大声で叫んで大恥をかいてしまった。
 あ、それと森崎の奴が俺がシャウトした後に若島津があっさりゴールを奪われたのを見て笑うのを我慢して苦しそうにしていたのでソーラープレキサスブローを思いっきりブチ込んで楽にしてやった。いままで数多くの必殺シュートをモロに食らいながら怪我一つしてこなかった森崎を一撃でKOしてしまうとは・……やっぱりボクシング特訓は無駄ではなかった。


○月×日
 今日はウルグアイ戦、憎っくき若島津の奴が五失点もして半泣きになった時はスゲー笑った。しかし、実際俺が出てもヘルナンデスから3点も取るような奴らを防ぎきる自信はなかったりする。てゆーかトルネードシュートはスゲー恐い。おそらく2点は取られただろう、ディフェンス陣がどうしようもなく役に立たない事だし。このときばかりはガモウのクサレ采配に感謝した。
 

○月×日
 たまたま監督室を通りかかったらとんでもない事を盗み聞きしてしまった。
 レビンに精神的ダメージを与える為に松山の彼女を車に轢かせるとかいっている。声からすると話しているのはガモウと翼だ。さすが翼、俺の終生のライバルだけの事はある。勝つためにはほんとに手段を選ばんなあ……。
 人としてはこんな非人道的行為は反対すべきなのだが、俺の新必殺セービングをもってしても完調のデストロイヤー相手に無失点で切り抜けるのは難しいから黙っておいた。それに、試合に勝つためとはいえまさか人一人轢き殺さんだろうし、ただの冗談だよなあ……。
 翌日、松山に彼女が交通事故にあって危篤状態になったという電話がかかってきた。
 翼という男の真の恐ろしさをしった。敵に回すと恐ろしいが味方にしても最も恐ろしい男よ……。


○月×日
 今日はスェーデン戦。ついにオレのアッパーディフェンスをお披露目する日が来た。
 アッパーディフェンスはレビンシュート対策ともっともらしい理由を付けてみたが、本当は若島津の正拳ディフェンスに対抗して作ったというのは内緒だ。派手な必殺セービングさえあれば若島津如きにギャル人気で劣りはしないぜっ。
 当然、試合はオレのアッパーディフェンスのおかげで無失点で切り抜け勝利した。ついでにストレートディフェンスもお披露目できて言うことなし。ただ、松山の代わりにボランチに入った赤井とかいう男がテンプルにコークスクリューを受けてカーロス・リベラの如く廃人になったが、まあオレがゴールを割られなかったからどうでもよし。ただ、レビンシュートは顔の正面にあたったはずだが、なんで赤井のテンプルが損傷しているのだろうか。それと、赤井を医務室に連れて行く時の松山に妙な殺気がただよっていたような気がする。「オレのポジションだっ」とか「北国コークスクリュー」とか呟いていたし……。


○月×日 
 スェーデン戦から一夜明けた。昨日の活躍でオレの人気はさぞかし上がってるだろうと思ってネットで評判を確かめてみることにした。とりあえずは2ちゃんサカ板からだな。

 若林逝ってよし(876) 健さまを正ゴールキーパーに復帰させ隊(548) ストレートディフェンスは正拳ディフェンスのパクリ(345) ドイツに帰れデブ(217) SGGKはベーゴマオタ(942)……etc


 ……これ以降は涙で曇って見えなくなった。鬱だ。


○月×日
 昨日の件でかなりやる気がなかったのだが、なんとか今日のオランダ戦も無失点で切り抜けた。まあいかに俺が不調といってもあからさまに雑魚くさい顔のレンセンブリングや自称点取り屋のカイザー(陽一ワールドでは点取り屋はヘタレの代名詞)はては森崎フェイスのクリスマン如きにゴールを許すわけにはいかないしな。
 唯一、クライファートがドリブルでペナルティエリア内に侵入してきた時にはちょっとビビったが、松山が上手い事顔面でカットしてくれたので助かった。
 試合後のミーティングにて松山にその事について礼をいったら
「あれは俺の新技、『北国の軟弱な大地で鍛えたポジティブ荒鷲ディフェンス&地を這うような顔面ブロック』だっ! 」
 とか言ってきた。どうでもいいけど長過ぎないだろうか、技名。
 あ、そうそう、なんだか知らんが若島津の奴が
『これ使ってくれ』
 と化粧品をプレゼントしてくれた。男のオレがこんなもん貰ってどうしろというのだ、彼女いないし。でもまあせっかくだから貰っておいたが。
 だが、後で考え直してその化粧品は舎弟の森崎にくれてやった。森崎は無邪気に喜んでいたな、フフフ可愛い奴だ。


○月×日
 今日は決勝戦、勝ったから良かったもののまたしてもペナルティエリア外からゴールを奪われて心にポッカリ穴があいちまった。だが幸いにもナトゥレーザが空中にいたおかげで、あれは厳密にはペナルティエリア外だが公式記録ではペナルティエリア内からのシュートという事になった。若林財閥の力で。
 あ、あとなんかしらんけど松山がやたらとやる気……いや殺る気をだして、相手エースのサンターナに元木ばりの殺人タックルをかましまくっていた。サンターナが全部避けてくれたから良かったものの、直撃したらさすがに陽一ルールでも一発レッドだぞ、あのタックルは……。
 あともうひとつ、試合にも出てないくせに森崎の野郎が怪我しやがった。なんでも化粧の瓶を落として腱を痛めたとか……化粧の瓶? なんかひっかかるけどまあいいだろう。しかし、至近距離でタイガーオーバーヘッドを食らってもピンピンしているあの森崎が怪我とは……誰かに呪いでもかけられたのだろうか?


○月×日
 いよいよブンデスリーリーグが開幕した。去年はWYでの怪我で棒に振っただけに今年はガンバルぜっ。
 とりあえず第一戦の相手はブレイメンだった。シェスターの
 『ペナルティエリア内に入ってシュートを打つ』
 という斬新な戦略にちょっとビビらされたが、どうにか無失点で乗りきった、さすがはオレ。


○月×日
 カルツが怪我から復帰してきたので、レビンシュート対策のベーゴマキャッチを披露してやることにした。この技は回転するベーゴマを指でつまむ事をヒントに悪魔の回転シュート、レビンシュートをキャッチしようというものだ。自分で言っていてもこの理論はかなり間違っているような気もするが、所詮陽一ワールドなので多分大丈夫だろう、雷獣シュートやレビンシュートも理論はでたらめな事だし。

源三「いいかカルツ、この技のコツはな、ベーゴマの回転に逆らわないようにして同時に……」
??「貴様は神聖なグラウンドにオモチャを持ち込んで何をやっているのだ」
源三「うるさいな、いまいい所なんだか・……ゲ、ゲェー! 監督! 」
監督「前シーズンでまるで働かなかった癖にグラウンドで遊ぶとはいい身分だな」
源三「こ、これはレビンシュート対策の……」
監督「うるさい! これは没収だ! 」
源三「そ、そんなァ!! 」
 お、俺の命の次に大切なベーゴマコレクションが……。
 後に監督と不仲になり俺はハンブルグを出て行く事になるのだが、この時の事が原因である事は言うまでもない。


○月×日
 監督にホサれて暇なので日本に帰ってきた。無断でチームを離れるなんて非常識なような気もするが、雷獣野郎もバカンスにスペイン旅行としゃれ込んでいたらしいので別にいいだろう。
 最近、日本ではベイブレードという新手のベーゴマが大人気らしい。きっとSGGK効果に違いない、さすが俺。
 とりあえず1年ぶりに懐かしい我が家に到着する俺。すると、ジョンの奴が俺の姿を見つけて駆け寄ってきた、フフフ可愛い奴だ。
 しかし、またしてもジョンに眉毛が書き込まれていた。サル崎の野郎、いまだにこんな小学生みたいな悪戯をやってやがるのか。おまけに頭にはパンティーを被っているように見える落書きを書いてやがッた、あいつだけはいつかブチのめす。得意技の闇討ちでなっ!


○月×日
 イメージキャラとしてベイブレードのCMにでも出演させてもらえないだろうかと思ってTV東京に行くことにした。何しろ俺はブンデスリーで大活躍中のゴールキーパー様だ、ちょっと頼めば大喜びで承諾するに違いない。TV局につくとさっそくプロデューサーに話をつけに行くオレ。だが……
 
PD「いやーそれが、丁度今Jリーグで大人気のゴールキーパーにCMに出てもらっている所なんですよ」
源三「な、なにィ! 一体誰が? 」
PD「丁度CMの撮影中なんで見学していかれますか? 」
 ま、まさか若島津のやつじゃあないだろうな……。そんな事を思いながらスタジオの扉を開く俺。そこにいたのはっ!! 。


『オレのようにガンバればベイブレードもサッカーも上手くなるよっ! (ニコッ)』

 ……森崎だった。ショックのあまりその場で固まるオレ。するとオレの姿を見つけた森崎が話しかけてきた。
森崎「あれ、若林さんじゃないですか? 見に来てくれたんですか? 」
源三「も、森崎、これはいっタイ……」
森崎「いやあ、Jリーグでのガンバリが認められてか、CMに引っ張りだこになっちゃって」
 ガンバリって、あいかわらずザルっぷりを披露してるだけじゃねえか……
森崎「あ、そうだ。これよかったらどうぞ。今度発売されるベイブレードの森崎モデルなんですけど」
 森崎の手渡してくれたベーゴマにはSGGKとロゴが入っていた。よりによって。
森崎「じゃあオレはこれからおはスタでベーゴマのお兄さんの仕事があるのでこれで……」
 それもオレがやりたかった仕事だっ!

 誰もいなくなったスタジオの中で、本来なら源三モデルになるはずだったベーゴマを握り締めてオレは泣いた、本気で泣いた。


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