■クロスレビュ番外編 『今年読んだのミステリだけじゃないけど凄い!2003』

 02年12月〜03年11月までに『自分が読んだ作品』で1番良かったのを発表するという企画。ミステリ・SF・ラノベ・恋愛・サスペンス何でもO.K. とりあえず、期間内に読んだ作品の中で『もう無茶苦茶面白かったよ』と言える作品を挙げてみるテスト。
■キセン@未明の研究
■サラ・ウォーターズ 『半身』 創元推理文庫

『絡まる物語はあの指先のように』

 くらくら、堕ちていく魅かれていく、彼女を視ている私が現実を見失っていく――読者もまた、彼女、あるいはこの物語に魅かれていく。ミルバンクの湿った空気を吸い、女囚たちの人生の破片を拾い、シライナの指に絡まった花を視る。そしてシライナを視る。断片はその繋がりを晒すのを拒否しながらひたすら積み重なっていき――その脆弱な塔が崩れ、ひとつの塊になったとき、表出した現実にあなたは、慟哭せずにいられるだろうか?

『語る言葉はひ弱だから、それを尽くして語ろうとする。語りきれないものを』
■合耕@魔法にかかる前
■三田村信行 『オオカミのゆめぼくのゆめ』 ほるぷ出版

『世界中の子供はみんな三田村を読めばいいんだ』

 児童向け短編集。確か子供の頃作家読みしたときに読んだはずなのに内容覚えてなくて、で、今読んだらもうぶっ飛んだ。凄すぎる。これが児童書か。いきなり一家心中の場面から始まる話が子供向け?血が砂になる病気って何だよ。えー、表題作はハードSFですか?本当に、信じられないくらいシビアでシュールで、これは大人も読まない手はない。僕は「生きる時間」の全く救いの無いオチに歓声をあげたね。本当に素晴らしい。拍手。
 
『ちなみに絶版。図書館で読みましょう』
■リッパー@Unlocked Room
■清水マリコ 『嘘つきは妹にしておく』 MF文庫J

『ぼくの妹はふえる一方だ』

 自称”妖精”だなんてうさんくさくて、別段なんの魔法を見せてくれるわけでもない女の子でも、瞳からキラキラ助けて光線を出して君の妹になるよなんて言われたら、そりゃあ妹にだってしちゃうし、一緒に探し物だってしちゃうさ。で、探し物はなんですか? 見つけにくいものですか? 天使の人形ですか? ですか? まあ…、物語の欠片なんですって、散らばってしまった物語の欠片を集めるには、それをもった人たちと心を通い合わせるだなんて、なんておとめちっく…、いえファンタジックな。舞台設定やお話自体も素敵だし、夢からさめてしまうことに対してのスタンスだとか、一緒に探し物をしている楽しさとそれが終わりに近づくにつれやってくるせつなさの描き方がすごく綺麗で、とっても面白い。MF文庫なんて得体の知れないレーベルの中で埋もれさせてしまうにはちと惜しい作品なのさ。ファンタジックなお話が嫌いじゃないならオススメ。っていうかもっと読まれてしかるべき作品。

『そう。そんな嘘つきは妹にしてしまうがいい』
■元@コンバンハチキンカレーヨ再
■秋山瑞人 『猫の地球儀 その2 幽の章』 電撃文庫

『おいおい、これに勝てるミステリってある?』

 今年、ラジオ始めて『メフィっ子です』なんて可愛く愛想を振りまいていてもネタが尽きるってもんで、そんな時は『SFで良いのって何よ?』なんてとりあえずネタは質問して客を食いつかせろっていう卑怯なんだけど、それは本読み仲間として許しておくれ。そんな中で今はなき某DJ氏が『ラノベでね』と薦めてくれたのがこれ。最高。卑怯。号泣。もう目が真っ赤。もちろん『その1』から読んでね。お願いだよ。

『読まずに死んだら成仏出来んよ』
■未成年@炭酸カルシウムガールズ
■アンソロジー 『だれかを好きになった日に読む本』 偕成社

『今すぐ子供に読ませてトラウマを植えつけろ』

 児童向けとしては思い切り過ぎたアンソロジー。どの話も児童文学としては問題を含んだものが多く、中でも川島誠『電話がなっている』はあまりにも衝撃的。大人たちの永遠の命題となっている『性教育』を鼻歌交じりでから切り捨てた姿勢には感服するが、ショックを受けるという意味では、読むのが8年遅かった。

『電話がなっている。君からだ』
■さとる@[Hybrid No.9]
■連城三紀彦 『戻り川心中』 角川ハルキ文庫

『ただのミステリだと思うなよ』

 とにかく文章が綺麗なんだよなあ。するすると読めるのに緊張感があって、小説を読む幸せを感じる。短編の中にいっぱいに詰められた行動や感情や情景の描写が限界に達したところで一気に溢れ出して、どうしようもなくどうしようもないミステリ的な終わり方をするのが最高。こういうの読むともう物理トリックとかいらないなって思っちゃう。

『ただの恋愛小説だと思うなよ』
■もっち@Like A Monocled Cat
■筒井康隆 『残像に口紅を』 中公文庫

『世界が終わります』

 小説世界において文字が消えるということは、同時にその文字によって表される事物の消滅をも意味する。そんな崩壊してゆく虚構の世界を圧倒的な構成力と表現力で描ききった本作は、世界の認識と記号の関係を問う実験小説とエンターテインメントが渾然一体となった、究極のメタフィクションである。ひとつの奇跡と言っても過言ではない。

『世界が終わりました』
■ネコまっしぐら@『調査捕鯨は駄目ですか?』
■鯨統一郎 『タイムスリップ森鴎外』 講談社ノベルス

『文学史を歪めて読んでみよう』

 現代社会に森鴎外がタイムスリップしてやって来た、そんな物語。森鴎外自身が今時の高校生たちの協力を得つつ、なぜ自分がタイムスリップしたのかを突き詰めていく様が、いい感じでミステリっぽく描かれている。後半の解決編に強引なSFっぽさもあるが、それはそれで鯨っぽくて良い。特筆すべきは森鴎外のラップシーン。あれは鯨でなければ書けないものだろう。今年の鯨本の中では一番バランスの良い作品。

『今年は鯨が大漁でした、来年どうなるかが気になります』
■『来年読むのはミステリだけじゃないけど凄いのあるかな?』

 クロスレビュ参加者8人による『2003年ベスト』を発表してもらいました。参加者によって、それぞれの価値観があり楽しみ方があり、そして、読んだ本があります。その中から選ばれた作品達。ただ縛られるのは『期間内に読んだ』という約束だけ。本当に面白かった作品を、面白いと表現出来るのは良いことだと思います。

『読書で何かが見つかれば』 元@12.01.2003