獄門ラブストーリー#2
獄門100%!

〜適当に登場キャラクタでっち上げるんじゃ無かったよ〜

第一話はこちらから


「えーみんなおはよう。今日は先週から言っておいた転校生を紹介する」
僅かにざわついていた教室がしーんと静まり返った。


sect2-1-1 血煙転校生

(あ、さっきぶつかった食パン女…)
教師の言葉に続いて入ってきた一人の女子生徒に鳴海は驚く。女生徒の方は鳴海に気付かず、教師に促され教壇の上に立った。教室にざわめきが広がる。
大人しそうだけれども凛々しい眼差しの、儚げな美少女。額には幾重に白い包帯が巻いてある。
「こ…」「これは…」「あ……あ○波だ!!」
男子生徒たちは机の下で拳を強く握った。
少女の方は教室に広がるささやきも意に介さず黙っている。
「はいはい、みんな静かにしろ。じゃあ、絹さん、自己紹介でも…」
教師の言葉に、絹馬超は初めて口を開いた…
「初めまして、今度関西某府からリハウスしてきました絹馬超です。あんじょう宜しゅうな」
静まり返る教室。絹馬超は思いっきり空振りしたことに気付いた。
(ああ!しもた!やぱし『リハウス』はベタやったんか?てかベタなボケほどツッコミ甲斐のあるっちゅうもんやろが?何しゅんねんみんな?ってそれよりこの場を何とかせんと下手したら明日からあだ名『リハウス』やん、ウチ!しゃあない…)
絹馬超は出来たての額の傷に力を込めた。包帯越しに血が吹き出す。
「ど、どうした絹?!」
騒然とする教室、あわてふためく教師。
「じ、実は登校途中に人とぶつかって額をぱっくり…」
「だ、大丈夫か?って言うか喋るな、トマトジュースでシャンプーしたみたいになっちまってるぞ!」
「あ、あの人です!ぶつかったのって!」
血まみれの絹馬超が指差した先にはもちろん鳴海がいる。
「お前か、岡崎!よし、お前が保健室へ連れてゆけ!」
「え、ええ?!」
「ほら!連れってってんか!」
血を撒き散らしながら絹馬超はつかつかと歩み寄り、動転する鳴海の腕を取って教室から脱出した。

sect2-1-2 廊下

「ごめん。あの時はそんな酷いとは思わなくって…」
「あ、ちゃうねんこれ。ほんまはそんな酷ないんよ。ただあの場の空気に耐え切れんかってん」
保健室の道すがら、頭を下げる鳴海に絹馬超は手を振った。
「でも…」
『聖闘士星矢』並に血を流す絹馬超に鳴海はハンカチを差し出した。
「今朝姉さんに無理やり持ってかされたやつだから清潔だよ」
確かにアイロンがきれいに当てられていて、ほのかに洗濯したての洗剤の香りがする。
「…おおきに」
絹馬超は素直に受け取ると、それで血を拭った。

sect2-1-3 レバノン帰りの保健の先生

「すみませーん。沙蔵先生いますかー?急患連れて来ましたー」
鳴海が保健室のドアを開くと、黒のハイネックセーターに黒のスカート、そして黒のストッキングに真白い白衣が艶かしい沙蔵養護教諭が振り向いた。生徒の間で人気が高い美人教師である。
「ふうん、どれどれ――って今朝の子じゃないの」
「えろうすんません。またやっちゃいました」
「腕が鈍ったのかな?ジャビット本郷の世界戦のカットマンを務めたこの私が…」
ジャビット本郷。Jr.バンダムの世界チャンピオンになったあと二度防衛を果たした名ボクサーである。
「沙蔵先生って一体…」
鳴海の疑問をよそに沙蔵先生は鮮やかな手並みで絹馬超の傷を洗浄、アドレナリンを擦り込むとあっという間に血を止めた。
「これで良し、っと。あとは授業出るなんて言わないでやっぱり寝てなさい」
「はぁい」
絹馬超は大人しくベッドに横になった。突然B'zの『恋心』の着メロが鳴る。
「誰かな?」
沙蔵先生が内ポケットから携帯電話を取り出す。
「はい…ああ、久しぶり、レバノン以来ね…ふ、何言ってるの、今の私は一学校養護教諭よ、もう『国境なき医師団』の一員じゃあ…え、流れ弾で市民が被弾?一発は貫通、一発は…腹部大動脈近くに埋まったままで手が出せない?他のメッサーは?…仕方ないわね、10分、いや7分でいくわ、じゃ」
「あ、あの、沙蔵先生?」
「そう言う訳だから留守番よろしくね。あと二人っきりだからって変な事しちゃ駄目よ」
混乱する鳴海にそう言い残して沙蔵先生は窓から身を翻し外に降り、愛車のSUZUKI GSX750S―刀にまたがると一発でエンジンを掛け、あっという間に砂塵の向こうに去っていった。
「あ」絹馬超が呟いた。「あのセンセ、ノーヘルやん…」
「うん…」鳴海はうなずいた。「でも突っ込みどころは最早そこじゃないよな」

sect2-2 昼休みに現れた学園のアイドル

昼休みになっても帰ってこなかったな、あの二人…。美莉里がそのことを考えながら購買部で昼食を買って歩いていると、廊下で人とぶつかりそうになった。
「あっ!」
「おっと」相手は身軽にかわすと、転びそうになった美莉里を支えた。「怪我はないかい?フロイライン?」
周りから黄色い嬌声があがる。
「PON様よ!」
「元華族で大病院の跡取のPON様よ!」
「学年成績トップクラスのPON様よ!」
「学園歌唱コンクールで『気球に乗ってでこまでも』を歌って金賞をお取りになったPON様よ!」
「反復横とび校内記録保持者PON様よ!」
周りに女生徒の人だかりができる。
「あの、すみませんでした」
「ちょっと待ちたまえ。お詫びに何か…」
早々に立ち去ろうとした美莉里をPONが呼び止めた。
「いえ、そんな…」
「ふふふ、遠慮しないでよShy Girl。そうだな…」
PONは左手の指をパチンと鳴らした。すると彼の後ろに控えていた男子生徒がアコースティックギターを爪弾き始める。それに合わせPONは甘いテノールで歌い始めた。

恋はかけ引き 愛は綱引き トキメキ悟られちゃ non-no-non non-no-non クールにいこうぜ
※見えるだろ 俺たちの船が行く情熱の海 約束の地を目指すLOVE SAILING ※
恋はギャンブル 愛はジャングル 秘めててばかりじゃ non-no-non non-no-non チャンスは今だぜ
※〜繰り返し〜※


PONが歌い終えると女生徒たちのむせび泣く声が聞こえた。失神するものもいる。
「ふふっ、少しはお詫びになったかな?」
「はいとてもじゃあこれで」(←とっても早口で)
「OH!マドモワゼル!宜しければお名前を」
「美莉里と言います。では」
走り出さないように気を付けながら足早に美莉里はその場を去った。

sect2-3-1 学園の貴公子in生徒会室

「今日は彼は?一緒に来なかったの?」
生徒会長のミュンが言う。
「彼って誰ですか?」
美莉里が聞いた。
「ほら、君と同じクラスの、同じ予備校にも行ってる…」
「…岡崎君ですか?」
「そ」
ミュンがうなずく。
生徒会長を任されるほどの人望、正真正銘学年一位の成績、清潔感あふれるルックス、気取らない性格、そして女性と見まがうほどの秀麗な顔。これらが彼をして「学園の貴公子」と呼ばせしめていた。
これに加え彼にはある重大な秘密があるのだがそれは後に明かされるだろう。明かされないかもしれないが。と言うかそもそもそんな秘密などないのかもしれないが。まあいいや。
「さあ、分かりません」
「ふうん」ミュンは微笑むと美莉里に書類を渡した。「これ、保健の沙蔵先生のとこに持ってってくれないかな?」
どうやら他の生徒経由で話が伝わっていたようだ。
「はい」
美莉里は赤い顔を俯いて受け取ると、保健室へ足を向けた。

sect2-3-2 保健室

「はい、お留守番ご苦労様でした」
窓から颯爽と入ってきた沙蔵先生を、鳴海は黙って見上げた。終業の鐘はとっくに鳴っている。
「ごめん、手術が長引いてね」
「嘘だ!何っすかそのパチンコの景品は!」
「ん?患者さんのお見舞いの品を頂いたんだけど」
…絶っ対嘘だ。6時間保健室に拘束されていた鳴海は恨めしげに沙蔵先生を見上げた。絹馬超はぐっすり寝入っている。女の子を一人寝かせたまま教室に帰るわけには行かなかったのだ。
「では、僕は帰ります。一つも授業に出れないまま…」
「気を付けて帰るようにね」
「…はい」
鳴海が帰ろうとした時、保健室のドアが開いた。
「すみません、沙蔵先生いらっしゃいますでしょうか?」
「あ、美莉里さん!」
「あ、岡崎君…」
「ああ、生徒会に頼んでた保健日誌総計?ご苦労様美莉里さん」
沙蔵先生が美莉里の持ってきた書類を受け取ってペラペラめくる。
「あ、そうだ岡崎。眠ってる絹さんに変な事しなかったでしょうね?」
「んな訳無いじゃないですかあー!!」
鳴海は思わず大声になった。美莉里さんのいるところでなんて事言うんだ!
「では失礼しました」
美莉里は頭を下げるとさっさと保健室を辞した。
「ちょっと待って、美莉里さん!」
「そうだ、今日も私、予備校行けそうにないから先生にそう言っといてくれる?」
振り返った美莉里がにっこり笑って言った。
「…はい」
心で泣きながら鳴海は美莉里の後姿を見送った。

sect2-3-3 でんでろ登場!そして愛と運命!

「凪姉さん!」
鳴海の悪友、でんでろが拳を固めてシャウトする。
(でんでろ豆知識:彼の本名は『山野精霊』しかし林間学校で彼が衝動に駆られやってしまった事件以来、誰も彼を本名で呼ぶことは無くなった…)
「待っててね、凪姉さん!」
「恥ずかしいから繁華街で人の姉の名を叫ぶな」
結局自分も予備校をサボった鳴海が言う。
「恥ずかしいだとおおお!!凪姉さんの名が恥ずかしいだとおおお!!」
「いや、恥ずかしいのは俺だから」
「何だそうか!じゃあ早速俺たちの凪姉さんに会いに行こう!」
「『俺たちの』ってなんだよ」
「君の姉は僕の姉、僕の姉は君の姉、じゃないか!」
「でんでろん家は男兄弟だろ」
「じゃあ家の兄弟二人と凪姉さんトレードして」
「いや」
「あ、凪姉さん発見!運命だ、やっぱり俺と凪姉さんは運命の糸で結ばれているんだー!」
え?と思って鳴海が見ると、マクドナルドのウインドウ越しにアサ凪が座っているのが見えた。
「…どういう視力してんだ」
「今行くよ!凪姉さん!」
でんでろが駆け出す。ちょっと待てよ、と鳴海が言おうとすると、でんでろの方で勝手に足を止めた。
「あいつは誰だー!」
「は?」
見るとアサ凪の恋人、赤城が彼女の向いの席についていた。
「ああ、凪の彼氏だけど」
「な、何だとう!岡崎それでも俺の親友か?!」
「いいや」
「……まあいい。ひっそりこっそりあっさりぼんやり、気付かれないように俺たちも入店するぜ!」
「おい、やめろよ」
「大丈夫だ、ちょうど植物のサンプラーが壁を作っている!あの陰からなら気付かれずに会話を盗み聞きできるぜ!」
「そういうことはやめようって言ってんだよ」
「バッキャロー!敵を知るにはまず己からって言うだろうがっ!」
敵を知り己を知れば、と言いたいのか、敵を欺くにはまず味方から、と言いたいのか判別しかねたが、たぶん前者だろう。
でんでろはすでに店内に入って注文している。岡崎鳴海も、仕方なく後に続いた。
中にはいると確かにでんでろの言うとおりである。盗み聞きをするのは気が進まなかったが、どうしても頭から離れなかったのだ。

「凪な、お前の話しかしないんだよ・・・」

今朝の赤城の台詞が。
鳴海はそうとは知らず、自ら「赤い疑惑」に飲み込まれようとしていた…

つづく



次回予告
ズズズズズ…(コーヒーをすする音)おっと失礼、初めまして、作中人物、モテル森の宿屋主人もりです。夜中に杜仲茶が「何で僕ぁこんな張り切ってんだろ?」と自問するほどハイテンションで突っ走ってしまいやがりました。何だこの前回とぜんぜん違うノリは。全く。「赤い疑惑」なんて十代が知ってる訳無いだろ。
さてさて、「突然の激しい夕立をやり過ごそうと静かなモテル「森の宿屋」に立ち寄る二人」とは一体誰と誰になるのか?答えは後続執筆者だけが知っています。
おっと、こんなところに杜仲茶の置き手紙が…何々「PONさんすみません。恨むんならでんでろさんのあみだくじを恨んで下さい」…では、今度は作中でお会いしましょう。次回もあなたのハートにマジカルシュート!