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第9話「翔べ!ガンダム」
脚本・星山博之 絵コンテ・斧谷稔 演出・小鹿英吉 作画監督・安彦良和

ナレーター「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が経っていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。宇宙世紀0079、宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この戦いでジオン公国と連邦は総人口の半分を死に至らしめた。人々はそのみずからの行為に恐怖した」

アイキャッチ「翔べ!ガンダム」

フラウ「三班の方、食事に行ってください」
 「そうそう、アムロにも食べてもらわなくっちゃ」

フラウ「アムロ、食事よ」
ハロ「アムロ、ショクジヨ」
フラウ「アムロ?」
ハロ「アムロ」
フラウ「どうしたの?」
アムロ「なんでもないよ」
フラウ「熱でも」
アムロ「ないよ」
フラウ「疲れてるんなら食事やめる?」
アムロ「サイド7を出てからこっち、ぐっすり眠ったことなんかありゃしない。そのくせ、眠ろうと思っても眠れないしさ」
フラウ「セイラさんに相談してみようか?お医者さんの卵なんでしょ?セイラさん」
アムロ「うるさいなあ」
フラウ「いいかげんにしなさいよ、アムロらしくない」
アムロ「モビルスーツで戦う方がよっぽど僕らしくないよ」
フラウ「この間の戦争で大人はみんな死んでるのよ。年寄りと若い人が戦わなくっちゃならないのはジオンだって地球連邦だっておんなじじゃなくって?」
 「その癖やめなさい」
アムロ「連邦軍は僕達をおとりにしているんだ」
フラウ「おとり?」
アムロ「連邦軍はもっと新しい兵器を開発しているんだよ。それが完成するまでの間、敵の目を引き付けておく。おとりなのさ、僕らは」
フラウ「考えすぎよ、休んでる方がいいわ。食事はとっといてあげる」

リード「ええい、連絡はまだか?」
セイラ「無線入りました」
リード「参謀本部からか」
ブライト「よーし」
セイラ「こちらホワイトベース」
連邦兵A「防衛軍本部、通信解読回路、アルファガイン」
セイラ「アルファガイン、了解」
ブライト「ホワイトベースは敵の戦線を突破して海に脱出することを望む。それだけです」
リード「助けにも来てくれないのか」
 「おい、話はできないのか?参謀本部と」
セイラ「無理です。ジオンの勢力圏内では暗号通信だって危険すぎます」
ブライト「将軍達はなんと思っているんだ?」
リード「現場を知らんのだ、戦場を」

フラウ「タムラさん、お年寄り達の食事」
カイ「だってよう、なんの証拠も俺達には掴めねえだろうに」
タムラ「言いがかりだよ。俺ばかり美味いものを食べてる暇、あるわけないだろう」
カイ「それにしちゃ、お前の顔色がよすぎんだよ」
タムラ「貴様」
カイ「じゃあほんとの事を言うぜ。なぜアムロとリュウだけ俺達の食事より量が多いんだよ?」
タムラ「ブライトさんの命令だ。二人を正規のパイロット並に扱えってな」
子供達「ごちそうさま」
カイ「俺達だって戦ってるんだぞ」
タムラ「兵隊の食事のカロリーは作業量によって決められてんです」
フラウ「ここで言い争わないで、カイさん。ブライトさんなりリード艦長に言うべきだわ」
カイ「まさか」

子供達「ははは」
キッカ「アムロ、いいものあげる。はい」
アムロ「…」
キッカ「頑張ってね」
アムロ「キッカ」
レツ「みんなには内緒だぜ」
アムロ「ああ」
子供達「…」

リード「武器弾薬は底を尽き始めているんだ。今度大きな戦いがあったら支えきれん」
ブライト「わかっています。だからどうしたら生き抜けるのか考えているんでしょ」
リード「生き抜くだけなら簡単だよ、ブライト君」
ブライト「冗談じゃない」
リード「ホワイトベースを捨てりゃあいいんだ」
ブライト「…リード中尉」

アムロ「さっきはごめん」
フラウ「ううん、いいのよ」
アムロ「一緒に食べよ」
避難民A「いいんですか?すみませんね」
フラウ「アムロ、ちゃんと食べなければ駄目よ」
アムロ「だったらこんな所で食べさせるな」
フラウ「アムロ」

ブライト「だったらどうなるんです?今日までの我々の戦いは」
リード「無意味ではなかったはずだ。一人一人戦い抜いていけるという自信はつけたよ」
リュウ「ブライト、艦内の破損個所の応急修理は終わった」
ブライト「ハヤトとセイラは?」
リュウ「ああ、機銃の手入れにまわっている」
ブライト「あ、パトロールを出しましょう」

ブライト「アムロ、パトロールに出動することを命ずる。ブリッジに上がってこい」
 「何をしている?急げ」

ブライト「アムロ、急げ」
アムロ「パトロールしてわざわざこっちから仕掛けることなんてないでしょう」
ブライト「なんだと?」
アムロ「そうでなくたって僕はしょっちゅう戦わされてんだ、嫌ですよ」
ブライト「アムロ」
リュウ「アムロは疲れてるんだ。俺達もアムロをあてにしすぎる。俺とハヤトでパトロールに出よう」

リュウ「…」

リュウ「操縦はコンピューターに任せろ」
ハヤト「は、はい、そのつもりです」
リュウ「よーし、そのまま俺の機にフォローさせるようにコンピューターをセットするんだ」
ハヤト「了解」
リュウ「ん、いた」

シャア「ガルマ、君が行くこともなかろうに。え?」
ガルマ「私には姉に対しての立場だってあるんだよ。家族のいない君にはわからない苦労さ」
 「出撃するぞ、各員」
 「どうした?」
ジオン兵A「敵の戦闘機です」
ガルマ「なに?」
シャア「ガルマ、発進は中止だ。戻れ」
ガルマ「このまま出撃して撃ち落してみせる」
シャア「戻るんだ、ガルマ」

ハヤト「リュウさん、なぜ攻撃しないんです?せ、せっかくガウを見つけたっていうのに」
リュウ「ええい、コアファイターがあと六機もあればガウを攻撃するんだがな」

シャア「30秒前の映像だ。ただのパトロールだ。だとすれば木馬はかなり焦っている」
ガルマ「焦っている?」
シャア「木馬がパトロールを出すなど初めてだ。弱点があるからこそ我々の動きを知りたがっているんじゃないのかね?」
ガルマ「なるほど。小物を相手にせず本命を叩けばいいという訳か」
 「よし、敵のパトロールを追え」

リード「よーし、コアファイターのガンキャノン、ガンタンクへの換装、急げ」

カイ「また棺桶入りかよ」
ハヤト「上に行きます。リュウさん、お願いします」
リュウ「不慣れだから指示してくれよ」
ハヤト「はい」

アムロ「フラウ・ボゥならわかってくれると思ってたけど」
フラウ「わからないわよ。あのカイさんだってガンキャノンに乗るし、覚悟決めた様子よ、みんな」
アムロ「みんなはこれから嫌になるのさ。僕は違う。何回も何回も乗せられたんだ」
セイラ「なあに?フラウ・ボゥ」
フラウ「アムロが駄目なんです、戦いたくないって」
ブライト「なんだと?」
セイラ「ブライト」
ブライト「アムロ、いいか、出撃なんだぞ」
アムロ「戦いが終わったらぐっすり眠れるっていう保証があるんですか?」
ブライト「保証?」
フラウ「アムロ」
アムロ「自分でもどうしようもないんだ」
フラウ「あたし、アムロが戦ってくれなければとっくに死んでたわ」
アムロ「僕だってそうなんだよ。だけど、もう恐いの嫌なんだよ」

リュウ「ふう、無事着地か。カイ、いいぞ」
カイ「よーし」
 「やれやれ、戦力ったってこれだけかよ。え?ブライトさん」
セイラ「すぐガンダムも降りるわ。戦力的には自信を持って。いいわね?」
カイ「へいへい、セイラさんは気休めがお上手で」

ブライト「アムロ、貴様なぜ自分の任務を果たそうとしないんだ?」
アムロ「ブライトさんはなんで戦ってるんです?」
ブライト「…今はそんな哲学など語っている暇はない。立てよ、おい」
アムロ「やめてくださいよ。そんなにガンダムを動かしたいんなら、あなた自身がやればいいんですよ」
ブライト「なに?できればやっている。貴様に言われるまでもなくな」
アムロ「僕だってできるからやってるんじゃないですよ」
ブライト「…」
アムロ「あっ」
 「な、殴ったね」
フラウ「ブライトさん」
ブライト「殴ってなぜ悪いか?貴様はいい、そうしてわめいていれば気分も晴れるんだからな」
アムロ「ぼ、僕がそんなに安っぽい人間ですか?」

アイキャッチ 

カイ「左翼に新しい編隊だ。リュウ、気をつけろ」
リュウ「おう、カイこそ前に出すぎて討ち取られるな」
 「ハヤト、弾は少ないんだ。よく狙えよ」
ハヤト「了解です」

ガルマ「ははははは、シャア、聞こえるか?木馬がなぜ焦っているかわかったぞ」

シャア「ほう、それは幸いだな、なぜだ?教えてくれ」
ガルマ「モビルスーツだ。陸戦タイプのは二機出ているが、例の奴が出ていない。おそらく出られんのだよ。手を出すなよ、見てるんだシャア。私が見事仕留めてみせる」
シャア「見せてもらうよ、君の攻撃のお手並みをな」

ガルマ「当たった。左のエンジンに攻撃を集中しろ」

セイラ「ガンキャノン、ガンタンク、敵はホワイトベースの左に攻撃を集中。援護してください」

カイ「あれか」
 「おっ、こいつら」
 「…」
 「い、いけねえ」

アムロ「…二度もぶった。親父にもぶたれたことないのに」
ブライト「それが甘ったれなんだ。殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか」
アムロ「もうやらないからな。誰が二度とガンダムなんかに乗ってやるものか…」
フラウ「アムロ、いいかげんにしなさいよ。しっかりしてよ」
 「情けないこと言わないで、アムロ。あっ」
ブライト「…、俺はブリッジに行く。アムロ、今のままだったら貴様は虫ケラだ。それだけの才能があれば貴様はシャアを越えられる奴だと思っていた。残念だよ」
アムロ「シャア?」
 「ブライトさん、ブライトさん」
フラウ「アムロ、ガンダムに操縦方法の手引書ってあるんでしょ?」
アムロ「えっ?」
フラウ「あたしガンダムに乗るわ。自分のやったことに自信を持てない人なんて嫌いよ。今日までホワイトベースを守ってきたのは俺だって言えないアムロなんて男じゃない。あたし」
アムロ「フラウ・ボゥ、ガンダムの操縦は君には無理だよ」
フラウ「アムロ」
アムロ「くやしいけど、僕は男なんだな」
ハロ「アムロ、イクノカ?アムロ」
アムロ「うっ…、シャアめ」

ハヤト「リュウさん、敵はホワイトベースしか狙っていません。右旋回願います」
リュウ「おう」
ハヤト「このっ」
 「た、たった一機。対空用の砲弾でなけりゃ飛行機は落とせやしない。あっ」
ガルマ「ビイビ、小物を相手にするな。木馬だけだ、木馬のエンジンだけを狙え」
ビイビ「了解、大佐」
ガルマ「行くぞ、ついて来い」

セイラ「アムロ、ドップはホワイトベースの左エンジンを集中的に攻撃中。対空戦闘、大丈夫ね?アムロ」
アムロ「はい、試してみたい戦い方があります。ガンタンクとガンキャノンには援護を頼みます」
セイラ「伝えておくわね。あてにしてるわよ」

シャア「しかし見事じゃないか、ガルマ大佐の攻撃ぶりは。親の七光りで大佐になった、だけの人物ではないな」
ジオン兵A「少佐、よろしいのでありますか?我々は見ているだけで」
シャア「いいだろう。援護が必要なら呼び出すと言っていたし、下手に手出しをするとプライドの高い彼のことだ、あとで怒られるしな」
 「この距離なら無線は使えるんだろう?」
ジオン兵B「はあ、ミノフスキー粒子の濃度は変わりませんが、このくらいなら音声は入るはずです」
シャア「それならいいじゃないか。私だってガルマに叱られたくないからな」

ガルマ「フン、出てきたなモビルスーツめ。しかし、所詮は陸戦兵器。ビイビ隊はモビルスーツを撃破しろ」
アムロ「なめるなよ。ガンダムにだってジャンプ力とロケットノズルがあるんだ」
ビイビ「ああっ、モ、モビルスーツが、と、飛んだ」
アムロ「そこだっ」
 「一つ」

ブライト「ア、アムロ。ガンダムが空中戦をやっています」
リード「なに?」
ブライト「す、すごい」
 「無線解除だ。セイラ、ガンキャノン、ガンタンクに指令。ガンダムの着地の瞬間を狙い撃ちされないように援護をさせろ」
セイラ「了解」
 「ガンタンク、ガンキャノン、ガンダムが見えて?」
カイ「わかってますよ」

リュウ「アムロの奴、すごいじゃないか。ハヤト、援護するぞ」
ハヤト「了解です。ドップを低空に入れさせなければいいんですね?」
カイ「ドップはこれ以上近づけさせん」
アムロ「8、5、2、0」
ガルマ「モ、モビルスーツがジャンプしている。いや、飛んでいるんだ。連邦軍め、なんてモビルスーツを作ったんだ」
アムロ「三つ。あっ」

フラウ「ブライトさん、ア、アムロがあんな戦い方をしている」
ブライト「ああ、あいつのいいところだ。ふさぎこんでいても戦いのことを忘れちゃいなかった」
フラウ「ええ」
 「アムロ、強くなったわね」

アムロ「こいつ」
 「六つ、次、七つ目」
 「七つ目」
 『隊長機か?』
ガルマ「この化け物が。落ちろ、落ちろっ」
アムロ「こ、これは?」
 「うっ」
 「や、やる」
ガルマ「ガウ、聞こえるか?俺だ。モビルスーツだけを木馬から引き離す。ガウの射的距離に入ったらモビルスーツを撃ち落せ」
アムロ「逃がすものか」
ガルマ「フフフ、ガウのビーム砲の射程距離に入ったとも知らんで」
 「ガウ、撃て、モビルスーツを」
 「聞こえないのか?ガウ、私だ、ガルマだ」
 「どういうことだ?こちらからは確かに発信しているはずなのに」
アムロ「ちきしょう。あっ」
 「しまった」
 「あ、連邦軍の輸送機?」
マチルダ「そこのモビルスーツ、聞こえるか?山を越えるとガウの餌食になる。ホワイトベースに戻れ」
アムロ「だ、誰だ?なんでもかんでも知っているようだが」

ガルマ「こんな汚れでは接触不良を起こして当たり前だろう。技師長、懲罰の覚悟をしておけ」
 「貴様も貴様だ」
シャア「そう思うよ」
ガルマ「レーザースコープで戦いは見ていたはずだ。私の連絡がなくても手の打ちようはあったろう」
シャア「だから、ガルマのプライドを傷つけちゃ悪いと思ってな」
ガルマ「私のプライド?」
シャア「ただ見ていろと私に言っただろ?」
ガルマ「…」
シャア「それにガルマの腕なら、あの程度の傷は難なく切り抜けてくれると信じていた」
ガルマ「…そりゃあそうだ」
シャア「ま、残念なことは敵の輸送機を撃墜しようとした時、ガルマの機と一直線上だったので撃てなかった」
 「すまんな」
ガルマ「いや、わかればいい、シャア」

マチルダ「リード中尉以下のサラミスの乗組員、避難民の病人など35名は引き取ります。ホワイトベース、モビルスーツについてはなんの決定も知らされておりませんので現状のままです。なお、今までの戦闘記録はレビル将軍の命令によりコピーを頂きます」
ブライト「しかし、マチルダ少尉、わかりません。なぜ僕らも船も現状のままなんですか?」
マチルダ「さあ。レビル将軍はホワイトベースが現状の戦闘を続けられるのなら、正規軍と同じだと言ってました。今は連邦軍だってガタガタなのですからね。私だってレビル将軍の依頼でここまで来ただけです。参謀本部とは関係ありません」
ブライト「で、次の補給は受けられるのですか?」
マチルダ「さあ。このジオンの制空権を脱出できれば、なんとか」
 「ともかく、連邦軍にもあなた方を見捨ててはいない人がいることを忘れないでください」
アムロ「マチルダさん」
マチルダ「あなたの戦いがなければ私達もやられていたわ、ありがとう。あなたはエスパーかもしれない」
アムロ「そ、そんな」
マチルダ「頑張って」
アムロ「はい」
ナレーター「一瞬の香りを残してマチルダは去った。アムロにとって、それは始めて知った女性の香りであったのだろう」

次回予告「ホワイトベースを討ち漏らすことはイセリナとの恋に賭けてもできなかった。最後の強襲を掛けるガルマ・ザビ。アムロ達が闇の中に恐怖を見た時、シャアのたくらみがガルマを包む。機動戦士ガンダム、次回、『ガルマ散る』。君は、生き延びることができるか?」
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