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第28話「大西洋,血に染めて」
脚本・山本優 絵コンテ・斧谷稔 演出・関田修 作画監督・中村一夫

ナレーター「ホワイトベースはシャアの攻撃を退けて北アイルランドをあとにした。しかし、その中にシャアの密令を受けた少女が潜んでいた。ミハル・ラトキエ。決してスパイを職業とする少女ではない」

セイラ「アムロ、いいわ」
アムロ「了解です。セイラさん、いきます」
 「失速します、急いでください」
セイラ「大丈夫」
アムロ「ドッキング完了」
セイラ「了解。15秒ジャスト」
ナレーター「アムロの指摘した通りだった。ガンダムからGブルにドッキングする時、左側ががら空きになる。この装甲の弱さをいかにカバーするかが、今後のガンダムシステムの最重要課題といえるだろう。アムロ達は今、大西洋上にあった。目的地は」

アイキャッチ「大西洋,血に染めて」

シャア「思ったより連邦軍の鯨は大きかったようだな」
ジオン兵A「大佐、ブーン艦長から入電です」
シャア「ブーンから?」
 「フン、ブーンめ。スパイを木馬に潜り込ませたか。しかし、どうやって情報を取るつもりだ?」

ブーン「士官室を狙うこと。第一、行き先をつきとめる。第二、木馬の性能に関するあらゆる資料、以上の情報を手に入れるのだ。本朝五時、接触を取る」
カイ「ブライトさん、そろそろブリッジに上がってください」
 「あれ?もう上がってんの?」
 「なんだ?」
 「何が破れたんだろ?」
ミハル「…」
カイ「ううっ」
ミハル「カ、カイさん」
カイ「あ?へへへ、お、おどかしっこなしだぜ。だ、誰ちゃん?」
ミハル「ご、ごめんよ、おどかして」
カイ「ん?あっ、ミハルじゃねえか。なんで?」
ミハル「私、あんたについて行きたかったんだよ。それでこの船に乗ったんだけど」
カイ「じゃあ、そのユニフォームどうしたんだよ?その拳銃もさ」
ミハル「…カイさん」
カイ「わかってるよ。あんなに兄弟思いのあんたが俺を想って来たなんていうのは嘘だってこと」
ミハル「嘘じゃないさ。は、半分は嘘じゃない」
カイ「しっ、俺についてきな」

カイ「俺の部屋だ」
ミハル「…」
カイ「あっ」
アムロ「あ」
カイ「ハハハ」
アムロ「誰です?」
カイ「野暮なこと聞くんじゃねえの」
アムロ「こ、恋人さんですか?」
カイ「ヘッ、そんなところかね。南米で降ろすからさ、みんなには内緒だぜ」
ミハル「南米?」
アムロ「ええ、僕は何も見てませんから」
カイ「すまねえ」
 「よっ」
 「ん?ドアのキーは3986で開く。動くなよ」
ミハル「南米はどこに行くの?」
カイ「宇宙船用のドックに入るんだよ。だけど、これ以上の情報は教えられねえよ。南米に着くまでにホワイトベースやられたりしたら、お互い生き残れねえだろ」
ミハル「うん。そりゃそうさ…」
ブーン「今朝五時頃、腕の無線機で連絡を取る」
ミハル「時間ないな。どうするんだろ?」

マーカー「四時の方向に民間機です。救助信号が出ています」
ブライト「救助信号?確かに民間機か?」
 「フラウ・ボゥ、どうなんだ?」
フラウ「はい、確認しています」
 「登録ナンバーによると、ヴェルデ諸島の漁業組合の飛行機です」
ブライト「よし、うしろのデッキから着艦するように伝えろ」
フラウ「はい」
ブライト「第4デッキ開け。民間機を収容する」

ブーン「ジオンの人間で木馬に潜り込んだのは我々が初めてじゃないかな?」
キャリオカ「はあ」
ブーン「お前は何もしゃべるな」
キャリオカ「は?」
ブーン「ジオン訛りが強すぎる」
キャリオカ「は、はい」

ブーン「よう」
クルーA「急げ、引火するぞ」
ブーン「実は、魚の群れを探してたら、ジオンの戦闘機が冗談半分に撃ってきてさ」
ブライト「いつです?」
ブーン「20分ぐらい前かなぁ」
クルーA「こりゃあ20ミリの不発弾にやられたんだな」
ブライト「応急修理して帰れるだけの燃料は貸します」
ブーン「ありがたい」
ブライト「しかし、そこの部屋以外の立ち入りは禁止します」
ブーン「わかってるって」
 「おい、キャリオカ」
ブライト「修理代の請求書は組合へまわしますよ」
ブーン「フッ、安くしといてね」

ブーン「なあ、請求書を受け取る奴はいるのかな?」
キャリオカ「そうっすね、ヘヘヘへっ」
ブーン「ちょっと、トイレ」

ブーン「トイレを」
ジョブ「ああ、つきあたりを右ね」
ブーン「ども」
ジョブ「そこを右だ。それ以上行くな」
ブーン「ああ」
ジョブ「ま、珍しいんだろうけどさ」

ミハル「…来た」
ブーン「107号、答えられたら音声で送れ。木馬の目的地は?」
ミハル「南米の宇宙船用ドック」
ブーン「よーし、あとは?」
ミハル「まだです」
ブーン「上出来だ。頑張ってくれ」

ブーン「さっぱりした」

ミハル「…」
カイ「何をしていた?」
ミハル「…」
カイ「連絡をつけたのか?」
ミハル「う、うん」
カイ「こんな所で連絡がつけられるって変じゃねえか」
ミハル「そ、そう思うけど。でもこうしてあたし達兄弟食べてきたんだ」
カイ「そりゃわかるけど」
ミハル「め、迷惑かけちゃうね、あたしがスパイでさ」
カイ「まあな。あっ」
 「民間機が着艦したって言ってたな。そうでなけりゃ無線なんて使えるわけねえ」
ミハル「え?」
カイ「いいか、これからあとはあんたとは関係のない事だ。いいな?俺の第六感てやつがあの民間機を怪しいって感じたんだ」
ミハル「カ、カイさん」

カイ「待てっ、その飛行機、待たせろ」
 「ああっ、ありゃあスパイだ、撃ち落せ」
ジョブ「カイさん、どうしたんです?あれはただの」
カイ「馬鹿野郎、こんな時間にわざわざホワイトベースに近づく奴、怪しいと思わねえのかよ、まったく」

カイ「ブライト、ありゃスパイじゃないのか?よく調べたのか?えっ?」
ブライト「一応確認はしたがな。身体検査も。飛行機だって間違いなく漁業組合の物だった」
カイ「し、しかしだな、その飛行機、ジオンの連中がかっぱらったかもしれないじゃないか」
ブライト「カイ、何か証拠でもあるのか?」
カイ「い、いや、こんな時間におかしいからよ」

シャア「うまくいったらしいな」
マリガン「はい」

シャア「アフリカ戦線ではないのだな?」
ブーン「は、間違いなく南米の宇宙船用ドックへ向かいます」
シャア「こっちに来ないのはありがたいが、マッドアングラーはここを動けん。アフリカ戦線の様子も見なければならんしな」
ブーン「私はパイロット上がりです。モビルアーマーをお貸しいただけませんか?」
シャア「グラブロか?整備はしてあるが」
ブーン「仇討ちとは言いたくありませんが、私は四機のモビルスーツを沈められています。やらしてください。モビルアーマーならこっから発進しても木馬をキャッチできます」
シャア「うん、いいだろう」

マーカー「離れませんね。七時の方向に現れてます」
ブライト「潜水艦が追いつく訳ないだろう。ミサイルだけ気をつけて」
マーカー「来ました、ミサイルです」
ブライト「後部ミサイル発射。七時だ」
マーカー「第二波、第三波、続きます」
オスカ「いや、第四波、第五波も下から来ます」
ブライト「潜水艦攻撃だ、全機スタンバイ」

セイラ「アムロ、どう思って?」
アムロ「ええ、敵の様子がわからないと、なんで出動するか問題ですね」
セイラ「そうね」
アムロ「海上ですからガンキャノン、ガンタンクは不利です。そうなると」
セイラ「ミライはモビルスーツが来ると言っている」
アムロ「そう思います。ガンダムとGファイターは分けて」
マーカー「十時の方向に接近する物がある、全員、戦闘体制に入れ。三機接近する物がある」

ブライト「左舷、弾幕を張れ」

ミハル「…ああっ」
子供達「ああっ」

キッカ「持ち上げんの、よいしょっと」
レツ「よいしょっと」
ミハル「あんな子供達がいるの?この船に」

セイラ「Gアーマーのまま発進するわ。空中でボルトアウトしましょう」
アムロ「了解」

ブーン「フッ、捕まえたぞ、木馬め。部下の仇、討たせてもらうぞ」

アイキャッチ 

クルーA「わあっ」

アムロ「うっ、ホワイトベースが」
セイラ「アムロ、ホワイトベースがやられたの?」
アムロ「大丈夫です。ハッチを少しやられただけですから」
セイラ「そう」

フラウ「うっ。弾が当たったのはどこですか?」
マーカー「第2デッキだ」
フラウ「被害状況を教えてください」

ミハル「直撃だったんだわ」
カイ「救命具を着けていろ。死んじゃあなんにもならねえんだから」
ミハル「あんたは?」
カイ「応戦中さ」
ミハル「私にもやらせて」
カイ「できる訳ねえだろう」
ミハル「ああっ」
 「あ、私のせいなんだ」
カイ「お、おい」
ミハル「私が情報を流したばっかりに、カイさん達が」
カイ「お前の情報ぐらいでこんなに攻撃されねえよ」
ミハル「…ごめん、カ、カイ。私が、私があんた達を」
カイ「おい、ミハル」
ミハル「…」

セイラ「アムロ、いくわよ。ガンダム、ボルトアウト」
アムロ「了解」
セイラ「4、3、2」
アムロ「ど、どこだ?あれか?いけっ」
ブーン「フン、来たな、ガンダムめ。水中戦によほどの自信がついたのか、それとも我々をなめているのかな」

ハヤト「コアファイター、パワー90、95、100、120、行きます」

ハヤト「…あそこか」

ブライト「ううっ…。各ブロック、被害状況を知らせろ。カイのコアファイターは発進させることはできないのか?」
オムル「カタパルトをやられてコアファイターが出ません」
ブライト「ガンペリーはどうした?あれには対潜ミサイルが積んであるはずだ」
オムル「あ、そ、そうでした。カイをそっちにまわさせます」
ブライト「フラウ・ボゥ、第3デッキを開かせろ。ガンペリーを発進させるんだ」
フラウ「はい」
 「第3デッキ、ガンペリー発進用意してください。カイさんはどこですか?第3デッキに向かってください。カイさんは第3デッキに」

カイ「お前は逃げやすい所に隠れていろ」
ミハル「みんな戦ってんだろ。私も何かやらしてよ、できるからさ」

セイラ「ああっ」
ハヤト「こいつ、逃がすものか」
 「ああっ」
セイラ「うまい」
 「…一機撃墜」
ブーン「ゴダールのズゴックが?このっ。よし、いけっ」
セイラ「ああっ」
 「し、消火」
 「し、消火終了。ホワイトベースは?」

マーカー「推力、40パーセントに落ちています」
ブライト「わかっている。対潜ミサイル、よく狙って撃つように伝えろ」
 「フラウ・ボゥ、ガンダムはどうだ?」
フラウ「応答ありません、苦戦中のようです」
マーカー「だいたいガンダムは水中戦用の武器は持っちゃいないんですからね」
ブライト「それを言うな」
マーカー「は、はい」

ブーン「こいつ、水中戦闘用の武器に何を持っているのだ?見ていろ」
アムロ「うっ…」
 『駄目だ、海の上におびき出さない限りガンダムに勝ち目はないぞ』
ブーン「このグラブロに対して迂闊に海中に入ったのがお前のミスだよ」
アムロ「うっ、速い」
 「…やはり、ビームライフルのパワーは水中では半分も出ない」
ブーン「おーら、捕まえたぞ、ガンダム」
アムロ「しまった」
ハヤト「しまった」

子供達「わーっ」
カイ「大丈夫か?」
レツ「だ、だ、大丈夫だよ、このくらいさあ」
カイ「よーし、お前らは強えんだ、頑張れよ」
ミハル「カイ、私にも戦わせて。弟達が助かってあの子達が死んでいいなんてことないもん」
レツ「キッカ、しっかりしろよ」
キッカ「…」
カツ「キッカ、まだ火が出てんだぞ」
ミハル「このままだったらまたジオンに利用されるだけの生活よ。それにもう、ただ見てるだけなんて私たまんないよ」
カイ「だってなあ、お前は」
オムル「カイさん、発進してください」
カイ「ああ。ジョブはどうした?」
オムル「機銃から手が離せません」
カイ「一緒に来い。爆撃手はいるんだからな」
ミハル「えっ?」
カイ「ミサイル撃つぐらいできんだろうが」
ミハル「う、うん、教えて」

ブーン「はははははっ、モビルスーツといえどもどうだ、グラブロのパワーの前には赤ん坊同然よ」
アムロ「クッ、このっ」

カイ「スコープの十文字に敵の光が合ったらミサイルを撃つんだ。いいな?」
ミハル「うん、わかるよ」
カイ「あそこだ」

ハヤト「弾もミサイルもなくなった。カ、カイさん、頼む」
カイ「了解」

カイ「レバーはひとつずつ押すんだ。落ち着いてな」
ミハル「う、うん」
カイ「はずれ、次」
ミハル「…」
カイ「うわっ」
ミハル「わあっ」
カイ「ミハル、撃て、撃てっ」
ミハル「…カイ、レバー押しても発射しないよ」
カイ「なんだと?こんな時に」
 「だ、駄目だ。今の攻撃で電気回路がやられたな。チッ」
ミハル「どうしたらやっつけられるの?」
カイ「カタパルトの脇にあるレバーが動かせりゃいいんだが。ミハル、どこに行くんだ?」
ミハル「カイ、カタパルトの脇にレバーがあるんだろ」
カイ「ミハル、危ねえぞ。うわっ」

ミハル「あっ」
 「こ、これか」

カイ「ミハル、いいか、ちゃんとやらねえといけないんだぞ。わかってんのか?うわっ」

ミハル「ああっ」
 「…カイ、当たるように飛行機を」
 「ハハッ、カイ、むこうから来てくれたよ」

カイ「やったあ。ミハル、やったぞ」

ブーン「フフフフッ、もう一息で。む、もう一機のズゴックもやられたのか?チッ」
 「だあーっ」
アムロ『ガンダムの足をちぎったのが間違いだったよ。動きやすくしてくれた』

カイ「おいミハル、どうしたんだ?上がってこいよ、ミハル」
フラウ「カイさん、気をつけて。着艦よ」
カイ「おう、了解」

ブライト「ミハルがいなくなった?」
ジョブ「ええ。ガンペリーでカイと一緒に出撃したらしいんですが」
ブライト「誰なんだ?知っているのか?」
ハヤト「いいえ、知りません」
 「ねえ」
セイラ「ええ」
カイ「…」
アムロ「密航者だったんです」
フラウ「密航者?」
ブライト「知っていたのか?」
アムロ「いえ。カイさんの部屋に女の人が入るのを見たんですけど、すぐ敵が来たもんで」
カイ「…ミハル、いなくなっちまって…」

ミハル「あんたと会えてよかったと思うよ。ジルとミリーかい?はははっ、あの子達なら大丈夫さ。私達よりずっとうまくやっていけるって。いつまでもこんな世の中じゃないんだろ?ね、カイ」

カイ「なんで死んじまったんだーっ」

次回予告「連邦軍本部ジャブロー。シャアの指揮する猛撃の中、アムロはマチルダのいいなずけに会う。戦争は一人の命を、一人の怒りを、一人の悲しみを、容赦なく破壊する。機動戦士ガンダム、『ジャブローに散る!』。君は、生き延びることができるか?」
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