
王様と社長の間
3・王様、社長との関係ノ巻
俺が目を覚ますと、海馬邸の裏口だった。
さては寝ている間に運ばれたな。案の定、海馬から奪った護身用銃は無かった。
相棒はぐっすり夢の中だから、俺自身が表に出たまま寝ていたのか・・。
何も、裏口に出さなくてもいいじゃないか。風邪を引いて相棒に怒られるのは俺なんだからな。
意外に早く追い出されたので、特にすることもない。
このまま家に帰ってもいいのだが帰って早々、相棒の母親に尋問責めされるのは
分かり切っている。しかたない、一度学校に引き返すか。
海馬邸に入る前に(これを家宅侵入というらしいが)鞄は草陰に隠しておいたので
そいつを見つけ出し、俺は学校へ戻った。
「よお、遊戯帰ってきたか。」
学校は昼休みになっっていた。そういえば、まだ昼食をとってないな。
「飯、まだだろ。喰おうぜ。」
「ああ。」
相棒はまだ目覚めない。相当疲れていたのか?それとも・・
昼の教室は休み時間よりも賑わっていた。スピーカーから流れるBGMが
聞こえないくらいだ。俺たちは空いていた窓際へ席を移した。
「遊戯、授業サボってどこ行ってたのよ。」
「海馬くんの家?それとも海馬コーポレーション?」
杏子と漠良が交互に問いかけてくる。まったく、俺としては黙って食えといった
感じなのだけどな。育ち上、それはできないことなんだろう。
「海馬邸に行ってきたぜ。」
「フーン。なにしてたの?海馬くんに会ってきたの?」
そんなこと答えなくても当たり前だ。
どうしてこいつに俺のしたことを話さねばならないのだろう。
まったく、千年リングがあってもなくても鬱陶しい奴には変わりない。
俺はポーカーフェイスを保っていた。
「ああ、どうやら本当に頭を打っていたらしいな。」
「ヤローはなんかおかしかったのか?」
城之内くんは海馬のことが嫌いだ。だが今はその単細胞の脳が
海馬嫌いの記憶を剥ぎ取っているようだぜ。感心するよ。
まったく、うらやましい限りだぜ。
城之内くんはもう食べ終わり、ペットボトルの茶をまさに
飲みほそうとしていた。それにしても食べるのが早くないか?
今日の君の昼食はいたってふつうにあったはずなのに、
食べ始めてから5分とたっていないのだが。まるで食べたものを
茶で飲み流している・・・といった感じだぜ。
「いいや。いつもどうりだった。」
「よかったわね。」
何が良かったんだ杏子。どちらかというと俺は海馬が頭を打って少しでも
常人に近づいていればとほんの少し期待していた方だ。まあ、その期待も
みごと玉砕されてしまったが。
俺はこのくだらない会話に終止をつけたくて、結果だけを述べた。
「とりあえず、海馬と寝て、それからここに戻ってきた。」
ブハッ
城之内くんが口に含んでいた茶を吹いた。周りの連中共までもが
静まりかえってしまい、スピーカーから静かに流れるBGMが聞こえてくるほどだ。
こういうのを・・・鶴の一声。というのか?
いまいち日本語がわからない時があるから、後で相棒にでも聞いてみるか。
「そ・・そうなんだ。」
杏子が何故か引きつっている。城之内くんがあわてて俺に何か問いかけようとしたようだが
本田くんに連れ去られていってしまった。皆もこの後、何も言ってはこなかった。
いや、何か言いかけるのだが。言葉にまでは出せないらしい。
言いたいのなら遠慮無く俺に言えばいいじゃないか。しかし、隠し事をされたような
もどかしさは気になる処だな。なんなら闇ゲームでなんでもかんでも心の中の思いを
口にしてしまう罰ゲームでも与えてやろうか。
居心地の悪くなった午後をこのまま過ごすことなく、
昼過ぎに目を覚ました相棒と再度交代したため
その後のことは何もわからなかった。
王様と社長の間 完。 もどる