
| 発言者 | 音声 | 映像・テロップ | 備考・メモ |
| ナレーター | 父親の腕に抱かれた男の子。今この子が発する言葉に大人たちが心を動かされています。 ○○○○君(以下R君とする)11歳。重度の脳障害を抱えながら多くの詩や文章を著して来ました。 R君が考えを伝える唯一の方法は、母親が読み取る文字盤です。 この日、R君の著作に心を癒された大人たちが、対話を求めてやってきました。 | 2001年11月 | |
| 女性 | あの、心の世界ことを書いた本の中に、痛みを苦しみに変えなければいいんだよねという言葉があったんですけど、それってどうしたらそんなことができるのかな、と思って | ||
| R君 | 痛い時とか 苦しい時は その一瞬でしょう それを思い続けるから 苦しいわけですよね なら まず 自分から 幸せになっていくことで 余裕が 生まれますよね 自分でできるには 一人ヨシヨシという 方法があります 私が名付けました 鏡見て 「かわいい 今日もかわいいね がんばってるね私 いい子だね」って―― 言い続けてあげると いいんです | ||
| ナレーター | 自ら立つこともしゃべることも出来ない男の子 その言葉がなぜ大人たちの胸を打つのか そこには脳障害という運命を受け入れひたすら前向きに生きる姿がありました。 | ||
| 奇跡の詩人 11歳 脳障害児のメッセージ | |||
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| ナレーター | R君は6歳のときから数々の本を出してきました。 詩やエッセイ、日常に押しつぶされてしまいそうな大人たちへの暖かい思いやりにあふれています。 | (今までに出版された本を映す) | |
| 朗読 | 流れるは水 漂うは風 ただ一瞬のうたかたの夢なれば とどまることなく過ぎるのが愛 夢のはざまに想いだけが残り 行き場を失った子供のように ふらふらと漂い、流れる 苦しむことは何もなく つらいことも何もなく ただそう思う心が存在するだけ あなたは あなたを愛するだけでいい | (イメージ映像) | 『流奈詩集』より |
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| ナレーター | ○○市北部にある市営住宅です。 R君は3DKの部屋に家族4人で暮らしています。 R君はだれもが幸せになれるということを訴えたいと原稿用紙200枚のエッセイを書き始めています。 | 神奈川県横浜市 | エッセイ=講談社刊『ひとが否定されないルール』 |
| (R君:違いは何か、しっかりと認識したとき、私は経験の) | 『ひとが否定されないルール』P186 | ||
| ナレーター | 母親の○○さん(R君の母親)。 R君の指す文字を最も早く読み取ることが出来ます。 父親の○○さん(R君の父親)。 R君の世話に専念するため3年前勤めを辞めました。 ○○さん(R君の母親)ほど上手く文字盤を読むことは出来ません。 | ||
| 去年1月には妹○○ちゃん(以下Sちゃんとする)が生まれました。 R君が今回執筆を思い立ったのは、Sちゃんが大きくなったとき世界が幸せで溢れて欲しいという願いからです。 | |||
| R君の考えを唯一表現する方法が、五十音や数字を配列した文字盤です。 | |||
| (R君:他力本願) (R君:ことだと私は認識しています。そのために…という言葉がありますが) | 『ひとが否定されないルール』P181 | ||
| 腕を大きく動かそうとするとコントロールを失ってしまうR君。 手首の小さな動きで動かしたい方向を補助する人に伝えます。 R君は動きを助けてもらうことで、文字を素早く正確に指せるのです。 | |||
| 脳障害のR君は息を上手く吸い込めません。 そのためタイマーで時間を計りながら深い呼吸を覚えるためのマスクを頻繁につけます。 | |||
| (R君:言っているのではありません。私にとって) | |||
| ナレーター | R君の言葉をパソコンに入力するのは父親の○○さん(R君の父親)。 とーちゃんを略してトチと呼ばれています。 | ||
| R君 | 何というアバウトな会でしょう。(R君母笑う) | 『ひとが否定されないルール』P178 | |
| 母 | アバウトな会… | ||
| ナレーター | ○○さん(R君の父親)はパソコンの国語の辞典を使って意味を調べ始めました。 | ||
| 父 | (アバウトの意味を読み上げる) | ||
| R君 | いちいち私の言うこと調べんなよ。(R君母笑う) いいんだよ。私が使うんだから。合ってるの。 カタカナ嫌いなんだから。もう。 | ||
| ナレーター | 今回R君は自分のことをこう記しました。 | ||
| R君 | 私は混沌の中にいました。この混沌が | ||
| 朗読 | 私は、混沌(こんとん)の中にいました。 この混沌が秩序あるものに 変化していくのを 私は体で 感じることが出来ました。 私がまだ肉体的に 混沌の状態でありながら、 精神的には 混沌の中に残らずに すんでいるのは、 私が言葉を伝えるすべを 得たからです。 | (イメージ映像) →(部屋、文字盤指しに映る) | 『ひとが否定されないルール』P19 |
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| ナレーター | 1990年2月、R君は腸がお腹から飛び出した状態で生まれました。 3度にわたる緊急手術の結果、R君は奇跡的に命を取り留めることが出来ました。 しかし、脳には大きなダメージが残りました。 | 1990年2月 | |
| この黒く見える部分は空洞です。 血液が十分行き渡らなかったため、脳細胞の一部が壊されてしまったのです。 | 脳の断層写真 | ||
| 体の自由が奪われたR君、両親は脳障害は回復すると信じて出来ることはすべてやろうと決意します。 母親の○○さん(R君の母親)は、人手のかかるリハビリを行うため、ボランティアを募りました。 | |||
| 脳障害を持つ3才の男の子の訓練を手伝ってくださる方を募集しています。 報酬はR(R君のこと)の成長だけです。 Rはまだ歩けません。 Rはまだしゃべれません。 でも あなたが手伝ってくだされば 奇跡が起こるかもしれません。 助けてください お願いします | (当時のチラシ) | ||
| ○○さん(R君の母親)の呼びかけは口コミでも次々と伝わりました。 集まった人は100人を越えました。 | |||
| 両親が始めたのはアメリカで開発されたドーマン法というリハビリです。 これは腕や足を交互に動かし、刺激を脳に送ることで、運動中枢の回復を図ろうとするものです。 筋肉のこわばったR君にとって、このリハビリは大きな苦痛を伴います。 ○○さん(R君の母親)はR君の苦痛を少しでも和らげてあげようと、いつも歌を歌いつづけてきました。 | ドーマン法 | ||
| 運動面のリハビリと同時に、知性面でのトレーニングを重視するのがドーマン法の特徴です。 両親はR君が3歳のとき、文字をカードに書いて見せ始めました。 押入れには当時作ったカードが今も大切に残されています。 父親の○○さん(R君の父親)が、漢字や数字を書いたカードを毎日作り、母親の○○さん(R君の母親)がR君に見せました。 大人でも使わないような難しい漢字。そして数式。カードの内容は次第に高度になっていきました。 | |||
| 母 | これは絵ですね。たとえばこういう美術の絵を10枚ごとに(略) 聖家族とか、もっと早いんですけどこれくらいのスピードで、あの読んでいくんですよ、こう早く。その後、これを後ろの字を見せて題名と絵を両方覚えるという形でやっていきます。 これが絵だけでなくて、これは取ったのがたまたま絵だったんですけど、えーと、あらゆる分野… | ||
| ナレーター | 意思を表せず沈黙を続けるR君。両親はきっと理解していると信じてカードを作りつづけました。その数は2万枚にのぼります。 カードを使い始めて2年。R君が5歳になると両親は新たな挑戦を始めます。 文字盤を使って意思の疎通が図れないかと考えたのです。 最初の文字盤は今のものより2倍も大きなものでした。 しかし、○○さん(R君の母親)が補助しようと頑張っても、R君の手は文字盤の上を滑るばかりでした。 | ||
| 訓練が始まって3ヶ月の95年10月20日。 夕食後○○さん(R君の母親)はいつも通りR君と文字盤の練習を始めました。 奇跡はこのとき起こりました。 R君の指がはっきり文字を指したのです。 | 1995年 | ||
| わたす(文字盤のわ・た・すの文字を順にクローズアップ) | |||
| 何を?と○○さん(R君の母親)は聞きました。 | |||
| さかな(文字盤のさ・か・なの文字を順にクローズアップ) | |||
| 誰に? | |||
| ぱぱ(文字盤のは・゜・は・゜を順にクローズアップ) | |||
| 母 | 夫が帰ってきてすぐに、もうR(R君のこと)がねー、そういったの。「渡す魚」って言ったのよ。あなたに食べて欲しいって言ったの。って。 なんかね、気持ちが育ってるでしょ。自分の美味しかったものをパパにあげたいっていう。なんかね、あれはすごく、感動的でしたね、やっぱり。ちょっと。あれはちょっとドラマみたいに感動的な。うーん。 | ||
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| ナレーター | 文字盤を使えるようになって間もないころのR君です。 R君は文字盤の配列を覚え、見なくても文字を指せるようになっています。 しかし、○○さん(R君の母親)はどう補助していいかまだ要領を掴めていません。 | 1996年 | |
| 母 | 彼は私、に? 彼は私に? いいま、までいい? | (この部分の映像は5/10土曜スタジオパークでも使用) | |
| ナレーター | 沈黙を破って意思を伝え始めたR君。 両親はその言葉を全て記録することにしました。 ある日○○さん(R君の母親)はR君の言葉が詩のような響きを持つことに気付きました。 母親に勧められて、R君が5歳のとき初めて作った詩です。 | (FCによる言葉を書き留めたノート) | |
| 朗読 | 夢見る山の花達 私の山はたまにとても寂しい 山の花がなくなってしまうから 私が来るのを待っている 私の山は 楽しくなるのを待っている みんなで行こう、楽しい山へ 花は待っている 山は待っている | 『はじめてのことば』より 「夢見る山の花達」 | |
| ナレーター | 脳障害のため耳が過敏なR君が静寂に包まれた山へ行きたいという強い思いを綴ったのです。 | ||
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| ナレーター | 文字という新たな道具を得たR君は今度はさまざまな知識を吸収していきました。 | ||
| 母 | これはねえ一応,書くのがめんどくさくなってねえ | ||
| ナレーター | これまでR君が読破した本の背表紙のコピーです。小学校の教科書から大学レベルの専門書までおよそ2000冊。哲学から天文学まで関心はあらゆる方面に進みました。R君は6歳のとき文字を通して世界が大きく広がる喜びをこう詩にあらわしています。 | ||
| 朗読 | 『文字』という法則。 乾いた空気。のどを抜ける。 潤いがほしい。 ジュースの香り、 果物のしぼり汁。 かすかに湧く希望のように、 脳いっぱいに広がる フルーティーな光。 のどを潤すジュースと同じだ。 『文字』、 脳に行きわたるジュース。 | 『はじめてのことば』より 「脳にいきわたるジュース」 | |
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| ナレーター | R君が混沌と呼ぶ自由にならない体。一日のほとんどの時間はリハビリのために費やされています。これは立つことの出来ないR君が歩くときの足の運びの感覚を身につけるリハビリです。R君の体には寝ている間にも機械が取り付けられます。胸を規則的に圧迫して、乱れがちな呼吸のリズムを整えようというものです。 | ||
| ナレーター | 朝起きてから夜寝るまでびっしりと詰まったリハビリのスケジュール。R君がこうした厳しい井訓練を続けてこれたのは大きな夢があるからです。 | ||
| 父 | R自身(R君のこと)に言わせるとやっぱり自分の口でしゃべり、自分の足で歩くこと、って言ってますね。私たちもまあそれが大きな望みではありますね。それにつきますなあ。まああとRは冗談めかしてオリンピックの入場行進みればオリンピックに出たいとか、正月の箱根駅伝みれば優勝した大学に入りたいとか、R自分で今こうして体動かすのが、今、大変苦手というか、うまく行かないわけですけど、全然自分にそういう線、限界の線を引いていないみたいですね。 | ||
| ナレーター | どこまでも自分の可能性を信じるR君。その前向きな生き方は両親が自分を育てるためにとった方針から生まれたといいます。 | ||
| 朗読 | 私は条件をつけずに愛されました。 このまんまの私を受け入れてもらえました。 脳障害であることは大変ではあるけれど、 私の存在を否定する材料にはなりませんでした。 | (父親のPCのディスプレイ) | 『ひとが否定されないルール』P210 |
| R君 | そしてそこから、始められた、私は、それ以後もだれかと、比較されたことはなく、テストをされたこともなく、きのうの自分より、あしたの自分が優秀になっていれば、いいという思想のもと、育てられました。 | 『ひとが否定されないルール』P210(朗読部分の続き) | |
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| ナレーター | 執筆を始めて一ヶ月半。R君の元へ出版の担当者が訪れました。これまで仕上がった原稿の感想を伝えるためです。今回本を出したいというR君の希望を受け入れたのは東京にある、大手の出版社でした。出版の責任者がR君と直接会うのはこの日が初めてです。 | 東京にある大手の出版社=講談社 | |
| 編集者 | よろしくこれからいろいろとお願いします。 | ||
| R君 | はじめまして、あらためて。こんにちは。 | ||
| 編集者 | 普通の人には書けない文章ですよね、これは。ものの見方というか、あの、 | ||
| R君 | 子どもなので、トクです。 | ||
| 編集者 | 立ってる立場ってのが全然違うんでしょうね。だからこれは本当に、誰かが書いてる文章とはとても…普通ではとてもかけない文章ですね。僕たちの想像を超えた点から書いてるとしか思えない。 | ||
| R君 | 上手です、作家をのせるのが。 | ||
| (一同笑う) | |||
| R君 | 私を、否定しない、環境があっただけです。 | ||
| 編集者 | 自分を否定された事が無いなんていい言葉ですね。 | ||
| R君 | とてもすばらしい環境です。世の中にはそんなものじゃないと言う方もいますが、そうではなくて、そのように否定しない世の中をつくるように向かえばいいだけなのです。夢を実現したいという思いが人を発達させると信じています。今でも、これからも。ずっとです。細かい事も意見として言っていいのですか? | ||
| 編集者 | それはどんどん言ってください。 | ||
| R君 | 写真はかわいいのを選んでください。 | ||
| (一同笑い) | |||
| 編集者 | それは当然 | ||
| R君 | 見せてもらえるとうれしいですが。 | ||
| 編集者 | それは当然お見せしますよ(笑) | ||
| (あいさつをして編集者が帰る) | |||
| ナレーター | 人を否定したり自分を人と比較する事をやめれば誰もが幸せに暮らすことができる。それをテーマにR君は書き続けています。 | ||
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| ナレーター | R君たちはボランティアの○○さん(以下Yさんとする)のお宅に招待されました。Yさん一家は忙しいR君たちのために時々食事を用意してくれます。5年前からボランティアをしている○○さんと娘の○○さん(以下Hさんとする)です。HさんはR君と同い年です。 | ||
| R君 | Hさん、今度学校の勉強の話しよう。 | ||
| 母 | ハハハハおかしい(笑) | ||
| ナレーター | R君は養護学校に席をおいていますが通学はしていません。地元の小学校に通うHさんは、学校や遊びなど、同年代の子供たちについて、直接知ることができる数少ない友達です。 | ||
| R君 | ねえねえHさん一緒に勉強しない? | ||
| Hさん | う〜ん。 | ||
| R君 | 一週間に一回学習日つくってやろう。 | ||
| (R君ママ笑う) | |||
| R君 | 通信教育の教材があるぞ、たのしいよ結構、付録あげるよ。 | ||
| Hさん | 付録はいらんよ。 | ||
| R君 | 最後のテストあり? | ||
| Hさん | 何が? | ||
| R君 | まだ無い? | ||
| Hさん | まだ無い。 | ||
| R君 | それ対策の学習教材あるぞ、それかしてあげる、私後すんだ。 | ||
| (一同笑い) | |||
| 母 | 何を考えてると思ったら、ニッて笑ったから(笑) | ||
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| ナレーター | Hさんの父親のYさん。R君が使うリハビリの機械を、ボランティアでつくっています。Yさんは、R君との出会いが一つのきっかけになって、自分の生き方を大きく変えました。二年前、大手の電気メーカーをやめ、庭の設計や工事を請け負う仕事を始めたのです。人を使う立場の管理職という仕事を、大きな負担に感じていたといいます。Yさんはその時R君と交わした会話のメモを残していました。 | ||
| Yさん | この辺がR君のお父さんのワープロで打たれたものなんで。線を引いたのはこれ僕ですけど。当時読ませてもらって自分にすごくやっぱり響いたところ、自分で振り返るつもりで引いたんだと思います。 | ||
| (Yさん) | 何にとらわれているんだろう。 | ||
| (R君) | こうすべきってこと。 男だからとか、課長だからとかパパだからとか、いっぱい。 ついでに、自分がやらなくてはと思っているでしょ。 それってネ、自分が思っているほど周りは必要としていないのよ。 体でネ、肺は肺、心臓は心臓の働きするでしょ、 どうしてそれ以上の働きしようとするの? | ||
| (Yさん) | このままいくとボクは今の職場でいらなくなるってのが恐くなる。 | ||
| (R君) | いらなくなるっていいことよ。自分の価値だけに目を向けられるから。 自分が幸せな状態になることを考えるだけでいいの。 世の中はあなたが幸せじゃないと、幸せにならないの。 | ||
| Yさん | 回り道したようですけど、自分の本当に進みたい道に、改めてまあこの歳になって戻ったような気もしますし、やめてからしばらくして会う人会う人に、顔つき変わったねとよく言われましたから、たぶんそうなんでしょう(笑)。そういう意味では今の方が家族も楽なんじゃないですか。娘なんかでも、自分がやりたい道に変わったんだってことは、それはいいねとかそういう風に実際にやれたことはすごいって言ってくれますし。 | ||
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| ナレーター | 執筆の合間に、R君は対話を求める人々との交流会にでかけて行きます。この日R君を招待したのは富山県の高岡市の市民グループです。交流会はR君たちにとっても大人たちが何に思い病んでいるのかを知る事が出来る貴重な場です。R君の本に触発され幸せとは何かをいうことを改めて問い始めた人々。R君はそうした人々の質問に丁寧に答えていきます。 | 2001年11月25日(日) Moonlight Express No.010より | |
| 女性 | こんにちは、富山に住んでいる○○とその母です。今日この子の12歳の誕生日だったんですね。個人的ですが、○○に誕生日のメッセージと、あと脳障害でも、障害があっても一生懸命生きているお友達?の中のお友達にメッセージをいただけたらうれしいです。お願いします。 | 質問者は脳障害の子どもをつれて参加をしている女性 | |
| R君 | まずは誕生日おめでとうございます。私たち脳障害児にとって誕生日というものはとても貴重です。なぜなら生きる事自体が過酷だからです。息をするのが大変なんです。 会話は言葉以外でもできます。私の言葉は伝わる前から私は常に聞いてもらえました。その気持ちを持ってくれているお母さんといるだけでそれだけで幸せな気持ちになるものです。だから安心してくださいね、お母さん。 | ||
| 女性 | もおすごく、とってもいい意味のショックを受けました。 | ||
| 女性 | 感動いたしました。 | ||
| 男性 | これからね、生きていくのにも今日の事をね、思い出して、あの〜ね、やっていけると自信がつきました。 | ||
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| ナレーター | 一日のうちのほとんどの時間をリハビリに費やさなければならないR君。執筆できるのは寝る前の1,2時間だけでです。一足お先に眠ってしまったSちゃん。最近あまりかまってもらえません。 | ||
| R君 | 人生何があるか分からないのだから、その時その時を大切に生きたいとよく言います。 障害を持ったことについて…多分…不幸と…思わなかった?(R君ママ覗き込む) | 『ひとが否定されないルール』P180-181 | |
| 母 | 寝る前の勢いってすごいのよ。(R君パパの問いかけに)寝てると思う(笑)。今やっとのってきたのよこの人。かわいそう。やっと思いついたってところの勢いだったのに。また明日になったら勢い止まっちゃって。 | (R君パパがR君を隣の部屋へ寝かしつけに行く) | |
| 母 | まあねえ、なんかねえ、結構ね、命がけっていったらちょっと大袈裟だけど、ん〜結構なんか必死っていうかねえ、なんか書くこと、とにかくここ(胸)に詰まって、ばーとこう早く出しちゃおうみたいなね、そういうのにねなっちゃってますね。なかなかね一人で出来ないというのも大変ですよね。ん〜書きたい時に書くっていうことをね、家族が4人がみんなが体制が整ったところじゃないと書けないから〜、結構ね、大変ね。 | ||
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| ナレーター | 締め切りまであと3週間。執筆に時間を割くため、昼間のリハビリを中断せざるえなくなりました。Sちゃんは、お母さんの○○さん(R君ママ)のもとへしきりにやってくるようになりました。家族に相手をしてもらえる時間が減ったからです。 SちゃんにはR君に怪我をさせないように優しく触れるというきまりがあります。しかし締め切りが近付くに従い、Sちゃんがきまりを守れない日もでてきました。 | 90秒はH家(R君一家)のルール ドーマン法の「民法」に基づく 『ひとが否定されないルール』より | |
| (R君:提示、していこく、ことを) | |||
| (SちゃんがR君に触れている母親の手をおもちゃで叩き、Sちゃんを扉の外へだす) | |||
| ナレーター | 廊下に出す時間は90秒。きまりをつくるときSちゃんに言っておいた時間です。 | ||
| (R君ママは扉のまえで時計を見ながら90秒をまつ、その間にR君君の詩の朗読のナレーション) | |||
| 朗読 | 私は、たかだか九十秒 廊下に出されたS(Sちゃんのこと)に 胸を痛めながらも、 それをやり遂げる 母や父が とても魅力的に感じます。 本当に子供のことを 思ってやっているからこそ、 子供の心に立って、 胸を痛めているのだと 思うのです。 私も心の中で 「S、がんばれよ」 と思っていました。 | 『ひとが否定されないルール』P83〜84 | |
| (90秒を終え、R君ママがSちゃんをだっこする) | |||
| 九十秒を終えたSは、 ますますかわいくて チャーミングでした。 皆がまた変わらず 受け入れるのです。 | |||
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| ナレーター | R君たちはHさんにベビーシッターをお願いすることにしました。Sちゃんが一番懐いているからです。トチこと(トチはR君パパのあだ名?)○○さん(R君パパ)が打った原稿をR君がチェックします。 | ||
| (父親のPCのディスプレイ) | 『ひとが否定されないルール』P174 | ||
| R君 | 漢字で一つドジ、『つらい』がひらがな、だったよ | ||
| 父 | だって漢字にすると『辛い(からい)』になっちゃうよ | ||
| R君 | (漢字で)『辛い』でいいの、普通は、読むんだってば、どうして何回も言わせんのかな | ||
| (両親笑う) | |||
| 父 | 『からい』って読んじゃうよ | ||
| R君 | 『つらい』って読むの。トチ(R君パパのこと)だけだよ。 | ||
| 父 | そうかな、『からく』悲しい思い出って読んじゃ…… | ||
| R君 | じゃあ〜、ふりがな振ってもらえばいいでしょ。『つらい』は漢字なの私。何度も言ってるよ、私、何度目だよこれで(R君ママ笑う) | ||
| 父 | 初めて聞いたような気する | ||
| R君 | 耳?耳掃除してる?、通り抜けてんじゃない?、やりすぎて(R君ママ笑う) | ||
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| ナレーター | R君は連日の執筆でぐったりです。この日訪れたのは車で1時間ほどの場所にある温泉です。R君が入浴するのを手伝うためYさん一家も一緒です。(R君パパがR君をお風呂に入れる)体が硬直しがちなR君、熱いお湯に浸かってようやく筋肉がほぐれてきました。 | 2001年12月21日かぶと湯温泉「山水楼」 Online Luna「詩集」より | |
| 父 | 希望としてはやっぱり、R(R君のこと)が歩いてほしいし、しゃべってほしいというのはありますよね。それが、まあ我々ができる限り、そのための手伝いはしていきたい、ていうのが大きいですね、ただその変化が非常に少ないといえば少ないわけですよ。だからじゃあこの先何年やっていけば、自分で動けるようになるのか、なんてことは、ちょっと分かりませんけれども、不安が無いというわけではないし、でも不安に怯えて生活しててもしょうがないし、ただ、今日できる事、今日やって、明日でいいことは明日に回して、結局やんなかったりなんかりして、だけどまあやれる事はやって、我々が今んところまだやれる健康状態もあるし。 | ||
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| ナレーター | 一瞬一瞬を常に精一杯生きるというR君。今回の執筆にかける熱意をこう語りました。 | ||
| R君 | 私は たったこれだけ しゃべるのでも 呼吸が大変で―― 体のコントロールを 失います 他の人が なにげなく 毎日書くのに 私は 全身の力を ふりしぼって 書かなくてはいけません 私は それでも 書きたいのです | ||
| ナレーター | R君が初めて口にした執筆の辛さ。いったいここまでして伝えたいのは何故なのか。R君はその答えをこう記しました。 | ||
| 朗読 | 私は心地よく生きたいと いつも思っています。 そして、私の周りの人も そうであってくれたら、 私は もっと気持ちよくなります。 そして、 私が知っている世界の人々も そうであったら、 私ははもっと幸せな気持ちに なります。 ただそれだけなのです。 ただそれだけのことで、 私はいつでも書かずには いられなくなるのです。 | 『ひとが否定されないルール』P230〜231 | |
| ------------------------------------------------------------ | 46:01 | ||
| ナレーター | 締め切りの当日、ついにR君は原稿を書き上げました。 | 2002年1月 | 締め切りは1月中旬 Moonlight Express No.011より |
| R君 | 完璧だね(R君ママ涙ぐむ)、終りだよね、いいよね、ねえトチ(R君パパのこと)聞いてる?、スペースキ(?)は、おめでとう。私にもいってよ。おめでとうでしょ、わーい(R君ママ笑い)、ということで、Hさんに手紙だ。 いろいろありがとう、また遊んでやってね、S(Sちゃんのこと)と。Sの兄のくりくりブルーから、くりくりレッドへ、愛を込めてっていれたらまずいかな?、それ入れたいんだけど、嫌われるの恐いもん、私、アイシテルヨーって伸ばしてもいいよ、それならいいかな。 | (父親のPCのディスプレイ) | |
| ナレーター | 自分の運命をあるがままに受け入れ、全力で生きる○○○○君(R君のこと)、幸せのメッセージの完成です。 | ||
| 朗読 | 私の人生はとても豊かで、 希望に満ちています。 もし世の中の人たちが、 世間一般とか 常識にとらわれずに 物事を見ることができたら、 ステキな事が起きるのだと 伝えられたらいいと 私は思っています。 どこにいても、自分の思いが どこにあるのかを問うて 生きたとき、 どこにいても、だれといても、 心が平安になると 伝えたいのです。 そのサンプルとして、 私の存在を知っていただけたら うれしく思います。 R(R君のこと) | 『ひとが否定されないルール』P27〜28 (ただし途中省略あり) |