■戦場の遠距離恋愛 (プロローグ/妄想/再会編)

*1 〜プロローグ

センリツは空港で、クラピカと一緒にレオリオと分かれて以来、
片時も離れずクラピカの側にいた。
 次々と仲間達が辞め、閑散とした屋敷はそこにいるだけで気分が滅入る。
 先ほどもクラピカはノストラードに呼ばれ、叱責を受けたばかりであった。

クラピカが無言で足早に歩くので、歩幅の短いセンリツがクラピカに歩調を
合わせようとすると、小走りせねばならないので大変だ。
「ねぇクラピカ、もう少しゆっくり歩いてくれない?」
歩調が少し緩まった。
センリツはクラピカがずっと無表情なのが気になった。
 「少し休憩しましょう。疲れてしまったわ。お茶でも飲んで一息つかない?」
やはり疲れているのか、クラピカは無言でうなずき素直に従った。


実際、クラピカは疲れきっていた。
ヨークシンのテロ事件以降のノストラード邸では、「ボス」の護衛以外の沢山の仕事が、
クラピカの肩にかかっていた。
 元:リーダーのダルツォルネがしていた仕事を新リーダーのクラピカが引き継いだ。
しかし新人の面接をし、採用してもすぐに人が止めてしまう。
今、ネオンは占いが全く当たらず、顧客が減り続ける不安定な状態で、
それを見限って部下達が次々と他の組へ移ってしまうのだ。
父親のノストラード氏はなす術もなく、ただクラピカを呼びつけ、怒鳴り散らすばかりだった。

 しかし、重要な判断のほとんどをクラピカに任せ、頼っている状態であり、クラピカは
多忙を極める毎日を送っていた。
 日々の仕事をこなすのに精一杯で、かつての仲間達を思い出すことも少なくなった。

 
 二人してお茶を飲みながら、センリツは彼女の顔を眺めた。
団長を倒した直後に倒れ、高熱にうなされていたときよりはましだが、睡眠不足から
目の下に濃いクマが出来ていた。
「(まだ若いのに…。)」
クラピカと同じ年頃のネオンと比べ、肌も荒れ、生気にかける気がした。
 そう思った後、センリツは、クラピカが心から安堵した表情を、
ほとんど見たことが無いことに気が付いた。
唯一、見た覚えは、彼らと…そして彼がいた間だけだった。


「クラピカ…今の状況でこういうことを言うのは非常識だって分かってるけど…
一度休暇を取った方が良いのじゃないかしら?」
何を言ってるんだ、という顔をしてクラピカはセンリツを凝視した。
「心配無用だ。私は疲れてなど居ない。」
「でもあなた、空港で彼と分かれて以来、一度も休みを取っていないじゃない。」
クラピカは黙り込んだ。
「…その事はいい、それに今はとても休める状況ではないのだよ」
 でも、と尚も言いかけるセンリツをさえぎりクラピカは立ち上がった。
「さあ、仕事に戻ろう…ッ」
数歩、歩いたところで視界が何故か滲み、クラピカは立ち止まった。
次から次へと大粒の涙がポロポロと零れ落ちていく。
「おかしい…全然悲しくなんかないのに…!」
「あなた、それだけストレスがたまっていたのよ。」 
センリツは歩み寄り、クラピカの背を撫で優しく言った。

「自分の意思に関係なく涙がこぼれるのは、ストレスが限界までたまっている証拠よ?
我慢しなくていいの、泣きたい時は泣いていいのよ。」
クラピカはソファに座り、センリツにもたれかかった。
センリツはクラピカの頭を優しく撫でると、クラピカは声も出さずに泣いた。
「たまには息抜きをして、彼に会いに行ってあげなさいな」
クラピカは静かにうなずいた。


*2 〜妄想編へ
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