「知世と小狼と日曜の午後」


「これで、終わりですわ!」
知世が洗濯物を干し終わらせ、ゆっくりと部屋の中に入っていく。
「ここの気候は気持ちいいですわ」
窓の外に見える青空をみながら、知世はそう呟いていた。
そう、ここは避暑地にある知世の別荘だった。
高校2年の夏、知世は夏休みを利用して別荘に遊びにきていたのだった。
だが、ただ遊びに来ていたのではなかった。
そう、知世はこの別荘に一人で来ていたのではなかった、もう一人、知世にとってはとても大事な人と、大事な時を過ごすためにここにやってきていたのだった。

「洗濯終わりましたわ、李君。」

「あ、ああ、ありがとう大道寺」



「そんなこと・・・できるわけないでしょ!」
知世の母、園美が知世に叱りつけている。
「そんなこと、言ってもわたしの気持ちは変わりませんわ!お母様。」
園美の話に耳を傾けない知世。
それをみて、園美は知世の横に座っている男の子、小狼に話かけてきた。
「あなたもそうなの?李君?」
「は、はい・・・大道寺がそう言うのなら」

事の始まりは小狼が知世とつきあう事になってからだった。
中学生になってから香港から戻って来た小狼は、色々な出来事の末、知世とつき合う事になった。
そして、小狼と知世が高2の夏、小狼はとうとう香港に帰る事になった。
だが、小狼と別れたくない知世は小狼と一緒に香港に行って、一緒に住むと言い出したのだった。
小狼もそんな知世の気持ちを嬉しく思った。
そして今日、知世の母の園美にその事ついて、お願いに来ていたのだった。
「誰にも迷惑はかけません。二人で一緒に協力して暮らして行きたいと思います」
真面目な真っ直ぐな瞳で話しかけてくる小狼に、さすがの園美も負けそうだった。
「・・・・わかった、けどその前に一つ試させてもらうわ」
「どういう事ですか、お母様?」
「夏休みの間、わたしの家の別荘で二人で暮らしてみなさい。そしてその間、ちゃんと暮らせるかどうか、監視させてもらうわ。それに知世・・・・あなたの決心が本物かどうかも、それで解ると思うわ」
園美の提案に小狼と知世は少し、驚いた。
だが、この提案さえも乗り越えられない様だったら、元々香港で二人で暮らすなんて、とても無理な話だった。
そう思った二人は素直に園美の提案を受け入れる事にした。
「そう、じゃ李君にはその別荘にいる間、近くでアルバイトしてもらうわね、二人で暮らすんだから、生活費も自分達で稼いでもらうわよ」
「・・・・わかりました」
「わかりましたわ、お母様」
こうして二人は夏休みの間二人で暮らす事になったのだった。



今日は二人が別荘にやってきてから一週間目の初めての日曜日だった。
夏休みとはいえ、小狼は日曜日以外はアルバイトに行かないといけない事になっていた。
そして今日が小狼にっとては初めての休みの日にあたるのであった。
いつもは洗濯も二人で協力しているのであったが、小狼を休ませようと、知世が一人で洗濯をしていたのだった。

「ありがとう、大道寺」
「礼なんて言わないでくださいな。李君はアルバイトで疲れてらっしゃるんですし、今日はゆっくりしてくださいな」
知世の気遣いを、小狼は素直に喜び受け入れることにしたのだった。
「それじゃ、少しだけ横にさせてもらうぞ」
小狼は少し大き目のソファーに横になって、少し眠りにつくことにした。
「ふふ、李君ったら・・・・」
知世はソファーに横になって眠っている小狼を見て、なにか幸せな気分になっていたのだった。

・・・・

「あ、もうお昼をまわっていますわ」
知世は小狼がソファーで眠っている間、疲れがたまっていたせいか、自分もつい自分のへやのベットで眠りについてしまっていた。
「李君、もう起きてるかしら?」
知世は自分の部屋を後にすると、小狼がいる部屋にやってきた。
「あ、李君、もう起きて・・・・?」
知世が小狼に声をかけようよしたが、小狼はソファーに横になりながら、なにやら本らしき物を見て、知世に気づかないでいた。
「もう・・・・」
そんな小狼に少し、「ムカッ」っときた知世は冗談半分に、横になっている小狼に向かって、抱きついていった。
「う、うわ!?だ、大道寺!?」
いきなり抱きついてきた知世に、小狼は少し驚いた。
「もう、いったいなにを読んでいたんですの?」

抱きついたまま、知世は小狼が読んでいた本が何かみてみた。
「あ・・・それは、わたし達のアルバム?」
そう、小狼が見ていたのは本ではなく、写真の入ったアルバムだった。
「どうして、アルバムなんか?」
「い、いや・・・昔の大道寺って、どんな感じだったかな・・・と思ってな」
小狼が見ていたのは小学生の頃の写真だった。
「ふふ、あのころのわたしは、さくらちゃん一筋でしたもんね・・・李君も・・・・」
「けど、今は・・・・李君だけですわ」
そう言いながら知世は、小狼に抱きついたまま小狼の顔に自分の顔を近づけていった。
「お、おい大道寺・・・・」
「李君・・・そんな昔のアルバムなんかより、わたしと・・・・今のわたしを見て・・・」
「大道寺・・・・」
「あ、知世って呼んでくださいな・・・・」
そう言いながら、二人は熱いキスを交わした。
「知世・・・・」
「ん・・・・李君・・・ん、ん・・・・」
「李君とキスするのも・・・ひさしぶりですわね」
そう、小狼と知世はこの別荘に来てから、園美に監視されてる事もあってか、キスみたいな行為を控えていたのだった。
「お、おい・・・こんな事、知世の母上に見つかったら・・・・」
「ふふ、今日は日曜日ですので、監視もお休みになってますわ・・・だから・・・」
そう小狼に説明すると、知世はまた小狼にキスをせまった。

するとその時・・・・

「あまいわね、知世!」
「お、お母様!?」
なんと、今日はいないはずの園美が部屋の入り口の前に立っていたのだった。
「お母様、今日は監視はしないのでわ?」
「ふふ、そう言っておいて、油断させておいたのよ。」
そう園美は知世に説明すると、ソファーの上で固まっている小狼に話かけた。
「李君、まぁ、知世とは好きあってるわけだし、キス事態の行為には何も言わないわ。」
「けど、この別荘にいる間は、そんな行為は駄目だって言っていたわね?」
「はっ、はい!」
凄味に話かけてくる園美に小狼は緊張しながらそう返事をした。
「そう、解ってるならいいわ、ひとまずこのキスの分のポイントを下げさせてもらうわね」
「ポ、ポイント?」
そう、この別荘にいる間、園美は小狼に対しての評価にポイントをつけていたのだった。
「このポイントがマイナス10までいったら、香港の話はなかった事になりますからね」
「じゃ、わたしはかえるわね、知世、李君、油断しちゃだめよ」
園美は微笑みながら話終わると、部屋を後にしたのだった。


「・・・・李君、頑張りましょうね」
「・・・・ああ」

二人の別荘生活が終わるまで、あと3週間、小狼と知世の楽しくも辛い生活はまだ続くのであった。

ひとまずつづく

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■あとがき■