お勧め記録集

目次
1.WV的長期縦走 毛猛山塊 ヤブコギ縦走

2.最高・最難、憧憬の大渓谷 飯豊川本流遡行

3.がんばれ大学山岳部 北ア・薬師岳丸山尾根

4.ちょっと週末に「黒部横断」〜発想力と山登り 山スキー黒部横断




WV的長期縦走 毛猛山塊 ヤブコギ縦走
 2000年8/19〜24
 六十里峠〜毛猛岳〜未丈ヶ岳
 伊藤荘二郎(中央大学WV部OB) 単独
 出典:学生登山者メーリングリストHP


99年の5月に、浅草岳〜毛猛〜未丈〜銀山平と、同じルートをやはり単独で縦走したので、記録に引きこまれた。
葉の枯れた残雪期ですら雪のついてない部分では、それまでの私のヤブ経験と比べても、かなり苦労した。
ただはっきりしていることは、ここには一種典型的な「越後の薮」があった、ということである。稜線上にはストッパーが連続し、弾力のある小潅木が密生しているが、変化に乏しく、樹林帯や草原は現れない。使える涸れ沢もなければ、岩場やガレ場もない。もちろん踏み跡は皆無。
とあり、やはり盛夏は、えらい大変なようだ。

マイナーな山域での沢登りを志向してた私は、
大学山岳部時代から、「より高くより困難に」に象徴される大学山岳部保守本流のアルピニズム的発想より、
さすらいの渡り鳥の語源から発した「ワンダーフォーゲル」的思想に、シンパシーを感じていた。
その意味で、学生WVには期待をこめているのだが、最近は沢やヤブをやるWVが少なくなったと聞く。
その中にあって、OBになっても単独でこうした山をやる活力は、素晴らしい。
思うに、ヤブの楽しみには2つの側面があると思う。それは、潅木帯を荒々しくかき分けたり、流水のごとくすり抜ける肉体的な快感と、天然のルートを発見して激ヤブを回避する悦びである。換言すれば、前者は野生的な右脳的な快楽、後者は理性的かつ左脳的な悦楽とでもいえるかもしれない。
など、文からヤブの魅力が伝わってくる。

両岸を黒又ダムと、只見川の田子倉〜大鳥〜奥只見のダム群に、囲まれて陸の孤島の様相を呈するこの山域の、長期ヤブ縦走はまさに学生ならでは(伊藤さんはOBということだが…)である。

この山域で、取っておきの計画。
それは、3月の大白川駅〜足沢山〜毛猛山〜未丈ヶ岳〜明神峠〜大湯の縦走。
黒又川・只見川側共、雪の下で、エスケープ不能。
(映画「ホワイトアウト」によれば…)管理人はいるのだろうが、奥只見ダムも公共交通期間では入れない。
一回入山したら、行くか戻るしかない、10日近い稜線縦走。
晴れれば陽光のもと、まわりすべて山に囲まれた、残雪の稜線漫歩で、なんとも楽しそうである。
積雪期は未踏ではないだろうか??



最高・最難、憧憬の大渓谷 飯豊川本流遡行
 1999年8/15〜19
 孫左エ門沢下降〜本流〜文平沢
 浅野賢一(名古屋ACC)、森田・鈴木(遡行同人「鍋と酒」) 浅野:記
 出典:ALPINE 年報'00  名古屋ACC,2000年11/15発行

ズタズタのスノーブリッジ。
乗ったり、潜ったりして歩みを進めるが、
そこは巻こうにも、
下から思い描いたようには、ルートはとれず、草付き混じりの岩壁をどんどん追い上げられる。沢床から100m以上は上がっただろうか。それでも、ようやくトラバースできる傾斜になった。〜(略)〜潅木帯は上方に延びるが、我々は草付きスラブをトラバースすべくザイルを多用する。誤魔化して進んでいくが、命取りの一歩が何歩かあった。ノーザイルでは足が出ない。〜(略)〜ずっと眺めている対岸のスラブは緑が見出せない完璧な岩。支尾根もスラブ、絶景の中の絶景。
という具合な渓相で、彼らは500〜600mの距離を巻くのに9時間を要している。

読んでるだけで、背筋がゾクゾクし、胸が締めつけられる。
こういう記録は、そうはお目にかかれない。
ムズカシイと言われる沢の記録を読んでも、たいていは、「もうちょい登攀力がつけば行けるかな」と、行くために何が必要か見えてくる。
ただ、飯豊川は別なのだ。
関東周辺の沢には「5級」と紹介されているが、どう考えても、そいつはウソだ。
6級上??、日本最難の渓谷といって過言はない。

行ってみなければ、スノーブリッジがどうなってるかは、まったく見当がつかない。
登攀力、RF力、経験に裏打ちされた高度な総合力で、記録を読むだけで感じる、あの圧倒的なプレッシャーに立ち向かうしかないのだろう。
でも、どうなってるかわからないからこそ、ワクワクドキドキがある。
その凄い景色の中に、身を置いてみたい。

だから、いつかは行きたい。


がんばれ大学山岳部 北ア・薬師岳丸山尾根
 2000年12/22〜1/2
 跡津〜大多和林道〜折立〜北薬師岳丸山尾根〜薬師岳〜太郎平〜折立〜跡津
 L田口徹志、池上岳彦、勝山悟、北口創尉 田口:記
 出典:法政大学山岳部HP

北薬師岳から北西に延びる丸山尾根の記録。
もう1隊が、神岡新道から登り、薬師頂上で合流している。

丸山尾根は1963年の阪大隊の記録以来、第2登。
ことさらに記録的価値をいうような尾根ではない
という。

たしかに、ロープを出すような部分のない、この手の雪山には決して、派手さはない。
しかし、
出発してわずか3分でラッセルがとんでもないことが分かり先頭は空身になる
という状況の中、11日間、停滞日なしで動き続き、完登するのは、決して簡単なことでない。

生活技術などの日々の地道な基本の積み重ねがなくては、とても耐えられるものではないのだ。
同じく薬師を目指した我々、青年部隊は、ちょっとした行動の躊躇で前進のチャンスを潰した。
さらに防風ブロックを切れる幕場に泊まれずテントを潰されるという、失態を演じて敗退し、基本の大切さ、難しさを改めて認識した。


自分達だけの山という深い思い入れを持った場所で、長い山を成功させたことの充実感が、記録の最後の以下の文に如実に表れている。
丸山尾根自体は特に問題になる個所はない。冬型が決まっていてもひたすら雪が降るだけで、上部以外風に対する心配も無い。ともかくラッセルに耐えるだけだ。だが体を深雪に埋ずめ、自分と仲間の力だけを頼りにもがき進み、クライマックスの上部は開かれた空間に急角度で突き上げる爽快感が魅力のいい尾根だと思う。 我々が下山してから強い冬型が決まり、山も荒れた。合宿中にそこまで強い冬型は決まらなかったし、今回は登攀的な部分も無かった。未知の領域は大きい。もっといい山もたくさんある。例えばそこでラッセルに関してだけでも今回の山行が糧となりえるとしたらどうだろうか。 今後の力強い可能性の展開を望む。

法政山岳部には、岳人625号の飯豊・朝日特集にも、2月の終わりの朝日の主稜線を、大朝日小屋での4日連続停滞などの末、13日かけて縦走した素晴らしい記録がのっている。
これぞ、大学山岳部の底力といえよう。
大学山岳部の辛い事故が重なる中で、こうした山をやるたくさんの部員がいる山岳部の存在は、私のような大学山岳部OBにとって、一筋の希望に思える。


ちょっと週末に「黒部横断」〜発想力と山登り 山スキー黒部横断
 2001年4月の週末
 扇沢〜針の木谷〜大スバリ谷〜(黒部湖の湖面を渡る)〜一の越〜雷鳥平〜立山川〜伊折
 三浦(ぶなの会)、澤田(チーム84)
 出典:山と渓谷2001年7月

まず最初に断り書き。
私は、岳人は買うけど、山ケイは買わないので手元に記録がなく、記事の引用はできないし、一部誤った記憶をしてるところがあるかもしれない。
とはいえ、この記録はすごい!と、思ったのでぜひ紹介。


買わない山ケイだけど、記録マニア?の私としては、投稿欄だけは、必ず立ち読みしてる。
で、今月号には山スキーの記録特集がのっていた。
本人はとてもスキーまで手が回ってないが、残雪期に山スキーの機動力を生かした記録というのには、関心があったので、今回もふむふむと見ていた。
すると、この記録。
この記録の持つ意味を理解するのに、一瞬間があいたあと、これはとてつもなくセンセーショナルな記録だということを悟り、鳥肌がたつような感覚を覚えた。

私も、岳人500号の和田さんの黒部横断特集はむさぼるように読んでおり、上の廊下を含めばこれまで4回黒部横断をした。
しかし、4月の週末に「どこに行こうかな」と考える時、この記録のように2日で黒部横断してこようと、思い浮かべることが、出来ただろうか?
「黒部横断」というだけで、GWに1週間はかけて行くものという固定観念に縛られ、身構えてしまうのが、凡人の常である。

おそらく、最短日数での黒部横断記録であろう。
それを「山スキーの機動力」と言ってしまえば、それまでだけが、この記録の凄さはそれだけじゃない。

滑走記録未見の大スバリ谷から氷結した黒部湖に滑り込むというライン取りが素晴らしいのだ。
山スキーとはいえ2日で黒部横断をするには、このラインしか解がなかったのではなかろうか。。
しかも4月頭という時期も、これ以上遅くなると、天候はどんどん安定するが、黒部湖の結氷状態がまずくなるだろうから、そのバランスの中での絶妙な解なのではないか。
計算されつくした記録である!

それに、むずかしいこと抜きにしてもだ…
GWの雷鳥平の喧騒を思い描いてみよう、開放的な景色は素晴らしい、けど、人はうじゃうじゃ。
それがアルペンルートの開通前のこの時期なら、間違えなく誰もいないだろう。
春の陽光の雷鳥平を独り占め……、うーむ素晴らしい。
きっと、こういうのを幸せというんだろう。

もちろん技術的に困難な課題の克服という記録は、登山のあり方を変えるインパクトを持つ。
しかし、独創的な発想も、ときに登山のあり方を変えるようなインパクトを持ちえる。

私達の遊び場の自然の懐は、私達が思ってるよりぜんぜん深い。
ちょっと頭をひねれば、もっとおもしろい発想が出来るはずなのだ。
だから、山登りはおもしろい。

山登りを、もっと楽しむために、技術を、そして発想を、常に磨いてゆきたいものだ。