黄蓮谷右俣
ぼくのなつやすみ3 沢の冒険編


 最近 PlayStation の「ぼくのなつやすみ2 海の冒険編」というのが好調な売れ行きらしい。一ヶ月で30万本売れたとのこと。このてのゲームの場合4万部が売れれば御の字らしいのに。
 それも子供が喜んでいるのではなくて、大人が嬉々としてやり続けているとのこと。なんだか大人が郷愁を感じることうけあいらしい。アクションでもなく、シューティングでもない、子供の頃の夏休みを単に過ごすだけのゲーム。特になにもしないところがすごく良いみたいだ。
 僕としてもその「ぼくのなつやすみ」を近々購入して、真夏の海辺でのんびりと過ごすゲームをやりたいと思っている。

 バーチャルは今後楽しむとして、その前に僕としてのリアルタイムの「ぼくのなつやすみ3 沢の冒険編」をやらかしてきた。

場所は南アルプスの黄蓮谷右俣

2002夏の山 黄蓮谷右俣

 今年の夏休みは黄蓮谷右俣に行って来た。今回は夏休みが長かったのでどうしようかな、などと考えていた。普通なかなか連休がとれなくて、とても行きたい沢にはいけない訳だった。今回は友達も休みが合いそうなので以前から超行きたかった黄蓮谷右俣に行くことにした。もうずいぶん前から行きたかったゾ。
 この沢は早い人だと一泊二日で行かれてしまう。まあのんびり行きたいので二泊三日で行くことになった。しかし今回諸々のエラーで三泊四日という行程になってしまった。夏休みは長いし休日の大判ふるまいでいくらでも泊っちゃうぞ〜。という感じでした。

黄蓮谷の下部のナメと釜の連続帯の部

エメラルドグリーンの釜の左のナメを登る

大きな釜を腰まで浸かって通過

白亜のナメをフリクションを使って登る。気持ち良い。

8/15 晴れのち曇りのち雨
 こんなに美しくて巨大な沢を駆け抜けてしまうのは非常にもったいない。感慨深く超のんびりと目と心に焼き付けるためにじっくりと遡行することにしたからネ。
 下部のナメ及びナメ滝、大釜帯はこれだけでも独立して美しく、二三日過ごにてしまうだろう。なんか早足であるくのがもったいなくて時々ボーゼンと立ち尽くしたりして眺めていた。写真も今回は70枚くらい写してしまいました。
 釜のなんとも深みのあるエメラルトグリーン。ナメの果てしなく明るい白。それに空の青さと、森の深緑。だいたいこのような風景をみたら日本人的な遺伝子が騒ぐのはあたりまえだろう。ナメと釜とジャレすぎたため時間を大幅に超過してしまった。
 今回大失敗だったのは、ルート図をコピーしたのに家の机に忘れてきたことだ。二万五千分の一地図はしっかり持ってるけど、どうも要所のキーポイントの注意点が不明なのが時間オーバーの原因だ。へんな高巻きを随分やらかして時間の消耗をしてしまった。でもそれも一興。
 尾白川本谷が分かれる所で、黄蓮谷はなんとなく狭い感じであり、水も少ない感じ。それに引きかえ尾白川本谷の広くて大きいことよ。
 独自の判断でこの沢はまだ下流の枝沢で黄蓮谷はまだ上にあると判断してしまった。それで尾白川本谷とは知らず、その広くて明るいナメに誘われてフラフラと遡行を続けてしまった。
 この尾白川自体も下流と遜色のないナメとナメ滝、釜の連続であり童心に返りつつ登り続けてしまった。
 しかし行けども、行けどもそれらしい沢が見えてこない。そのうち左上に衝立岩のような山が見えてきた。なんだあれは、と思ったがそれ以上詮索しなかった。それで雨なども降り出して焦り気味。ようやくこれは沢を間違えたと判断した。多分これは尾白川だ、と。それでようやく地図を見て、先ほどの衝立岩みたいな山は坊主岩山であるとわかった。
 雨も邪険に激しく降りだしたので、手頃な岩小屋を見つけて雨宿り。そのまま夕食の支度もして飯をたんまり食べてしまった。夜半に雨も上がったので河原の平なところにツェルトを敷き、そこで即就寝した。横になった途端熟睡というのは久しぶりだった。
 明日はどっちだ。













千丈滝。見た目以上に大きい
坊主滝40m小さく巻いて落口の横に出た
坊主滝の上、スラブが巨大でかつ美しい。
前方の滝は左俣
奥千丈滝の核心部逆くの字滝
翌日の12時過ぎに稜線にでた。
出るころになって皮肉にも天候が回復してきた

8/16 晴れ時々曇り、夕方から雨
 翌日悪天ならこのまま尾白川をツメ上げることにし、もし晴天なら戻って黄蓮谷を遡行する、と相談していた。
昨日とは打って変わって朝からいい天気だ。もう黄蓮谷に行くっきゃないぞ。荷物をまとめて尾白川を沢くだり敢行する。
 懸垂、高巻き、クライムダウンといろいろやって、遡行から3時間かけて黄蓮谷の出合に舞い戻ったのでありました。その時間的ロスは六時間にもおよんでいました。休みはタップリあるからドーンと行きましょうという感じだ。
 少し入ると前方に釜を持った15mほどの滝。ここは右にしっかりした道があって楽の巻ける。沢を登っていくと谷に突如大きなスラブ滝が見え始めた。これが千丈の滝だ。近づくにしたがいその大きさが分かる。見た目よりもずいぶんデカイぞ。3人パーティと相前後するように進む。この滝は左から楽の巻ける。しかし岩小屋の確認はしなかった。
 次の滝を右から巻くと、今度は異様な姿の坊主滝が見え始める。これまた巨大で異様な形だ。この滝は右のガレルンゼを登って高巻きするようだ。しかし先行パーティが手前から小さく巻いているので一緒にルートを探しつつ小さく巻く。時々枝にテープなどが巻いてあった。
 小さく巻いていると、丁度坊主の滝の落口ジャストに降りることができた。案内書だと高巻いてから懸垂下降するらしい。
 次の10m滝は右を登るのだが上部が数歩悪そうなのでザイルを出した。
 その上は左俣が落ち込んでいる。この辺の眺めは壮大で感動的だ。
 15mのナメ滝は左からバランスで登る。傾斜はないけどホールドが細かくて足頼みの登攀となる。気持良いけど緊張感が凄い。ここは右が登れるらしい。その上の二段20m滝は左端の草付を登った。
 崩壊地点を過ぎると傾斜が急になり小滝が連続している。というより全体が滝のようだ。そのうち急でスラブ状になってくる。最初はスイスイ登っていたが、ダンダン一歩一歩確かめつつの登りになってくる。
 随分急になったなと思ったら、滝が逆くの字になっているところとなる。ここが核心部だ。どうりで細かいはずだ。ここは日本百名谷の本に出てくる写真の滝だ。やっぱり凄い。
 ここは水流ぞいに登って行く。途中によく見ると残置ハーケンがある。ノービレーだと段々ヤバくなってきたので、ザイルを出すことにした。ビレーをとりつつ40m登ると木があってそこでピッチを切る。仰ぎ見ても、振り返っても巨大なスラブ滝。黄蓮谷の真っ只中にいる感じが気持ち良い。
小テラスから岩の下のバンドを登り、草付き沿いに登って行くと木があってそこでピッチを切る。その上は草付の中の岩場を登っていく。滝と平行に登っていくと途中で落口に分かれる感じの踏み跡があったが、そのまま直登した。終了点は深い草の中だった。
 ここからのルートがイマイチ分からず、結局大高巻きすることになった。逆くの字の上の滝を高巻き、ヤブ漕ぎしながら、滝の落口に出た。このころから心配だった雨が降り出した。チクショウ。
 そこから15mくらいの滝を登ると、左端のテラス状のところに3人パーティがビバーク準備中だった。乾いていて良い場所だ。焚き火なんかしていい雰囲気だ。
 そこからまた滝を2つ登ると前方に15mクラスの三つの滝が見える。いまいる場所の左上にやはり手ごろなテラスがあった。雨も降り出したし時間も四時なのでここでビバークすることにした。
 ツェルトを張った直後から雨が強く降りだした。ツェルトの中で食事の準備をしジフィーズの牛丼を食べた。濡れ気味なので、早々に就寝。昨日よりも平らなので良く眠れる。
夜半から雨が強く降り続き止まない。ザーザーいって、ツェルトの上を流れていく。今後の行動が心配になってくる。

8/17 曇り時々雨、夕方から晴れ
 朝起きると、思いっきり曇天だ。時々雨も降るイヤーな天気だ。三段気味の滝を眺めると、ハンパではない水量が流れている。昨日無理してあそこを登っておけばよかったのに、と思っても後の祭りだ。
 多分あの滝を越えた上が核心部の終わりのようだ。後は楽チンで登れるのだけど。無理矢理滝を登って冷たいシャワーに突入するのは身の危険を感じる。
 相談の結果、ここは左から高巻くことにした。
 しかしこれがハンパな高巻きではなかったりした。行けども行けども峻険なルンゼが立ちはだかり巻きの連続。どうにか降りられそうな大きなルンゼに出たので降りて行くと急なスラブとなって下に降りられない。それでまた高巻き。そんなことを数回繰り返してしまい時間が掛かりすぎた。
 この付近は沢の右から高巻くらしい。左は高巻くのは大変なのかな、などと考える。
 それで時間も過ぎていくので、このあたりの一番大きなルンゼを探して稜線にでることにした。まあ核心部はほぼ登ったからイイカみたいな。
 それで大きなルンゼを見つけて登り始める。ドンドン登っていくと涸滝が続き、左をトラバースしていくと、昨日の三人パーティの人が丁度涸滝を登っているところだった。彼らも水量を見て本流を敬遠したのかな。お互いにコールする。
 涸滝には残置ハーケンが随所にあり、結構利用されているようだ。
 2P目には古いシュリンゲが掛かっていて、A0で登るのだが厳しい。なんとかピッチを切る。二人が登りきると、すでに三人パーティはいなくなっていた。
 ここからさらに急になりあっちウロウロ、こっちウロウロと登れそうなところを拾いつつ高度を上げる。所々、潅木に懸垂のように腕力で登るところもあり、潅木がなかったら絶対無理だな、などと思った。
 巨大な岩のあいだを這いずりまわり、いい加減登り疲れてきたころ、とハイマツ地帯に飛び出た。このころ雲が切れる。眼下に黄蓮谷が広がる。眼を上げて行くと、その谷の上には甲斐駒ケ岳の姿。僕らは頂から続く稜線の途中の下にいるようだ。
 しかしこのハイ松の登りづらいこと。見上げて見て、延々と続くハイ松はいつ終わるのか。グチりつつ登っていくと、突如ハイ松が途切れて道にでた。
 オウ、登山道ジャン。突然の幸運を授かったような気持。何はともあれ遡行は終わった。
 あとは帰るだけ。
 登攀具の整理をし、その後は行動食を食いつつ茶をなど沸かして飲んだ。今回の3日間の記憶をシミジミと思い返した。
 



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