スパイシークラシック1996.12)            

は じ め に 

  自分とサッカーの出会いは、少し不幸だった。幼稚園で、僕はサッカークラブへ入る。親に無理矢理やらされるこのスポーツを好きになれない。やる気も出ず、練習中もサボることしか考えていなかった。上手くなるはずもなく、コーナーキックとスローインの違いも知らぬまま、3年間でやめた。それからの自分にとって、サッカーは数あるスポーツの一つだった。一番近くにあるスポーツは野球で、あとはラグビーもテニスも同じだった。体育の授業でも、やる気のない仲間でゴール前にたむろって、ボールが来てもただ蹴り返すだけだった。
 だがサッカーは、僕の知らぬ所で動き始める。Jリーグの発足だ。少しずつ自分にもサッカーが入り始める。高1の秋だったか、家のテレビに異変が起きた。チューナーもアンテナもないのに、突然BSが映った。真相は知らないけれど、某ケーブルテレビが、サービスかプロモーションで流したらしい。数カ月で終わってしまうのだが、とにかくその時期は何となく新鮮な、この衛星放送に入れ込んでいた。その日学校から戻って、何となくつけた衛星第1でたまたまやっていたのが、サッカーのアジアカップだ。しかしその中国戦が、僕をサッカー派に変えるきっかけとなる、最高のゲームだった。でもこの頃はまだ何も知らなかった。カズやラモスぐらいは知っていたが、柱谷なんていうのは判らなかった。
 そしてJリーグブーム。まあ自分は、“にわかサッカーファン”なのだろう。しかし、世間がサッカーを忘れ始めても、僕が冷めることは無かった。自分は一般に思われているよりも、ずっと大きな可能性をサッカーが秘めてるように思う。若者にだんだん浸透しているし、元々競技人口は野球よりも多く、基盤の整備と意識の高まりで、若い年代がレベルアップしている。経営的にも、ケーブルテレビとCSの普及によるテレビの多チャンネル化が、アメリカのように放映権料を高騰させることが予想される。何より本物のサッカーには、人を夢中にさせる力がある。将来は明るいはずだ。だいたいこんなに一生懸命、子供がボールを追いかけている国は、他に無い。            

☆ 高 校 サ ッ カ ー 特 集  

 12月31日から、来年の1月8日まで、全国高校サッカー選手権が開催される。ここでは、その展望を書く。私はミーハーだから、時々私情に走るところがあるかもしれないけど、笑って許して下さい。かつて高校サッカーは、最後の晴れ舞台だった。だから先のことを考えずに、がむしゃらにプレーするのが美徳だった。しかし、プロやワールドカップが選手達の目標となった今日では、しっかり基礎を作った、将来につながるサッカーが見たい。目先の勝負よりも、明日の可能性にこだわって欲しい。ただ、勝負は人を成長させ、未来につながるのも事実。良いサッカーと、勝つことを両立させるのならなお良いけれど。
 出場は甲子園より1つ少ない48校、トーナメントで優勝を決める。予選には史上最多の4099校が参加した。高校の他にも、Jリーグのユース等クラブチームが100チーム程ある。現在は高校の方が圧倒的な勢力を持つけれども、トップクラスの選手はよりサッカーに集中できる環境を求めて、Jユースに進む傾向がある。高校側にもクラブの良いところを取り入れようとする動きがあるようだし、お互い競い合えばいい。             

《 戦 力 分 析 》

 今回の選手権は混戦である。各地で、無名校が強豪を破る番狂わせがあった。そんな中、僕の持つ知識と感、そして独断と偏見で戦力を分析し、結果を占って腕を試したい。かなり無茶だけど。      

 〔Aブロック〕レベルA:静岡学園.四日市中央工.丸岡.国見
             B:國學院久我山.富山工.水口
             C:東山.松蔭.高松北.高知農.星陵.

 静岡学園は去年の優勝校。未来を感じさせる先鋭的なサッカーをして、絶賛を浴びた。静岡の他の強豪に比べて有名選手は少ないが、無名選手育成の名人井田監督の、技術と個性を伸ばす指導で、いいチームが出来る。加えて今年は、例年に比べて監督の勝負にこだわる姿勢が強くなり、体力強化にも力を入れた。あまり知ってた選手がいないけど、あの静岡を勝ち抜いたと言うだけで優勝する資格はある。センターフォワードの坂本は、去年ベンチに入っていない無名選手だが今年県予選史上最多の21ゴールを決め、彗星のように現れた。ポジショニングと動き出しのタイミングが良く、左利きというのも貴重。他にも前大会で1年ながら大活躍し、この年代ナンバーワンのキーパーと言われる南。キャプテンのボランチ内藤など見てみたい選手が多い。四中工も、ジュニアユース世界選手権に優勝したガーナとのゲームでシュートを止めまくって善戦に貢献したキーパー中村元を始め、かなりいい選手がそろっている。丸岡はダークホース的な存在。センターラインに、大型でしかも技術のある選手が揃っている。いいサッカーをするらしい。リベロの鷲田は展開力とヘディングが良く、ジェフへ入団が決まっている。国見も優勝候補の一角。去年は期待されながら、結果を出せなかった。モダンサッカーをしようと言う意図はあるが、転換機にあたってやや中途半端になったか。だが今年も層の厚さは抜群。特に植田(2年)は攻守にオールラウンドな能力を持つ選手。高知の佐川中から長崎へサッカー留学していて、同じ中学の1年先輩にジェフの山口(17才でJリーグに出場した天才ボランチ)、3年先輩にはヴィッセルの吉村がいる。本来はボランチだが、国見では決め手を欠く攻撃陣のゲームメーカーか、フォワードを勤め、抜群の存在感を持つ。長身で、技術も身体能力も高い。富山工は、県大会決勝で5得点を決めた謎のストライカー金丸を見たい。ひたすら攻撃的なチームらしい。高知農は高校サッカー最弱の高知で、しかもダークホースだったチーム。東海大一中とやったら負けると思う。  

 〔Bブロック〕レベルA:大津.近大付.大分.桐光学園.初芝橋本
            B:水戸商.浦和市立.松商学園  
            C:西目. 松南学園.作陽.新潟工

 自分は、大津が今大会ナンバー1だと思う。大津と言っても滋賀でなく、実は熊本の高校。4年前に赴任した平岡監督は、かつて帝京高校が春夏連覇したときのキャプテンで、大学を卒業後指導者の道を選んだ。まだ31才だが評価は高い。ほぼ全選手が大津勢で臨んだ秋の国体で、熊本代表は準優勝している。大津は今まで全国大会に出ていなかったが、それで一躍評価を高めた。どの選手も技術が高く、戦術的に高度。国体では、ディフェンスも良かった。今大会で大津が、新興勢力としてブレイクを果たす可能性は高い。サンガ入りが決まっているフォワード福留、ボランチの天野、ゲームメーカーの山口(2年)や、ジェフに入団するキーパー櫛野など、どのポジションにも穴はない。ただ、主力を欠いたときのバックアップが課題か。近大付は、激戦区大阪を勝ち抜いた。ジュビロ入りする大型ボランチ喜多、前ジュニアユース代表のセンターバック辻本(2年)などの守備陣に、中学時代は関西選抜で優勝し、「中盤の四銃士」と呼ばれた小兵のミッドフィルダー中村(1年)が加わって、万全の戦力になった。大分は、韓国から招いたパク監督のもと新勢力を築いている。左利きの大型ミッドフィルダー川崎をはじめとするスピーディーな攻撃は、全国でも通用するはず。桐光学園は、「見ていて楽しいサッカー」をモットーにする愉快なチーム。実力も充分で、夏のインターハイではベスト4に入っている。今大会、と言うよりアジア屈指のプレーヤー中村俊輔を擁する。彼も2年の途中までは全く無名だった。しかし高校に入って背が15cmも伸び、去年の高校選手権から急速に評価を上げ、一気にユース代表のエースにまで登りつめた。左足から繰り出すプレーはシャープで、アイディアに富む。特にプレースキックが抜群。他にも身体能力抜群のセンターバック井出口(2年)を始め、テクニシャンを揃えている。初芝橋本は、去年快進撃でベスト4のメンバーがまだかなり残っている。ここも韓国人カン監督のもと、タフなサッカーをする。注目はコンサドーレ入りする大野。パワフルなストッパーだが、技術とスピードも兼ね備えている。1回戦の桐光戦は注目のカード。水戸商は、強力な中盤を持つチーム。夏の関東大会準優勝。浦和市立は、決定力が付けば全国レベル。どの選手も平均して能力が高いしょう(さんずいに松)南学園は全選手県外出身というハッピーなチーム。島根の人も応援のしがいがあるというものだ。だいたいこれ何て読むんだ?ワープロにも出せないし。旧校名は松江日大、野人岡野の出身校です。    

Cブロック〕レベルA:東海大五.室蘭大谷.市立船橋.韮崎
           B:各務原.南宇和.多々良学園.前橋育英.美鈴が丘.奈良育英  
           C:宜野湾.山形市商

 福岡では、Jリーグ全チームに誘われた天才ディフェンダー古賀を始め、圧倒的な人材を誇る東福岡が破れた。だが東海大五がこの県の代表になったのは決してフロックでない。アビスパ入りするボランチ近藤とフォワード佐々木や、国体ベスト4のメンバーを擁する強力なチーム。室蘭大谷は、レギュラーの半分が1・2年の若いチーム。しかし、戦術と技術が抜群。ゲームメーカーの間島と、センターバック斉藤は、18歳以下の日本代表候補。ついでだがミッドフィルダー冨田は、中学時代からテクニックを注目され、ユース代表候補にも入った逸材だが、伸び悩み結局高校3年間レギュラーを取れずに終わった。市船も、レベルの高い千葉で苦しみながらも予選を勝ち抜いた。1・2年と選手権では大活躍しているストライカー北嶋も、今年が最後。彼のセンスあふれるしなやかなプレーは注目。あと1点取れば、大会史上最多得点を樹立出来る。優勝した一昨年やベスト8の去年に比べ、タレントは揃っていても、詰めが甘く勝負弱いと言われる。そこで流れを変える存在として、潜在能力の高い1年生、西や松田の活躍に期待している。特に西は、大阪からやって来た「中盤の四銃士」の一員で、その時のプレーは、「日本にもあんなプレーを出来る選手が現れたのか」と関係者に言わしめたほど。まだレギュラーでなく、小柄で体力面に不安もあるが、一昨年の北嶋のようにラッキーボーイになる素質がある。韮崎も、今年のインターハイベスト4。駅前に「サッカー小僧」の像が建つほど、サッカー熱が高い街。ヴェルディ育ちのゲームメーカー東條や、最近評価の高いボランチ鶴見などに注目。特に鶴見は、まだ2年生だが、体格が良く、得点能力も抜群に高い。しかも左右のロングパスが正確で、「山梨大付属中」出身の(多分)秀才、将来性充分。各務原は、キャプテンで攻撃の中心を務める小井土、来年早稲田に来ます。前橋育英も、前ジュニアユース代表だった岡田と板橋がいる。主力は1・2年だが、能力は高い。控えのゴールキーパー星野飛雄馬に注目、しなくていい。美鈴が丘は、サッカー王国広島だが、今まで全く知られていなかったチーム。本当にどんな感じなのか判らないけど、多数の逸材と、実績を誇る広島皆実を破ったのだから、弱いはずがない。奈良育英は、グランパス入りするサイドバック中谷がいい。中学時代は、1500mで全国大会に出たという走力と、左足からの鋭いキック、素晴らしいバネは、まだ粗削りだが、将来性を高く評価されている。宜野湾は全選手1・2年生。それほどレベルの高くない沖縄で、ダークホース中のダークホースだったチーム。しかし、急激な成長は驚異で、来年以降が楽しみ。でも今年は無理。    

〔Dブロック〕レベルA:大船渡.修徳.鹿児島実.
           B:佐野日大.神戸弘陵.徳島商.郡山商.日章学園.仙台育英

           C:光星学院.米子東.佐賀学園

 大船渡は初出場で、凄く見たいチーム。特に小笠原(2年)は、次期ユース代表の中心を期待されるゲームメーカー。抜群の視野持ち、一発のパスで得点につなげるセンスがある。他にもスピードと技術を合わせ持つリベロで、来年早稲田に来る吉田を始め、計6人の東北選抜経験者を擁する。また1年に有望な選手が多いのも特徴で、3人がレギュラー。しかし、スタミナ不足を指摘され、残り10分が課題と言われる。冬までにどれだけ改善できるかが勝負。修徳は、インターハイ準優勝の帝京を破って勝ち上がった。大型でパスも出せるストッパーのキャプテン木谷、同じく長身ストライカー村らがいるものの、個人の能力より「全員サッカー」が持ち味のチーム。鹿実は去年静岡学園と共に、両校優勝を果たした。例年より小粒で、今年は難しいと思われていたが、夏の全日本ユースで優勝し、層の厚さを我々に見せつけた。ボランチの遠藤は、3人兄弟の末っ子で、兄は2人とも選手権準優勝を果たした選手、2番目の彰弘はアトランタで活躍した。彼の才能は、2人の兄をしのいでいるとも。個性的なテクニシャンが多く、抜群の攻撃力を誇るが、一番目につくのは前線からの激しいプレス。でも正直言ってこのブロックは、他と比べてみどころが少ないんです。                 

 《 総 括 》  

 サッカーのみならず、ゲームというのは、往々にして結果が予想を裏切るから面白いのかもしれない。まあ予想があるから、裏切られるのもまた楽しいのだ。            

      

    東     西
静岡学園 横綱 大 津
 市立船橋 大 関  国 見
    鹿児島実
  桐光学園  関脇   近大付
   大船渡  小結    丸岡
         前頭    大分
   室蘭大谷     東海大五
    修徳     初芝橋本
      四中工

  

 取りあえず、ここに挙がっていない高校が優勝するということはないでしょう。西の方が、いいチームをやや多く抱えてるようです。私が期待するのは勝負よりも、期待する選手の成長、新戦力の台頭といった将来へのステップだ。この大会を見て、未来の日本サッカーへの期待が、確信に変わるようなプレーを見たい。でもこの大会へ出て来ない中にも、実はもっといい選手がいるんです。それはまた別の話…。

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