歴史から学ぶ

 英国水彩画展を鑑賞する 13/02/27

 期待以上の成果があった 

新潟県立万代島美術館で、「巨匠たちの英国水彩画展」(2012年12月18日から2013年3月10日)を見た。作品は、英国マンチェスター大学ウイットワース美術館所蔵のものである。 見ようと思った動機は、ターナーの作品をたくさん見ることができるということであった。
期待以上の成果とは、次のとおり。

1.英国の水彩画は、実に精細な写真のような写実性が強い絵画であることを知った。
2.ターナーは、当初、写実性が高い作品群を描いたが、晩年、ほとんど抽象絵画を思わせる作品群を残している。
3.英国人も、日本人のように水墨画や、いわゆる日本画のような水彩画を描いている。
4.英国人は、田舎、田園を愛した。

 写真は水彩画を超えたか 

英国の水彩画家は、水彩画を描くのに、日本と違って、鉛筆、ペンを使い、松の葉、麦の穂などを精細に描いている。 まるで写真のような絵である。 私は、写真が現れるまでの過渡期の位置に、水彩画が繁栄したのだと思っていた。 ところが、今回、その考えを改める必要があることを知った。 その理由は、画家が実際に、その風景に感動し、それを他の人に伝えるために、感動を増幅して作品を描いているからである。 逆に言うと、写真は、風景が人に与える感動を、必ずしも忠実に表現できていないことになる。絵のような感動を、人に与えるには力不足であるということである。

ある画集で、水彩画に描かれた場所で、実際に写真を撮ってみて、絵と写真を比較対照させていたのをみることができた。 絵は写真と違っていた。写真には、水彩画のような感動を与える力がないのだ。写真で見るその風景はあまりにも平凡に見える。しかし、絵は、力強く、盛り上がって見える。絵では、湖、森、遠景が訴えてくるが、写真は湖だけが強調されている。写真は、なんでも忠実に取り込む。しかし、絵は、作者の心を動かしたものに力を入れて表現している。それ以外の部分は単なる風景の一部として、形としてではなく色彩のなかに取り込まれている。

今まで、写実性で、絵画は、写真に劣ると思っていたが、多いに反省すべきことがわかった。 写実的な絵画は、直接、それを見る者に、感動を与えるものを持っているのだ。 その技術が優れている画家の作品が、見る人に、より多くの感動を与えることができるのだと思う。 間違いなく、水彩画は写真よりすばらしい。

 ターナーは先駆者だったのだろうか 

私は、風景画を好む。ターナー(1775-1851)と同じ時代に活躍したコンスタブル(1776-1837)の絵の方が、私にはわかりやすく好きである。今回、ターナーの作品は30点あったのに対して、コンスタブルは1点のみであった。 ターナーの作品は、初期のものは、写実的でとてもわかりやすいが、晩年のものは、ほとんど抽象画である。淡い色彩だけで表現し、太陽に照らされる霧のようなものが多い。 はっきりと形がわかるものがなくなっている。 作者の感動を、より強く、直接、感性に訴えるには、現実の形ではなく、色彩なのだというかのように、形は漠然としてきている。例えば、よく見ると、建物のようだとか、あるいは船とマストのようだという程度で、判然としていない。 21世紀に生きる私たちがみると、19世紀はじめ、ターナーは、すでに後世の抽象絵画の発展を予期していたように見える。ターナーの絵の表現方法が、70余年の一生のなかで変遷している。ターナーは、自分の一生のなかで、およそ2世紀分を生きていたのかもしれない。

 英国人も日本人も水彩画を好んだようだ 

英国では、20世紀以降も水彩画は、描き続けられたようだ。 今回の作品群を見る限り、英国では、写実的な精細な描写が追求されたようだ。 ペンや鉛筆を使うので、実に細やかで、描くのにも多くの時間を費やしたと思う。 日本の水彩画は、確かに精細であるが、筆を使うので、どちらかと言うと大雑把な感じとなる。 また、描き方も遠近法を無視したものがおおい。しかし、確かに直接訴える力はある。 現代の日本画は、私が見る限り、洋画との違いを見つける方が難しい。 画材が違うだけなのだろうか。

 英国人も田舎を愛したようだ 

地方生まれの地方育ちの私には、田舎の風景は、絵でも写真でも見ると、ほっとする。 10代の頃、付近には、足を踏み入れたことのない森、沼沢地が残されていた。 どうしても、怖くて入れない場所さえあった。 その後、開拓されて田畑、住宅地になってしまったが、昔は、よく散歩したものである。 その場所に行くとほっとしたからである。

英国の場合、産業革命(1760-1830)で、農村が変わった。都市労働者として農村から都市へ多くの人が移り住んだ。だけど、心のどこかに、田舎の風景、田園風景が刻まれていて、郷愁として、なにかのおりに思い出されていたのかもしれない。 鬱蒼とした森、蛇行してできた静かな沼、収穫を終えた畑。昔、日本でもみなれた風景だったような気がする。 特に、コンスタブルの絵には、こんな風景が多い。遠くはなれた異国でも、日本人と同じような感動を持った画家がいたことに、本当に驚かされる。 私は、英国の田園風景の写真や絵を見ると、心が癒される。英国人も、こういう風景を好んでいたことになる。同じような感動を、空間と時間を超えて、田園風景から得ていたとすると、本当に不思議なことに思えてならない。






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