"LORD OF THE DANCE"東京公演特集

2000年1月26日〜2月2日に東京国際フォーラムホールA(有楽町)で行われたダンスパフォーマンス"LORD OF THE DANCE(LOTD)"の初来日公演の観賞レポートをまとめま した。
東京公演初日、29日、31日と3回観に行ったので、レポートも3公演分。おまけに99年2月にラスベガスのLOTD初体験と、東京公演との比較もあります。
さあ、まずはショーの興奮をそのままぶつけた初日のレポートです。

いよいよ!待ってました!ああ遂に!あの!LORD OF THE DANCEがやってきた!
99年2月にラスベガスのホテル・ニューヨーク・ニューヨークで観て以来、一指乱れぬタップの虜になってしまったLORD OF THE DANCE!もう一公演観るために旅行を伸ばそうかとさえ考えたLORD OF THE DANCE!ダンスの魅力をこれでもかと見せつけて、アメリカのエンターテインメントの深さを思い知らせたLORD OF THE DANCE!ビデオを観て、サントラを聴くたびにライブの興奮を懐かしく思い出しては溜め息ついたLORD OF THE DANCE!

ああ、ついに、この日が来たんだ。LORD OF THE DANCE(LOTD)東京公演・・なんて美しい響きだろう。どんなに待っただろう。朝から心は東京国際フォーラムに飛んでしまっていた。
東京国際フォーラムに行くのは99年3月の"RIVERDANCE"来日公演以来だ。ホールに向かうLOTDの観客はリバーダンスとだいぶかぶっているのだろう、皆期待に顔を輝かせている。開演15分前くらいに到着。客席を見渡すと、1階席は9割方埋まっている。よしよし。当日券はSAB席それぞれ出ていたようだ。
さっそくパンフレットとTシャツを買う。このパンフレット、アメリカ版らしいのだけれど、英語でLOTDがどんなに人気があるかってことを簡単に紹介している。日本版をつくる程売れないのかな。うーむ。まあ、英語なのはいいとしても、ダンサーの紹介がないのにはびっくりした。ふつうあるだろ、誰が躍ってるとか、バイオリンは誰とか。名前があるのは元主役のプロデューサーのマイケル・フラットレーだけ。まあLOTDはマイケルが自分が主役躍るためにつくった舞台だから、マイケルの名前がでるのは当然としても、引退した後も後輩ダンサーが有名になるのは許せないらしい。
まあいいや。大事なのはステージだ。

今日の席は先行予約で取っただけあって、舞台正面15列目という絶好の位置。ダンサーの表情や足元まではっきり見える。隣のカップルはリバーダンスを観たことがあるらしい。後ろでは音響がどうとか、ニューヨークではどうだとかいった会話をしている中年夫婦。周囲のお客さんはリバーダンスやLOTDを観たことがある人が多かったようで、手拍子ししたりで楽しんでいた。
そう、このショーはおとなしく眺めているよりは、観客が手拍子や掛け声で盛り上げて、ステージがそれに応えて一層張り切って、観客がもっと喜ぶ、といっやりとりが楽しめるのだ。

前半40分に休憩をはさんで後半45分のステージで、7時開始で9時ちょっと過ぎに終了。前半は登場人物紹介。主人公のロード、妖精、ロードの恋人、娼婦、暗黒のロードらがそれぞれ自分のテーマ曲に乗ってダンスを披露。お楽しみのラインタップ(ラインダンスのタップ版)もたっぷりある。見事だ。ウエットスーツみたいな衣装のバイオリンデュオ、アイルランドらしいグリーンのドレスのソロシンガーも登場。ダンスでヒートアップした舞台を静める。
前半はこれといったストーリー展開はなくて、淡々と進む。この辺はリバーダンスと似てる。ストーリーはなくても、テクニックで魅せる舞台だ。
場面が変わると、無意味に吊り屋根が動いたり、赤い照明がちらついたりする。舞台装置にはえらく凝っている。ダンスをじっくり見せれば、セットなんていらないのに。そうそう、2階席のお客さん用にか、舞台脇に大きなスクリーンを置いて、ダンサーの表情や足元を追ってた。サービスなんだろうけど、視界にスクリーンが入って邪魔なんだな。

後半に入ると、物語が動き出す。妖精が暗黒ロードに襲われ、大事な笛を折られてしまう!ピンチ!ここ、暗黒戦士たちがC3POみたいな金ぴか妖精をなぶるなぶる。輪になって妖精に詰め寄るところが見せ場。暗黒戦士がんばれ!妖精をやっつけろ!

暗黒戦士と暗黒ロードって、なぜか主人公のロードや正義戦士たちよりかっこいいのだ。この舞台、マイケルが自分を主役にする舞台を自作自演したくらいだから、主役のロードが重要なんだけれど、このロード、細いんだよなあ。上手いんだけれど、華奢で存在感が薄い。若造って感じ。ひょっとして、マイケルは「今度のロードもマイケルには及ばなかったな」と思わせるために、わざと華奢なダンサーをロードに選んでるんじゃない?

姫ぎみのピンチに王子様登場。ロードが子分を引き連れて妖精を助けに来ちゃうのだ。ロードと暗黒ロードとの一騎討ち(タップダンスの早さで強さが決まるらしい)。華奢な体格のロードとがっしりした上半身の暗黒ロード。どうみても暗黒ロードの勝ちだと思うのだけれど、なぜかロードが勝ってしまう。折られた笛も元通りにして、平和が戻ったかに見えた。

ところが、暗黒ロードは卑劣な罠を企んでいた。娼婦にロードを誘惑させて、ロードが一人になったところを暗黒戦士が一斉に襲うのだ。不意を突かれて捕われてしまうロード(やった!)。ロードの証しであるベルト(ちゃちい マイケルはすごーく立派なベルトしてたのに・・)も奪われ、暗黒戦士が雄叫びを挙げる(いいぞ!)中で処刑されるロード。呆気無く殺されてしまう。
部下にベルトをつけさせ、得意満面の暗黒ロード。遂に君の時代だ。おめでとう。
ところが、妖精がロードを復活させてしまう。余計なことを。死んでから1分足らずで復活するロード。形成逆転、今度は暗黒ロードと暗黒戦士たちが簡単にやられてしまう。強そうなのに・・戦闘シーンがあっさりしすぎなんだよなぁ。

正義が戻ったところでフィナーレ。正義戦士も暗黒戦士もロードの恋人も娼婦も暗黒ロードも全員揃ったラインタップを最後にたっぷり披露。迫力のダンス。打撃音。すごい。

前半は堅かった客席も、フィナーレではダンスに手拍子を合わせ一緒に盛り上がる。
アンコールではスタンディングオベーションも出て(最初に立ち上がったのは私だったかも)、満足してステージを終えた。

満足したんだけど、期待通りだったんだけど、期待以上じゃなかったかな。
この1年で期待が膨らみ過ぎたのと、リバーダンスと比べると構成がやや劣るので、もう最高!大満足!とまでは言えない。ひょっとしてダンサーの皆さん時差ボケ?
それから、音響が良くなかった。タップの打撃音を拾う床マイクの具合が良くないのか、躍る場所によってはタップ音がこもったりかぶったりしていたのが残念。
次のステージではもっと良くなっていることを期待。土曜日の夜の回と火曜日に行く予定。

LORD OF THE DANCE日本公演とラスベガス公演
東京国際フォーラム・ホールAにて絶賛公演中のLOTD東京公演と、99年2月にラスベガス(以下LV)のブロードウェイシアター(ホテル・ニューヨーク・ニューヨーク内)で観たラスベガス公演での気になった違いをいくつか。

1.劇場
(東京)5000人収容の国際フォーラムは2階席のてっぺんからだと、ダンサーの見分け がつかないくらいでかいんだよなぁ。お客さんをいっぱい入れたいのはわかるけれど、巨大すぎ。
(LV)規模は池袋サンシャイン劇場くらいで、キャパ1000人くらいだと思う。2階最 前列から観たんだけど、ダンサーの表情まではっきり見えた。

2.値段
(東京)S席12000円〜B席8000円
高ーい!"RIVERDANCE"はS席10500円だった(多分)ので、値上げという印象。
(LV)55ドル(多分均一)
ちなみに同時期にLVでやっていたディビット・カパーフィールド・スーパーイリュージョンは80ドルだった。LVではいくつもショーがあったけれど、LOTDの55ドルはカパーフィールドに次いで高価だった。

3.舞台装置
(東京)大相撲みたいな吊り屋根がグワーンと動いたり、舞台後方の壁が倒れてダンサーが登場したり、背面一面に白ライトがちりばめられたり、赤ライトが昆虫みたいに首を振ったり。舞台後方は2階建てで、バンドが陣取る。ステージ脇の大スクリーンがダンサーの表情や足元を追う。
えらく凝った舞台装置だった。こけおどしめいたセットに金かけないでチケット安くしてくれればいいのに・・
(LV)シンプルなつくり。舞台装置に頼らずにパフォーマンスを見せるステージ。屋根なし。壁は倒れず、ダンサーは常に書割の割れ目から登場。背面白ライトなし。赤ライトも目立たなかった。バンドの姿は見えない。もちろんスクリーンなし。

4.バンド
(東京)舞台後方2階席で楽しげに演奏。フィドルも2階にいた。フィドルの衣装は一人はウエットスーツみたいなゴムつなぎで緑のフィドル、もう一人は黒半そで&黒ショートパンツ&網タイツで青フィドル。
(LV)バンドいたのかな?姿が見えないので録音かと思ったけど、そんなことないだろうな。アンコールでも出てこなかった。フィドルの衣装は覚えてないけど、2人。東京より激しく長く、観客が息を詰らせて、たまらず拍手が出るくらいまで演奏してた。

5.観客
(LV)さすがはアメリカ人。うるさいくらいの歓声、手拍子。周囲の観客と手拍子で一緒に楽しめる。
(東京)おとなしい。遠慮してるのか、手拍子は少ないし、掛け声はほとんどない。手拍子もダンサーに誘われてようやく、という感じ。まだまだ「ショーは静かに観るもの」という教育から抜け出せないのか。出演者が初日に乗りきれなかったのは、観客が遠慮していたからじゃないかな。あれ?もっと拍手が来るはずなのに・・つまらないのかな??って戸惑っていたように見えた。
私も、周囲のおとなしさに引きずられて、前半はかなり遠慮してしまった。ここで手拍子したいのに・・誰もしてないし・・。こういうのはいかん!誰かが思いきって始めれば、周りの「一緒に楽しみたいけど、手拍子なんかしていいのかな?」というお客さんにも伝染するはず。
相手はプロのエンターテイナーなんだから、観客がこんなに楽しんでるんなら、もっと頑張ろう、サービスしようと張りきってくれるはず。

いろいろ書いたけれど、だからLVの方が東京より良かったとは思わない。LVは常設で、東京はわずか10回かそこらの引越公演なのだから、見せ方が違うのは当然。ただ、出演者が全体にいまいち調子が悪いようだった。それは時差ぼけなのか、疲れてるのか、観客のせいか、ひょっとして「どうせ日本の観客なんてわからないだろうから」と手を抜いているのか(そんなことないだろうけど)。
次に観に行く土曜の夜のステージが素晴らしいできであることを期待する。

LORD OF THE DANCE東京公演 1/29 夜
LOTDが化けた!初日とは動きが全然違う!同じメンバーが同じショーをやってるとは思えない、すばらしい出来だった。いやぁ最高のステージ!見ないと後悔するよ!!
何が良くなったって具体的には言えないんだけれど、生きの良さ、動きのキレ、全体の流れ、ショーの完成度が初日より格段に良くなっていた。音響も気にならなかった。

ダンサーの皆さんも堅さがとれて、いい具合にリラックスしてるようだった。カーテンコールでも、初日の笑顔は無理してんのかなとも思ったけど、今日は満足してるようだった。やっぱり初日は時差ボケだったんだ。このステージがほんとのLOTDなんだね。目に耳に心にドッカンドカンと衝撃を受けた。そう、これが観たかったんだよ!ありがとう!!
1曲終わるたびにドキドキして、興奮がどんどん高まっていった。ステージに魅せられて、惹き付けられて、一瞬も目をはなせない。とてもじっと座ってなんかいられない。

初日に比べるとお客さんもノリがよかった。最後の方はプリンシパルに促されなくても手拍子が出てたし。終盤からアンコールにかけては手拍子しっぱなしで手のひらが痛くなっちゃったよ。アンコールでは総立ち(15列目から見たら)でスタンディングオベーション。感動。
31日にもう1回(これが最後)観るので、次回もすばらしいステージをみせてくれることを期待している。

そうそう、今日は当日券も完売して、ダフ屋が出てた。チケット売れて何よりだ。有名どころでは、西田敏之さんとお仲間のヒゲの渋ーい俳優さん(名前出てこない)たちを見かけた。

LORD OF THE DANCE東京公演 1/31 夜
3回目のLOTDは、始めてダブルキャストのBキャストに当たった。ロード、姫、暗黒ロード、ジプシーといった主要キャストが替わっていたけれど、妖精や演奏、シンガーはAキャストと同じ。戦士や娘たちも一部入れ替わっていたみたい。
同じ役を同じ振り付けで踊っても、AキャストとBキャストが演じるのはやっぱり違う。ダンサーの個性が出ていて、どちらが優れているというのではなくて、違いを楽しめた。
言いたい放題の勝手な印象なので、真面目に取らないでね。

まずはロード。さらさらヘアで客席のお姉様たちに「どう?かっこいい?」と媚びを売るAキャストとはうって変わって、若い頃のリバー・フェニックスって感じのワルっぽさ、つっぱって「カッコいいだろう どーだ!」と気取る感じ。いいぞ。
どっちもマイケルのアクの強さをちょっとでも受け継いだらずっと良くなると思う。ちょっとあっさりしすぎ。まあ、あれは中年の魅力だから若者には無理かも。

姫。Bキャストの姫は娘たちの中でめずらしくストレートにした輝く金髪が目を引く。ラックスのコマーシャルでシャンプーしてそうな髪だ。「殿は私のものよ 手を出したら許さない」といったプライドの高さで、扱いにくそう。Aキャストはおとぎ話の姫みたいに、控えめでしとやか、「殿の帰りを待ってます」という印象。

ジプシー。Bキャストは豊満なボディで自信たっぷりに踊って、「私がこの街のナンバーワン娼婦なのよ」ってな誇りが感じられる、百戦錬磨の女性。Aキャストは黒髪でいかにもジプシーって感じの可愛くてほっそりした素敵な娘なんだけど、小さな頃から苦労して来たんだろうねと可哀想になっちゃう。上半身を反らして胸を協調する誘惑ポーズも、Aキャストの子がやると「そんな背伸びしなくても・・」って感じ。殿、この子に振り向いてあげてよ。最初のソロの振りがちょっと違った。

暗黒ロード。一番キャラクターが似ている感じだった。Bキャストはマスクの下のくちびるがプクッとしてかわいいぞ。

それから、その他大勢の戦士なんだけれど毎回気になるダンサーをひとり。勝手に「緑くん」と呼んでいる、後半のお祭りダンスの場面で若草色のポロシャツに白に近い薄緑のパンツで踊る、ちょっと太めの坊や。
やせたダンサーたちの中で、結構目立ってて、普段は暗黒戦士隊の向かって左側で地味に踊ってるんだけれど、ステップ間違えるんじゃないかとヒヤヒヤして見ちゃう。レッスン中にしょっちゅうミスして泣きながら練習する姿が目に浮かぶ。お祭りダンスから退場する時に、背の高い女性ダンサーと組んで下がるんだけれど、背中が幸せそうで、「夢がかなって良かったね」と声をかけたくなった。

気に入った場面をいくつか。
後半の暗黒ロードと暗黒戦士たちがオフタイムに仮面をとって娼婦と遊びに行く場面。暗黒ロードはジプシーとさっさと消えちゃうんだけれど、残った戦士たちは娼婦と踊る。すごく哀しい場面だ。静かな踊りから、正義戦士たちと同じ若者なのに何の因果か暗黒戦士とされて、華やかな表舞台には決して出られない苦しみ、悲しみが伝わってくる。続くバイオリンデュオの哀しげな演奏と相まって、たまらない気持ちになる。地味だけれど、このショーの中で一番気に入った場面だな。
直後のお祭り(結婚式?)での若者と娘たちの晴れやかなダンスを、招待されない暗黒戦士たちは物陰から覗いては憎しみを募らせるんだろうな。辛いぜ。
姫とジプシーの対立もそう。運命のいたずらで一方は姫、片や娼婦だけれど、同じ血が流れてるんだよって感じる。
って階級闘争っぽくなっちゃったぜ。

観客のこと
お客さんの多くは手拍子したりには慣れてないけれど、少数の人でも積極的に手拍子や掛け声をかけて、他のお客さんをリードしていけば、遠からず変わってくるはず。「手拍子したいけれど、してもいいのかわからない」と思ってるお客さんはいっぱいいるんだから。風土だからと諦めずに、行動して行こう。
何しろ、日本には伝統の掛け声文化があるのだから、盛り上がる下地はあるはず。歌舞伎で玉三郎が出て来たら「よっ成駒屋!」とか声がかかるでしょ?

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