活性酸素:緑茶成分のカテキン

緑茶成分のカテキンについて -------------------------------------------------------------------------------- 日本人の死因の第 1位はガンであるが、 2位の脳卒中、 3位の心疾患を併せると死因のトップは動脈硬化起因疾患となる。最近、その予防に大いに期待されているのが抗酸化物質で、それを多量に含む緑茶、赤ワインが注目されている。 -------------------------------------------------------------------------------- 1.活性酸素 生物が水中より陸上に上がって生活を始めたとき、解決すべき一番大きな問題は、高分圧の酸素に如何に耐えるかと言うことであったと思われる。現在、地球上で生息している生物の多くは、酸素毒性を防御しながら、酸化によるエネルギ−を効率的に利用していることになる。 (1)活性酸素とは 活性酸素O2-とは、酸素分子が 1電子還元されて生じるラジカル*で、活性化されたために反応性が高くなり、無差別に相手を酸化する能力のある状態の酸素をいう。この活性酸素は、周囲に反応するものが無い場合は蛍光を発する。 活性酸素には、ス−パ−オキシドO2-、ヒドロキシラジカルOH・、過酸化水素H2O2、一重項酸素1O2 などが含まれる。過酸化水素、 1重項酸素は不対電子を有しないので、従ってフリ−ラジカルではない。しかし、これらは分解したり、他の物質と反応して、フリ−ラジカルを生み出すもとになり、しかもその発生したフリ−ラジカルの酸化活性は極めて高い。そのため、ス−パ−オキシド、ヒドロキシラジカルとともに活性酸素と呼ばれる。 DNA(遺伝子)は、活性酸素によって傷害を受けて変化すると、その生体に必要なタンパク質を作るための暗号情報が変わってしまうと、突然変異が引き起こされたり、ガンが発生することになる。 この機序は、活性酸素は各細胞の中で、DNAがある核の近くでも産生されるので、この活性酸素はDNA構成分子から電子を奪う。この場合の電子を奪うとは、DNAの分子と活性酸素が結合することを意味する。その結果、DNAの形が変わって、その暗号情報が壊れDNAが障害を受ける。そしてこのDNAの障害が、ガンを発生させる最初の引き金であることは、医学的にも広く認められている。 その他、心筋梗塞、脳卒中や老人性痴呆は、いずれも活性酸素による酸化反応が度重なって、細胞や遺伝子に傷が付くのが発端となる。 問題(1)に戻る *ラジカルradical: ラジカルradical とは、原子は陽子、中性子、電子からなり、前 2者は核を形成し、電子は核周囲の電子軌道に配列する。一つの電子軌道には通常二つの電  子が対pairになって存在するが、なかには最外殻の電子軌道に電子が一つしか存在しない原子、原子団があり、これをラジカルという。このような他を酸化しやすい不安定な状態をラジカルという。また、化学反応において変化せず、そのまま移動する一群の原子で、分子を構成する基本的な要素となる。 フリ−ラジカル free radical とは、不対電子を有する原子や分子である。 電子pairによって原子同士が互いに結合している分子を 1重項と呼んでいる。 細胞を構成している成分の大部分は 1重項分子であるが、このpairを構成している電子の 1個が反応の途中でとれたとき、その分子をラジカルと呼び 2重項状態となる。 細胞の生化学反応でも僅かのラジカルは常に生じているが、放射線照射、紫外線暴露などにより、これら高エネルギ−の電磁波によって、電子pairから電子が奪われるので、細胞内のラジカルは極めて多くなり、放射線障害、日焼けの原因となる。 (2)活性酸素の産生 ATPは生物にとって生存を続けるためには必須であるが、貯えることができず、絶えず体内で産生していなければならない。このエネルギ−産生には食物を酸化的に代謝する必要があり、ヒト成人では 2,500Kcalほどの食物を、呼吸した 500lの酸素( 3重項酸素:3O2)によって酸化し、エネルギ−を産生して利用している。 呼吸によって体内に取り込まれた酸素の中の約 1%は、反応性の高い分子(活性体内で活性酸素が発生する主なところは、細胞質のミトコンドリアと、白血球*細胞表面である。 *好中球では、侵入した細菌を排除するために活性酸素を産生することが確認されている。 ミトコンドリアでは酸素呼吸に伴い活性酸素が常に発生している。酸素呼吸は吸収した分子状の酸素O2 がミトコンドリアの電子伝達系で電子を受取り、水にまで還元されて成立する。その還元の途中で、ス−パ−オキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル及び 1重項酸素などの活性酸素が出てくる。 -------------------------------------------------------------------------------- 2.緑茶の抗酸化成分 緑茶、野菜や果物には、活性酸素を消去する効果の高いポリフェノ−ル類、カロテノイド(α-、β-カロテン)、VC、VEなどが含まれている。 (1)生体内での過酸化反応 生体内での物質代謝や炎症の際に活性酸素が産生される。この活性酸素は、細胞構成成分である脂質やタンパク質(酵素を含む)、DNAなどを無差別に攻撃して種々の障害を起こす。活性酸素による生体内での過酸化反応のため細胞を構成するすべての脂質、タンパク質、核酸は傷害を受け、膜の損傷、タンパク質の変性、遺伝子の変異をもたらす。 しかし、血中や組織に抗酸化物質が高い濃度で存在しておれば、この活性酸素を効率よく消去するので、活性酸素による障害は少なくなる。 (2)ポリフェノ−ル類とは ポリフェノ−ル類とはフェノ−ル性OHを複数個持っているものをいう。つまり、ポリフェノ−ル類は、その構造に 2個以上のフェノ−ル性の水酸基−OHを持ち、活性酸素を消去して無毒化する作用が強い。このポリフェノ−ル類の酸素毒性から生体を防御する抗酸化作用で、動脈硬化、老化、発ガン予防に役立つと考えられている。なお、VEは 1個の−OHを持っている。 ポリフェノ−ル類は、広義にはフラボノイドと総称される化合物群であるが、カテキンのように化学構造としてフラボノイド骨格を持っているものと、持っていないノンフラボノイドに分けられる。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔表 1〕茶・野菜などに含まれているポリフェノ−ル類 ポリフェノ−ル類 主として含有している茶・野菜など (1)フラボノイド (a)カテキン フラバノ−ル誘導体で緑茶などに多い (b)テアフラビン 紅茶、ウ−ロン茶などに含まれる (c)ルチン フラボノ−ル配糖体ケルセチンで、玉ネギ、ソバなどに多い (d)ヘスペリジン フラバノン配糖体ヘスペレチンで、ミカンに多い (e)ナリンギン フラバノン配糖体ナリンゲニンで、ミカンに多い (f)シアニン クリサンテミン アントシアニジン配糖体で、赤カブ、イチゴ、ブドウ、ブル−ベリ−など色の付いた野菜や果物に多い (2)ノンフラボノイド カフェイン酸 コ−ヒ−、ワイン、リンゴ、サツマ芋、大豆、オリ−ブ油 クロゲニン酸 タバコなどに含まれる (3)ポリフェノ−ル類と動脈硬化 悪玉コレステロ−ルを含むことで知られているLDL(低比重リポタンパク)は、生体の脳、筋肉などの臓器に脂質を運ぶ重要な役目を持っている。このLDLが活性酸素などによって酸化されて、動脈血管に取り込まれて沈着するようになり、動脈硬化が進行する。つまり、LDLが酸化されなければ動脈硬化は進行しない。 LDLは細胞膜などにあるLDL受容体を介して、組織にコレステロ−ルを供給しているが、LDL受容体のLDLの受け入れには限度があるため、過剰のLDLが血中に多くなり、その滞留時間が長くなると、LDLは血管壁の内皮細胞の間隙を通って内皮下に侵入する。この皮下に侵入したLDLは活性酸素の影響を受ける機会が多くなり、酸化変性LDLに変化する。 動脈血管の内壁の表面にある血管内皮細胞は、酸化を受けたLDLだけを通常のル−トであるLDL受容体を介さないで血管壁側に取り込むようになる。同時に、血管内皮細胞の裏側の動脈壁にはマクロファ−ジや単球などの食細胞が入り込み、酸化変性したLDLを異物と認識し、際限なく貪食するようになる。 その結果、マクロファ−ジや単球などの食細胞は食べ過ぎによって、泡沫細胞となり、ついには死滅し、これが血管内皮と外側の平滑筋細胞の間に貯留する。泡沫細胞は次第に退化して繊維状となり弾力性を失う。これが動脈硬化の発生プロセスである。 従ってLDLの酸化を防止することが、動脈硬化の進行を防止することになり、このような理由から、茶に含まれるカテキンや、赤ワインのカフェイン酸などの抗酸化作用を持つポリフェノ−ルが注目されている。 問題(6)に戻る 〔参考〕LDLのアゾ化合物による酸化時間測定 採血した血液を血漿と血球に分け、血漿から超遠心機でLDLを分離して、このLDLに酸化促進剤のアゾ化合物を加えて37℃で加温する。 アゾ化合物によってLDLが酸化し始めるまでの時間(time lag)を測定して、この時間の長短で判定する。時間が長ければLDLは悪玉になり難いし、短ければ悪玉になり易い。緑茶や赤ワインはこの時間を延長する。 これは、フランスでは赤ワインの国民 1人あたり年間消費量が、66.8lと多いことが、冠動脈硬化疾患の低死亡率につながるというフレンチ・パラドックスの例でも説明される。 -------------------------------------------------------------------------------- 3.カテキンについて 茶の効用の多くがカテキンによることが、ここ10年位の研究で次第に明らかにされた。現在、カテキンの健康にとっての効果として最も注目されているのは、抗ガン作用と抗微生物作用である。抗ガン作用については、静岡県内で緑茶をよく飲む地域ほど、ガンによる死亡率が低いという疫学的研究が発端であった。また、米国の国立研究機関によってガンの予防薬としてのカテキンが検討されている。 (1)カテキンとは 1947年にBradfield が茶から(-)-エピガロカテキンガレ−ト(EGCG)を単離しているが、カテキンという現在使用されている総称的な意味の用語は、1990年頃から使われ始めた。カテキンはポリフェノ−ル構造を持った低分子化合物で、フラボノイドの一種である。緑茶ポリフェノ−ルは大部分が フラバン-3-オ−ル型のカテキン類で、特有の苦味、渋味を持っており、緑茶の味に大きく寄与している。 なお、茶の旨味のもとはテアニン、苦味のもとはカフェインである。 問題(4)に戻る カテキンは、ツバキ科TheaceaeのチャCamellia sinensis の葉や葉芽に含まれている渋味の成分で、緑茶中に10〜15%含有している(煎茶で約15%、番茶で約13%、玉露で約10%)。化学名をflavan-3-olsといいポリフェノ−ル構造をもつ。なお、ある種のカテキンは他の植物にも含まれるが、茶カテキン類は茶に特有である。紅茶やウ−ロン茶では製造過程で、カテキン類が縮重合し、赤みを帯びたカテキン 2量体などになるが、それらの生理活性はカテキンに準じる。 問題(5)に戻る 緑茶を熱湯抽出し、この熱水可溶分からカテキン以外の成分を除去すると、次の 5種類のカテキンが含まれている。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔表 2〕茶カテキン組成表 構成成分 茶カテキン(%) (-)-エピガロカテキンガレ−ト(EGCG) 53.9% ・・・・没食子酸エステル (-)-エピガロカテキン(EGC) 17.6% (-)-エピカテキンガレ−ト(ECG) 12.5 ・・・・没食子酸エステル (-)-エピカテキン(EC) 5.8% (+)-ガロカテキン(GC) 1.4% 計 91.2 茶カテキンは茶固有であるが、その他のカテキンはワインやココアなどに含まれている。また、カテキン類は容易に自動酸化や酵素酸化を受けるので、紅茶、ウ−ロン茶などの発酵茶、半発酵茶はカテキンの酸化重合体を含有している。 紅茶にはカテキンが約 5%含まれ、カテキン 2分子が酸化縮合したテアフラビンなどが約 5%、その他、高分子ポリフェノ−ルが約11%と含まれている。テアフラビンは紅茶の色素である。カテキンやテアフラビンは水溶性で、熱湯で緑茶や紅茶をいれると渋くなる。 (2)緑茶とカテキン 茶の葉に存在するポリフェノ−ル酸化酵素を熱で不活化すると緑茶ができる。茶の葉はカテキン、カフェイン、アミノ酸、糖、デキストラン、スタ−チ、セルロ−ス、ペクチン、植物色素などが主要成分であるが、その他 200種以上の物質を含む。 以前には茶の渋味は収斂作用のあるタンニンによると考えられていた。タンニンもポリフェノ−ル類であるが、カテキンとは構造も機能も違う。タンニンの一種の縮合型タンニンの最小単位がカテキンである。EGCGの分子量は 458で、タンニンは数千から数万である。タンニンは柿や五倍子などにも含まれている。 酸素を利用する好気的生物は、生存するために酸素を利用しているが、一方で常に活性酸素や過酸化脂質などの酸素毒の影響を受けている。 動物では活性酸素分解酵素(superoxide dismutase:SOD活性)、カタラ−ゼ、グルタチオンペルオキシダ−ゼなどの酵素群や、VCやVEなどの作用によって、酸素毒から防御している。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔表 3〕緑茶中の主な抗酸化性成分 成分 乾燥茶葉100g中の含量 緑茶ポリフェノ−ル 10〜18g ビタミンC 150〜250mg ビタミンE 25〜70mg β−カロテン 13〜29mg ヒスチジン 2.7〜75mg メチオニン 0.4mg チロシン 3.5〜44mg セレン 0.1〜0.6ppm 亜鉛 24〜38ppm 動物よりさらに太陽の光と酸素を利用する植物では、積極的に抗酸化性物質を生産するようになった。その代表的なものがフラボノイドで、確認されているものだけでも 4,000種類を超えている。 これらフラボノイドはその構造の中に、通常複数のフェノ−ル性水酸基を有するために、ポリフェノ−ル化合物に分類される。緑茶中は特にポリフェノ−ル化合物が豊富であり、乾燥茶葉中に10〜18%も含有している。 問題(3)に戻る 緑茶にはこのポリフェノ−ルの他に、〔表 3〕の抗酸化性成分が含まれている。 緑茶ポリフェノ−ルの抗酸化性は、フェノ−ル性水酸基によるラジカル(活性酸素)の除去作用に起因すると考えられている。 その機構としてB環のフェノ−ル 性水酸基の水素原子供与で説明される。 問題(2)に戻る まず 1分子のラジカル(R・)に対して水素を供与してラジカルの連鎖反応を停止させる。その際、自らフェノオキシラジカルとなったポリフェノ−ルはさらにもう 1分子のラジカルを捕捉して最終的にキノン型構造をとるか、フェノオキシラジカル同士が重合して安定生成物となる。 〔参考〕緑茶 茶は中国南部が原産地とされるが、次第に栽培地域が拡がり、現在では、熱帯、亜熱帯を中心に多くの地域で栽培されている。インド・スリランカなど熱帯地域では葉が大きく渋味が強い紅茶に適したアッサム種が栽培され、中国、日本など亜熱帯、温帯では葉が小さく、渋味が適度で緑茶に適したシナ種が栽培される。同じ葉から紅茶も緑茶も製造できるが、摘んだ葉を直ちに加熱処理し、緑色を保てば緑茶になり、摘んだ葉を激しく揉んで褐変させた(発酵という)後、加熱処理すれば紅茶となる。中国南部で作られるウ−ロン茶は生葉を柔らかく揉んでから加熱処理したものである。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔表 4〕茶に関わる研究の経過 1820年 Rungeによるカフェインの発見 1888年 Cossel によるテオフィリンの抽出 1924年 緑茶にビタミンC 1947年 BradfieldによるEGCGの分離 1981年 齲歯予防効果 1984年 ガン増殖抑制効果 1988年 抗菌・殺菌作用 1990年 抗インフルエンザウイルス作用 茶の製造方法により次のように分類される。 不発酵茶:緑茶 蒸し製不発酵茶:煎茶、番茶、てん茶(抹茶)、玉露 釜炒り製不発酵茶:中国緑茶、玉緑茶 半発酵茶:ウ−ロン茶 強発酵茶:紅茶 後発酵茶:プ−アル茶 〔参考〕カテキン以外の緑茶成分の効果 カフェイン:中枢神経興奮、眠気防止、強心・利尿、代謝亢進 ビタミン類(ビタミンC、E、β−カロチン):抗酸化、ガン予防、老化防止 γ−アミノ酪酸:血圧上昇抑制 フッ素  :齲歯予防 (3)カテキンの作用 カテキン効果の報告は 〔表 5〕に示すように多いが、ほとんどが基礎的な研究結果で、臨床的に十分確認されたものではないので今後の研究が期待される。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔表 5〕カテキン類の主な生体調節作用 主な生体調節作用 研究報告 抗酸化作用 抗酸化活性はB環のフェノ−ル性水酸基の水素供与能によると考えられている。→・緑茶とカテキン〔図2〕 抗酸化度:EGCG>EGC>ECG>EC 発ガン抑制作用 抗腫瘍作用 突然変異抑制作用 in vivo(マウス、ラット) において肺、胃、小腸、十二指腸、大腸、膵臓、乳腺、皮膚などで発ガン抑制作用が報告。 直接的・間接的に損傷を受けたDNAの修復系に働き、突然変異を抑制すると考えられている。 血中コレステロ−ル低下作用 体内の過剰なコレステロ−ルの排泄を促進すると考えられている(食事由来コレステロ−ルが小腸でカテキンと結合し不溶性となり、胆汁酸ミセルとして排泄され体外に排出)。 血圧上昇抑制作用 レニン−アンジオテンシン系の酵素阻害。 抗菌作用 殺菌作用 カテキンは脂質二重層からなる細菌細胞膜を破壊して殺菌作用を示す。特にグラム陽性球菌とマイコプラズマの感受性が高い。 抗菌力:ECG>EGCG>EGC>EC 〔カテキン類が抗菌作用を示す菌〕 問題(9)に戻る 食中毒原因菌 黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラなど(O-157) 腸管感染症起因菌 コレラ菌、赤痢菌など 呼吸器感染症起因菌 百日咳菌、マイコプラズマなど 白癬菌、MRSA 抗ウイルス作用 ロタウイルス、ポリオウイルス、インフルエンザウイルス等 抗齲蝕作用 虫歯予防(虫歯菌増殖阻止) 脱臭作用 口臭予防(口臭原因物質メチルメルカプタンの除去効果)、魚臭(トリメチルアミン)の除去効果 血糖上昇抑制作用 デンプン消化酵素の阻害作用 整腸作用 腸内細菌叢の改善 その他 抗アレルギ−作用、血小板凝集抑制作用 抗酸化物質: 最近、抗酸化物の中で注目されているのがフラボノイドで、植物界に広く分布している。フラボン酸、カテキン類、フラバノン類、アントシアニン類などが含まれる。赤ワインは赤色色素のアントシアニン類をはじめカテキン類など豊富に含有している。赤ワインがフラボノイドとともに注目されたのは「フレンチ・パラドックス」と呼ばれる疫学的事実との関連からである。 問題(10)に戻る 生体は血中にVE、カロテノイド、ユビキノ−ルなど脂溶性の抗酸化物と、VC、尿酸、アルブミン、ビリルビンなど水溶性のものが存在する。そして脂溶性のものはLDLの内側で、また水溶性のものは外側で、それぞれLDLが酸化されるのを防いでいる。 抗酸化物には、代表的なVE、VC、カロテノイド以外にもフラボノイド、コ−ヒ−酸誘導体、セサミノ−ル、フィチン酸などがあり、食物から摂取されて体内で酸化変性LDLの生成を抑制する。 胃ガンとカテキン: 発ガン物質を動物に投与し、食道、胃などに腫瘍を発生させる系で、茶カテキンは経口投与が抗腫瘍作用を示す報告が多い。 小国らは静岡県のある地域における胃ガン死亡率(年齢補正)が、全国平均に比べ極度に低い(約20%)ことに気付き、調査を進めた結果、それらの地域は大井川上流の茶産地(川根茶の産地)であり、そこの住民は毎日、豊富に茶を飲む習慣のあることが明らかにされた。 ヒトの胃粘膜に棲息するH.ピロリに対し、茶カテキンはin vitroで50〜100ppmあるいはそれ以下でピロリ菌の増殖を阻止する。 茶カテキンの血中コレステロ−ル濃度上昇抑制作用: 茶カテキンは小腸において、脂質の乳化を阻害し、脂質の吸収を抑制すると考えられる。 茶カテキンのコレステロ−ル上昇抑制は、ヒトの体内においてばかりではなく、茶カテキンを与えられたニワトリは、通常の場合より、コレステロ−ル濃度の低い卵(カテキンたまご:日本配合飼料)を生むことが証明されている。この卵は全脂質量や過酸化脂質も通常の卵に比べて低く、逆に黄身の盛り上がりはよく、白身は透き通ってきれいであり、茹で卵にすると黄身が黒変しないス−パ−卵である。(株)日本配合飼料からカテキンたまごとして発売されている。 茶カテキンの血圧上昇抑制作用: 小腸から微量吸収された茶カテキンは、そのまま肝臓で代謝を受けて体内を循環し、最終的には尿中に排泄される。血中を循環する茶カテキンは血圧の上昇抑制に関与する可能性がある。ヒトの高血圧の約90%は、その原因が確定されない本態性高血圧であるが、レニン−アンジオテンシン系の関与が大きい。血中で昇圧酵素アンジオテンシンの働きを阻害すれば、昇圧物質であるアンジオテンシン兇寮源困抑制され、過度の血圧上昇が押さえられる。茶カテキンがin vitroでアンジオテンシンを阻害し、昇圧物質の生成を阻害することが確認されている。 問題(7)に戻る インフルエンザウイルス不活性化作用: 茶カテキンは極めて強いインフルエンザウイルス不活性化作用をもつ。インフルエンザウイルス液と茶カテキン液を混合後、直ちに細胞上(イヌ腎臓細胞を平面培養)にかけ感染させた。培養後染色し生じたプラ−ク(溶菌斑)を数え、ウイルスの感染増殖の指標とした。その結果、ウイルス、カテキン混合液中のカテキン濃度が 1ppm の極低濃度でウイルスの感染は 100%阻止され、プラ−クは生じなかった。 通常飲まれている 1杯の茶の含有カテキン濃度は、 500〜1,000ppmであるから、インフルエンザウイルスに対する茶の効果は大きい(原:三井農林食品総合研究所)。ただ、茶カテキンのこの作用は、予防効果であり、すでに感染した細胞に茶を接触させても抗ウイルス効果は弱い。茶カテキンはウイルス表面のスパイクに結合することにより、ウイルスの細胞への接着、侵入を阻止する。 問題(8)に戻る インフルエンザの流行時には茶を飲むこと、茶でうがいをすることをが勧められる。また、環境中を浮遊するインフルエンザウイルスを捕捉、不活化する試みもなされている。空気清浄機はゴミ、花粉や匂いをフィルタ−によって捕集するが、これに茶カテキン添着フィルタ−を併せて装着し、空中を浮遊するウイルスを除去する。茶カテキンを不織布フィルタ−に均一に添着すると、 1年間の連続稼働でもウイルスを捕捉するという。なお、同じメ−カ−から同フィルタ−利用のカテキンマスクも発売されている。 茶カテキンの血糖上昇抑制: 胃を通過した茶カテキンは、小腸において一部は吸収されるものの、大部分は消化管内に留まり有用な働きをする。糖類の消化には、膵臓から小腸に分泌されるα−アミラ−ゼや小腸管壁に存在するシュクラ−ゼなどが関与している。茶カテキンや紅茶ポリフェノ−ルがこれらの消化酵素に対し阻害作用を示すことが明らかにされている。ラットに澱粉やシュクロ−スを与える前に、茶カテキンを事前に投与すると、血糖値上昇が抑制される。 (4)茶カテキンの吸収と代謝 茶カテキンは経口摂取された後、一部が小腸より吸収され、代謝を受けるが、大部分はそのまま消化管を通過して排泄される。ただ、量的な詳細は不明である。 ラットによる試験では、摂取されたカテキンは肝臓でメチル化を受けること、及びカテキンのグルコン酸抱合体が尿中から排泄されること、さらにカテキンが肝臓から胆汁を経て消化管へと循環する経路(腸肝循環)も確認されている。 (5)茶カテキンの製剤 茶カテキンは、ソフトカプセルあるいは打錠剤として市販されている。これとは別に、茶カテキンを利用した多数の商品が上市されており、ポリフェノンの名称で純度の異なる茶カテキン粉末を大量に精製している。カテキンの含有量により、ポリフェノンG(30%以上)、ポリフェノン30(35%以上)、ポリフェノン60(65%以上)、ポリフェノン70S(80%以上)などがあり、加工食品、飲料、健康食品、化粧品、油脂、飼料その他多方面で使われている。 -------------------------------------------------------------------------------- 〔文献〕 富田 勲:野菜・果物・緑茶に含まれるポリフェノ−ル化合物の効用,日本医事新報 No.3854,174,1998. 島村 忠勝:O157 に対するカテキンの殺菌作用と抗毒素作用,治療 Vol.79.No.9,120-121,1997. 原 征彦:茶カテキン類の生理活性作用1,臨床栄養 Vol.91 No.1,5〜8,1997. 原 征彦:茶カテキン類の生理活性作用2,臨床栄養 Vol.91 No.2,149〜152,1997. 津田 憲:緑茶ポリフェノ−ルの抗酸化作用,月刊フ-Vol.11 No.3,32-37,1995. 近藤 和雄:赤ワインと動脈硬化,毎日ライフ Vol.29 No.8,102-105,1998. 生涯教育コーナー目次に戻る