居酒屋日記

さえないサラリーマン達の集まり「中丸クラブ」。
そんな私達は行きつけの居酒屋で人生について語ることが多い。
今日もまたさえないサラリーマン達がお互いを慰め合う為、
いつもの居酒屋で人生を語る・・・


                第一話  「Forever Children
                第二話  「激闘!ネット・オークション
                第三話  「爆裂!仁義無き戦い・2000(前編)
                第四話  「爆裂!仁義無き戦い・2000(後編)
                第五話  「ネット・ラヴにご用心
                第六話  「サンタはいるのか?
                第七話  「あるバス運転手の話
                第八話  「クレイジーと言われた男
                第九話  「サムライ
                第十話  「勘違い
                第十一話 「春一番(前編)
                第十二話 「春一番(後編)
                第十三話 「親友って何だ?(前編
                第十四話 「親友って何だ?(中編)
                第十五話 「親友って何だ?(後編)
                第十六話 「同居人
                第十七話 「情熱


 

情熱

 みなさんは何か情熱を注いでいるモノがあるだろうか?
私の同僚で「ヨネさん」という人物がいる。とても面白い人で一緒にいて飽きない人だ。
 そんなヨネさんが情熱を注いでいるモノ、それは「ラーメン」。
彼は、おいしいと言われる店は行かなければ気の済まない、どこにでも居るラーメン好き。
あの一件があるまで私はそう思っていた。私は甘かった・・・

 金曜日にヨネさんが出張で栃木に来た。その週は私も静岡に用事(真撃)があったので、
仕事を終えたあと一緒に静岡へ向かうことにした。
新幹線の中で彼は一冊の本を取りだした。東京近郊のおいしいラーメン屋を集めた本だ。
 その本を読んでいるうちに私はラーメンが食べたくなった。
 「ヨネさん、俺、ラーメン食べたい。」
その時私は気づかなかったが、今になって思えばとんでも無いことを言ったと後悔している。
 「おお、東京駅の近くにおいしそうなラーメン屋があったぞ、ここ、ここ!」
うれしそうに彼が指さすそのページには確かにおいしそうなみそラーメンの写真が載っていた。
 「ヨネさん、でも東京での待ち時間30分しか無いよ。乗り過ごしたら新幹線が無い・・・」
私がそう言ったとたん、彼の表情が曇った。
 『あ?そんな半端な気持ちで「ラーメン食いたい」なんて言ったのか?お?』
そう言わんばかりの彼の目に私は覚悟を決めた。
 「やるしかないのね・・・・」
 もともと綱渡りの様な人生を送っている私だ。覚悟を決めたら話は早い。
私たちは綿密な計画を練った。
 「駅を出て店に入るまでが約7分。注文してからラーメンが出てくるまで5分。
いや、行列が出来ていることを想定して10分。帰りは戻るだけだから5分。ホームまで2分。
すると、食べる時間は、6分・・・勝った!勝ったよ!ヨネさんっ!!」
 興奮のあまり訳の分からないことを口走るえのさん。
そう、彼の頭の中ではうれしそうに新富士行きの新幹線に乗っている2人の姿が映っていた。

 もうすぐ東京。勝負の時は刻一刻と近づいている。ただならぬ2人の雰囲気に、他の乗客は素直に一番ドア寄りの場所を空けた。
 いよいよ東京に到着!ドアが開くと同時に私とヨネさんは飛び出した。
改札も難なく抜け、人混みの中を大きな荷物を抱えながらヒラリヒラリと交わすその姿は、とても28歳の動きとは思えない。それに付いてくるヨネさんもさすがだ。
 東京駅を出て街中を血相を変えて走る2人は他の人から見ると異様な光景にしか映らなかっただろう。
しかし、そんなことはどーでも良い。私たちはラーメンを食べなければならないのだ。
 「・・・・あれ?」 ここでハプニング。
あるはずのラーメン屋が無い! 「おかしい・・・おかしいな・・・」 立ち止まり考え込む2人。
この時すでに予定の10分は過ぎていた。焦る2人・・・
 ここでヨネさんがとんでも無いことを叫ぶ。
 「しまった!!地下だよ!地下!!」
 なんて事だ!私たちは関係のない場所を必死になって探していたのである。
とにかく地下へ向かった。なんて事はない、すぐに店は見つかった。
しかし時間がない。どーする?食べる?やめとく?・・・もちろん食べるでしょう!!
 店の中は混んではいたが、並ばずに済んだ。ラーメンの出も早い。さすが人気のラーメン屋。
予定の時間をかなりオーバーしていたので、私たちは急いでラーメンを食べた。
2人の間に言葉はない。ただ、目の前のラーメンをすするだけだ。
 「ヨネさん!時間ですっ!!」
私たちはラーメン屋を飛び出した。店員が「何で急いでんの?」とツッコミを入れさせない位に勢いよく。
 発車のアナウンスが駅構内を流れる中、私たちは新幹線にたどり着いた。
しかし、我々はそこでとんでも無い光景を目にすることになる!!
 3連休の前日とあって新幹線は超満員。入り込む隙がない。
「グリーン車だ!!」 必死に叫ぶえのさん。ヨネさんも同意見のようだ。
グリーン車をつなぐ通路はいつもすいているはずなのだが、ここも満員。しかし入るしかない。
「どりゃっ!!」気合いと共に飛び込む2人。
「また、余計なのが来た。」他の乗客の冷たい視線。
 新幹線は無事に発車した。

 汗だくになりながら、「やっぱよー、ラーメンはゆっくり味わって食べたいよな・・・」
人混みの中、己の無鉄砲さを悔やむ2人の姿がそこにはあった・・・
 肝心のラーメンの味はというと、おいしかったような気はするが、みそ味だったという事と、やたら熱かったという事しか覚えていない・・・
 ヨネさんは、ラーメン・バカだ。

同居人

 宇都宮に引っ越して数ヶ月。とても気分が悪い。土地になじめない訳ではない。
それなりに楽しい所もある。仕事はとても辛いが何とかやっている。
新しい部屋もとても綺麗で、洗面所にはシャワーが付いている。トイレにはウォシュレットも付いている。
結構はまっている。
 今度借りた部屋は充実装備で何でも付いている。エアコン、BS、インターホン、同居人。・・・ん?
同居人。そう、問題はコイツなのだ。コイツは一人ではないらしい。何人か居るようだ。
コイツらは昼間は何もしない。夜中の3時位になると不定期に訪れ、私にちょっかいを出してくる。
しかもハンパじゃない。
 最初に出会ったのは越してから3日後位だっただろうか。
ゆっくり寝ている私の上で突如暴れ出した。小さな男の子と女の子だ。
私は怒鳴りつけてやろうと思ったが、どうも体が動かない。
 「しょうがない、子供は元気な方が子供らしい・・・私はとても疲れているのだ。元気に遊んでいる子供を叱っては可哀想だ。寝よう、寝よう、・・・って言うか寝なきゃマズイ・・・」
 数週間後、それから2回ほど体が動かないことがあったが、とにかく私は寝た。無理矢理寝た。
 さらに数週間後、私を恐怖のドン底に陥れたヤツが居た。コイツはタチが悪い。
その夜、なかなか寝付けない私は、突如からだが動かなくなった。
 「またか・・・いい加減にしてくれよ・・・」
そんなことを考えているうちに左半身、頭の先からつま先までしびれだした。
そして顔から肩にかけて異常に熱くなってきた。
 「おいおい、何だよコレ・・・」
私は目を開けようとしたが開かない。しかし、男性が近くにいる気配がする。
そのうちそいつは私の中に入ってこようとする。
 「冗談じゃない!!俺の中は俺一人で満員ですっ!!あんたが入ってくるスペースなんて無いよ!!イヤーーーッ!!」
 しばらくすると、恐怖のあまり私は叫んだ。
「あ゛〜〜〜〜〜っ゛!!」
 声が出ているのか、いないのか分からない。感覚としては耳をふさいだまま大声を出しているような感じだ。
 そうこうしているうちに体が動くようになり、私は飛び起きた。窓を全開にし、電気とテレビをつけた。
この時すでに朝の4時。私は一睡もすることなく会社へ向かった。

 こんなおいしい・・・イヤ、恐ろしい体験を私が黙っているわけがない。
週末、私は静岡へ赴き、中丸クラブメンバーを「えのさん衝撃の告白!」と題して召集した。
 私の恐怖体験をメンバーに話したところ、タクヤとスズキが意外と真剣な眼差しで聞いている。
 「俺、えのさんの言うこと信じるよ!だって俺もそんな体験あるもんっ!!」
 「俺なんか・・・」
タクヤとスズキ、それぞれの恐怖体験を話してくれた。
 一方、タツヤはというと、何食わぬ顔してビールを飲みながらおつまみをつついている。
以前の私なら同じ事をしていただろう。何も知らないって幸せなことだ・・・
 恐怖体験をしているうちに私たちの横に掛けてあったコルクボードが突然落ちた!
静まり返る一同。私、タクヤ、スズキは、「やはり居る。ヤツらは間違いなくいる!!」そう目で語っていた。
 タツヤなんぞは、突如起こった超常現象にかなり怯えていた。まるで、雨の中小刻みに震えている子猫ちゃんの様だ。可哀想な子猫ちゃん。それ見たことか。
 私がコルクボードを元に戻すと、タクヤが静かに口を開いた・・・
「今のお前らなら信じてくれると思う。俺、今まで黙っていたけれど小学生の時、こびとの死体を見つけたことがある・・・マジで・・・」
 「・・・・・・は?何それ??」
 唖然とする一同。「それ、GIジョーじゃねーの?」私の質問にムキになって答えるタクヤ。
 「イヤ違う!あれはこびとだ!だって傘でつついてみたら人の肌つついてるみたいだったぞっ!!」
 私があんなに怖い思いをしているのにコイツは何を言って居るんだ!おっ?
大人げなく私もムキになり、
 「こびとってか?じゃ何だ、近くに白雪姫も居たんかっ?!あっ?!」
私の激しいツッコミに対しタクヤは、
 「お前らなんかに話すんじゃなかった!つまんねー大人になっちまったなっ!!」
 目を潤ませながら訴えるタクヤのあの表情を今思い出してみるとあながちウソでもなさそうだ。
悪いことをしたなと反省している。

 「あのね、えのさん、金縛りにあったときはね、指の先に力を入れるのよ。『動け、動けっ!』っつってね。そーするとすぐに動くようになるのよ。気合いよ、気合い。」
 幼少の頃から恐怖体験をしているスズキ。さすがだ。
しかし、そのあまりにマニアックなアドバイスに私は閉口した。
 タツヤはビビっていた。

親友って何だ?(後編)

想像を絶する光景を目の当たりにしたえのさんとタクヤは某スーパーの自動販売機の前でジュースを飲んでいた。何も言わずに、ただ飲んでいた。
 タクヤはおもむろに携帯電話を取りだしボタンを押した。
数秒後、彼の表情は痛烈な怒声と共に豹変することになる!
「おい、タツヤ!オメェー、そう出るかっ!えっ?! お前がそう来るなら覇王堂(タクヤ)は全力で撃て馬(タツヤ)を潰しますっ!!」
 電話を切るなりタクヤは叫んだ。
「えのさんっ!覇王堂はえの馬を全面的にバックアップしますっ!大丈夫!安心しろっ!!」
 確かに彼の言葉は心強かったが、「コイツ、敵に回せんな・・・」という恐怖心も込み上げてきた。
覇王堂(タクヤ)恐るべし。
一方、タツヤはタクヤの強烈な留守番電話にも反応することが無かった。何という強心臓の持ち主。あっぱれっ!撃て馬!!

 そして数分後、遂にアイツが携帯電話を取った。
「もしもし、タツヤ?えのさんです・・・君のその態度にガッカリしました・・・
俺達お前に何か悪いことをしたのでしょうか?・・・ガッカリです・・・」
とても切ないく、語りかけるような口調で留守電にメッセージを入れたえのさん。
 しかし!これこそがえのさんの作戦だったのだ!
攻撃的な口調では、「ん〜?だからどーした?」と言わんばかりに無視を決め込むタツヤ。
「押してダメなら引いてみな」 かえってしんみり口調で話した方がヤツは食いついてくる。
だてに中学一年からつき合っている訳ではない!お前の性格など百も承知だ!どーだ!参ったかっ!!
 案の定、タツヤから電話がかかってきた。留守電を入れてから3分も経っていない。
「もしもし、えのさん?何か今日ダルっくってさー、一回電話出なかったら出にくくなっちゃって。」
 なんだ、そう言うことだったのか、水くさいヤツ・・・一言いってくれれば良かったのに。
ホッとしたえのさんは、気まずそうに話しているタツヤに言った。
「あ゛?何言ってんだ?!中丸クラブをなめるな!!今すぐ来いっ!お前を裁いてやる!今日がお前のジャッジメント・デイだっっ!!」
 こうして我々中丸クラブの面々は、タクヤ家へ集合した。
 我々はタツヤを罵った。「ゴメン、ゴメン」と言っているタツヤは、気まずそうな表情を浮かべるどころか薄ら笑いを浮かべている。
 こうして「タツヤ居留守事件」の裁判は朝の4時まで続いた。

 コイツらなら良いだろうと居留守を使ったタツヤ。
そんな彼に不審を抱き、何度も電話をかけ、家にまで押し掛ける。そんなストーカーじみたことを行ったえのさんとタクヤ。
一方、そんなことが起こっているとは知らず、日課の犬の散歩を欠かさないスズキ。
 普通なら許されないような事でも平気で行える。
メンバーそれぞれが言いたいことを言い、やりたいことをやる。
それぞれベクトルの方向は違っていても、見事にバランスを保っていられる。
 ずっと前、中丸クラブの定例会で誰かが言った。
「えのさん、ゆくゆくは鹿児島(えのさんの実家)帰るの?ヤダよ。
だって居なくなったらつまんねーじゃん。」
 私もそうだ。このメンバーと離れたらつまらない。
自分自身が楽しければそれで良い。相手に気を使う必要なんてない。
私が目一杯楽しんでいる時になぜかいつも同じヤツがそこに居る。
 「親友」、「友情」って、こういうモンなのかな?そう考えさせられた大事件だった。

親友って何だ?(中編)

 一向に連絡の取れないタツヤに業を煮やしたえのさんとタクヤ。我々は遂にこちらから攻撃を仕掛けることにした。
 まずは彼の会社から。「きっと夜遅くまで働いているのだろう、大変だな。俺も頑張らなくては・・・」
勝手に想像するえのさん。タクヤもきっと同じ事を考えているのだろう。少々疑っているとはいえ、おだやかな表情だ。
 彼の会社に到着すると・・・真っ暗!人っ子一人いやしない!夜の会社なんて寂しいもんだ。
 次は彼の自宅へ。「きっとデートだ。そうに違いない。女の子と一緒だから俺らの電話に出ないんだ。そう言えば、以前の飲み会で彼の女友達には悪いことをしたな・・・ゴメンよ、タツヤ・・・」
 全く意味のない反省をするえのさん。一方タクヤは、「えのさん!アイツ絶対何か企んでるよ!」彼は完全に疑っていた。
 彼の家に近づくと、ついているはずの無い彼の部屋の明かりがまぶしいくらいに輝いていた。
「えのさんっ!見ろよ!アイツの部屋の明かりがついてるぜっ!!どーする!?
 違う!違うんだタクヤ!きっと家族の誰かが彼の部屋にいるのだろう。彼はきっとどこかへ出かけているんだ!見ろよ、アイツの車無いじゃん!
 彼の駐車場を見てもいないのに勝手に決めつけるえのさん。
そして冷静な表情で駐車場へと向かうタクヤ。彼の目はすでにキャリア30年のベテラン刑事の目をしていた。
 「あるよ、えのさん。タツヤの車が・・・」 えのさんを気遣うかのように沈痛な面持ちで話すタクヤ。
「違うよ!タクヤ!きっとアイツは友達の車で出かけたんだよ!そーだよ!絶対!」
この期に及んで訳の分からないことを言うえのさん。
 だって、そんなことある訳が無い。あり得ない、まさか「居留守」なんて・・・
黙ってその場で立ちつくすえのさんとタクヤ。二人とも言葉が出ない。
 その時っ!!我々は未だかつて無い、想像を絶するとんでもない光景を目にすることになるっ!!

 何をするでもない。ただ二人は夜空を見上げていた。その時、タツヤ家のトイレの電気がついた。
何となく二人の視線はそちらへ向かった。トイレの窓越しに映るそのシルエット・・・え?何?あれ?
 背の高さといい、顔の輪郭といい、わずかな前傾姿勢といい、「おい!タツヤだよ!!」
 『えのさんが引っ越す?そんな事俺には関係ない!つまらない友情ごっこなどおまえ達だけでやっていろ!!』
そう言わんばかりの彼の挑発的な態度が、アイツの闘争本能に火をつけることになる!!
 内部抗争勃発の『中丸クラブ』、一体どうなってしまうのか?!

親友って何だ?(前編)

 みなさんは『親友』について考えたことがあるだろうか?
『親友』、それは自分が悩み、苦しんでいる時に手をさしのべ、親身になって相談にのる。世間一般的にはそう考えられているのが『親友』だ。私もそう考えていた。 しかし、私はある出来事を境にこの考えを改めた。
 今回は、えのさんの考えを根こそぎ変えてしまった出来事を紹介しよう。

 2001年6月。えのさんは栃木県宇都宮市へ転勤となった。
私はまず、「『中丸クラブ』の面々(つまり『親友』達)に報告しなければ・・・」そう考えた。しかし、普通に話したのではつまらない。どうせ言うならみんなをビックリさせたい。
えのさんはこの重大な出来事を、中丸クラブ恒例の「バーベキュー大会」で報告することに決めた。
「みんな寂しがるだろうな・・・グスッ・・・」
そんなことを考えながら一人しんみりとなるえのさんだった。
 「バーベキュー大会」当日。準備万端。どっからでもかかってこい状態のえのさん。
しかし、『親友』スズキの「やろうと思えば出来るけどさ、今日は肌寒いし、少年野球の父兄がたくさんいるから・・・」という明らかにやる気のない電話で「バーベキュー大会」は中止になった。

 引っ越しの日が迫ったある日、私は遂に自分から彼らを呼び出すことにした。
私はまずタツヤに電話をかけた。・・・出ない。「仕事かな?」
次にタクヤ。「ちょっと飲まない?話があるんだ。」 「おう、いいよ」あっさりOK。
残りはスズキ。どうやら仕事中のようだ。土曜日なのに遅くまでご苦労様。
 そんなこんなで、私とタクヤだけの寂しい飲み会は始まった。
私からの衝撃の告白も『親友』タクヤには大したことの無い様に思われ、いつも通りのくだらない話になった。
2人だけでも話の内容は充実。とても面白い。こんな貴重な時間を2人だけで過ごすのはもったいない。
『親友』達みんなで楽しみたい。そう考えた2人はスズキとタツヤに電話をした。
 スズキは「日課の犬の散歩が終わったらすぐに駆けつける。」と言うことでアポが取れた。
一方、タツヤは連絡が取れない。もう21時を過ぎるというのに何度電話しても出ない。
 「おかしい・・・」 私とタクヤは顔を見合わせた。
 「きっとビリヤードでもやっているんだろう。」 ビリヤード好きの彼のことだ、きっと夢中になって携帯など見ている暇もないのだろう。
2人は早速、タツヤ行きつけのビリヤード場へと向かった。
 ビリヤード場に着いた我々は彼の車を探した。しかし、彼の車は無かった・・・
「アイツ、俺らに内緒で何か企んでるぞっ!!」
この時点でタクヤは完全に彼を疑りにかかった。
私はというと、「そんなことはない。もしかしてまだ仕事をしているのかもしれない。待てよ、もしかしてデート?ちっきしょ〜楽しんでんのか?ん〜?」 脳天気。正に頭の中は快晴!日差しが強すぎて脳味噌が蒸発している状態だ。
 そう、えのさんは信じていたのだ。『親友』タツヤを・・・
 「出動っっ!!」 威勢のよいタクヤのかけ声で、我々は「タツヤ生け捕り大作戦」を実行した。

 数十分後、えのさんはこれまでの人生で経験したことの無い辛く、厳しい現実に直面することになる・・・

春一番(後編)

 醜いプッチモニが勢い良く式場の中へ飛び出して行くのを、「会場温めておけよ」と心の中で呟きながらえのさんは彼らを見送った。式場の外はもちろんえのさんただ一人。中では「じゃんけんぴよん」が流れている。
「どうなっているんだろう?盛り上がっているのだろうか?冷ややかな視線を浴びているのだろうか?」
 徐々に近づいてくる自分の出番。それと共に大きくなってくる不安・緊張。
今まで「居酒屋日記」を読んできたみなさんならもうお分かりだろうが、私はかなりのチキン・ハートだ。この時も見事なまでにチキン・ハートっぷりを発揮していた。
 緊張から来る吐き気と戦いながら私は色々なことを考えた・・・
 「友人達には『俺は永遠に子供だ』と強がっているが、会社に行けば私も一社会人。この会社に来て約5年。私なりにみんなからの信用を築いてきたつもりだ。こんな事をやって、それをここで叩き壊すつもりか?え?えのさんよ?」
 「どうしよう・・・ここでみんなを引かせてしまったら、私は一生笑い者だ。」
 「くっそー、はせどんめ!私をこんなに苦しい思いをさせるとは・・・許せん!!」
 訳の分からない事を考えているうちに、遂に私の出番が来た。
アントニオ猪木の入場テーマが会場全体に流れ、私は会場の扉を思い切り開いた。

(注:えのさん、これ以降の記憶がすっ飛んでしまった為、ここからは参加者からの話を聞き集め記載しました。多少事実と異なる事があるかもしれませんがご了承下さい。)

 両腕を高々と上げ、意気揚々と入場するえのさん。瞳孔は開きっぱなしだ。
ステージに上がり、新郎新婦の涙をそそるあたたかい言葉をかけ会場もちょっとしんみりムード。
「よしっ!計算通り!!」えのさん心の中で小さくガッツポーズ。
 そして新郎新婦をステージに上げ、闘魂注入の儀式へ・・・
他の人には幸せそうに写っている新郎新婦だが、私にはリングの対角線上に立ちはだかる往年の長州力・アニマル浜口組にしか見えなかった。
 えのさんとはせどん、そしてグレート・アスカがステージ上で睨み合い。正にガチンコ勝負だ。
 「お前は彼女を幸せにすると誓うかっ!」はせどんに問い詰めるえのさん。 「はいっっ!」はせどんも負けじと大声で叫ぶ。その瞬間!!えのさんの電光石火の右手がはせどんの左頬を的確に捉えた!すっ飛ぶはせどん、会心の一撃にほくそ笑むえのさん。
 突然の展開に皆は驚き、歓声を上げた。はせどんをKOしたえのさんは新婦グレート・アスカの前に立ちはだかる。
 「え、マジ?殺っちゃうの?」、「キャー、怖い。見てられないわ。」
 そんな会場の声などえのさんに届くわけがない。ただ、目の前の敵を倒すのみだ。
 「お前は彼を生涯支えていくと誓うかっ!」えのさんの問いにグレート・アスカは静かに「はい・・・」と答えた。「よしっっ!!」気合いのかけ声と共に、はせどんを一撃でKOした戦慄の右は彼女の左頬をロック・オンしていた。
 「いける・・・」そうえのさんが思った瞬間!!グレート・アスカはそれを左腕でかわし、右手で渾身の一撃をえのさんの左頬にぶつけた。
 腕を振り抜くスピード、キレ、相手の左頬に入る進入角度、そして綺麗なフォロースルー。
どれをとっても一級品のそれだった。
 膝から崩れ落ちるえのさん。薄れゆく意識の中で私は見た。はせどんが、してやったりの表情をしていたのを・・・。

 その後も楽しい披露宴は続き、新郎のよく分からない挨拶で幕を閉じた。
「あぁ、終わった・・・。」 会社の上司・同僚の前であんな事をやってしまった私は後悔どころかすがすがしい気分になった。
 「いやー、余興良かったよ。お前が次期宴会部長だな。」
上司の言葉に私は「嫌だなぁ」と思った。なぜなら今回の余興は数ヶ月前から綿密に計画を練りに練った結果だったからだ。こんな事を何度も繰り返していたら私は疲れてしまう。
 はせどん、あすかさん、今回は君たちの為に我々はがんばったんだぞ。
さてと、次のネタでも考えるか・・・

春一番 (前編)

 2001年4月14日、富士市内某結婚式場グレースの間にて我が競馬予想HP「えの馬」の番記者であり、会社の同僚でもある「はせどん」の結婚式が行われた。
 はせどんから招待状を受け取り、「えのさん、余興頼むよ」という彼の言葉が発せられたその瞬間から私とはせどん、そして見たこともない嫁さんとの戦いは始まっていた。
 私は3ヶ月前から試行錯誤し、綿密な計画を練った。
「どうせやるなら主役を食う位のヤツをかまさなくては。」私はそのことで頭が一杯だった・・・

 当日、私は異常な緊張感に包まれていた。
3ヶ月間熟考したネタは「アントニオ猪木をまねている春一番、新郎新婦と激突!!」。
台本を書き、頭の中で何度もシミュレーションをし、練習をすればするほど私の自信は失われていった。ウケるのだろうか・・・・
 私は「ガチンコ・お笑い学院」の若手芸人達のようにおびえていた。
式場に現れる新郎新婦の親族・友人達そして会社の上司・同僚。式に参加する全ての人たちが笑いに厳しい女子高生に見えてしょうがなかった。
 オドオドしながらも私の頭の中では「えのさんvsはせどん&グレート・アスカ。ガチンコ勝負!」に向けて密かに闘志を燃やしていた。

 披露宴は始まり、新郎新婦は「パワー・ホール(長州力の入場テーマ)」をBGMにおごそかに入場してきた。私のテンションは一気に上がり、体中をアドレナリンが駆けめぐっていた。
 私は飲んだ。豪華料理にも目をくれず、ただひたすら酒を飲んだ。襲いかかる恐怖感を振り払うかのように・・・
 余興開始20分前。私は会社の同僚達と共に準備の為、グレースの間を出た。
同僚4人はプッチモニを踊り、その後えのさんが登場し、新郎新婦と直接対決!
これが我々の筋書きであった。同僚扮するプッチモニはとても汚らしく、目も当てられなかった。
一方、えのさんは闘魂ガウンを身にまとい、静かに出番を待っていた。
 「試合前のプロレスラーってこんな気分なのだろうか・・・ああ、レスラーにならなくて良かった・・・」
ごく普通のサラリーマンである喜びをかみしめながら、踊りの最終確認をする4人の横で壁を「仮想はせどん&グレート・アスカ」に見立ててシャドーを行っていた。 緊張しているとはいえ私もいっぱしの芸人。体のキレは良い。
「よし!いけるっ!!」
そんなことを考えているうちに、醜いプッチモニは式場の中へと飛び出していった。

 かつて味わったことのないとんでも無い事が待ち受けているとも知らず、えのさんは一人式場の外で出番を待っていた・・・・

 後編に続く

勘違い

 「勘違い」それは誰もが犯したことのある過ちである。
それは大きなモノから小さなモノ、他人に迷惑のかかるモノや自分の身に降りかかってくるモノまである。
 今回は小さな勘違いだが、自分の身に大きく降りかかり、極限状態まで追い込まれたエピソードを紹介しよう。

 数年前の冬、恒例の「中丸倶楽部スノボ&スキーツアー」で事件は起こった。
早朝、某スキー場に到着した我々は早速冬山へ飛び出した・・・
と思いきや「だりー、休憩しようぜ。」と誰かの一言。
 スキー場に着いていきなり休憩か?と思われるかもしれないが、この時誰一人として反対する者はいなかった。
 コーヒーを飲みながら話をしていると、私は便意を催してきた。
 「ちょっとトイレに行って来る。」
 えのさんは席を立った。これからとんでもない試練が待ちかまえているとも知らずに・・・

 某スキー場のトイレはちょっと変わっていた。男子女子が分かれているのは当然だが、
男子トイレに入ると更に大きい方と小さい方に部屋が分かれていた。
私は一目散に大きい方へと向かった。
 数分後、用を足した私はウェアーのズボンを上げようとしたその時っ!!
 「そーそー、それでさー・・・・・」
何と若い女性達の声が聞こえてきたのだ!
私は一瞬にして悟った。「俺、女子トイレに入ちゃった・・・」
 私は焦った。「えのさん、よーく考えろ。私は男子トイレの大きな方に入ったはずだ。間違いない。
きっと彼女たちが間違えているんだ。いや待て、早朝だから私がぼーっとしていて間違えたのかもしれない。どうしよう、どうしよう・・・」
 時間にして数分、私は色々なことを考えた。
「大胆不敵!女子トイレで大便をした男」などというスポーツ新聞の面白記事の見出しまで思いついた。
俺は犯罪者になるのか・・・執行猶予とかはあるのかなぁ?
とにかくパニクった。かなりドキドキした。
 「こうなったら男らしく堂々と出ていこう。」
そう考えた私はドアを思い切り開け、悠然と外に出た。
そこには作業着を着た若い女性達がせっせと掃除をしていた。
 俺の「勘違い」か・・・私の心中は複雑な気分だった。

 今振り替えてみると私は用を足した後、ちゃんと流したかよく覚えていない。

サムライ

 見知らぬ外国人から「クレイジー」と言われて3年経った1999年、またNBAが日本にやってきた。
ミネソタ・ティンバーウルブスとサクラメント・キングスだ。若く将来性のある2チームがここジャパンへとはるばるやってきたのだ。
3年前のあの興奮が私の中で沸々と込み上げてきた。もちろんこの試合も大学時代の友人達と観に行くことになった。
 この3年間で私も成長した。社会人としての自覚も芽生えはじめ会社の社内研修でも3次元CADの講師を務めるほどになった。
それを知った友人達から、「先生!」と半ばからかいの言葉を受けたがそれも悪くはなかった。
 そう、私はあの「クレイジー」と言われた時とは違う。大人になったのだ・・・

 試合当日、東京ドームで皆と待ち合わせた。しばらく会わないうちに友人達は変わっていた。
転職した者、自由人になった者、まして友人タナカは結婚なんぞして奥さん同伴でやってきた。
 学生時代に我々は、ほぼ同じ道を皆で楽しみながら歩んできた。
しかし、今は違う。それぞれが、それぞれの道を歩み始めたのだ。
あの時とは違うメンバーと・・・私はそれで良いと思った。
 人それぞれ道を持っていて、その時々で他の人の道と重なり合ったり分かれたりするのだ。
そして自分の歩んだ道には思い出が残っていく。良いか悪いか私の知ったことではないが・・・

 話を戻して、ウキウキ気分でドーム内へ入っていった。
今回の席は前回の席とは違いコートから少し離れた場所だった。前後には席が並んでおり、これなら盛り上げ隊も私の近くには来ないだろう。
少し寂しい気もしたが、「こんな気分が大人になった証拠なんだろう。」としみじみ考えた。
 試合が近づくにつれ、場内は盛り上がってきた。
遠くでは両チームのマスコットキャラがノリノリで踊っていた。
興奮気味のえのさんはトイレに行って来た。
戻ってくると隣に座っていたヤツが変な物を持っている。細長い風船だ。
(この風船にも深い意味があるのだが、説明すると長くなるのでやめておく)
 その風船をもらいそびれた私はちょっとムッとした。しかし、大人になった私はそんな気持ちを表情に出すことはなかった。
ただ、遠くで踊っているマスコットを見て私は思った。「やっちゃおっかな・・・」
 私は隣に座っているヤツの風船を奪い、友人ウラッチに向かって叫んだ。
「いくぞ!あいつらをたたっ斬ったるっ!!」
ウラッチは面食らった表情をしたが、一瞬にして「やっちゃいますか?」と目で語った。
 私達は一目散にマスコットに向かって走っていった。
私は風船を上段に構え「とりゃーっっっ!!」と振り下ろした。
しかし敵もなかなかやる、私の攻撃をヒラリとかわし、後ろ回し蹴りをしてきた。
私も本気だ。ヤツの後ろ回し蹴りをすんでの所でかわし、また身構えた。
 じりじりとマスコットに向かって詰め寄るえのさんとウラッチ・・・
ドーム内の観客の幾人かは私達2人と1匹の格闘に胸を躍らせたことだろう。
 すると、私達のただならぬ雰囲気を感じ取ったのかそのマスコットは手招きで警備員を呼んだ。
「マジか?男と男の真剣勝負なのに逃げんのか?」
私はじだんだ踏んだが、警備員に捕まって怒られるのも嫌なのでウラッチと2人で必死になって逃げた。
 私の「マスコット辻斬り計画」は失敗に終わったが、「ジャパンにはサムライがいる・・・」と外国人に思わせただけで大成功だと確信した。
 しかし、今になってみるとマスコットの中は日本人だったかもしれない。
そうだとすると私の決死の覚悟は一体何だったのだろう・・・

 「クレイジー」と言われてから3年。私は大人になったと思ったが何も変わっていなかった。
いや、むしろタチが悪くなっていた。
 あれから更に2年が経ち現在に至っている訳だが、これから自分が何をしでかすのか怖くなってくる・・・
これからも自分自身に目が離せない。

クレイジーと言われた男

 みなさんはNBAをご存じだろうか。「ナショナル・バスケットボール・アソシエイション」そう、バスケットボール最高峰のリーグである。
えのさんは大多数の日本人NBAファンがそうであるように、1992年バルセロナオリンピックを観て一発で虜になった。
以来、テレビの前で独り「ウヒョーッ!!」と絶叫し、今日に至っているわけである。
 そんな熱狂的ファンのえのさんに生でNBAを観るチャンスが訪れた。
1996年東京ドームにてオーランド・マジックvsニュージャージー・ネッツのNBA開幕戦が行われたのだった。
もちろんえのさんは大金をはたいてチケットを購入。
そして、大学時代の友人とこのエキサイティングな試合を楽しむことにしたのだ。

 初めての生NBA観戦とあって、えのさん若干緊張気味。
東京ドームへ入ると中ではテレビでしか見たことのない一流の選手達がすでに練習を始めていた。
 友人タナカは興奮のあまり、「ペッ、ペニーっっっ!!!」と当時NBAの看板スター選手の名前を絶叫していた。
「おいおい、いい大人が何はしゃいでんだよ。恥ずかしいヤツ。」
えのさんは自分の本心を押さえつけるように呟いていた・・・その時のえのさんは自分にウソをついていたのだ。
 試合が始まり選手達のシュート、パス、ドリブル、リバウンド・・・・何もかもがかっこよかった。
 NBAの試合は観客席に盛り上げ隊が散らばっていて、観客全体が一体となるようにせわしなく動いている。
 ・・・私はそいつらにそそのかされた。いや、彼らは私の中に秘められた危険な爆弾の導火線に火を付けたのだ。
はじめのウチは彼らも「おっ、ノリのいい日本人だな。」そう考えていたのだろう、一緒になって楽しく騒いでいた。
しかし、私は中丸クラブ仕込みのいつものノリで試合のことなどろくに観ず、「ギャーギャー」騒いでいた。
周りの事など考えていなかった。自分が楽しければそれで良かったのだ・・・
 数分後、トップ・ギアに入った私を見て、盛り上げ隊の独りは驚いた表情でこう言った。
「Oh、クレイジー・・・」
何だコノヤロー、日本人をなめんな!お前、人をあおっといて「クレイジー」はねーだろっ!!
そんな気持ちをあらわにするえのさんの横で友人うらっちが女性の盛り上げ隊の手をグッと握り、
「ギブ・ミー・キャップ、ギブ・ミー・キャップ」と帽子をおねだりしていた。
 こんな光景を見た他の観客達はどう思っただろう。
 数年経った今、「とても恥ずかしいことをしたな」と考えると同時に「俺って結構やるじゃん!」とも考えてしまう。
 「バカなヤツ」、「恥ずかしいヤツ」そう言いたいヤツは言えばいい。
私は一向に構わない。なぜならそれがえのさんだからだ。

 そんなえのさんは3年後の1999年またしても珍事件を起こすのだった・・・

あるバス運転手の話

 えのさんの実家は鹿児島だ。帰省する際飛行機を利用するのだが、空港までは高速バスで移動する。
今回の正月休みも高速バスを利用したのだが、行きのバスの中でこんな事があった。
 私が座った座席はバスに入ってすぐ、運転手の左斜め後ろだった。
えのさんは車の運転が上手な方ではない。だから空港までの移動時間をプロの運転方法を見て学ぶことにした。
 その運転手は非常に礼儀正しく、プロのバス運転手としての自覚と自信に満ち溢れていた。
今時珍しく車内放送まで、「空港までの所要時間は・・・」などと自分で言っていた。
「この男ただ者ではない。」えのさんの五感全てが彼のただ者ではない雰囲気を感じ取っていた。
 高速道路に入るまでの運転は実にスムーズ。交差点での注意も怠らない。素晴らしい。
高速道路入り口の料金所でも、料金所のおっさんと軽く挨拶。きっと顔なじみなのだろう。かっこいい。
若干混雑気味でも合流はお手の物。あの大きな車体を自分の体のように扱っている。グレイト!!
 年末ともあって高速道路は混雑。しかし彼は淡々と自分の仕事をこなしている。彼こそプロ中のプロ。
 彼を心の中で賞賛していたその時!一台の乗用車が強引に高速バスの前に割り込んできた。
結構危なかったので私はドキッとした。しかし彼は違う。表情は全く変わらずこういう事になれているようだった。「さすがだな、見事な落ち着きぶり。」そう思ったその瞬間!!バスは猛然とダッシュ、そしてその乗用車の真後ろにビタッと付けたのだった!
時速100km以上のスピードで車間距離わずか50cm(動揺している私にはそう見えた)。
何かあったらすぐにでもぶつかりそうな勢いだ。
 私はビビッた。しかし彼の表情は変わらない。「おっ、おい!大丈夫か!?おいっ!!」
私の心の叫びは彼に届くわけもなく、左斜め後ろから見る彼の表情は笑っているようにも見えた。
無謀なチャレンジャーを歓迎するかのように・・・・
 えのさんは振り返り、他の乗客を見た。後ろの乗客はこの状況を知るわけもなく、音楽を聴いている者、子供のくだらない話に耳を傾けうなずく母親、事もあろうかグーグー寝ているのんき者までいる。
何て事だ!今お前達はとんでもないバトルに巻き込まれているんだぞ!自分の知らないところで命張ってんだぞ!!
 一方、運転手は「あおっちゃうよ〜ん」といった感じで猛然と乗用車に襲いかかっている。
私と運転手にしか分からないこのスリル。
「もういい、もういいや・・・」そう諦めの言葉がよぎったとき、バスの運転手を応援する自分が居た。
 乗用車vs高速バスの運転手and応援団長(えのさん)。不思議な三角関係は高速出口で終わりを告げた。
 空港近くになり、何事もなかったように「まもなく、○○空港・・・」と車内放送する彼。
私は知っている。ここまでの約30分の間にあなたが見ず知らずの人の命まで懸けてスーパーバトルを繰り広げていたことを・・・
 「ナイス・ファイト」料金を払いながら私は呟いた。
「ありがとうございます。」そう言う彼の笑顔の後ろに、「次もやったるで!!」とグッと拳を握っている悪魔くんが見えたような気がした。
 あなたも自分の知らないところで命を懸けたバトルを繰り広げているのかもしれない・・・

サンタはいるのか?

 2000年のクリスマスも近くなったある日私は、「クリスマスネタで何か良い物ねーかなー。」とあれこれと考えていた。
その時、ふっと幼少の頃のクリスマスの思い出がよみがえってきた。

 私がまだ幼稚園に通う前だと思うが、とにかく物心が付いたばかりの頃のクリスマス。
朝、目が覚めると私の枕元に大きな赤い靴下(厚紙製)がおいてあった。
中を覗いてみるとたくさんのお菓子が入っていた。
「サ、サンタだ・・・」 まだ純粋無垢な心を持っていた私は、そのお菓子のプレゼントに大変喜んだ。
 喜び勇んで冬休み中の姉の所へ行くと、姉も同じ物を持っていた。
今の私なら「ちっ、なんでお前も持ってんだよ。」と言うだろうが、その頃の私はとにかく純粋だった。
「ねーちゃん、一緒に食べよう。」そう言って、姉と二人でたくさんのお菓子の中から毎日一つずつ食べていった。
結局、ちまちまとサンタのプレゼントを約一週間かけて食べきった。
 今思うと我ながら「何てかわいいヤツ」と考えてしまうと同時に、「(これを書くことによって)俺っていいヤツに見られるかな。」と考えてしまう。
 とにかく、その年のクリスマスが大変気に入ったせいか、次の年は「また、サンタ来るかな。」と姉にしつこく聞きまくっていた。
 24日の夜(だと思う)はもう楽しみで楽しみで眠れなかった。なかなか眠れない私は落ち着き無く辺りを見回していた。
そのとき!!タンスの上に見覚えのある物体がちょこんと乗っかっていた。
「あれ何?」隣で寝ていた親父に聞いてみた。うろたえる親父。その時、私は全てを悟った・・・・
「お前がサンタか・・・」
 その年も昨年と同じようにお菓子のプレゼントだったが、何となくテンション低いまま食べた。
私が次の年から父親に直接「あれが欲しい」と、おもちゃをねだったのは言うまでもない。

 信じていたサンタが実は父親だったと分かったときはかなりショックを受けた。
しかし、今になってみると、5歳離れているから当然サンタの正体を知っていたはずの姉。にもかかわらず、私にバレないように一緒に「サンタ、サンタ」とはしゃいでくれた彼女の優しさに感謝している。
また、一年間ずっとだまし続けていた父親、母親も大変だっただろう。そんな長期間の「ドッキリ」を企んでくれた二人にも感謝している。
 しかし、私がもし父親になるのなら自分の子供に「サンタなどおらん!いや、俺がお前のサンタだ!」
と訳の分からないことを言って子供の頭を混乱させてやろうと思っている。
 そう言った場合、その子にとってサンタというモノは存在するんだろうか、しないんだろうか・・・
何年後になるか分からないが実験してみようと思った。

ネット・ラヴにご用心

 ずいぶんと前の話になるのだが、いつもの居酒屋でこんな話題が出た。
「この前、松井に会ったよ・・・」 友人の1人が呟いた。これを読んでいる人には何の事だか分からないだろう。詳細はこうだ。
 最近、インターネットで出会いを求めている人が急増しているらしい。友人もその1人だ。
その出会いの場で彼が目を付けた1人の女性と何度かメールのやりとりをすることになったらしい。メールの一部を紹介すると、
「私は(どっかの)ビーチのミスに選ばれた」、
「○○似(女優、名前は伏せておきます)です。」
この2つだけで彼は相当舞い上がったらしい。
「いいのか?こんな俺が会ってもいいのか?」、
「一目見てドタキャンされたらどうしよう・・・」
彼はその時かなり腰が引けていたそうだが、「一度くらいはそんな人と遊んでもいいだろう。」という結論に達したらしい。
 当日、彼はハラハラ、ドキドキ、その女性を待ち続けた。
待っている間彼は、「カマン・マイ・スウィート・ハニー!」そう叫んだとか叫ばなかったとか。
・・・・遂に現れた彼のハニー。徐々に近づく二人の影。
至近距離に達したその時、彼はこう思った「松井ヒデキ・・・」。
そう、その風貌は3割、40本、120打点は軽く超えられそうなメジャー級の厳つい顔をしていたそうだ。
「だまされた!ミスはミスでも失敗の方じゃねーのか!!」
彼は一刻も早くその場を立ち去りたかったらしい。しかし、彼は優しい男だ。
とりあえず映画を観に行くことになったそうだ。
映画を観ている間中ずっと「何と言って帰ろうかな。何とかこれで終わりにしたい。」 と、帰る理由をあれこれと考えていたらしい。
そのことで頭がいっぱいになり映画の内容は全く覚えていないと言う。
 結論の出ないまま映画は終わり、彼女の「ご飯食べに行こうよ。」という言葉に素直に従った彼。
何というお人好しぶり、私なら「お腹が痛いから・・・」などと小学生ばりの臭い演技も入れながら強引に帰っていただろう。
 おしゃれな所で思い切りおしゃれをして上品に飲むのが好きという彼女は、居酒屋でバカ騒ぎをしながら飲む私達とは人種が違っていた。
彼女の知っているおしゃれなバーとやらで食事を終えた彼らは、「今日はゴチって事でいいよね。」という彼女の愛くるしい一言で終わりを告げた。
 顔もメジャー級なら態度もメジャー級。私から見ればとんでもない正真正銘のブスだ。
その後彼女からメールが来たそうだが、彼は返事を送らなかったという。
私はそれで良いと思った。
 見知らぬ物どうしのメールという物は自分の本心を素直に書け、相手の内面から好きになっていくというメリットがある。しかし、ウソもつき放題という両刃の剣だということが今回分かった。
 メールも出会いの一つ。それはそれで良いと私は思う。
しかし、今回のような件もあるということをみなさんに伝えたかった。
 出会いのメールにはまっているあなた、ネット・ラヴにご用心。

爆裂!仁義無き戦い・2000(後編)

 さる11月26日、ウインズ石和にて行われた競馬予想・仁義無き戦いは怒濤の中盤戦を迎えていた。
 第3戦、2連勝と調子に乗るえのさんだが、一瞬「このままうまくいく訳がない。次は外すんじゃないか・・・」そんな不安にかられ錯乱状態のまま予想を終える。
 第9レース終了時に満面の笑みを浮かべていたのは覇王堂だった。
なんと24倍を的中!恐るべし覇王堂式競馬最強理論!!競馬を始めて約3ヶ月とは思えぬ気力・体力の充実ぶり。
 一方の撃て馬も虎視眈々とトップの座を狙っている。
その理由もない余裕っぷりにえのさんは恐怖を覚える。
 3者のハイレベルな争いは第4戦、今日のメインレース「ジャパンC」を迎える。
前日から予想をしていただけあって何の迷いもなく馬券を購入。
ただ1人を除いては・・・
 世界各国から集まった精鋭達が遂にゲートを飛び出した。
「めちゃスローペースだよ。」第1コーナー入り口前で呟く撃て馬。
時折見せる競馬に対する冷静な目。さすが。
 俺はというと「スローペースでもハイペースでも何でもいい、何とかしてくれオペラオー!!」俺の心の中はかなり乱れ、かなりの興奮状態。
完全に舞い上がっている。
 サラブレッド達はいよいよ最終コーナーを周り直線にさしかかった。
激しい叩き合い。大興奮状態の3人。
「よし!いけっ!そのままっ、そのままっっ!!」 ゴールイン!
3人の本命馬テイエムオペラオーが予想通りの1着、しかし2着争いが微妙。
メイショウドトウ、ファンタスティックライトのハナ差争い。
 ざわめく場内、沈黙の3人・・・俺には余裕があった。
なぜなら、どちらが来ても的中していたからだ。
しかし、覇王堂、撃て馬はこの2着争いに全てがかかっていた。
正に運命の分かれ道、リアル人生ゲーム。
 レース直後から続く長い沈黙が3人を包む・・・・結果が出た!
2着はメイショウドトウ、はち切れんばかりの笑顔を見せる撃て馬。
覇王堂は唖然とした表情。俺は「ハトが豆鉄砲を食らった顔」を人生27年目にして初めて見た。
それもそのはず何と覇王堂は予想ではしっかりとメイショウドトウを押さえていたものの、実際の購入馬券では切っていたのだ!!何という愚か者。
最後の最後になってメイショウドトウと共に自分自身を裏切ったのだ。
 「俺はこうならないようにしよう・・・」そう心の中でえのさんは戒めた。
 第5戦(京都11R)、第6戦(東京12R)は3人ともサクッと外し家路についた。
 地元に帰ってから焼き肉屋にて早速反省会。
結果はえのさん+7750円、撃て馬−900円、覇王堂−2000円。
回収率を出すまでもなくえのさんの圧勝。(ちなみに回収率151.7%)
 「+7000円くらいでわいに勝ったとは言わせない。むしろえの馬の負けやっ!」そんな訳の分からんことを言う覇王堂はしばらくして、「せめて理不尽なことくらい言わせてや・・・」そう激しく自分を反省していた。
 撃て馬は「−900円で済んで良かったよ。」とまた根拠のない余裕っぷり。
そんな彼にえのさんはまた恐怖した。「コイツ何かんがえているんだろう?」

 こうしてえのさんの爆勝で幕を閉じた「競馬予想・仁義無き戦い2000」。
数日の間えのさんが有頂天になっていたのは言うまでもない。

爆裂!仁義無き戦い・2000(前編)

 その日は目覚めてから落ち着きがなかった。
11月26日。遂にえのさん、撃て馬、覇王堂による仁義無き戦いが行われる日だった。
「えのさん着いたよ。」 撃て馬からの連絡に俺は勢い良く家を飛び出した。
3人の表情はこわばっていた・・・かに思われたが、「おっす。」、「おはよー」と気の抜けたいつもの挨拶。
 しかし、車中はいつもの雰囲気とは違っていた。撃て馬は自慢の愛車(新車)に心酔。覇王堂は新聞を見ながら、「覇王堂式最強理論・・・」などと訳の分からないことを呟く始末。
「ふっ、こいつら舞上がってんな。」 俺は自信に満ち溢れていた。
 途中、コンビニに寄って新聞を購入。そして俺は覇王堂に向かって、「酒買おうぜ。」・・・そう、実は一番舞い上がっていたのは俺だった。
「俺も飲みてーな。」と言う撃て馬をしり目に、私と覇王堂は「じゃ、前祝い」などと精一杯の強がりを言いながら酒を飲んだ。
 買った新聞には占いが載っていた。それぞれのギャンブル運を見てみると・・・えのさん、絶好調!撃て馬、まあまあ。覇王堂、全く持ってダメダメ。ぷっ。
「こんなもの俺は信じねーぞ!」 口ではかなり強気だったが、その表情は明らかにうろたえていた覇王堂。あわれ。
 神を味方に付けたえのさん。一方、神にそっぽを向かれた覇王堂。そして神に相手もされない撃て馬。
「勝った・・・」 この時の俺は、とにかく勝ちたい一心で何でも味方に付けたかった。不安だったのだ。
 真っ赤に染まった木々の美しさを楽しみながら、遂に決戦の地、ウインズ石和に到着した。
 東京第7レースからの馬券購入。最終的な回収率で勝負を決することになった。
 第一戦、えのさん、撃て馬が20倍的中!絶好のスタート!
あまりのうれしさに俺は、「ソフトクリームが食いてえ。」と訳の分からないことをしつこく言っていた。勝利の後は甘いものが食べたくなるのだ。
覇王堂はというと、「8レースからしか予想してなかったんだよ!」と、明らかに動揺していた。
そんな彼を見て私は思わず微笑んでしまった。
 第2戦、えのさん、覇王堂的中!
しかし、えのさん逃げのワイド予想なので9.3倍。
覇王堂は馬連20.5倍!「これがわいの勝利の方程式や!」覇王堂、会心の的中に有頂天。えのさんはまたソフトクリームが食べたくなる。
一方の撃て馬はなぜか余裕の表情。
 これまで3者横一線。この後、仁義無き戦いは3人の予想を遙かに上回る結末を迎えることになる・・・・

 後編に続く(12月2日(土)更新予定)

激闘!ネット・オークション

 先日、ある有名外国人アーティストのコンサートチケットが欲しくて友人に相談したところ、「ネット・オークションだと割安で買えるかも。」というとびっきりの情報を入手。早速、家でオークションに初参戦!
目的のものを探してみると・・・あったあった。15000円のチケットが10000円で出品されていた。
「うぉ〜い!あった、あった!!」 私は興奮した。しかし、よく見ると10000円で誰かが入札していた。
「ふっ、小市民めが。俺は1000円プラスだ。」 私は苦もなく11000円で入札。
 数日が経ち、最高値が更新されたとのメールが入り、私は期限前日にどれ程値が上がったのか確認してみた。
・・・・11500円。「ちょこざいな。」 私には余裕があった。
「こんなもの期限3分前に更新してやる。」何という冷静さ、大胆さ、こんな自分に鳥肌がたった。
 終了5分前にオークションを覗いてみると・・・・何人か参加者が増え、値段は13000円程に上昇していた。
「かわいそうに・・・最後に笑うのはこの私だ。」オークション初参戦にして自分を見失うことのないこの余裕。なんてスゴイ男なんだ、えのさん!!
 戦況を眺めていると15000円(定価)にまで達した。
残りわずか2分。私の出番だ!定価を500円上回る15500円で入札。カッコイイ、えのさんカッコイイよ。
 しかし!ここで見知らぬ人物が16000円で入札!!
「どうする、どうするえのさん・・・・」 私は自分自身に問いかけた。
残りは1分を切った。
私の部屋は一瞬にして緊張感で張りつめた。額から流れる汗、震える指・・・・・どうする、どうする?
「えーい、いってまえっ!!」 カチッ。私は力強くマウスをクリック。
・・・・あれ?カチカチッ。
「オー・マイ・ガーッ!!」 何とオークション終了。
遂にチケットは見知らぬ誰かによって16000円で落札された。何てこった。
 最後の最後に出た私のチキン・ハートぶりに情けなくなり、腹が立った。
 しかし、出品した人にとっては10000円で売るものが、私達の仁義無き戦いによって16000円にも跳ね上がり大満足であろう。
 「私は人を喜ばす良いことをした。」 私は自分に言い聞かせた。
そう、私は自分自身を慰める術を知っている。
そんなえのさんが、私は好きだ。

Forever Children

 ちょっと前の話になるのだが、先日私たちはいつもの居酒屋で、いつも通り人生について語っていた。
 「俺達この歳になって、こんなバカなことやってていいんだろうか?」
確かにそうだ。ある時は、中学時の同級生がバイトをしているカラオケBOXを見つけ、
「久しぶりだから胴上げをしに行こう。」と酔った勢いで言いだし実行。
フロントで彼を見つけた私たちは、カウンターを乗り越え彼を抱え上げる。
「やめて下さい・・」力無い彼の言葉に我に返った私たち。そうだよな、知らない人が見たら強盗と勘違いされてもおかしくないよな。
 またある時は、友人が彼女候補である女性を連れてきたとき、「私、いまD・D・R(ダンス・ダンス・レボリューション)にはまってるの。」という言葉に対し、「そんなもの知らん。俺が知っているのはD・D・T(プロレス技)だけだ!」と言い放つ。
 その後、終始こちらのペースで事を進めた私達。もちろんその女性は、友人の彼女になることはなかった。
まだまだあるが、今回は控えさせてもらおう。 とにかく私達はやることなすこと子供じみているのだ。
 話を進めるうちに友人タツヤが、「30,40才になっても俺達は変わらないでいたい。」と、しおらしいことを言ってきた。
その言葉に即座に反応した私は、「そう、俺達は永遠に子供だ!」。
もう一人の友人タクヤは、「おうっ!フオーエバー・チルドレンだ!」と言ってのけた。
途中、イカの塩辛ばかり頼む私達に、「お客さん、塩分が・・・」と店長に心配されながらも大盛り上がり。
 結局、「このままでいいんじゃない?」ということになった。
意気揚々と家路につく私は、あの話を他の客は聞いていたのだろうか。
と、ちょっぴりはずかしい気分になった。
 そう、私達は永遠に子供。Forever Children。少なくともプライベートではそうありたい。