アゼルバイジャンに2-2のドロー!

 

 2003年2月12日、ユーロ2004予選 セルビア・モンテネグロ対アゼルバイジャンがホームのポドゴリッツァで行われ、セルビア・モンテネグロは格下のアゼルバイジャンに2−2で引き分けた。

・場所:セルビア・モンテネグロのポドゴリッツァ

・スタジアム:FKブドゥチノスト

・観客:約8000人

・得点者:セルビア・モンテネグロ ミヤトビッチ33分(PK)、ラゼティッチ52分  アゼルバイジャン G・グルバノヴ58分、77分

・イエローカード:アゼルバイジャン ハサンザデ、サディゴヴ、イスマイロヴ

セルビア・モンテネグロ

基本布陣は3・5・2(ただしトップ下のミヤトビッチがしばしば上がり目のためほとんど3・4・3)

GK:イェブリッチ

DF:ジョルジェビッチ

  ドゥディッチ

  ブニェブチェビッチ

MF:ラゼティッチ(73分からマルコビッチ)

  スタンコビッチ

  ブキッチ

  ボシュコビッチ

FW:ケジュマン(58分からドゥリャイ)

  ミヤトビッチ(70分からリュボヤ)

  ミロシェビッチ

アゼルバイジャン

FW:G・グルバノブ

他は誰も知りたがらないと思うので省略

・戦評

 アゼルバイジャンという格下の相手をホームに迎えたこの試合、注目されたのは試合自体よりも2月11日に名称をユーゴスラヴィアからセルビア・モンテネグロに変更したホームチームの初戦ということだった。フットボール協会の名前はそれまでのFSJからFSSCGに変更された。国内ではモンテネグロはツルナ・ゴ−ラ(Crna・Gora)と言われるためにFSSMではなくFSSCGなのである。ちなみにモンテネグロもツルナ・ゴ−ラも黒い山を意味する言葉で、モンテネグロはイタリア語でツルナ・ゴ−ラはセルビア語である。まだ国会で新国旗や国歌が決まっていないためにしばらくは国歌も国旗もユニフォームもそのままで使用される。

 記念すべき同国代表の初戦は間違いなく勝利で飾られるものだと皆が楽観視していた。しかしサビチェビッチ監督の言葉にはアゼルバイジャンへの警戒心がにじみ出ていた。記者会見では「私たちのチームが本命だ。確実にね。でもデータの上で格上のチームが、格下のチームに敗れる機会も嫌という程見てきている。経験を積んだ有能な選手たちを揃えているし、勝ち点3を取りに行く。攻撃的なプレーをして開始早々にもゴールを奪いたい」「国名がユーゴスラビアであろうがセルビア・モンテネグロであろうが、水曜日にアゼルバイジャンに勝つことが大事なんだ。勝利で国民を喜ばせたい」 と語っている。

 それでも今までの試合に比べれば安心して見られる試合になるはずであった。実際、2点目を取ったところまではつまらないながらも押し込んでゲームを進めていて攻め込まれるシーンはまれで、まさかこのような結果になるとは誰も思っていなかっただろう。

 セルビア・モンテネグロのフォーメーションはバックが右からジョルジェビッチ、ドゥディッチ、ブニェブチェビッチ。ハ−フは右がラゼチッチ、守備的MFがスタンコビッチ、ブキッチ、トップ下がミヤトビッチ、左がボシュコビッチ。トップはケジュマンとミロシェビチだった。怪我人が多くベストの布陣が組めない中、注目なのは初代表のブキッチだろう。今シーズン国内では圧倒的な強さをほこるパルチザンの10番でトップ下の選手だ。得点ランキングの上位にも顔を出していて、なかなか創造性のあるプレーをする、僕の注目選手である。そのブキッチが守備的ハーフを務め、ツルベナ・ズベズダでトップ下をしているボシュコビッチが左利きということもあってか左サイドに入っていたことが大きな変更点だろう。おそらく格下のアゼルバイジャン相手ということで押し込む展開が予想され、普段はトップ下をしているこの二人に攻撃面で期待したのではないかと思われる。

 試合は静かに始まり、淡々と進んでいった。アゼルバイジャンが引き、セルビア・モンテネグロが押し込む。セルビア・モンテネグロはやはりミヤトビッチがほとんどトップになり、ブキッチとスタンコビッチのどちらかがトップ下の位置まで上がっている。かなり前がかりになっているがなかなか決定的なチャンスは作れない。決定的に崩したのは、約10分にミロシェビッチのクロスを上がってきたブキッチがワントラップシュートしてGKに阻まれたシーンぐらいだろう。それでも33分にはサイドからのクロスのこぼれからの展開でラゼティッチが倒されてPKを獲得する。これをミヤトビッチが決めて、格下に対して大切な先制点を奪うことに成功する。しかし、このまま何の見所もなく前半は終了する。

 後半も前半同様に淡々とゲームは進む。そして52分、ラゼティッチのクロスミスがいい角度で飛んでいき慌てたGKにもあたりゴールに入った。これでセルビア・モンテネグロの初勝利は間違いないものだと誰もが思った。しかし、ここから思いもしないことが起こる。58分、セルビア・モンテネグロのゴール前でアゼルバイジャンがFKのチャンスを得る。そしてキッカーの蹴ったボールが走り込んだグルバノブにたまたまあたってコースが変わりゴールに入ってしまった。1点差にされたセルビア・モンテネグロは守備的ハーフのドゥリャイをケジュマンと代えてミヤトビッチを完全にトップ、ブキッチをトップ下に上げ、守備の安定を図った。守備の安定を図ったここからでもセルビア・モンテネグロは押し込んでゲームを進めていた。新しい選手を入れるなどの余裕もあった。しかし、カウンター一発!中盤でボールを失い、そこからバックの裏にパスを出され、走り込んだグルバノブのボレーが、それも彼が100回このチャンスを迎えていったい何回を決めることができるだろうかと疑問に思うほど鮮やかなシュートがセルビア・モンテネグロゴールに突き刺さった。アゼルバイジャンは大喜び。セルビア・モンテネグロは慌てて総攻撃に出るが、初勝ち点を目指して必死に守るアゼルバイジャンの守備網を破ることはできずに試合は終了。

 新名称での初陣は、まさかまさかのホームでの引分け。慢心があったのだろうか、しかしサビチェビッチ監督は十分にアゼルバイジャンを警戒していた。それにもかかわらずこの結果になってしまうあたりが現在のセルビア・モンテネグロのチーム状態を物語っている。僕は試合前、なぜサビチェビッチ監督がアゼルバイジャン相手にそんなに慎重な表情をしているのかと不思議に思ったが、現在のチーム力は今回のように不運が重なればアゼルバイジャン相手でも勝ちきれないかもしれないというレベルでしかないのだろう。特に攻撃面において、崩しきれない、有効な形がないということは深刻だ。これもすべては王様と呼べるだけのゲームメーカーの不在が原因だと思われる。今回フル出場したブキッチにしてもパルチザンで見せるほどのパフォーマンスは見せることができず、ボシュコビッチも左サイドでは決定的なシーンを作ることはできなかった。二人ともまだまだ国際試合において力を発揮できるレベルにまでは到達していないということだろう。スタンコビッチは明らかにトップ下よりは守備的ハーフの方がいい仕事をする選手なので、この2人あたりに経験を積ませて育てていくしかないのではないだろうか。

 1つ付け加えておくと、ベオグラードで行われる代表戦では、国歌斉唱の際には誰も歌わず逆にブーイングが出たりするが、モンテネグロの首都ポドゴリッツァでは国歌が歌われていた。独立問題の当事者であるモンテネグロでこのようなことがあるとは少し意外な感じがした。

・アゼルバイジャン戦のセルビア・モンテネグロ代表メンバー

GK:イェブリッチ(フィテッセ)、ジリッチ(サルティド)

DF:M.ドゥディッチ(ツルベナ・ズベズダ)、ラゼティッチ(ラツィオ)、H.ジョルジェビッチ(オビリッチ)、ブニェブチェビッチ(トッテナム)、クルスタイッチ(ヴェルデ−ル)、ドミトロビッチ(GAK)、トロボック(パルチザン)

MF:D.スタンコビッチ(ラツィオ)、ブキッチ、ドルリャイ(パルチザン)、ボシュコビッチ(ツルベナ・ズベズダ)、H.ブルノビッチ(ゼタ)、マルコスキ(ジェレズニク)

FW:ミヤトビッチ(レバンテ)、ミロシェビッチ(エスパニョ−ル)、ケジュマン(PSV)、リュボヤ(ストラスブール)

*ズベヅダのマルコビッチが試合に出場しているので追加召集されたと思われます。