・セルビア・モンテネグロ代表、ドイツ戦で見えた一筋の光明

 

 4月30日(現地時間)、ドイツ・ブレーメンでドイツ対セルビア・モンテネグロ(以下SCG)の親善試合が行われた。結果は、後半15分に挙げたケ−ルのゴールで、ドイツが1−0の勝利を収めた。

 この試合のために召集されたSCGの代表選手リストには、デヤン・スタンコビッチ、ミハイロビッチ(ともにラツィオ=イタリア)、ダルコ・コバチェビッチ(レアル・ソシエダ=スペイン)などの主力選手の名前がなかった。スタンコビッチとミハイロビッチはラツィオでの連戦への配慮から、コバチェビッチはけがのためというのがその理由である。代わりにアンデルレヒト(ベルギー)に所属するイェストロビッチ、国内リーグからはパルチザンのイリェブ、ジェレズニクのマルコスキが新しく召集された。

 これについてデヤン・サビチェビッチSCG代表監督は、メンバー発表の場で「ドイツ戦は、完全にけがのない選手だけで戦う。そのため、代表に常連となっている選手の名前がないのだ」「マルコスキはジェレズニクでも代表に値するプレーをしている。イリェブも同様で、今回の試合は彼らのプレーを確認するよい機会である。イェストロビッチはアンデルレヒトでコンスタントにゴールネットを揺らしている。彼にチャンスを与えるのは論理的なことだ」と説明した。

 つまり、今回の親善試合は勝敗にはそれほどこだわらず、若手のテストの場として位置付けられていた。

 試合はドイツが押し気味に進めるものの、ゴール前のシーンや素晴らしいコンビネーションプレーも少なく、淡々と時間だけが過ぎていった。唯一生まれたゴールにしても、ケ−ルのミドルシュートをGKイェブリッチがファンブルしてしまい、それがそのまま入ってしまったもの。このプレーまで、ドイツのクロスボールに対して冷静に対処していただけにイェブリッチとしては痛恨のミスだった。SCG同様、ドイツもバラックなどの主力を欠いていたため、チームとして勝ち負けにこだわる雰囲気はあまり感じられなかった。途中からは両チームとも勝敗を度外視したような選手交代を行い、そのままさしたる見どころもなく試合は終わった。

 プラービ(SCG代表の愛称)の若手で目に付いたのはブキッチ、ネナド・コバチェビッチ、ビディッチだろう。

 ブキッチは所属のパルチザンで10番を背負い、攻撃の中心を担っている。攻撃的MFで、ドリブル、パスなどで攻撃にアクセントをつけられる数少ない選手だ。また、得点力も高く、国内リーグ27節終了時点で得点ランキングのトップにいる。この試合でも、彼が前を向いてボールを持った時が、最も得点の可能性を感じさせた。ここ最近の代表戦にもコンスタントに出場している。1979年生まれとまだ若く、この先プラービの攻撃の中心となる可能性を秘めた選手だと、私は期待している。

 次にレッドスターのDFビディッチ。1981年生まれでブキッチよりも若いが、彼はもうすでに代表では常連となっている。1対1やへディングに強さを見せるセンターバックである。レッドスターでは、すでにディフェンスリーダーであり、今後のプラービのディフェンス陣を引っ張っていく存在になるだろう。

 最後に、この試合が代表での2試合目となったレッドスターのネナド・コバチェビッチ。彼は守備的MFのポジションで、積極的にボールを追いかけるなど守備能力が高い。先のベオグラードダービーでもブキッチを中心としたパルチザンの攻撃陣にチャンスを与えなかった。ドイツ戦でも中盤で動き回り、ピンチの芽を摘み取っていた。ただし、守備的MFのポジションにはスタンコビッチなどがおり、ブラービの中で最も層が厚いところ。ブキッチやビディッチのように、これから先も出場できるかは分からない。だが、彼も1980年生まれとまだ若く、これから先の成長次第ではレギュラーを獲得することもあり得る。

 残念ながら、今回の試合が初召集となったマルコスキやイリェブには、あまりプレーする時間が与えられなかったため、彼らは良い印象を残すことはできなかった。だが、国内リーグには、レッドスターのFWボガワツ、右サイドのマルコビッチなど、まだまだ今後が楽しみな選手がいる。

 このような若手が出てきたことで、今まで暗い話題が多かったプラービにも、ほんの少しだが光が射してきたように思う。だが、現実問題としてユーロ(欧州選手権)2004の予選は、もうすでに始まっている。悠長なことは言っていられない。サビチェビッチ監督には世代交代を推し進めつつも結果も出さなければならないという非常に困難な仕事が課されている。サビチェビッチ監督の苦悩は続く。