第77回箱根駅伝復路プレイバック

出場大学
駒沢大・順天堂大・中央大・帝京大・日本大
早稲田大・東海大・神奈川大・山梨学院大・大東文化大
日本体育大・国学院大・拓殖大・法政大・平成国際大


第77回箱根駅伝復路オーダー(2001.1.3)
大学名6区7区8区9区10区
駒澤大学松下 揖斐 武井 高橋正 高橋桂
順天堂大学宮井 坂井 榊枝 高橋 宮崎
中央大学永井 杉山 花田 池上 木村
帝京大学清野 小川 野尻 喜多 村野
日本大学中山 塩見 山本 清水智 清水貴
早稲田大学大角 中尾 松岡 後藤 鈴木
東海大学斎藤 河野 松宮 大井 横山貴
神奈川大学松田 吉村 原田 青蔭
山梨学院大学松田 清家 高見沢 尾池 長谷
大東文化大学金子 池田 田子 山脇 真名子
日本体育大学服部 大光 解良 城戸口 鈴木
国学院大学五嶋 山岡 小俣 吉原 飯干
拓殖大学山田 稲垣 重松 大宮 米倉
法政大学長嶺 奈良澤 高橋剛 土井 早川
平成国際大学星野 吉野 伊東 田嶋 橋本


6区 20.7km

 6区のランナーは他の区間と違い、前のランナーとの差だけでなく、後ろのランナーとのタイム差もわかってスタートする。このあたりが、各大学とも微妙な作戦を立てられるところである。今大会の場合では、繰り上げスタートとなる9位ラインの各校では、例えば日体大の服部選手などは、周りのランナーに前にいかれなければ9位だ、と考えることが出きるし、往路で出遅れた大東大金子は逆に日体大を3分離せばシード圏内に逃げ込める、という意図で走り出すであろう。上位の方では、中大永井などは、逃げた方がよいのか、追いつかせようか、一晩いろいろ考えたに違いない。何年か前、13秒差でスタートした箱根初登場の神大中澤に、下りのスペシャリストだった駒大河合が追いつくだろうと見られていたが、あれよあれよと、中澤が区間新を出したことがあった。優勝争いの興味から言えば、永井にそれをやって欲しいところだったが、故障明けの永井には酷だったようだ。

 そんな中、スタートでのハプニング。法大長嶺選手のスタートが25秒も遅れてしまった。これはタイムを調整すればいいなんてものではない。丁度、宮井が見える位置で追えるのかな、というところだったのが、全く見えない位置からのスタートになってしまった。また、1年生であることもあるし、前夜たてた作戦がすべて水の泡となってしまっただろう。長嶺とすれば、むしろ後ろを気にしなければならない展開となったのである。このミスは時間差スタートを従来の旗による方法からピストル式に変えたため、最初の8秒を撃ち終わって、ホッとしてるスキに起こったという。次回からはまたもとの方法に戻るらしいが、なんとかして欲しい。

 2キロ手前、早速宮井が永井にとりつく。正に駒大3区でこれをやって欲しかった。元箱根の段階では、2人とも歩調を合わせるように、ゆっくりと走ってる感じだ。しかし、3キロ手前、遅いと見るや、宮井が前に出た。気持ちの中では、宮井は永井と争うのではなく、後ろの駒大をくっつけないことだ、という意志がそうさせたのかもしれない。積極的な走りで、牽制のし合いはゴメンだ、というところだ。追う松下であるが、スタート直後の走りを見ると、いつもに比べてピッチが速いような気がした。5区経験者なので登りは強いだろうし、去年の絵を見ると、下りがなにしろ速いので期待がもてる。法大が25秒遅れてスタートしたことは、松下にとってみれば、すぐに追いつこう、という作戦に変更したのかも知れない。いずれにせよ、法大のスタートミスは大きな影響を及ぼした。先頭の2人の差は芦の湯のあたりで、もう150mくらいであり、展開的に相当開くと思われた。松下はトップとの差が2:06、宮井よりも10秒速く入っている。一時永井との牽制があったため、この差は妥当なところであろう。後でわかったことだが、松下本人によると、やや体調不良だったようである。そのためか、咳き込むシーンが後半何回かテレビでも映し出された。無論、この段階では松下がさらに前との差をつめるものだと思われた。

 6区には本来の主役ともいうべき、大東大金子も登場していた。それに対抗するためか、登りで区間賞を取った拓大も、一万メートル29:22の期待のルーキー山田を出走していた。しかし、繰り上げ組の7人の中からは金子一人がポーンと飛び出すという、去年の1区を見るような感じだった。山田としてはある程度まではついていきたかったかも知れない。しかし一年生ということもあるだろう。やはりそれは酷だというものだろう。しかし、金子の立場からすると、最初から自分のペースでレースをする、というのはたいしたものだ。もっといい位置でのスタートならとんでもない記録が出たかも知れない。来年は、いい位置で、57分台、期待したい。後方スタートということもあってテレビの扱いも小さかったようだし。

 小涌園では宮井と永井の差は33秒。宮井は例年のパターンと違っていた。いつもの宮井なら前半8キロくらいまでは足がよく伸びて、とても追いつけない、というようなすごい走りをするが、10キロ過ぎから足が重くなり、残り3キロはガタガタになる、というパターンだったが、今回はそれが見られそうもない。松下は小涌園で2:18差とスタート時と変わらなくなってしまった。むしろ、下りに入って宮井に離されてる傾向になってしまった。もっともつれると思っていた5位〜7位争いは、平国星野が意外と頑張っている。よく考えると、星野は埼玉栄出身で、高校駅伝で7区区間賞をとっていた。実は強い選手だったのだ。平国としては、この選手で順位を落とさずに、シード安全圏に逃げ込みたい、という野望だったであろう。平国は5位キープで、むしろ、帝京が後ろの山学に追いつかれそうな感じだった。金子が極めて快調で、拓大山田も繰上げ組の中では比較的上位で走っていた。

 大平台のヘアピンカーブ。順大と中大の差は40秒。駒大はこの時点で25秒遅れでスタートした法大を捕えていたが、順大とは2:18差で先程と変わらない。箱根のパターンからすれば、後半は先頭が離す、という状況になっていきそうな予感だった。その後、松下の方がやや苦しそうな感じになってきた。下りであるにも関わらず、スタート時のピッチよりも遅いピッチになってきている。体が揺れてきている。大きく抜き去ったはずの法大を振り返るなど、何か落ち着きがなく感じる。去年の下りで東海柴田を突き放した後のように、前しか見えない、という走りではない感じだ。このままでは駒大としては計算が狂う。エースといってもいい松下で、順大の7人目とも言える宮井に離されてしまうということは、優勝争い的にもピンチになる。

 箱根湯本を過ぎ、残り3キロになった。去年の宮井はこの時点では相当苦しい表情だった。去年の順大の政綱という選手がヘロというニックネームだったが、むしろ宮井の方が似合ってそうな感じだった。しかし、今年は表情もさほどきつそうではない。警視庁に就職することもあってか、警帽が似合いそうな顔立ちが凛々しく見える。高校時代は狭山ヶ丘高校で、すでに29分一ケタで走っていた宮井が、陸上生活ラストランをかけて、相変わらずの軽快なピッチで突き進んで行く。もはや今年の箱根、勝負あったか、に見えた。宮井の表情と、松下の表情の差がそれを物語る象徴だった。宮井はとどめに区間新。駒大は6区で苦しむ時はいつもライバルは区間新だ。中大永井は後半粘って、36秒差で続いたが、松下は逆に後半へばって3:08差。1キロ以上の差となり、万事休した感じだった。5位の平国星野が予定通り、5位をキープ。追いつくと見られた山学松田は後半失速し、7位のまま。金子が快調で宮井の記録をさらに上回る区間新を記録、かつ13位スタートから一気に9位へ浮上した。そのあおりを食って優勝候補の一角神大はなんと13位にまで沈んだ。拓大山田も後半伸びず区間13位に終わった。

6区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
順大   ―  宮井   58:29
中大  0:36  永井   59:13
法大  3:00  長嶺  1:00:42
駒大  3:08  松下   59:21
平国大 7:49  星野  1:01:13
帝京大 8:42  清野  1:01:24
山学大 9:28  松田  1:01:14
日大  10:14  中山  1:00:36
大東大 13:27  金子   58:21
日体大 13:48  服部  1:02:00
早大  13:57  大角  1:01:49
拓大  14:03  山田  1:02:02
神大  14:38  松田  1:01:17
国学大 23:15  五嶋  1:02:28


7区 21.2km

 つなぎの区間とも考えられる区間だが、早稲田の武井が数年前突っ走ったり、去年も駒大の揖斐が突っ走ったように、優勝を決定的にする走りをすることが最近増えてきた。今年もご多分にもれず、優勝候補たちは準エース格をそろえてきている。駒大は去年の快走を再現目指す揖斐、順大は今季すべてのレースで優勝を決定づける走りをしてきた坂井、あいにく後方となったが神大はスーパールーキー吉村。何度もいうが、神大は早大佐藤対策として吉村を置いたのではないか、と踏んでいる。または下りの選手に自信がなかったかのどちらかであろう。つなぎの区間ということで、総合力の劣るチームは圧倒的に不利になるはずである。逆にエースがいなくとも総合力で勝負するチームはここで区間上位を目指さなければならない。今年は往路の逆風が復路では追い風となって、好記録続出が期待される展開で、早大佐藤が出てればすごい記録が出ただろう。

 さて、先頭の坂井は3キロを8:32で入った。このペースでは後ろはそうは追いついてはこれまい。追う中大は杉山。有田工時代からの有名選手で、高校時代は有田工の杉山、田村高校の小川(国士舘大)、土岐商の揖斐と全国的な選手だったのだが、大学に入ってからは泣かず飛ばずである。今の実力では坂井の方が数段上であると言わざるを得ず、200m弱の差であったはずなのだが、4キロ地点で後ろはもうまったく見えない。高校時代の実力者と言えば、早稲田に鳴り物入りで入った中尾も出走していた。2年生にして初駅伝。正直な話、中尾も今の実力では駒大の2年生クインテット(島村・布施・松下・松村・高橋桂)や、中大藤原・野村らに劣るであろう。特に西脇時代では格下だった藤原や、ライバルだったが都大路で完勝した野村の活躍に刺激を受けないはずがない。もらった位置としても日体大、拓大に追いつかれてもそれについていけば、という位置だったから、まあ無難な走りをすると思われた。

 レース展開としては、どんどん杉山が離れて行き、順大の独走となりつつあった。追う揖斐の走りはいつもよりややピッチが遅い気がする。やや抑え目で入ってるのか。法大奈良澤の走りはいい感じだ。去年の4区よりもピッチが明らかに速い。ビデオで確かめて見てもやはり速かった。そんなわけで、揖斐と奈良澤は前半は互角の走りをしている。しかし、決して遅いわけではない。奈良澤とて、29:06のベストタイムを持つわけだから、過去2年があまりに不振だったと考えるのが自然だろう。一方ここまで5位できた平国大としてはどうしても総合力で劣るだけに踏ん張り所であるが、7区吉野はどう見ても遅い感じがする。コニカの松宮に似た感じのくねくねしたストライド走法で、後半ガクッと落ちそうな感じだ。

 坂井は10キロを29:29と相変わらず快調なペースで突き進んでいる。坂井にとっての今シーズンはバラ色そのものなのか。趣味は盆栽であることを盛んに強調されていたが、本人はHP上でぎゃらんどゥというHNで否定的であったが、堅実な走りで完全に独走体制となってきた。揖斐が10キロを29:41だから、実はさらに開いているということになってしまった。しかし、どうやら揖斐の走りを見てると、10キロ付近からピッチを上げてきたような感じだ。ちなみに、もし、法大の復路スタートミスがなければ、8秒前の法大を目指して最初から突っ込み気味に入っただろう、と思われる。そうなったときどういう展開になるかどうかはわからないが、やはりスタートミスの結果は大きい。    

 二宮の通過ポイントで、2位中大との差は1:22となっており、走りもストライド、ピッチ、共に良く無さそうだ。揖斐が3:16差。大会1週前に風邪をひいたというエピソードもあり、不安を残す前半の遅れである。そして揖斐に迫る勢いで走ってる奈良澤の走りは特筆ものだろう。前回、前前回の走りからして、正直な話、このページでも奈良澤は区間12位前後だろうと踏んでいた。それが揖斐よりも速いくらいの走りをしている、謝らなければならない。もっとも留年の関係で神大飯島と同じく、本当は学年は上だったはずだが。さて、平国であるが、帝京小川直也が10秒差まで迫っている。小川も初出場から2年連続して5区を走ってるランナーで、名前もそうだが、そこそこ実力はあるはずである。平国吉野は相変わらず動きが遅い感じで、ほとんどつくことも出来ずに遅れ、このままずるずるいくように思われた。二宮では神大の吉村が坂井を11秒上回るペースで走っており、二宮までトップのペースで、スーパールーキーぶりを発揮している。なお、二宮を2番目のタイムで通過してるのは奈良澤である。 

 坂井は17キロ50:40、表情もやや苦しそうになってきた。1キロを3分超えるようになってきた。後半揖斐は少し挽回してきているようである。それにしてもこのテレビ中継は7区の間に大きな脱線を3度もしており、もう少しなんとかならないもんかと思う。テレビで見る限り、後半の展開はほとんどわからないし、神大吉村などほとんど写らなかった。中尾などの紹介もなかったし、天下の駅伝中継のはずの日テレがこれでは困る。結局、坂井は最後まで安定した走りで首位をガッチリキープした。

 2位にはそれでも中大杉山が続いているが、2分以上の差となった。あとのメンバーを考えると、中大はこの時点でドロップアウトした感じになった。2:47差まで追い上げた駒大にしても、順大に追いつく可能性は限りなく小さい感じだった。法大奈良澤は最後は疲れたものの、最小限に抑えて、63分台で見事にタスキリレー。殊勲賞を贈りたい。それにしてもあれだけのストライドはどこか他に適性区間がないものかと思うのだが。5位争いは、実は帝京小川も区間11位であり、区間8位でしかなかった山学清家が2人を抜いて5位に上がってきた。しかし、トップとの差は10分以上、4位の法大までも7分以上の差となっており、さすがにこの時点で4位以上の大学が5位以下に落ちることはなさそうだ。6区で勢いづいた大東大はここでも池田が好走し、見かけ上5番目で襷を渡した。平国は最後は疲労困憊した感じで大きく順位を下げた。日大塩見はここ2年、4区で好走していたが今年はいまいち伸びなかったようだ。神大吉村も63分台で走り、チームを10位にあげた。国学大の1年生山岡が区間6位で走り、一矢報いた。7区終了時点で優勝争いは完全に順大が抜きん出た格好となった。シード圏争いとしては8位平国から9位大東大までが3分近くあるものの、5位山学から13位の早稲田までは可能性がある大混戦となった。國學院は残念ながらシード権はほぼ絶望的となっていた。

7区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
順大   ―  坂井  1:03:38
中大  2:12  杉山  1:05:14
駒大  2:47  揖斐  1:03:17
法大  3:15  奈良澤 1:03:53
山学大 10:42  清家  1:04:52
帝京大 10:53  小川  1:05:49
日大  11:37  塩見  1:05:01
平国大 11:39  吉野  1:07:26
大東大 14:07  池田  1:04:18
神大  14:20  吉村  1:03:20
拓大  15:09  稲垣  1:04:44
日体大 16:07  大光  1:05:57
早大  16:35  中尾  1:06:16
国学大 24:17  山岡  1:04:40


8区 21.3km

 最大のつなぎ区間とされている8区だが、トップの選手が昨年の平川(駒大)、一昨年の上原(駒大)のように失速するケースがよく見られる区間であり、ここに、古田(山学)や奥田(順大)といったエース格を持ってきたチームが大きく他校を引き離す可能性のある区間である。今年の順大の8区は8本柱以外の、他校にとってみれば「つけいるスキ」ともいうべき榊枝。中大は花田、駒大は武井。共に全日本を経験しており、ある程度は差をつめることが予想された。榊枝はやはり8本柱とは力の差があるのだろう。1キロを3:05程度の一昔前の箱根復路のペースでたんたんと刻んでいる。武井が2:55くらいで1キロを入ったものだから、もちろん差は縮まって行く。中大花田は故障明けが災いしてか、3キロも行かないうちから右足大腿部をポンポン叩きながら走っており、心配された。

 8区はリベンジに燃える男が2人登場していた。去年5区、インフルエンザを押しての出場で大ブレーキを起こして往路12位の原因になってしまった林健太郎と、1年生の去年、拓大8区で70分かかってしまって区間最下位に沈んだ重松修平である。ガチンコファイトクラブの網野に似た風貌の林は前半から快調なペースで突っ込み、力のあるところを見せた。一方の重松も、去年の頼りない走りからは一変、力強い足取りで進んで行く。さらには山学大のスーパールーキー高見澤が8区に登場してきた。山学が期待のルーキーを8区に置くのは古田からの伝統か。高見澤は藤沢まで武井よりも最も速いペースで進んでいた。

 茅ヶ崎を相変わらずたんたんとした足取りで榊枝が通過して行く。2位花田は足をずっと叩いている。激痛に耐えながらの粘走か、それでもトップとの差は1:40と詰めており、武井も2:07差とグンと詰めてきている。法政も3:03差と、全ての大学が榊枝をどんどん詰めている感じだ。法大はここである程度武井と同じようなペースで進めば、9区に土井がいるのでおもしろいのだが。榊枝はキョロキョロしながらたんたんと刻んでいる。高2の時に都道府県男子駅伝福島代表で区間賞をとった頃の勢いはあまり感じられない。駒大武井同様、榊枝にしても最初で最後の箱根である。思い入れがなかったはずがない。最後の箱根で独走トップ、1号車テレビ中継。自分がこんなところにいてていいんだろうか、そんな気持ちなのだろう。抜いていく車などにも気を取られている感じで、初出場の大学がよくあるように、頭がカーッとしているのかも知れない。時計を見るのも心なしか少ない気がする。

 ずっと1キロを3:05ちょっとのペースで進む榊枝は、時に3:12というラップも記録しながら、10キロの通過が31:11と速くないペース。もちろん数年前の8区ならば区間賞ペースなのだが、現在の箱根はそうはいかない。2位中大との差は1:15まで縮まっている。そして、中大の後ろ15秒で駒大武井が追ってきている。クックックッと肩を揺らしながら快調なテンポで走る独特のフォーム。なんといってもリズムが榊枝とは違う。中大花田も10キロを過ぎてキロ3:05程度に落ちてきたこともあって、武井が花田にどんどん近づいてくる。先頭から2号中継車がはっきり見えるようになったのだから、見てるほうとしても興味がどんどんそそられる。

 榊枝は相変わらずたんたんとした走りである。それほど苦しそうではないが、ペースはあがらない。藤沢の定点では花田が1:16差、武井が1:23差とさらに縮まってきている。武井拓麻。佐野日大出身はあの西田隆維の後輩にあたる。2年生くらいの頃から、駅伝には出ないもののハーフマラソンなどではきっちりと好走してきた選手。47kgという体重は、日大の軽量選手渡辺尚幹よりも軽い。その割に身長は164cmと渡辺ほど低くはない。しぼれるところを全てしぼったともいうべき細身の体を全身をバネのように使って、いっちに、いっちに、という感じで進む様は、まるで伴奏車が復活したかのような印象を与える。肩を左右に揺することでこぎみいいリズムを刻んでいる。15キロ手前、とうとう中大花田をとらえ、2位に浮上。この2人が争って行けば、さらに順大を詰められるように思えた。給水をした後の遊行寺の坂も斜面をしっかりと見据えグイグイ登っていく。木村拓哉に似てるとも言われる端正なマスクで、花田と一緒にグイグイ上って行く。

 榊枝の方は16キロを過ぎて、表情にも苦しさが見えてきた。そして後ろを振り返ることが出てきた。その頃には武井は花田を振りきり、先頭との差を1分まで縮めてきた。16〜17キロの登りの1キロで榊枝が3:23、武井が3:12だから、キロあたりで10秒ずつくらい縮まっている。榊枝とて、最初の頃に比べるとピッチはだいぶ上がってきたようだが、武井の追走はとまらない。先頭のそんな切迫した様子も知らず、ブレーキしてる選手がいた。平国大の伊東。藤沢までは遅いなりにも榊枝より1分近い遅れで保っていたのだが、そのあたりから極端にリズムが悪くなる。去年の4区奈良澤の後半を思い出させるようなスローピッチで、かつ奈良澤ほどのストライドがないもんだから、完全にブレーキの状態になっている。直後に写った日体大解良と比べると2倍くらいピッチが遅い。やはり総合力で劣る大学、つなぎの区間が7区、8区と致命的になっており、シードどころかあっという間に12〜13位争いに転じそうである。

 榊枝は相当バテてきている様子ではあるが、なんとかラストに切り替えようと必死で頑張っている。2位に上がった武井はほとんど表情の変化もなく、むしろ眼光はますます輝きを増し、しっかりと1号車、あるいは榊枝を捕えるような眼差しで相変わらず快調なピッチを刻みつづける。榊枝のラストスパートにも離れるどころかさらに強いラストスパートで詰めてくる感じだ。影取で順大との差は43秒。18〜19キロの1キロを榊枝3:10、武井は3:01。さらに差は縮まって行く。榊枝は顔が左右に振れるようになってきた。武井は全日本7区で見せたような炎のラストスパートがある。大東大金子を振りきった猛烈なラストスパートがある。その差は中継所でさらに縮まるのか。さすがの武井も随分苦しそうになってきたが、その渾身のラストスパートをかけている。しかし、距離がわずかに足らなかったようだ。なんとか榊枝がトップでエース高橋謙介にリレーした。

 2位駒大武井は順大からわずか28秒差まで詰めてきた。中大花田も最後の切り替えで、42秒差まで詰めてきた。法大がモタついたため、優勝争いはこの3校に絞られたが、やはり高橋謙介擁する順大が圧倒的有利に変わりはなかった。復路優勝を狙う大東大は田子がブレーキ、コニカ松宮兄弟の母校、花輪高校出身だったが順位を再びシード圏外に落としてしまった。山学高見澤は後半疲れて区間賞獲得はならなかったが、区間3位の好走だった。リベンジに燃える神大林が区間2位。拓大重松も区間6位の好走でシード圏内に入って来た。しかし、11位の日体大までもわずか30秒差と、安全圏というには程遠い状況だった。シードは山学、帝京までは当確のランプが押せそうな状況となり、平国、早稲田がやや苦しい状況になった。

8区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
順大   ―  榊枝  1:07:07
駒大  0:28  武井  1:04:48
中大  0:42  花田  1:05:37
法大  2:53  高橋  1:06:45
山学大 9:00  高見澤 1:05:25
帝京大 10:06  野尻  1:06:20
日大  11:56  山本  1:07:26
神大  12:28  林   1:05:15
拓大  14:08  重松  1:06:06
大東大 14:30  田子  1:07:30
日体大 14:38  解良  1:05:38
平国大 15:51  伊東  p1:11:19
早大  15:53  松岡  p1:06:25
国学大 25:24  小俣  1:08:14


9区 23.0km

 8区で28秒差まで詰まったとはいえ、順大はエース高橋謙介。追う駒大も実力者の高橋正仁。シドニーオリンピックで高橋尚子が金メダルを取り、国際千葉駅伝では高橋健一が優勝のゴールテープを切る世相、箱根駅伝でも高橋対決となった。高橋謙介は確かに強いランナーだ。しかし、ただ一つつけいるスキがあるとすれば、出雲、全日本ともに、圧倒的トップで襷を受けているため。接戦を体験していないことだった。謙介が体験したトップ争いの接戦はと言えば、2年前、北田初男を抜き去ったまさにこの区間以来だったのである。一方の高橋正仁はといえば、去年の箱根で藤田2世としてブレークした選手であるが、出雲では揖斐の失速の流れを食い止められず、全日本でも板山・徳本らに水を開けられて失速と、あまりいいところがなかった。しかし、元々長距離に強い選手。あの藤田ですら、4年生の出雲では失速しているが、その後の箱根でしっかり区間新を出している。とりあえず、レース前半の流れに興味が持たれた。

 高橋謙介は最初の1キロを2:42という区間新を視野にいれたペースで通過したのに対し、高橋正仁は2:35という脅威的とも言える滑り出しで、差は21秒になった。画面でも正仁の走りは腕を大きく振っていかにも「飛ばしている」という印象を受ける走りだ。これで最後までもつものか、という感じも受けるが、去年の10区も出だしはこのような感じではなかったか。少なくとも、謙介が離しておしまい、というレースではなくなってきつつあったことは確かだ。9区での猛然追い上げと言えば、何年か前に、早稲田の櫛部が山学の黒木を追いかけたが、最後バテて、逆に離されたという展開があった。多少はそのことが心配である出だしである。前日の3区で詰められなかった10秒差を挽回するかのような出だし、覚悟を決めた表情には惚れ惚れするものがあった。距離への不安という感情はまったくないように窺えた。

 この上位2人のダッシュにはスピードランナーの池上といえども、置いて行かれるしかなくなったようだ。そんなに中継所では差はなかったはずなのに、正仁から後ろの池上はTVでも見えなくなっていた。両高橋の差は3キロで20秒、正仁の3キロは8:22、西田のタイムを14秒上回る入り。謙介の4キロは11:22だから、このまま行くと14分前半で5キロを入ることになる。それでも正仁がグングン詰まってくる、4キロ11:12で差は18秒。本来なら最初ほど縮まらなくなった時点で、並のランナーなら根性が続かず、ズルズル離れ始めるころかも知れない。しかし、正仁は違った。なかなか縮まらないなら、さらにペースを上げる。ひたすら強気の走り。猪木似の横顔が凛々しく見える。

 差は5キロを過ぎて15秒差となり、中継車が1号車のみで写すようになったため、ここからはさらに詰まりやすくなると思われた。その通り、6キロ手前で10秒差とどんどんつまり、追い付くのも時間の問題となった。10秒差はわずか1キロのうちに縮まり、7キロの権太坂手前でとうとう追いついてしまった。駒大としては今大会、2区以来のトップ。今年は2年前、高橋謙介に喫した逆転劇をし返す番なのか。謙介の様子が落ちつかない。影を見たり、位置どりを変えたり、大きく後ろを振り返ったり。とにかく今シーズンの謙介は追いぬかれたことはおろか、接戦をしたことすらなかった。そのことを十分頭に入れて、真後ろにピッタリとくっつき、かつ挑発するかのように腕を大きくグルグル回す。8.2キロで一度謙介がしかけるが、正仁はビクともしない。この選手はいつも最後まで苦しそうな表情をしない。このことも正仁にとっては強みか。何回も何回も冷静になろうと、腕をダラリと下げてリラックスに努める謙介。正仁は去年の神屋とは異なり、謙介の隣にくっついた。この併走の様子は2人と闘志がみなぎる争いというよりも、正仁の気迫に謙介が圧倒されているように見えた。冷静な走りをする謙介は、感情を表に出して走ることはあまりしない。今シーズンの駅伝はそれで全てOKだった。だが、最後の箱根でここまで予断を許さない展開で走ることになるとは。2人の併走は延々と続いていく。

 この区間には、期待のランナーが走っていた。法大の土井。予選会では徳本の「行ってくれ〜」の叫びを受け、日本人1位をとっている男。予選会好走コンビの大東大松浦は3区で失速しているために、期待の持たれるところだが、トップ争いがあまりに白熱していたため、あまりテレビに映らなかった。本人もそのことを徳本選手のHPによると嘆いていた。法大がシード争いをする場合、9区の土井は決め手になるだろう、と予想していたが、現在4位。先頭2人に追いつくのは難しいだろうから、中大池上に追いつくかどうか、といったことに興味が持たれた。その池上はもはや先頭とは1分離れ、まあ自分のペースで淡々と走ってる感じだった。なお、土井は横浜駅で先頭と3:03、池上は0:57であった。

 11キロで正仁が仕掛ける。差は1mほどつくが、順大高橋とて、そう弱い選手でなく、順大のエースである。再びとりつく。2人の駆け引きはペースを上げたり下げたりと、非常にタフだ。正仁の腕の振りを見ても、前半よりペースが遅いのは明らかだった。13.4キロで謙介がしかける。正仁は離れない。横浜駅通過の頃には、こころなしか、謙介の表情も苦しげに見えてきていた。沿道のファンの数がものすごい。15キロ過ぎの道路は、間違いなく管理ミスであるかのように恐ろしく狭い道路になっていた。いつのまにか、2人のペースは区間新より若干遅れたペースに変わっていた。しのぎを削る牽制によってペースがあがりにくかったようだ。

 2人の併走は続く。併走は10キロを超え、中継所まで延々と続くようにも思われた。高橋正仁。秋田工出身。全国高校駅伝出場時は2年の時6区を走って区間37位に沈んでいる無名の選手が、3年時には現コニカの松宮兄弟率いる花輪に敗れて都大路に出られなかった選手が、その区間37位に沈んだ時の優勝校の報徳のエースだった、全国的に一流だった高橋謙介と併走している。同じ駒大出身で、同じように高校まで無名で、東北出身であった藤田敦史を尊敬しており、部屋には藤田の上半身の裸体の写真を張って、同じくらいに締まった体を作りたいと意気込んでいるそうだ。去年の箱根では、富士通入社でニューイヤー駅伝のゴールテープを切った藤田と同じ靴下をはいて箱根のゴールテープを切っている。そんな選手が、藤田敦史日本新記録の影響を受けないはずがない。

 20キロを過ぎた。2人のペースは1キロ3分を超えるようなペースで落ちついていた。21キロで謙介が時計をチラっと見てしかける。急激なペースアップは追いすがる正仁の腕の振りを見れば明らかだ。ということは、正仁はもちろん離れない。今度は謙介が手袋を取り、シドニーの尚子ばりに沿道に投げ捨て、2回目のスパート。しかし、正仁はまったく離れない。むしろ、謙介の表情が一段と苦しそうになってきた感じだ。正直な話、駒大のエントリーで9区高橋正仁というのを見て、ちょっとやばいかも、と思っていた。全国のファンがそう思っただろう。9区神屋説、松下説、島村説などが流れており、正仁は10区のスペシャリストとしての扱いであった。それが9区に来たのだから、駒大はコマが足りないのかな、という風にも思えた。それがこの走りである。とんだ失礼であった。21.8キロ、ついに正仁がスパートする。腕の力強い振りに、高く上がる足。スピードアップは誰の目にも明らか。横綱、高橋謙介の足が俵にかかる、止まらない正仁。謙介が半歩後退する。じりじりと差がつくか、いや、離れない。1mの差をキープする謙介。その様子を知ってさらに加速する正仁、もう止まらない。あのマルチン・フィスの後半を思い起こさせるような、素晴らしい加速のスパート。謙介が力尽きたとは言いがたいはずなのだが、どんどん離れて行く。中継車に追いつかんばかりの、短距離走のようなものすごいスパート。これほどすごいスパートは見たことがない、と言えるくらいの大スパート。中継所では、なんと1キロで17秒もの差がついてしまった。

 3位中大は後半バテてしまい、2:04差。土井見た目は3:04の差がついていたが、実は中大が目の前になる差までつめてきて、10区いかんでは3位が狙える位置だった。タイムも謙介を上回る区間2位の好走だった。来年はどこを走るのか楽しみである。5位で去年失速した尾池も区間5位で踏ん張った。神大原田、大東大山脇、と好走した選手が上位に進出してくる。期待された帝京喜多はブレーキとなって8位に沈んだ。9位大東大はアンカー真名子ということで、シード陥落のピンチとなった。そのシード争いとしては、日体大城戸口が今一つの走りで、圏内には食い込めず、圏内だった拓大は大宮ブレーキ、圏外と思われた早稲田が後藤のまずまずの走りで手が届きそうな位置になってきた。だが、このあたりの学校がシードを取るには、真名子を抜くか、その2分前にいる帝京を抜かねばならず、非常に苦しい展開であることは確かだった。國學院は襷がつながるか非常に微妙になっていた。残り400mで残り1:30、バテている後半であることを考えると非常に微妙であったが、わずか20秒の貯金で襷を無事つないだ。今大会は東海大学の棄権を除くと、繰り上げのない大会となった。

9区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  高橋正 1:09:49
順大  0:17  高橋  1:10:34
中大  2:21  池上  1:11:56
法大  2:39  土井  1:10:03
山学大 9:31  尾池  1:10:48
神大  12:54  原田  1:10:43
日大  12:56  清水智 1:11:17
帝京大 13:01  喜多  1:13:12
大東大 15:07  山脇  1:10:54
日体大 15:41  城戸口 1:11:20
拓大  16:33  大宮  1:12:42
早大  16:47  後藤  1:11:11
平国大 17:56  田嶋  1:12:22
国学大 29:03  吉原  1:13:56


10区 23.0km

 さあ、駒大が初めてトップにたった。17秒差を追う宮崎は3年連続アンカーの安定した選手。駒大は高橋桂逸。出雲の4区でブレーキしてしまった。その時の様子が若干気がかりだったが、果たしてどうだろうか。後からわかったことだが、高橋は若干体調が悪かったらしく、その差はどんどん縮まってくる。3キロでその差は5秒まで縮まっていた。その2人はとうとう3.3キロで並んでしまった。またしても紫紺対決となるのか。高橋としては、一旦追いつかれる作戦だったかのように、平然とした表情である。しかし、その表情の目線の先は定まらない。8区の榊枝同様、初めての箱根ということもあって、落ちつかない感じだろう。ましてや、この展開である。宮崎が前に出る。なんとか食らいつく高橋。持ちタイムは高橋が上であるが、経験値や実力、高校時代の実績も宮崎の方が上か。やや高橋は苦しそうになってきた。ほどなく、6キロ過ぎで、高橋が離れ出すと、あとは離れるばかりになってしまった。高橋の表情も苦しそうでリズムをつかめない感じになってしまった。

 高橋桂逸は非常に苦しい走りで、足も上がっておらず、正仁のインタビュー中の映像があまりにも頼りない走りになってしまい、風と気温とに煽られているような、そんな感じに見えた。駒大の2連覇が遠のくように、高橋の姿が画面からどんどん小さくなってしまった。対照的に、順大の3冠を確信したかのように、宮崎がいつものきちっとしたリズムで腕を中央よりやや右寄りを軸に振っていく。2人の差はどんどん開いていく。よく考えれば、宮崎は和歌山工のエースとして、都大路も走ってるし、都道府県対抗でも1区で杉山(有田工)・小川(田村)らとトップを争っていた高校時代からの有名選手。一方の高橋は、長野高校出身の一般入試で入ってきた選手。キャリアとノンキャリアの違いか、と言うのは口惜しいが、9キロ手前では高橋の姿は200m近く離れてしまった。決着はついた。しかし、それでも高橋桂逸にしてみれば、そのためか表情はかえって楽になった感じがする。優勝争いとは別に、ようやく自分のペースで走れるという安堵とも言うべきか。高橋にとっては、ようやく箱根駅伝を走り出したような感じだったのかも知れない。

 しかし、高橋がこうなると、3位以降の選手の追い上げが気になる。中大は木村、去年も4区を走っている実力者であるが、今シーズンは故障がちであった。4位法大は早川。5位はグーンと離れて山学だが、4年生の長谷。そこから6位は、鶴見で駒大から12分以上離れていて、いくらなんでもここまで落ちることはなさそうだ。ところが、3位中大の木村、4位法大早川、いずれも今一つの走りで、高橋との差を詰めきれないでいた。結果的に言えば、5位の山学長谷も最後はブレーキとなっている。最後の結果だけを見れば、鶴見で上位5位以内で襷を貰った選手は宮崎以外はみんなブレーキになってしまった。今までの傾向では、上位の選手は快走、下位の選手は失速、という区間だったのだが、今年はまったく逆になってしまった。観客が増えたことによる過緊張のためか、決して他の学校に比べて走力の劣る選手ではない顔ぶれなのだが、不思議な感じがする。

 優勝争いは、順大でどうやらカタがついた。八つ山橋では1:32の差では、同じ「都内決戦」と呼ぶには物足りない感じであった。こうなると、興味はシード圏争いに移った。現段階では上位5チームは安泰、神大、日大、帝京大も相当なブレーキがなければ、という感じで、9位の大東大も真名子がいれば、という感じで、上位安泰という感じで思われた。しかし、9区終了時点でシード圏外だった選手がいずれも好走した。真名子の好走は予想通りだったが、早大の鈴木が、平下2世かと思うほどの好走で拓大、日体大をタイムで上回り、10位に進出し、シード奪取の1番手に成り上がって来た。しかも、拓大、日体大もアンカーはなかなか堅実ないい走りをしていた。思えば、早稲田も佐藤がいれば、という感じであっただろう。それでも、鈴木がどんなに追いかけても、真名子との1:40の差は大きすぎるようだった。八つ山橋を通過する長谷の走りにも著変は見られず、シード争いはいつになく安泰な感じだった。

 実は、非常に私事で大強縮だが、録画中にビデオデッキがへばってきたらしく、10区の映像が極めて悪かった。駒大を応援する立場上、レース展開を象徴しているようだった。画面が1秒に1回スクロールしてしまう状態で非常に見づらい。これは駒大の失速のみならず、シード争いの急展開をも暗示してるとは、思い起こさなかった。山学の長谷亮である。神大、大東大は八つ山で1分くらい後ろ(見かけの順位で)であったはずなのだが、あっという間に抜かれ、7番目に下がってしまう。蛇行も始まり、シード争いはおろか、完走さえ危ぶまれた。

 順大宮崎は最後まで安定した走りで、トップでゴールイン。順大は駅伝3冠を見事果たした。ゴールでは駒大高橋に1キロ近く、2:55もの差をつけていた。最後は松下の眼に涙が浮かび、松村が「桂逸ラスト!」と叫ぶ様子が、落胆を物語っていた。9区までは復路優勝もあった駒大だが、10区で3分離され、復路優勝まで順大に持って行かれてしまった。3位中大、4位法大もアンカーは失速し、順位変動は見られなかった。とすると、心配なのは、山学の長谷である。18キロ過ぎからの蛇行が続いている。まだ、足取りそのものは去年の東洋石川ほどの失速は見られず、まだ前にはしっかりと進んでいる感じだが、なんせ、まだ3キロ近くある。10区は20キロ過ぎてから大きなカーブが3回ある。このカーブは蛇行してるランナーには非常につらい。それでも前に進む力自体は極端に衰えてはいない。ただ意識が朦朧としている感じである。シード争いは、上位4チームは確実に取り、この時点で5位、6位に上がっていた神大、大東大もシード圏を確実にとった。真名子は区間新記録のおまけつきの快走だった。大東大は今大会2区間でしか出なかった区間新を2つとも出したのだから、1区が惜しまれるところだ。神大も最近は往路が鬼門になってしまっている。長谷はゴール手前で帝京にも抜かれ、ラストスパートをかけた早大にも抜かれたが、なんとかゴールにはたどり着きそうで、シード圏は守れるのか、という時点が勝負だった。対象は、その抜いて行った早稲田である。しかし、なんとか山学がシードを守った。早稲田の鈴木は山学にあと30秒及ばなかったものの、鈴木自体は真名子には及ばないものの区間新記録であった。佐藤がいれば30秒くらいは、と思えるのだが、残念である。後の大学はその順位をキープしてそのままゴールした。初出場の平国大が20分差、國學院が30分差と、やはり初出場にはなかなか甘いものではない所を見せつけられたレースとなった。しかし、平国の橋本、國學の飯干ともに、ゴールの表情には晴れ晴れとした趣があった。特に國學院は若いチームであるから、来年も是非出て欲しいものだ。

10区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
順大   ―  宮崎  1:11:09
駒大  2:55  高橋桂 1:14:21
中大  5:12  木村  1:14:17
法大  6:18  早川  1:15:05
神大  12:27  青陰  1:10:59
大東大 14:00  真名子 1:10:19
帝京大 14:29  村野  1:12:54
日大  15:12  清水貴 1:13:42
山学大 15:13  長谷  1:17:08
早大  15:43  鈴木  1:10:22
日体大 16:10  鈴木  1:11:55
拓大  17:00  米倉  1:11:53
平国大 20:20  橋本  1:13:50
国学大 31:50  飯干  1:14:13