第78回箱根駅伝復路プレイバック

出場大学
順天堂大・駒沢大・中央大・法政大・神奈川大
大東文化大・帝京大・日本大・山梨学院大・ 早稲田大
日体大・亜細亜大・東海大・専修大・関東学院大


第78回箱根駅伝復路オーダー(2002.1.3)
大学名6区7区8区9区10区
順天堂大学磯野 伊牟田 中川 長山 春田
駒沢大学 吉田 揖斐 塩川 高橋正 河村
中央大学 野村俊 岡本 家高 原田 杉山
法政大学 中矢 坂野 高橋 土井 久村
神奈川大学 谷口竜田 園山相馬 金原
大東文化大学 金子 柴田 金光 山脇 田子
帝京大学 佐竹 清野 戸村 小鹿 桐谷
日本大学 蔭谷 勝亦 白柳 和田 清水
山梨学院大学 高堰 橋ノ口安藤 清家
早稲田大学 相楽 空山 植竹 後藤 桜井
日本体育大学 解良 鈴木 山田 久野 服部
亜細亜大学 堀越 野呂松浦塩川 木村
東海大学 松宮 越川高橋横山 反町
専修大学吉川鈴木 佐藤 福島 伊藤
関東学院大学 中里 永田 秋葉 駒形石井


6区 20.7km

 1月3日午前8時。第78回箱根駅伝の復路のスタートの時がやってきた。トップでスタートするのは往路優勝を果たした神奈川大学の谷口。23秒差の2位で追うのが総合優勝候補筆頭の駒澤大学。さらに24秒差で連覇を目指す順天堂大学が3位で追う。

 絶対的優位と見られる駒澤に対して、往路優勝を果たした神奈川や射程圏内につけている順天堂としては、6区で駒澤より前に行くことが総合優勝への絶対条件であった。6区を走る神奈川・谷口、駒澤・吉田、順天堂・磯野は初の箱根、初の6区でそれぞれ下りには自信を持っているはずだが、何が起こるかわからないのが箱根。6区は特にそれが言える。本命視されている駒澤にとって、復路5区間の中で最も不確定要素が多いのが6区と見られていた。ここで駒澤を1分以上突き離せば・・・と期待をかける神奈川、順天堂。対してここで先頭に立って優勝へのへ向けての首位固めをしたい駒澤。様々な思惑がかけめぐる中、午前8時ちょうど、号砲と共に谷口がスタートした。

 最初の1キロまでは先頭の神奈川・谷口と駒澤・吉田の差はほとんど変わらない。1キロの入りは3分9秒で同じだったが、そこからしばらく走った元箱根の辺りでは駒澤・吉田が急速に追い上げて10秒差に迫っていた。

 6区のもう1つの興味は大東文化大の金子。4年連続の60分切り、さらなる区間記録の更新の期待がかけられていた。トップとは3分強の差で、金子の走り次第では優勝争いにも絡める位置にいる。

 3キロを過ぎ、先頭を走る谷口のすぐ後ろに吉田が迫ってきた。さらにその後方には順天堂・磯野の姿もちらっと見える。ところがこの後しばらく谷口と吉田の差が縮まらない。また、一時は姿が見え隠れしていた磯野の姿はカーブが続くこともあって確認できなくなった。序盤の上りで2位駒澤が1位神奈川を追い上げ、下りに入って逆に神奈川が突き放した第74回大会の再現を思わせるような展開となる。

 と、思ったのもつかの間、最高点を過ぎて本格的な下りが始まるや否や、吉田の猛追が始まった。芦ノ湯ではわずか6秒差に接近。磯野は43秒差であまり差を詰められていない。さらにその後ろ、4位の早稲田・相楽が1分22秒差で続く。

 そうこうしているうちに谷口と吉田の差はグングン縮まってきた。2人の動きを見比べると明らかに吉田の方が軽快なのがわかる。そして6・2キロ、吉田がカーブの内側からサッと抜き、早くも首位が交代した。谷口もここはついていく姿勢を見せる。解説の碓井氏も「谷口の走りは悪くない」と解説。しかし、その差はジワジワと広がり、CMのあと、両者の差は50メートルになっていた。そしてほどなくカーブの続く箱根山中で1号車から2位・神奈川の姿は見えなくなった。鮮やかな逆転、あるいはあっけない逆転とも言える逆転劇であった。吉田のペースはオーバーペースか、と思われたが快調な走りが続く。

 さて、区間記録へ挑戦している大東大の金子は去年自らが出した区間記録からは遅れるものの、さすがのペースで飛ばしていた。14秒差でスタートした後方の中央・野村俊を引き離し、ひたすら前を行く早稲田の相楽を追いかけていた。

 小湧園前で1位駒澤と2位神奈川の差は23秒。23秒リードしていた神奈川が23秒のビハインドを背負っている。3位順天堂はトップから52秒差。駒澤には離されているが、神奈川との差は詰めている。4位の早稲田が1分38秒差で、こちらも神奈川との差を詰めてきている。そしてやってきたのが金子。前回のタイムよりは50秒近く遅れたタイムで区間記録の更新は厳しくなってきた。駒澤の吉田が快調に走っているだけに区間賞争いも微妙になってきた。そして7位以下の争いは帝京、亜細亜、山梨学院がほとんど差のない7〜9位争いを繰り広げている。ここに実力校の日大が絡んでくれば、シード権争いが熾烈を極めてくる。

 中間点の踏み切りから宮ノ下を相変わらず快調なペースで下る駒澤・吉田。もはや後ろはまったく確認できなくなっていた。大平台のカーブもハイスピードで曲がっていく。2位の神奈川・谷口の後ろに3位の順天堂・磯野が迫ってきた。首位との差は1分5秒、1分10秒とそれぞれ広がっている。4位の早稲田・相楽は苦しい表情ながらトップから2分6秒差で順位をキープ。しかしその後ろに5位の大東・金子が23秒差まで迫っていた。この辺りまでくると金子の目からね前を行く相楽の姿がとらえられるだろう。続く6位の中央・野村俊も金子には離されたものの、60分を切るペースで走っている。上位の争いはこの6位までで、7位以下とは大差がついた。

 函嶺洞門を過ぎ、残り3・5キロになっても駒澤・吉田の走りは変わらない。2位に上がった順天堂・磯野も先頭の吉田の走りにはかなわず、1分32秒差。神奈川の谷口はさらに12秒遅れた。さらに早稲田が2分24秒差、そしてその8秒後ろに大東大が迫る。ただ、金子は前を行く相楽との差は詰めているものの、先頭の吉田からは小湧園から逆に離されている。区間賞争いも微妙になってきた。箱根湯本の駅を過ぎてジワジワと金子が相楽に迫る。が、相楽も抜かれまいと必死に逃げる。近年、早稲田にとって6区山下りは鬼門となってきたが、この相楽の走りは十分健闘していると言えるだろう。

 残り1キロで先頭を走る駒澤の吉田はタスキを外してラストスパートの体勢に入った。あとは7区で2年連続区間賞を取っている揖斐にタスキを渡すのみだ。一方、4位争いはついに大東・金子が早稲田・相楽を逆転。この激しい4位争いを知るよしもなく、吉田は小田原中継所に駆け込んだ。最後まで走りの衰えなかった吉田は59分21秒の素晴らしいタイムで6区を走り終え、タスキを揖斐につないだ。

 そのはるか後方ではラスト3キロからスローダウンした神奈川・谷口が後ろの大東・金子にも抜かれて4位に後退。金子は2位の順天堂に追いすがったが、さすがに距離が足りず、順天堂が1分50秒差の2位でタスキリレー。金子は59分4秒のタイムで3位のタスキリレー。首位との差は2分28秒差となった。区間記録更新はならなかったが、区間賞獲得と4年連続60分切りの偉業を達成した。4位には直前で神奈川を抜いた早稲田が2分35秒差で続き、1秒遅れで5位神奈川が続いた。早稲田と神奈川の7区のランナーは共に期待のルーキーである。その後ろは首位から3分27秒差で6位の中央がタスキを渡した。

 7位はなんと亜細亜大学。堀越が順位を2つ上げてタスキリレー。続く8位が山梨学院。5区カリウキに続いて6区高堰も順位を上げられない。9位は順位を2つ落とした帝京大学。10位日大との差はわずかに14秒。シード権を分ける差はわずかに14秒となった。11位は専修大学で9位・帝京との差は1分20秒でまだ逆転可能圏内だ。ここからは実際の順位と見かけの順位が異なってくる。関東学院大学、日本体育大学、東海大学、そして往路2区で途中棄権となった法政大学の順でタスキを渡した。

6区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  吉田  59:21
順大  1:51  磯野  1:00:48
大東大  2:28  金子  59:04
早大  2:35  相楽  1:01:00
神大 2:36  谷口  1:02:20
中大 3:27  野村俊 59:49
亜大 7:58  堀越  1:00:45
山学大 8:32  高堰 1:01:48
帝京大  9:06  佐竹  1:02:49
日大  9:20  蔭谷  1:01:08
専大  10:26  吉川  1:01:32
日体大 12:10  解良  1:00:59
関学大  13:04  中里 1:00:29
東海大 16:14  松宮 1:01:33
法大 棄権  中矢  1:03:35


7区 21.2km

 先頭を走る駒澤大学の7区は3年連続となる揖斐。2年連続で区間賞を取っており、今年は3年連続の区間賞はちろん、区間記録の更新を狙ってスタートしていった。独特のピッチ走法は健在で、船越アナは「面白い走り方をしますねえ」と一言。

 2位の順天堂・伊牟田を挟んで、3位争いが序盤から熾烈だった。5位でタスキを受けた神奈川のルーキー竜田がほぼ同時にタスキを受けた早稲田のルーキー空山を置き去りにして3位の大東・柴田に迫り、2・3キロ過ぎで柴田に追いついて並走となった。早稲田の空山もその後ジワジワと2人に迫り、4キロ地点で追いついたかと思うと、並走している2人の真ん中を割って前に出た。3者による熾烈な3位グループが前を行く順天堂との差を詰めていく。激しい後続の争いを尻目に駒澤・揖斐は快調にピッチを刻んでいた。区間記録のペースにはやや及ばないものの、63分台で走りきるペースだ。表情にやや険しさが見られるが、いつものことで何ら心配する必要はない。

 2位争いには変化が現れていた。2位の順天堂・伊牟田に3位グループが追いつこうとしていた。が、3位グループから神奈川の竜田が遅れ、単独5位に後退。そして竜田を振りきった早稲田の空山と大東の柴田が伊牟田をとらえ、3人による2位グループが形成された。伊牟田が遅いというよりは、追ってきた2人が揖斐をもしのぐハイペースで追いついたと言った方が正しいだろう。大東・柴田の時折体を左右にひねる仕草が目に付く。しばらくは追いつかれた伊牟田がそのまま前を走っていたが、1キロほど走った後、空山が前に出て2人を振りきりにかかった。

 二宮の定点ポイント。先頭の揖斐は変わらずピッチを刻んでいく。はるか後方の2位グループから順天堂の伊牟田がやや遅れはじめた。そこから少し遅れて神奈川の竜田、さらに約1分遅れて中央の岡本が続く、いったん遅れた伊牟田は二宮の上りを終えて、いったん空山と柴田に追いついた。が、ほどなく再び振りきられ、2位グループから後退した。2位争いは空山と柴田にしぼられた。このあたりでは柴田が前に出て空山を引っ張る。時雄の体をひねる仕草は変わらない。先頭の揖斐よりも速いペースで追っているが、2分以上の大差があり、姿をとらえることはできない。

 シード権争いも風雲急を告げはじめた。二宮の定点で亜細亜大学が7位をキープ。そこから40秒遅れて帝京と日大が8位争いで並走。そして山梨学院が10位に後退した。2区候補とも言われた橋ノ口がまったく本来の走りができず、あっという間にシード圏外へ転落してしまった。その後ろ、2分弱の差で専修、並んで芦ノ湖で繰り上げスタートした実質12位の日体大が続いている。シード権に手が届きそうなのはこの辺りまでか。

 さて、2位争いに動きが出た。15キロ手前で大東・柴田が早稲田・空山を引き離す。じわじわと差を広げる柴田となんとかくらいつこうとする空山。表情はサングラスでよくわからないが柴田の方が楽そう。空山は歯を食いしばって必死の走りだ。懸命の粘りで柴田に追いつくと、そのまま前に出た。2人の競り合いは15キロ以上に及んでいる。区間賞の争いは先頭の揖斐とこの2人にしぼられた。15キロでは揖斐がわずかにリードしているが、競り合っている分、後ろの2人の方が有利か。

 先頭の揖斐の独り旅は続く。スタートから常に独り旅で独特の走りも変わらない。前々回、前回は1時間3分10秒台でこの7区を走破しているが、今回はそれよりもやや遅いペースになっている。大磯の松並木に差し掛かって残りは3キロを切った。そして2位争いが松並木に差し掛かった頃、再び柴田が空山に差をつけた。4位の順天堂、5位の神奈川の姿はもう見えない。

 揖斐は最後の箱根駅伝を締めくくる見事な走りで中継所へ飛び込んだ。やはり前々回、前回よりも遅れた記録になったが、それでも1時間3分台の立派な記録だ。そして注目の2位争い。遅れをとった空山だが、ラスト1キロを過ぎてからもう1度粘りを見せて4秒の遅れにとどめた。トップとの差は2分19秒、2分23秒。区間賞を獲得したのは早稲田のルーキー空山だった。後半の粘りで柴田と揖斐を上回ったと言えるだろう。そして33秒遅れて順天堂がタスキリレー。さらに48秒遅れて5位神奈川、1分13秒遅れて6位中央と続いた。

 そこから大きく遅れ、7位で亜細亜がやってきた。前評判からすれば大健闘と言える。すぐ後ろに8位の帝京。亜細亜との差は19秒。またすぐ後ろに9位の日大。亜細亜からは42秒差。山梨学院がまだ来ない。先にやってきたのは復路繰り上げスタートの日体大。その次に山梨・橋ノ口が来た。完全なブレーキとなってしまい、記録は無念の1時間8分台。実質順位は10位山梨、11位日体大。シード争いは7位の亜細亜から11位日体大までの争いになりそうだ。その後は12位専修、13位関東学院、14位東海、オープン参加の法政の順にタスキをつないだ。

7区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  揖斐  1:03:45
大東大  2:19  柴田 1:03:36
早大  2:23  空山  1:03:33
順大  2:56  伊牟田  1:04:50
神大 3:44  竜田  1:04:53
中大 4:57  岡本 1:05:15
亜大 10:23  野呂  1:06:10
帝京大 10:42  清野 1:05:21
日大  11:05  勝亦  1:05:30
山学大  12:59橋ノ口  1:08:12
日体大  13:12鈴木1:04:47
専修大 14:42 鈴木 1:08:01
関学大  17:39 永田 1:08:20
東海大 20:17 越川 1:07:48
法大 棄権  坂野1:06:50


8区 21.3km

 先頭を走るのは駒澤・塩川。1キロ3分ほどのペースで淡々と走りを進める。1年生とは思えない落ち着いた入りだ。3キロ辺りまではペースにばらつきも見られたが、5キロになるとしっかりまとめるようになった。まったく危なげがない。2位争いは早稲田の植竹がスタート早々、大東の金光に追いつき、早稲田と大東の並走が始まった。その後ろから順天堂の中川が猛烈な勢いで追い上げ、2位争いは再び3校の争いの様相を呈してきた。茅ヶ崎の定点を前にして中川は2人に追いつき、そのまま前に出た。これに対応したのが早稲田の植竹。大東の金光は対応できずに後退。2位争いは順天堂と早稲田の争いとなった。茅ヶ崎の定点で1位駒澤と2位争いの差は2分25秒。中川は早くも30秒ほど詰めたことになる。この少し後、中川が植竹を前に出した。さすがにスタートダッシュをかけたのがきつくなってきたか。

 一方、塩川は淡々とピッチを刻み、湘南海岸に別れを次げた。中川には追い上げられているが、この塩川のペースも悪くない。2位争いの並走は依然続き、大東は後退、神奈川も離され、中央の家高が前を追い上げる展開となった。そのはるか後方のシード権争いは7位の亜細亜に8位の帝京が迫り、逆転した。

 2位争いに動きが出たのは11キロ過ぎ。中川が満を持してペースを上げ、ついに植竹を振りきった。順天堂としては、駒澤と後のメンバーを比較すると大逆転を演じるにはこの8区で相当追い上げなければ苦しくなる。8区の焦点は中川がどこまで塩川を追い上げるかになった。藤沢の定点では2分6秒差。ここまで50秒ほど追い上げたことになるが、ここからさらに詰められれば大逆転の可能性が開けてくる。早稲田は2分24秒差、大東は3分3秒さと後退加減だ。この先に遊行寺の坂がある。この時点で余力があったのは塩川の方だった。ここから詰められた差をじわじわと戻していく。前半抑えていた塩川の方に勢いがある。後のメンバーを考えると勝敗はほぼ決したか。

 シード権争いは7位で帝京と亜細亜が並走し、日大が100メートルほどの差を詰められそうで詰めきれない。その後ろに日体大、山梨と続くが実際の順位は山梨が10位、日体大が11位。ただ、この5人の中で最も勢いがあるのは日体大の山田だ。藤沢を少し過ぎたところで7位争いから帝京が抜け出して亜細亜が後退。その遅れた亜細亜に日大が迫り、逆転。シード権争いはますます混沌となってきた。区間賞争いは藤沢では中川がリード。塩川や関東学院の秋葉、中央の家高あたりがいいペースだ。

 先頭を走る塩川は後半明らかにピッチを上げてきた。2位の中川とは影取の定点で2分28秒差と明らかに後半は引き離している。塩川は1時間4分台の素晴らしいタイムで走りきり、キャプテンの高橋正仁にタスキを渡した。2位の中川も1時間4分台の好タイム。後半引き離されたものの、前半の貯金が物を言ってわずかの差で塩川を抑えた。その差は2分52秒。順天堂再度とすれば「4秒しか詰められなかった」のが本音だろう。9区はエース岩水からオーダー変更となった長山。野口の「ジョー、走れ」の声を受けてスタートした。3位は早稲田。先頭からは4分23秒差と開いた。残りのメンバーからすると2位浮上も有り得そう。そこから24秒遅れて4位の大東。終盤は早稲田を追い上げたことになる。走り終えた金光は力尽き、バタリと倒れ込んだ。さらに46秒差で5位に上がった中央、さらに18秒遅れて6位の神奈川と続いた。2位から6位までは相変わらずの混戦だ。そしてシード権争いはますます激化。見た目10番目の日体大が山田の力走で実質順位で上を行く亜細亜、日大、帝京を抜き去り、7番目に浮上してタスキリレー。遅れて実質7位の帝京、8位の日大、9位の亜細亜、11位の山梨学院と続いた。優勝候補の一角と目されていた山梨は一転、シード権すらおぼつかない状況となった。12番目に関東学院、13番目に専修と続き、14番目の法政と15番目の東海は繰り上げスタートが心配されたがなんとかタスキをつなぎ、9区へと旅立っていった。

8区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  塩川  1:04:57
順大  2:52  中川 1:04:53
早大  4:23  植竹  1:06:57
大東大 4:47  金光  1:07:25
中大 5:33  家高  1:05:33
神大 5:51  園山 1:07:04
帝京大 13:26  戸村  1:07:41
日大 13:27  白柳 1:07:19
亜大  13:54  松浦  1:08:28
日体大  13:56山田  1:05:41
山学大  15:16安藤1:07:14
専修大 17:51 佐藤 1:08:06
関学大  17:52 秋葉 1:05:10
東海大 23:33 高橋 1:08:13
法大 棄権  高橋1:06:49


9区 23.0km

 9区に入った。前回は9区スタート時点で先頭から3位まで見渡せる接戦だったが、今回は駒澤の独走だ。そしてなおかつ9区のランナーは駅伝主将の高橋正仁。まさに磐石の構えだ。スタートから意欲的に飛ばし、区間記録を狙っていることをうかがわせる。3キロの通過タイムは区間記録とまったく同じ。驚異的な突っ込みを見せた前回よりは抑えたタイムだが、記録を狙うにはちょうどいいくらいだ。権太坂のポイントまで区間記録とほぼ同じタイムで走破したが、8キロ地点でやや遅れ始めた。それを時計で確認すると腕を回して気合いを入れなおす。速いピッチと力強い腕振り、ランニングフォームはいつもとまったく変わらない。

 さて、2位以下は権太坂で順天堂、早稲田、大東、中央、神奈川と順位は変わらない。2位の順天堂・長山は3分6秒差で通過。前を行く高橋が区間記録ペースで飛ばしている割りにはさほど離されておらず、なかなかの走りだ。さらに早稲田・後藤、大東・山脇、中央・原田も走りもいい。

 シード権争いも熾烈。実質7位の日大と復路繰り上げスタートの日体大が同時に権太坂を通過。24秒遅れて実質8位の帝京、1分10秒遅れて実質10位の亜細亜と11位の山梨学院が続く。この時点で実質9位は日体大。この5チームの差は前後2分以内だ。権太坂の下りで山梨学院・清家が亜細亜の塩川に追いついた。この2チームは競り合って少しでも前を行く実質9位の日体大を追い上げたいところ。

 先頭を行く高橋は快調に走り続ける。横浜駅を通過するところで手袋を投げ捨てた。相変わらずの速いピッチだが、区間記録からは20秒ほど遅れている。逃げ切りをはかることは区間記録保持者の西田さんと同じだが、追われるプレッシャーの差が出てきたようにも思える。2位は変わらず順天堂。先頭とは3分13秒差。高橋は長山を権太坂から7秒しか離せていない。長山の健闘が光ると同時に高橋が今1つ伸びていないことも言える。3位は早稲田、4位大東、5位中央はかなり接近してきた。前後30秒の混戦。そこから神奈川は脱落したようだ。

 シード権争いは実質7位の日大が頭1つ抜け出す形になった。和田がシード権固めと言わんばかりに並走していた日体大の久野を引き離す。その後ろに実質8位の帝京、さらに遅れて実質10位争いの山梨学院と亜細亜。8位帝京と9位日体大の差は23秒、その後ろの山梨学院・亜細亜は日体大から35秒。8位から11位までは1分の差がない。そこから日大が1分リードした。

 区間賞争いは駒澤の高橋が一歩リード。続くのが中央の原田で、原田は権太坂から横浜駅までの間では高橋よりいいペース。原田は勢いに乗って大東の山脇を抜き去って4位に浮上。前を行く3位の早稲田も射程圏内だ。また、昨日の徳本の途中棄権があったために参考記録扱いとなるものの、法政の土井も2人に匹敵する走りを見せている。

 高橋は最後まで同じリズムで走りきり、アンカーの河村にタスキをつないだ。区間記録の更新こそならなかったが優勝を決定的にする見事な走りだった。タイムは1時間9分31秒、2年連続で1時間9分台のタイムをマークした。2位は順天堂。長山も1時間10分台の好タイム。トップとは3分39秒差でアクシデントがない限り逆転は不可能か。3位は早稲田・後藤が守りきり、トップとは5分14秒さでタスキをつないだ。そして22秒遅れて中央が4位。原田はわずか3秒高橋に及ばなかったが、駒澤の主将高橋に3秒遅れは健闘と言えるだろう。さらに1分遅れて5位の大東。山脇は後半のペースダウンが悔やまれる。おまけにアナウンサーに神奈川の選手と名前を間違えられてしまった。その神奈川はエースとも言われた相馬がまったく本来の走りができず、前の争いから大きく遅れてしまった。

 シード権争いはまず実質7位の日大がタスキをつなぎ、すぐ後ろに復路繰り上げスタートの日体大が続いた。さらに実質8位の帝京が続く。日大と帝京の差は36秒。続くのは亜細亜。終盤で山梨学院を引き離して実質10位のタスキリレー。山梨はそこから37秒遅れた実質11位。シード権獲得に向けて大ピンチとなってしまった。

 この辺りから繰り上げスタートが心配される。特に法政は途中棄権の関係で中継所に予備タスキがなく(いま走っている土井がかけているため)、もし繰り上げになるとアンカーは繰り上げタスキで走り出さなければならない。トップの通過から19分近く、法政の土井が現われた。1時間9分台の見事な走りで繰り上げの危機を救った。続く13番目の関東学院もなんとか繰り上げを阻止。しかし残る専修と東海は残念ながら繰り上げスタート。母校のタスキをつなぐことはできなかった。

 シード権について整理しよう。7位日大のすぐ後ろに実質9位の日体大。日大から36秒遅れで実質8位の帝京。帝京と実質10位の亜細亜は41秒差で、実質9位の日体大と10位の亜細亜の差はわずかに2秒。10位亜細亜と11位山梨学院の差は37秒。やはり前後2分の大混戦。この5校のうち、3校までがシード権を手にする。日大・清水貴、帝京・桐谷、日体大・服部、亜細亜・木村、山梨学院・森。彼ら5人による最後の闘いが始まった。

9区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  高橋正  1:09:31
順大  3:39  長山 1:10:18
早大  5:14  後藤  1:10:22
中大 5:36  原田  1:09:34
大東大 6:36  山脇  1:11:20
神大 9:10  相馬 1:12:50
日大 14:47  和田  1:10:51
帝京大 15:23  小鹿 1:11:28
日体大16:02  久野  1:11:37
亜大  16:04塩川  1:11:41
山学大  16:41清家1:10:56
専修大 20:34 福島 1:12:14
関学大  21:40 駒形 1:13:19
東海大 26:23 横山 1:12:21
法大 棄権  土井1:09:37


10区 23.0km

 10区はハイペースの幕開けとなった。先頭でタスキをもらった駒澤のアンカー河村は守りのレースではなく、攻めのレースを見せる。区間記録を狙えるハイペースで、むしろオーバーペースが心配されるほどであるが、表情からは落ち着いた様子がうかがえる。追いかける2位の順天堂・春田もそれに匹敵するペース。したがっていいペースで走っていることが言えるが、河村と同じペースということは差を詰めることができていないということでもある。そして最も速いペースで突っ込んだのが3位を行く早稲田の櫻井。前の順天堂がいい目標になっているか。

 10区序盤、アクシデントが発生した。ブレーキではない。蒲田の踏切が選手の目の前で遮断機を下ろしてしまったのだ。あおりを受けたのは大東の田子。一時停止を余儀なくされ、旋回しながらランニングを続けて踏切が開くと同時にリスタート。タイムは当然差し引かれるが、走りのリズムが狂わされるのは確か。将来的には高架の構想があるらしいが、その早い実現が望まれる。

 先頭を走る駒澤の河村は中盤からは1キロ3分ほどの安定したペース。区間記録からは少しずつ遅れ始めているが、あとはタスキを大手町へ運ぶだけだ。この辺りからゴールのポーズを考えたりしているのだろうか。2位の順天堂・春田は河村よりもややペースダウンが大きく、もはや大きなアクシデントがない限り逆転はありえない。むしろ3位の早稲田・櫻井が区間記録ペースで前を行く春田を追い詰める。4位中央、5位大東、6位神奈川はどうやら順位はこのままのようだ。

 このままといかないがのがシード権争い。10区に入って当然のごとく動きが出た。まずハイペースで突っ込んだのが亜細亜の木村。前を行く実質8位の帝京に追いつき、2人で並走。前を走る実質9位の日体大を抜いてこの時点で実質8位に亜細亜と帝京。日体大は実質10位に後退した。実質7位の日大は清水貴が伸びず、貯金が少しずつなくなっていく。また実質11位の山梨学院は森が木村を上回るハイペースで突っ込み、前との差を縮めてきている。前後2分ほどの差が1分30秒から1分になろうとしている。シードを得られるのはこの中で3校まで。

 河村は八ツ山橋から第一京浜国道を通って田町の交差点を左折。いよいよゴールが近づいてきた。さすがにペースは落ちてきたが、動きそのものはしっかりしている。もう何の問題もないだろう。2年ぶり2度目の優勝へ向けてひた走る。神奈川の巧みな逃走に初優勝を逃した74回。往路を制して総合優勝を確信しながら逆転の順天堂にしてやられた75回。復路でその順天堂を引き離し、悲願の初優勝を成し遂げた76回。9区高橋正仁の大逆転で連覇が見えながら10区で順天堂に再逆転を喫した前回。今回は6区でトップにたつと、あとは危なげない横綱相撲と言える内容。歓喜と悔しさを交互に味わってきた4年生の最後の箱根駅伝は歓喜で終えられそうだ。

 歓喜と悔しさ、どちらに転ぶかこの時点でも予断を許せないのがシード権争い。八ツ山橋でシードを争う5チームがすべて見渡せる距離関係になった。前後2分、1分の話ではない。もはや秒単位の争いだ。前を走る日大や日体大に勢いがない。追い上げてくる亜細亜、帝京、山梨学院の方が明らかに元気だ。下位チームの追い上げの前に復路繰り上げスタートの日体大がまず実質11位に後退した。服部の走りに勢いはなく、日体大はここで争いからはじき出された。日体大は見かけの順位でも亜細亜、帝京、山梨学院に抜かれ、完全に圏外に去った。山梨は森が懸命の走りで亜細亜と帝京に追いつき、3人の集団が7位の日大に迫っていく。そしてついに、日大をとらえた。4校によるシード権をかけた最後の闘い。この中で1チームだけがシードを失う。

 激しいシード権争いのことを知るよしもなく、先頭を行く駒澤の河村は75回大会からの新コースへ入った。少し前までやや苦しそうな表情を浮かべていたが、ここに至って笑顔になった。喜びを隠し切れなくなっているのか、時折口元に笑みを浮かべながら、まさしくヴィクトリーロードを進んでいく。ゴールが近づいてきた。ゴールでは同じ4年生の高橋、神屋、揖斐が先頭で河村の到着を待つ。河村き右手を2度突き上げ、最後に両手を突き上げてゴールイン。すぐにチームメイトの輪に吸い込まれ、河村の体が宙に舞った。さらに森本監督、大八木コーチも宙に舞う。見事に前回のリヴェンジを果たす、2年ぶり2度目の優勝だった。

 2位は順天堂。春田が早稲田の追撃を振り切って2位を守りきった。野口を先頭に春田コールがおこり、チームメイトが笑顔で春田を出迎える。2位のチームに笑顔が見られるのはいったいいつ以来であろうか。復路は大苦戦が予想されたが逆に順位を上げる総合2位。エース岩水を欠いた中で見事な2位と言っていいだろう。

 その直後、早稲田が3位でゴールに飛び込んだ。こちらも歓喜のゴール。古豪復活を印象付け、アンカー・櫻井は区間新記録で高々と拳を突き上げた。四つの区間賞を獲得し、途中は先頭にたつシーンもあるなど、収穫のあるレースだった。

 4位は中央。エース藤原の不調が残念だったが山下りで1年生の野村俊が60分を切るなど、1、2年生に今後の期待が持てる内容だった。  5位でゴールしたのは大東。前回の6位を上回る5位のゴール。金子が4年連続で60分切りを達成するなど、常に上位争いに顔を出す価値ある5位と言えるだろう。

 6位神奈川は往路優勝を果たしながら6位。往路のレースは見事だったが、その反面復路の落ち込みは残念。往路を制したとしいうことを来年に生かして欲しいところだ。

   さて、シード権争いは最終局面を迎えた。4チームの並走から最初に脱落したのは日大だった。清水貴のペースが上がらない。みるみるうちに差が広がっていく。その後、山梨学院の森も力尽きた感じで遅れ始めるが、懸命に踏ん張って亜細亜と帝京にくらいつく。どうやらシード権は決したか。

 7位争いは常に集団の先頭を引っ張っていた亜細亜が最後に抜け出した。下馬評ではシード権獲得は難しいとみられていたが、エース前田が流れを作り、山を堅実に上って下ってシード権争いの中に食い込み、10区で7位に浮上した。アンカー木村はタスキをほこらしげに掲げ、左拳を握り締めてゴールイン。シード権獲得の立役者はすぐさまチームメイトによって宙に舞った。

 直後に帝京の桐谷、山梨学院の森がゴールに飛び込んだ。復路は常にシード権争いわ繰り広げ、なんとかぎりぎりでシードを手にした。冷静に亜細亜の木村についていった桐谷と追い詰められた状況の中で最初から突っ込み、チームを救った森の走りは見事だった。

 10位日大と11位日体大はシードを失った。日大は1区の出遅れと5区のブレーキが最後になって響いてしまった。力があるだけに巻き返しに期待したい。日体大も最後は11位に終わった。しかしこちらも山田、四辻といった1年生に力ある選手が揃っており、これからのチームだ。

 次にゴールにやってきたのはオープン参加の法政。アンカー久村が万感の想いを込めてゴールイン。ゴール地点には松葉杖姿の徳本の姿があった。徳本とアンカー久村は高校時代かせのチームメイト。おたがい思うところがあったことだろう。

 総合12位で帰ってきたのが関東学院。三本柱を軸にシードを狙ったが12位に終わった。次回はエース尾田を中心に箱根連続出場を目指すことになる。

 続いてゴールしたのは総合14位の東海。昨年2区で途切れたタスキが2年ぶりに大手町へつながった。今回は常に最後方を走る展開になってしまったが、このチームも若いチーム。湘南の暴れん坊の異名を持つ東海の復活が待たれる。

 最終ランナーとなったのは専修。総合順位は13位。アンカー伊藤がフラフラになりながらも懸命にゴールまでたどりついた。4年ぶりの復活を果たした専修も来年は連続出場を目指して予選会からのスタートとなる。

 以上、14チームと途中棄権のため、オープン参加となった法政の全15チームがゴールに入った。無事に、と言えないのが大変残念であるが、往路の目まぐるしい優勝争いと復路の激しいシード権争い。随所に見所のある素晴らしい大会だった。来年はどんな大会になるのか、その号砲は364日後。

10区成績
通過順位大学名トップ差選手名区間タイム区間順位
駒大   ―  河村 1:11:13
順大  3:59  春田 1:11:33
早大  4:19  桜井 1:10:18
中大 7:23  杉山  1:13:00
大東大 7:40  田子  1:12:17
神大 10:54  金原 1:12:57
亜大 15:58  木村  1:11:07
帝京大 16:04  桐谷 1:11:54
山学大16:09  森  1:10:41
日大  17:05清水  1:13:31
日体大  18:01服部1:13:12
関学大 23:48 石井 1:13:21
専修大  28:07 伊藤 1:18:46
東海大 28:44 反町 1:13:34
法大 棄権  久村1:12:35