b) インラインの加速 (スケーティングの加速)

【賛成意見】

【反対意見】

【パラレルスタンスでスケーティングと同じ方法で加速する説明】

1. 外足で重心を押し出し、内足に乗り込むことで加速する

「加速するターン方法」 にスケーティングの運動について説明がある。これを見てわかるように、

真横ではなくて4-1のように板を斜め後ろに蹴り出す、逆に言うと 重心を斜め前方に押し出すような動作を行う。
ある程度体が押し出されると足が伸びきって今度は板が体に 引っ張られるような形になる。

ちなみに、このページの先
「スケーティング方法その4」
の説明で、真横に踏み出すと板に前進する力が発生するために加速、 というのがあるが、これは間違っていると思われる。
あれでは板は先走るけど、重心(体)は反作用で後ろ向きの力がかかってしまう。
板に対して真横に踏み出すことで、重心が進行方向向きの加速要素を得るはず。
「産經新聞インデックス 勝利への方程式 長野五輪(1)スピードスケート 」
が、正しい説明になっていると思う。

このとき、板が踏み出した時と同じ方向を向いていると、同じだけ の摩擦があるため加速できないが、例えばもっと角度の浅い内足 に乗り込めば摩擦が少ないため、加速が出来る。
つまり、蹴り出すほうの板の迎え角より、乗り込むほうの角が浅い (シザースする)必要がある。
この一番わかりやすい例がスケーティングであり、蹴り出した足の 引きつけを地面につけたまま行っているのが、インラインの同位相 スイズル(パラレルスタンスでのスラローム滑走)。

片足だけで同じ原理で加速しようとするなら、踏み出して体が伸び きるまでの間に板の角度を浅くしてやれば、それで摩擦が減るから 加速できる。実はターン中は弧を描いてるから自然にこういう動作 になっている。
が、より摩擦を減らす為にはやはり内足と外足がシェーレンしている ときにこの動作をするほうがより効果的だろう。

2. 加速に使われる力は、シェーレンする角度が浅くなるほど小さくなる

「産經新聞インデックス 勝利への方程式 長野五輪(1)スピードスケート 」

図1の力Fが、人の蹴り出した全ての力です。
で、その水平成分が力Aです。
斜面からの傾きをθ1とすると、A=F*cosθ1

そのAのうち進行方向向きの力の成分Cを考えます。
図1のAが図2のAにあたります。
進行方向向きとは、乗り込む方の板の向き、と考えてください。
蹴る板と乗り込む板との角度をθ2とすると、C=A*sinθ2
より、加速に使われる力C=F*cosθ1*sinθ2
となるんではないかと思います。

つまり、より傾いた状態でシザースする角度を深く取れるほど、力が有効に加速に使われるわけです。
ところが下の3.で説明されるように、速度が上がるほどシザースする角度は深く取れなくなっていきます。
そのため、低速の時のほうがこの加速をより有効に使えます。

このとき蹴りだした力について、
「伸びただけ、押しただけでは力は伝わらない。内力であり外力じゃない。」
という意見がありましたが、 「蹴り出す」というのは、人の意識的には 板を押し出してるのだけども、 実際には体を内側前方に押し出しています。
この場合は実際に体が前に出ていってますから、物理的に運動になって います。

3. スピードに対応してシェーレンする角度は浅くしか取れなくなる

「スケーティングで加速できるのは脚のスピードまで」
という意見がありました。

結論から言うと、蹴り出す足のシェーレンしている角度を浅くすることで、 蹴り出し速度よりも速いスピードでも、加速が出来ると思います。

ただ、スピードが増すと、シェーレンできる角度は浅くしか取れなくなって くるため、上記2.の理論より、徐々に加速に使える力が減っていきます。

i)
   ↑進行方向

  A│θ=90°
──┼── 板
   │ ↑
   │ 1m 1sで、AからA'に移動する
  A'│ ↓
──┼── 板
   │

進行方向に対して板を直角に置いてるとき、たとえばインラインの スタートダッシュ時が近いと思うのだけど、その時、例えば 1m/s の速度で進んでいるなら、この1mを1秒間以内に後方に蹴りださ ないと減速になってしまいます。

ii)
   ↑進行方向

   │θ=45°
   │/<
  A/↑ \1m*sin45°=0.71m
 /│1m   >
/ │↓/
   │/
 A'/
 /│
   │

板が45°傾いている場合、同じ1mすすめるのに、0.71mだけ
斜め後方に蹴り出せばいいことになります。
同様に、30°傾いていれば半分だけ、0.5m蹴り出せばいいわけ です。

つまり、進行方向からの迎え角θで、ギア比がかわる、 みたいになるのだと思います。
式で書くと v'=v*sinθ

人が歩くときの蹴り出す速さがだいたい4km/hとかだと思うので、 迎え角が5°の場合だと、歩いている時と同じ速さで蹴り出すと すると、(4km/h)/sin5°=(4km/h)/0.087=46km/h までは蹴り出せば 少なくとも減速にならない。

この速度と角度で蹴り出しつつ、力を加えていけばいいわけです。

4. 理論上の効果

a) と同じく、エネルギーの視点から、どれだけの効果があるか計算してみる。

a) と同じ下記条件で計算する。
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※仮定条件
ポールが H=20m間で W=10m幅で並んでいる、斜度θ=20°の中斜面
平均滑走速度 v=50km/h
板の長さ L=180cmで、板のアール R=21m
スキーヤーの重さ M=70kg
重力加速度 G=9.8m/s^2 円周率 π=3.14

内傾角θ1=45°の場合のターン弧 r=R*sinθ=15m になる。
ターン弧を円で考えたとき、r=15mで、真下向きから45°方向で切り替えを行うと、 だいたい20m間で10m幅のシュプールになる。
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1.2.で説明されている、伸展で重心を移動させる長さ L1=0.5m
3.で説明されている、脚をとられないために送り出す長さ L2=0.5m
加速運動を行っている時間 α=0.5s

まず、シザース出来る角度を求める。
送り出すのに必要な速度 v1=L2/α=1m/s(=3.6km/hだから可能な速度)
3.より、この速度で送り出しつつ大丈夫な角度θ2は、
v*sinθ2=v1 より、sinθ2=v1/v=1/13.9=0.072 より θ2=4.1°

次に伸展して重心を動かした仕事量を計算する。
ターン中にかかっている遠心力の加速度 a=v^2/r=12.9m/s^2
ターン中にかかっている力 F1=sqrt(G^2+a^2)*m=1131.8kgm/s^2
ここでL1だけ伸展した仕事量 W1=F1*L1=565.9[J]

またターン中の傾きを求める。
ターン中の傾きをθ1とすると cosθ1=G/sqrt(G^2+a^2)=0.61 より θ1=53°

上記結果と2.より、加速方向に使われるエネルギーを求める。
W2=W1*cosθ1*sinθ2=24.7[J]

この場合の速度変化 50.0km/h → 50.1km/h
また、低速 v=30km の場合で再計算してみると、
b) 41.16[J](高さに換算して6cm 速度変化 30km/h → 30.25km/h
となり、低速ほど効果が大きいことがわかる。

しかし、この1ターンで使える位置エネルギーは Hsinθ=20m*sin20°=6.8m分
U=MG*Hsinθ=4693[J] で、0.5%にすぎないため、比較するとほとんど意味ないかも、という気もする…
やはりもう少し緩斜面で、もう少し速度の低い領域でないと、有効性はあまり感じられないだろう。
SLなどのもっとターン弧の小さいモデルで考えるべきかも。