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今年の「忘れられない夏」の全国高校野球選手権は、降雨ノーゲームやジャイアントキリングが多く起きた、異常"奇勝"な大会となった。その中で、前評判通り、木内監督最後の指揮となった常総学院が初優勝を飾った。そんな今大会を振り返って、総括してみよう。
1回戦から、異常奇勝は起きた。まずは、誰の記憶にもあるだろう、駒大苫小牧−倉敷工戦。駒大苫小牧は8−0とリードしながらも降雨ノーゲームとなり、翌日の再試合で2?5で敗れた。この結果は、北海道民でなくてもしこりが残ったに違いない。
2回戦では、屈指の好カードが多くあった。平安−明徳義塾、近江−東北、常総学院−智弁和歌山だ。共に接戦となり、2回戦とは思えない見ごたえのある試合だった。また、今大会一番のジャイアントキリングの試合、広陵−岩国も2回戦である。完璧と思われた西村が、死球覚悟でバッターボックスのギリギリ手前に立って闘争心をむき出しにした岩国打線に対し、内角をつけずめった打ちにあった。
3回戦は投手戦の試合が印象に残った。江の川・木野下−沖縄尚学・広岡、光星学院・桑鶴−倉敷工・陶山、そして平安・服部−東北・ダルビッシュだ。特に3つめは、今大会最高の好ゲームであった。服部、ダルビッシュの投げあいはいつ終わるのか全く見当がつかない程、両投手が完璧な投球を披露した。決勝までいった、東北・ダルビッシュもこの試合が一番の出来で他の試合の出来では確実に敗れていただろう。しかも、延長11回までで両投手の合計奪三振は32。近年、記憶にない素晴らしい投手戦だった。
準々決勝では、岩国、江の川といった大躍進したチーム、常総学院、桐生第一といった強豪それぞれが持ち味を十分に発揮した好ゲームが多かった。桐生第一がミラクル岩国を得意の接戦で倒したが、この試合も雨が試合の流れを変えた。また、ベスト8の東北勢対決となった東北−光星学院も非常に面白かった。
準決勝は優勝候補の2校が自力の差を相手校に見せ、決勝の権利を手に入れる難しさを教えてくれた。東北は、好投をしてきた江の川・木野下を打ち崩し江の川の息の根を止めた。常総学院は、接戦に強い桐生第一に先制されたが、接戦にさせない程の打力を見せつけ、快勝した。
決勝は初の白河の関越えを狙う、東北の雄・東北と木内監督最後の夏となる関東の賢者・常総学院という、優勝候補同士の対決となった。結果は、常総学院が東北の剛腕・ダルビッシュを打ち崩して逆転優勝を果たした。
常総は2回に2点を先制された。マウンドにはダルビッシュがいた。沈みがちなベンチで指揮官は言った。「あんな球、お前たちなら打てっぺ!」。小細工はしない。ここまで勝ち上がってきた要因の一つ“小技”を捨て、バットを振らせることで「いける」の暗示をかけた。4回に4本の長短打で3点を奪って逆転。3回途中からマウンドに登った飯島の気迫あふれる投球と、8回に打線が1点を追加した時点で木内監督は勝利を確信した。
万雷の拍手。5万2000の大観衆からわき起こった“木内コール”を浴びながら72歳の小柄な体は甲子園優勝回数と同じ3度、宙に舞った。最後の夏。人生を高校野球にささげた木内監督に野球の神様は最高の舞台を用意した。
木内監督は、胴上げの後、選手からウイニングボールをもらった。「これ、どうしよっかな。最後の1個くらい取っとくか」とユニホームの後ろポケットにしまった。51年間「野球はオレにとって麻薬。野球より面白いものはない」と言い続けた高校野球と決別する。「好きな野球を一生やらせてもらって。本当に道楽。さてこれから何すっかな。今考えてるのは温泉に行きたいね」と笑った。希代の名将は人々の心に強烈な印象を残してユニホームを脱いだ。
PL、天理が早々と敗れ、甲子園未勝利校が勝ち進んだ今大会。智辯和歌山、明徳義塾、常総学院を中心に、また新たな時代の始まりを告げる大会であったのかもしれない。
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