食山人ノート1

本格登山に必要なエネルギー
山での食事の取り方(小屋泊編)


【本格登山に必要なエネルギー】

 42.195kmフルマラソンを2時間余りで走り抜ける時に消費されるエネルギーは約2500kcal。これに対して歩行8時間の登山は約3000〜3500kcalとされる。つまりフルマラソンよりキツイスポーツってことです。ちょっと大袈裟なんじゃない?と思われるあなた。山を甘くみてはいけませんよ。
 ジョギング30分こなしても大して疲れないからって、過信してはいけません。42kmを2時間で走れますか?上記のマラソンをスピードが遅い軽いジョギングに換算すると、5時間以上走りつづけるエネルギー量なんです。3000m級登山の場合、すなわち気温が日常よりも10度以上低い環境で、背中に荷物を背負って、普段より重い靴を履き、傾斜を8時間歩き続けるってことは、子供をおんぶしたまま平らな道路を12時間以上歩き続けるのに相当する。しかも、上記の数値はマラソン選手や熟練登山者の場合で、フォームやコースどり、技術などでかなり効率良く動いた場合の数値。素人ランナーや登山初心者の場合、無駄な動きが多くなるため実際はもっとカロリーを消費します。ロープウェイを使っての2〜3時間のハイキングとはかなり違うと言うことがおわかりいただけたでしょうか。以下ではこの消費カロリーを記憶にとどめておいて欲しい。

【山での食事の取り方】

 ここでそのものズバリの答えを出すのは正直言って難しい。あえていえば行動時間と運動量に応じて食べるのが合理的としか言えないのだ。経験から言うと、個人の基礎体力にもよるが1泊2日程度の山行で、一日の行動時間が6時間以下ならばよほどのことがない限り、1日3回食べていればさほど食事の内容に神経質になることはないと思う。同時に水を充分とっていれば倒れることはありません。先述の消費カロリーを充分カバーすることはできませんが、だからといって即、命の危険に曝されると言うこともありません。人によっては下山後の体重が1〜2kgほど減る程度ですが、健康ならすぐに戻ります。
 食べているのに1両日で動けなくなる様では、登山をするにはあまりにも体力(運動)不足。計画を見直した方がよいでしょう。そんなことでは大水害や大震災などの災害時は生きておれませんよ。みんな飲まず食わずでテクテク歩いて、水や食料を探すことになるんだからね。('82.N大水害の体験より)

 日常生活では、たとえば通勤往復2時間、デスクワーク8時間を1日3食で補っている訳ですが、当然の事ながら登山で同じ飯を食べてれば足りませんよね。小屋泊まりで食事付きならしっかりお代わりしたり、積極的に食べましょう。偏食で食べ物を残すなんて言語同断です。
 山行に入ると食いだめしてもあまり効果ありませんが、小屋で朝夕2食をのんびりとるような山行計画ならば、その食事と小屋の弁当で充分カバーできる歩行行程になっているはずなんです。小屋泊まり山行では、小屋の食事はそこそこ充分な量が用意されているから、例えばワンスパン(食事と食事の間)の歩行時間が3時間程度の刻んだ行程ならば、普通のハイキング的な食事の取り方でもさほど問題にならない。天気が良く、のんびりとした行程ならコンロを利用してゆっくり昼食を楽しめばよいのです。

 一方、小屋泊まりでも、計画上朝食昼食が早立ちや弁当などで量的にしっかりとれない状況が多いと思う。また1日の長い行動時間中にそのつど満腹になるほど食べていたのでは、次の行動にすぐ移れないし、そもそも運動中の食事の取り方として無理があるのは説明するまでもない。そこで登場するのが行動食である。
 小屋で夕食を豪華にとるとしても、そこに至るまでの行動時間が長ければ軽食なみの朝食や弁当では足りなくなる。たとえば日の出と同時に歩き始めると、小屋に着いて夕食をとるまでに10時間以上という行動(歩行時間+etc.)時間を過ごす訳ですから、それまで2食だと足りない。そんなとき不足分を行動食で補ってやるのである。また歩行時間や行程が長いほど、普通にゆっくり昼飯をとれなくなる。そのため朝食後は腹がへったら少し食べるという方法、つまり歩行時間に応じて食事をとるスタイルに切り替えるわけです。
 冬期や高山域などで長時間休憩すると、身体が冷えきって次の運動に支障が出る場合や効率良く行動するためには、車のガソリン補給と一緒で、休憩の度に少しづつ食事をとるのが合理的とも言えます。

 では、行動食に何を持って行くか。日帰りや小屋泊まりの短い山行なら、おやつ感覚で好きなものを適当に持って行けばよい。このあたりは昼食をとるか、それとも山行計画に合わせて完全行動食として食べるかによって持参する量も変わってくる。
 いわゆる行動食は本来レーションとよばれ、調理不要そのままで食べられるのが原則。登山と言うスポーツ中に食べるものだから、消化吸収が良くすぐにエネルギー源となるものが理想で、糖質のものが多く使われる。定番としてはアメ類、ビスケットや米菓類、脂肪を含むチョコレートやナッツ類、蛋白源のサラミソーセージ、チーズ類などなどが様々な登山書にあげられている。
 現代の日本ではこれらに相当する栄養価の高い食べ物はよりどりみどりなので、個人の好みにカスタマイズされていくと思います。なぜか筆者はサラミソーセージやビーフジャーキー等は一度も持って行ったことがないです。だって重いし安くないし、そんなに好きじゃないんだもん。こういうのって米軍レーションのなごりじゃないか? 結局、酒のつまみである酢イカやスナック風のフライイカ、タコの薫製などに変わってます。



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|食山人ノート2/幕営の食料計画・朝食編|
|食山人ノート3/幕営の食料計画・夕食編|
|食山人ノート4/行動食ア・ラ・カルト|
|食山人ノート5/水分とスポーツドリンク|

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