四国 麺'Sアイランド
★麺類の激戦区へ
 新たな出会いを胸に、瀬戸大橋を渡っていた。昼過ぎ姫路での所用を済ませ、一路四国へ。
 この橋を渡るのは、何度目だろう。初めて渡ったのは12年前、この一段下を通るJRの列車に乗ってのことだった。以後、10回以上四国を訪れているが、いつも四国山地か、その南側が目的地だった。
 昨年暮れから今年の始めにかけて、京都市内を中心に関西のラーメンを食べ歩いた。というのも、ここ数年福島県の喜多方市のラーメンが美味しさを増し、その魅力にとりつかれてしまったのだ。しかしながら、関西では満足のいく成果を得ることはできなかった。
 例年なら梅雨明け直後の太陽がぎらぎら照りつけている頃なのに、今年はなかなか梅雨明けの気配がない。それでも今日はまだましな方で、窓を全開にして走ることができない高速道路では、弱めのエアコンをかけている。
 瀬戸大橋を下りたらすでに夕方で、坂出市内の書店に寄ってこの後の作戦タイムとする。
 おもしろい本を見つけた。「月刊ナイスタウン別冊『食蔵:くうぞう』シリーズ2 完杯!讃岐ラーメン もうひとつのさぬき麺'sライフ」。即、買い。
 今回、讃岐遠征前に取り寄せた「さぬきうどん全店制覇攻略本」という本をひっさげてきているのだが、こちらは言わずと知れた「TJKagawa」の「おそるべきさぬきうどん」シリーズである。
 この地は、麺類の激戦区であると同時に、タウン情報誌の激戦区なのかもしれない。
 書店の駐車場で、持ってきた「全店制覇攻略本」をひろげ、この後どの店を狙うかを練る。
 郊外の店のほとんど昼過ぎには閉めてしまう(朝打った麺が売り切れて閉店)ので、宿泊地の高松市内を目指すことにする。新潮文庫の「おそるべきさぬきうどん 麺地巡礼の巻」(麺通団著とあるが主に書いているのは団長でTJKagawaもと編集長)で、高松市内には深夜営業のうどん屋があることを押さえているのだ。
★讃岐ラーメン「山珍海錯(さんかい)」
 瀬戸大橋から小一時間で高松市内。混雑する夕方の市街地を走り、予約してある栗林公園ちかくのビジネスホテルで荷物を下ろしてから、夜の町へ繰り出す。
 ホテルのすぐ近くにうどん屋を見つけたが、「麺地巡礼」に出ている2軒をハシゴすることにする。その2軒は高松の繁華街近くにある。3連休の真ん中の夜とあって多くの人が歩いている町を抜ける。
 ホテルから30分ほど歩いて目当ての店の前にきたが、なんと定休日。攻略本を見るとなんと日曜が定休とある。不安に駆られながらもう一軒の方を見ると、「定休日 日曜」とさらに追い打ちを食らった。
 仕方がない、さっきホテルを出たときに見かけたうどん屋で食べることにしよう。でも、ここまできてこのまま帰るのはもったいない…、と通りの角にある「山珍海錯」という看板の店にはいる。ログハウス風の外壁と「麻婆ラーメン」というのぼりにつられてしまった。
 店内には、中年の夫婦連れが一組。店主と知り合いらしく、会話をしながらのんびり食事をしている。
 メニューを見て 牛 女乃 湯 麺(ニュウナイタンメン)というのを注文する。生クリームを加えたオリジナルの白いスープがどんな味なのか興味がわいてしまった。ついでに、表の看板にかかれていた店の名は、「さんかい」と読むこともようやくわかった。
 出てきたラーメンは、まさにクリーミーなスープ。麺もなかなかしっかりとしていて、せっかくここまで歩いてきた甲斐を感じさせてくれる。
 ホテルの近くまで戻り、やっとうどんだ、とおもったら、店が閉まっていた。今日は間が悪い日だ。
 まだ食べる気でいたので、これで腹がおさまらない。




★讃岐ラーメン「夜仲そば」
 斜め向かいに「夜仲そば」というのれんが下がった店が開いているので、道路を渡って入る。
 日本そばかと思ったら、ラーメン屋だった。こちらは、しょう油、しお、みそとわかりやすいメニュー。しょう油ラーメンを注文する。
 これが、なかなかうまい。麺にはしっかりと腰があり、スープもくどくなく程良い味がついている。そして、値段も450円と、安い。さすが、うどんの聖地。麺類全体が、その質と値段の安さでしのぎを削っているということが感じられた夜となった。うどんは、食べられなかったが、それなりに満足した。
 ホテルの部屋に戻り、持参のパソコンとLANケーブルを端子につないでネットサーフィンをしてから寝た。
★さぬきうどん「宮武」
 翌日は雨、梅雨はいつ明けるのだろう。
 本日は、讃岐西部、うどんの激戦区をめざす。
 まずは、琴平の「宮武」へ。ここは、ちょっと前に放送された「どっちの料理ショー」で、特選素材としてうどんを提供した店である。手打ちで手切り。板状にのばした生地を包丁で切ることによって生じる麺のねじれが出汁の絡みをよくし、また機械のように力任せで強引な切り方によって素材の組織を壊すこともなく最高の触感を得ることができる、などとTVや活字で広く紹介されている。また、この親族が県内各地で営む店はいずれも人気店で、「宮武ファミリー」と呼ばれている。
 攻略本には8:30開店とあるが、並びたくないので8時前には店の近くについた。農村地帯の何気ない集落の中に「宮武」の文字を発見。不自然なまでに広い駐車場にはいるが、その入り口の「本日臨時休業」の文字が、私に衝撃を与えた。ちゃんと、昨日寝る前に定休日を確認してきたのに…。しばし呆然としながら、次の店を探す。

★さぬきうどん「山越」
 今度は、綾上の「山越(やまごえ)」だ。こちらも、農村の中に店はさりげなくあるのだが、なんと広い駐車場。攻略本に出ている9:00の開店時刻より30分も早いのに、一番近い駐車場は満車。
 私のすぐ後ろを走ってきた関西のナンバーのクルマも、山越が目当てらしく駐車場に入ってきた。
 少し離れた第2駐車場にはレンタルの傘がおいてあり、これを借りて店へと歩く。店内には、すでに結構な人がいて、5人ほどの行列の後ろにつく。前の人のしぐさを見ながら、注文方法を理解し、何を頼むか決める。
 私は、「釜玉」、つまり釜揚げうどんの生卵入り。この山越は、釜玉が有名で、そのネーミングもここから始まったという。
 また、ここは本来うどん製麺所で、近くの駐在さんや郵便配達の人にうどんを出していたら、それが有名で観光客が来るようになったという。観光バスまでやってくるので、近くの田んぼをつぶして駐車場を作ったのだそうだ。
 麺打ち作業をしているそばで、釜玉の中を注文する。小とは1玉入りのこと。これで、140円。さらにちくわなどの天ぷらを選んで皿に取る。全部併せて500円ほど。
 生卵を絡めた釜から揚げたてのうどんが入った丼を渡される。これを持って、軒下や渡り廊下の長椅子に腰掛けて食べる。出汁は、熱いのや冷たいのが保温タンクに入っていて、それを自由に選んでかける。釜玉には生醤油だけ、という食べ方もあるらしい。
 私は、熱い出汁をかける。
 とにかく、麺が生きているとはこのこと、というくらいしっかりした麺だった。
 私が食べているうちに、注文待ちの行列がどんどん伸びていく。今日は雨なので、みんな大人しく軒下に収まっているが、降っていなければ店の周りは行列と、丼を持った人で凄惨な状態になるに違いない。こんな田舎の農村地帯がである。



★さぬきうどん「サヌキのピッピ」
 せっかく海を渡ってきたからには一軒では物足りないと、クルマの中で「攻略本」を開き次の店を探す。山越の近くにある「池内」というのが「麺地巡礼」に出ているのだが、行ってみると休業。
 ならばと宮武方面に戻り県道278号線沿いにある「サヌキのピッピ」という店を目指す。攻略本を見ていると、名前に"ぴっぴ"を含むものがいくつか見られるが、どういう意味かは知らない。
 田んぼの中の道沿いに、バラス敷きの駐車場を備えた店らしい店構えのうどん店。まだ新しい雰囲気。一番奥に調理場があり女の人が3,4人働いている。かけうどんの中(2玉)を注文し、ちくわの天ぷらなどを選ぶ。おでんもある(別に珍しくないのだ)。うどん1玉あたり100円ほどで、やっぱり安い。
 先客は1人の男性。常連風。その人と入れ替わりに、若い女性3人組が入ってきた。完全に観光客、うどん店巡り中。クルマは関西のナンバー。私と同じく、1玉100円のうどんを食べに往復10,000円の橋を渡って来た人たちである。
 うどんはというと、やはり麺が生き生きしていて美味しい。山越と比べても、劣るとは感じない。客の多さはうどんのうまさとは必ずしも比例しない。
 というわけで、この辺でうどんはあきらめて、讃岐を後にすることにする。R193で讃岐山脈を越えるために、来た道を引き返す。ということは、山越の近くをまた通るので、もう一度偵察することにする。
 果たして、それはこちらの期待通りの凄まじい状況だった。駐車場はいずれも満車で、路上駐車が遙か遠くまで続いている。そして、うどん待ちの人の列は100m以上で、店の近くの交差点を通り過ぎている。何でもない、農村地帯の集落に、朝の10時からこんなに人が集まっている風景は、異様である。
 その人だかりの風景に満足して、讃岐山脈を越える。これが山越という屋号の由来かどうかは、定かではない。

★徳島ラーメン「巽屋」
 道は深い山へとさしかかり、農村風景から山村風景へと変わる。いつしか雨は小降りになっていた。県境を越え徳島県に入る頃から、「祖谷そば」という看板を出した店がいくつか見られた。麺類を求める旅なのだから、これも食べるのが本当かもしれないが、あまり食欲をそそられずパス。正真正銘の祖谷渓で食べたことがあるので、まあいいのだ。
 脇から吉野川沿いに下り徳島市を目指す。この道は大鳴門橋で四国に上陸してから祖谷渓や高知方面へのルートで、何度も通った勝手知ったる道。
 さあ、最後は徳島ラーメンだ。新横浜ラーメン博物館にも出展し、徳島ラーメンを代表するといってもいい徳島駅近くの「いのたに」へいってみるが、なんと休業。昨日買った「完杯!讃岐ラーメン」には、確かに月曜定休とあった。不覚。
 落ち込んではいられない、別の店へ。そして、「巽屋」。店の前の駐車場は満車で、少し離れた第二駐車場へ。広い店内は満席だが、これだけ多くの人がいればもうすぐ食べ終わって席を立ちそうな人が必ずいる。少し立って待って、席へと案内された。
 徳島ラーメンは、チャーシューでなく煮込んだ豚バラ肉に生卵を落としたすき焼き風が多い。スープは豚骨・醤油で濃いめ。

★明石の玉子焼き「きむらや」
 これで、今回想定した四国の麺は完食。帰路に就く。
 鳴門市から大鳴門橋で淡路島へわたったら、すぐに一般道へ。R28はやめて西海岸の県道31号線で北上。最初道が狭く離合が面倒だが、対向車は少なく信号も少なく快適。いつしか天気も良くなってきた。海が青い。
 そして、明石大橋は渡らないで、岩屋のフェリー乗り場へ。何となく船に乗りたい気がして、昨夜のホテルでインターネットで調べたら、橋の開通でいったんなくなった明石・岩屋間のフェリーが別の経営で復活していた。時間的にはロスとなるが、のんびり海風に吹かれるのも良かろう。
 かつてはずいぶん待たされたが、今回は乗り場にやってきてすぐ次の便へ乗れた。ちなみに運転手込みクルマ1台の料金は明石大橋の最短区間と同じ。
 フェリーでの時間は甲板で過ごす。六甲の山並みが近づいて、あっという間に明石港。
 港を出てすぐに明石焼きの“きむらや”という店がある。せっかくなので、買っていく。店内は満席で、店の前には行列。中で食べる人も持ち帰りの人もとにかく店に来た順に並んで待つ、というのがこの店のルールらしい。路上に止めた車を気にしながら15分ほど待ってゲット。
 明石からはすぐにR175で北上できる。神戸からの混んだ海岸線を走らなくてよいことと、明石焼きも、明石海峡大橋を選ばなかった理由である。西脇からはR427に乗り換えてよりローカルムード。突如空が暗くなり豪雨に見舞われるが、そのうちやんだ。
 加美の道の駅で明石焼きを食べて、山東、夜久野、但東、久美浜と兵庫と京都の境を3回もまたいで帰宅。