電脳徘徊 2018冬 台湾弾丸紀行2018/02/9・10・11・12
台湾弾丸紀行~10年ぶり3度目の海外~
0.目次
1.旅立ち
2.台北の夜
3.台湾の自転車屋さん
4.川沿い自転車道と中国漢字クイズ
5.碧海吊橋そして雨中走行
6.台湾の自転車屋さん その2
7.台北街歩き
8.川沿い自転車道で淡水へ
9.陽明山へ登る
10.雨に打たれて士林に下る
11.台北の夜 その2
12.雪国へ帰国
13.データと動画
1.旅立ち
 2月9日夕方、定刻に飛行機は飛び立った。初めて乗るLCC(格安航空会社)の飛行機は小さめで当然客室も小さい。座席の間隔も狭く、それが満席。セキュリティチェックで警告音を3度も鳴らしててこずり、搭乗口の係りのお姉さんが心配して迎えにきた。離陸15分前に機内に入ると、私以外の乗客ほぼ全員がすでに着席していて、その人口密度の高さと全員の視線に圧倒されながら自分の席に着いた。3時間ほどのフライトだから、狭くてもいい。
 前夜から急展開だった。ぎりぎりまで天気を見極めていたら安い航空券が売り切れてしまった。そんな中、比較的ましな値段のものを見つけ急いで申し込んだら、思っていた日程よりも1日早いものだった。しかも、キャンセル料はチケット代全額だという。間違えて申し込んだ日程も腹案として持っていたものなので、不可能ではない。もうこれで行くしかない。その日程に合わせて宿泊先を探し予約する。しかし、翌日にするつもりでいた準備を急いで整えなければならない。いや翌日ではない、もう出発当日になっているではないか。
 現在、旅の準備のほとんどはインターネットでできる。航空券や宿泊の予約も、情報収集も。ある程度の資料は既に集めていたとはいえ、最後の詰めが必要だ。予約した宿の地図を保存し、迷わず宿に到着するためストリートビューでその周辺の町並みを確かめておく。資料が集まったら、タブレット端末に保存。そして、荷物の準備だ。
 結局、2時間ほどしか眠れず、午前中の勤務を終えて職場から直接空港へ向かう。お金をおろすのを忘れていて、口座と別の銀行のATMで手数料108円を取られてしまう。
 それでも無事に飛行機に乗ることができて一安心。うとうとしているうちに着陸準備に入るという機内放送。10年ぶり3度目の海外旅行。どうなることやら。そして初めて自転車を持ってこなかった。台湾が誇る世界の自転車メーカー、「GAIANT」のショップでレンタルできる、というが本当に上手く借りられるだろうか。天気も心配だ。日を追うごとに天気が良くなり当初の案の最終日には晴天が期待されたのだが、それよりも一日早く帰る日程になってしまった。
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2.台北の夜
MRTに乗る 自動改札 乗車券「トークン」
 桃園空港で両替を済ませ、MRT(都市鉄道)に乗車。自動券売機の前で右往左往する人々がいる。何をしているのだろうと思いながら、機械の前に立つ。あれ、目的地の台北駅まで160元のはずなのに、そういった表示が出てこないよ。どうやらそれはプリペイドカード型乗車券の発券・チャージ機だった。ならばと隣の一般乗車券の券売機の前に立つが、銀行の出張窓口で両替したばかりの紙幣が入らない。高額紙幣は受け付けてくれないのだった。一番隅の両替機で崩して、ようやく切符を購入。結局、自分の前にいた人たちと同じように右往左往してしまっているのであった。切符と言っているけれど、乗車券はコイン型。トークンというらしい。入場時には自動改札機のセンサーにあて、退場時にはコインを投入する。MRTは都市鉄道で、いわゆる市営地下鉄だが、郊外では地上を走っている。2年前に開通したこの桃園空港線は、ほとんど地上を走る。快速で台北まで35分くらいとのことだが、よくわからないまま普通列車に乗っている。途中の駅で長く止まっているな、と思ったらとなりのホームに快速が到着した。が、それに気付いたのは快速が走り去っていく時だった。
 ごく弱い雨が降る台北駅周辺は、人で賑わっている。巨大な宮殿のような駅舎は紫色にライトアップされている。駅のすぐ南にあるゲストハウスは、ストリートビューのお陰ですぐに見つかった。ただし、6階建てのビルの最上階がゲストハウスになっているが、1~3階は日本の「光南」という日本でいえばドンキホーテのような雰囲気の安売り雑貨店となっていて、その店舗の脇のエレベータホールにゲストハウスに名前があるだけ。ストリートビューで見ておかなければ、見つけるのに苦労しただろう。
 飛行機もそうだったが、宿のチェックインもインターネットで予約した時に表示された画面をプリントアウトした紙を見せる。大事なのは予約番号。航空券の場合は泊まる人の名前がパスポートの名前と一致していることも必要で、スペルミスなどに要注意だ。台湾ではかなり日本語が通じると期待していたのだが、受付のお姉さんは、私が外国人だと気付くと英語をまくし立ててきた。
 荷物を置いて、食事に外に出る。周辺には飲食店が多い。「すき家」「吉野家」「マクドナルド」などおなじみの看板。飲食店ではないが、「ファミリーマート」「セブンイレブン」「ダイソー」「ユニクロ」なども。また、「銀座ラーメン」と日本語(ひらがな・カタカナ)も多い。あと、店先で調理をする屋台のような店が多い。ただし、すでに23時を過ぎて多くが閉店しまった。辛うじて空いていた店の前で、さあどうやって注文しようか、と佇んでいたら、韓国人と見られる外国人カップルが壁に表示された写真付きのメニューを指差して注文していた。なるほど、写真とその値段を数字で表示してあるので、言葉が通じにくくても大丈夫なわけだ。「大腸麺線」の大きいサイズを注文。店先のカウンターテーブルを指差し「Here」と言えば、ここで食べることを伝えられる。屋台形式の店にはイートインスペースがないものもあるが、それが会ってもなくてもテイクアウトできる。細い麺はビーフン(米粉)だろうか。名前の通り、何かの大腸を刻んだものが入っている。少しとろみのあるスープが熱くて口の中の皮がめくれてしまった。
 あわただしくて昼食がパンのみだったので、もう少し何か食べたい。結局、コンビニでパスタを買って宿で食べる。
 シャワー室に脱衣場はなく、高い位置に棚がありそこに脱いだ衣類を置くようだ。そして土足。足拭きマットもなく、いきなり湿った足で靴をはかなくてはならない。裸足で過ごしている人もいるが、シャワーもトイレも同じフロアなので、それは嫌だ。明日は、何か使い捨てのスリッパでも買ってこよう。
 寝室は男女混合ドミトリー。2段になった各ベッドカーテンで目隠しされ狭いけど個室のようだ。カプセルホテルに近い。ひと月前に泊まった広島のゲストハウスと同じ。予約サイトの写真を見て、2段ベッドむき出しのゲストハウスでなく、カーテンつきのものを選んだ。中には電気スタンド、そして電源コンセントが2口とUSB電源も2口。充電し放題ではないか。ちなみに電源コンセントは日本と同じ形状で、電圧は110V。「入力100-240V」のものならアダプターなしで使える。携帯電話、デジタルカメラ、タブレット端末、GPSレシーバ…、一気に充電できる。
 さあ、昨日はあまり寝ていない。あっという間に眠りに落ちた。
夜の台北駅 ゲストハウスのあるビル 大腸麺線
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3.台湾の自転車屋さん
 10日朝、ごく弱い小雨。地面は濡れている。自分としては自転車に乗れなくはないのだけれど、こんな天気でも自転車を貸してもらえるのだろうか。GIANTの自転車店は10時開店なので、結論はまだ出さなくていい。とりあえず朝食だ。台湾では三食外食が普通なので、ゲストハウスの周辺の店先屋台は空いていて、その前には人だかりができている。多くの店ではお粥を出しているようだ。あとサンドイッチを売っている店もある。自転車に乗ることを想定して、しっかりと食べたいので「すき家」に入り、朝食メニューを注文。これでは、日本と変わらないではないか。すき家を出て、大きめのおにぎりを売っている店があったので、行動食として2つ買う。注文すると、素手でなくラップかキッチンペーパーのようなもので包むようにして握ってくれる。具の種類はたくさん表記されているが、さっぱりわからない漢字を適当に指す。いずれも揚げ物のようだが、それが何なのかは不明。
 ゲストハウスで支度をして出発。GIANTストアまでは2kmほどを歩いて行く。基本的に東西方向と南北方向に通りがあるのでわかりやすい。クルマも多いが、スクーターが多い。その多くは日本で言う原付二種(51~125cc)で二人乗りが多い。また、台湾の免許区分はわからないが、日本で原付免許で乗れる50cc以下のものに相当すると思われるスクーターは、大きな交差点で二段階右折をしている。横断歩道の先に四角い枠があり、それが二段階右折の時の中継点。そこにスクーターが並んで行く。赤信号の間にその枠の中、および横断歩道手前の停止線周辺に30台以上のスクーターがたまり、青信号でいっせいにスタート。まるでレース場かと思うような轟音が鳴り響く。
 信号機や横断歩道のデザインは日本とそっくり。ただし、右側通行なので赤、黄、青の並びは日本と逆。街路樹や他の標識の視覚になりにくいよう、道路中央よりが赤となっている。歩行者用信号は、青の時には緑色の人が歩くアニメーションで、赤になる直前では点滅ではなく緑の人が走る。信号には、残り秒数がカウントダウンされるものが多い。  クルマやバイクの運転は、極めて強引で飛ばしている。バスでさえ右折(日本での左折に相当)の時には、内輪差により右後輪を歩道に乗り上げながらハイスピードで曲がって行く。さらにスクーターにいたっては、車道を右折するクルマを歩道に乗り上げてショートカットして追い越す特攻隊もいる。
スクーターの洪水 日本のものとよく似た信号機 カウントダウン
 台北駅前から続く大通りをそれ静かな道へ。公園にそって黄色い自転車が並んでいる。これが台北名物のシェアサイクルだ。そこにあったのは「e-Bike」と呼ばれるもので、前カゴについているプレートのQRコードで専用アプリをスマートフォンにダウンロードして利用するようだ。さらに歩いていくと別のシェアサイクル。これが最も普及している「YouBike」。使用するための会員登録には台湾の携帯電話の番号が必要だが、私のような外国人でもクレジットカードで一時利用できる。乗り捨て可能なステーションは台北市だけでなく、新北市にもある。もしGAIANTストアで、「路面が濡れていて自転車が汚れるから今日は貸してあげない」と言われたら、YouBikeでもいいかな。本当は、宿の近くにYouBikeのステーションがあったらGIANTストアまでの移動に利用しようを思っていたのだけれど、見つからなかった。探せば台北駅の近くにあるんだろうけど。それで、今いるステーションまで乗ってくれば、GIANTストアはもうすぐ近くだ。ただし、戦場のような街中の走行はかなり緊張する。
 公園内の地面から木へ何かが素早く動いた。リスだ。こんな大都会の真ん中にリスがいるとは驚き。
 ストリートビューを見ていたので、難なくGAIANTストアを発見。10時前で、まだ開いていないので、淡水河沿いの自転車道を見に行く。ごく弱い雨が降ったりやんだりしているが、これならいける。もう走る気になっている。
 川沿いの大通りを越え、河畔へ。通りと河畔の間には、建物の2階ほどもあるコンクリート製の高い壁がそびえている。どうやらこの壁が堤防らしい。川面と市街地にはあまり高度差がないのだ。私が通り抜けた壁の穴は「五號水門」となっている。ふつう水門とは水が通るものだが、ここは人やクルマを通すためのもの。そして増水時には水を通さぬように扉を閉じるのだろう。
 河畔は公園のような広場になっており、帆船のモニュメントが置かれている。「大稻埕碼頭」というそうだ。後日調べてみると、碼頭は埠頭のことで、かつてここで商船が荷物の上げ下ろしを行い貨物の集散地として賑わったとのこと。現在では、クルーズ船の発着場、自転車道の拠点などになっている。もちろんトイレもあるわけだが、日本の多目的トイレのような大きな個室のものが複数並んでいる。これも後で知ったのだが、自転車ごと個室に入るための大きさだそうだ。GAIANTストアは絶好の位置にあるではないか。また、別にレンタサイクルもあった。GAIANTストアのようなスポーツサイクルでなく、シティサイクルや子供用自転車を用意しているらしい。つまり、クルマでここに来て家族でサイクリング、なんてこともできる。
 10時になったので、GAIANTストアへ行ってみる。店先にはレンタサイクルの案内が貼り出されていた。中国語・英語・日本語で書かれているのでわかりやすい。ネットや雑誌に情報を提供している先人達はいずれもロードレーサー(公路車)を借りていたが、MTB(登山者)もラインナップされている。ロードレーサーは1日1000元(約3830円)なのに対しMTBは休日300元(約1150円)。
 とりあえず雨天でも貸してもらえるかどうか聞いてみよう、と店内の若い店員に声をかける。すると、もういきなり「OK! Road or MountainBike?」と訊かれ、借りる流れになっている。いつ雨が強まるかわからないので、MTBを借りることにした。パスポートを提示し名前と携帯電話の番号を用紙に記入。パスポートの返却は、自転車の返却時。つまり人質と言うわけだ。
YouBike 都会の真ん中にリス GIANTストア
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4.川沿い自転車道と中国漢字クイズ
 自転車を受け取って、いざ壁外調査へ。
 本格的に走り出す前に、大稻埕碼頭のベンチで体制を整える。レンタルのMTBは27.5インチ、ディスクブレーキ、フロント3S、リア9Sと、私のMTBよりも随分近代的なもの。一応ブロックタイヤを履いているが、浅めのブロックパターンで空気圧も高めにされて転がり抵抗は少ない。サスペンションはなく、前後ともリジッド。あとキックスタンド付き。要するにシティユース用のクロスバイクのようなセッティングだ。サドルの高さを調整し、ザックからヘルメットとフロントバッグを出す。フロントバッグは本来フロントキャリアに乗せるタイプなので、あまり物を入れると重みでタイヤに接触してしまう。よく使うものだけ最低限入れることにしよう。
 予想最高気温は16度で、予想平均湿度は88パーセントとのこと。つまり、雪の丹後と比べれば桁違いに蒸し暑い。アウターウェアを脱ぐ。肌着のシャツと長袖のポロシャツで十分だ。雨は弱いから、体温で乾いていく。
 というわけで河畔を南下。広大な川、まさに大河を右に見ながらを遡る形だ。広い河畔に立派な自転車道。センターラインが引かれ、別に歩行者用のレーンもある。雨のせいか自転車は通らないが、ウォーキングやランニングの人の姿が見られる。
 壁外は平和そのもの。むしろ壁の内側の方がクルマやバイクが進撃しているし、巨人(GAIANT)もいる。
 上から降ってくる雨は大したことはないが、泥よけがないため路面の水が撥ねる。前輪の水撥ねはフレーム(ダウンチューブ)でどうにかおさまっているが、後輪の水撥ねで背中のザックが泥んこになっていく。
 また、濡れたフラットペダルが滑って、ペダリングの効率が悪い。実はビンディングペダルをザックの中に持参してきて、SPDシューズを履いているのだ。関西空港でのセキュリティチェックに3回も引っかかった要因のひとつが、靴底のクリート(ビンディングの金具)だ。そこまでして持ってきたのに、店員にペダルの交換を申し出ることができなかった。
 さらに、パンクの心配もある。携帯用ポンプとタイヤレバーは持ってきたが、スペアチューブがない。サイズのことがあり、借りる自転車の現物を見ないとチューブを用意できないのだ。今日はただパンクしないように祈るのみ。
 まあそれでもこうやって異国の地で自転車を借りて走ることができている達成感が湧き出してくる。やっぱり自転車はいい。
 左側は壁により目隠しされているが、右側の川の向こうには高いビルが並んでいる。広い河川敷は公園のように整備され、雨にかかわらずランニングやウォーキング、犬の散歩、バスケットボールをしている子ども達など、野外で過ごす人がいる。また、野鳥が多く、それらの案内看板も設置されている。道が狭くなったり交差したりしているところの手前には、路上に「漫」という字が記されている。「ゆっくり走れ」ということのようだ。また、「行人優先」の文字がある。「行人」とは歩行者のことなのだろう。「優先」は日本語と同じだ。ならば、自転車は?「自行車」「脚踏車」「単車」など、色々な言い方があるようだ。そして「汽機車」は自動車やオートバイなどエンジン付きの乗り物。「汽車」とも言うようだ。また、バスは「公車」。そのバスは背面の電光掲示板に「右轉」「左轉」と表示されていることがある。それぞれ「右折」「左折」のことのようで、ウィンカーに連動しているみたい。ちなみに「捷安特」はジャイアント(GIANT)。
 こんな風に、看板や標識が現れると、「ここで問題です。何という意味でしょうか?」と出題されたような気持ちになる。イラストやアイコンがヒントとなる。どうしても川沿いは単調なのだが、こういう中国語漢字クイズに取り組みながらだと退屈しない.
 漢字が表意文字であることも重要だ。英語ならその単語を知っているかどうかによるところが多い。文脈や派生からの類推には限りがある。ハングルならさっぱりわからない。子どもの頃からずっと読み書きに慣れた漢字なら、単語はわからなくても文字の意味、部首の意味が手がかりとなる。さらに、日本の漢字と全く同じものばかりでなく、旧字体に近いものが混じっていることで漢字クイズを適度に難しくしてくれている。例えば、「医」などの部首「はこがまえ」の中に「品」を入れた字をよく見たが、「区」にあたるものだという事がだんだんわかってくる、など。
雨の埠頭 ゆっくりね
 視程も悪く、ビル群の向こうには山があるようなのだが、はっきり見えない。下手をすれば高層ビルの頂が雲に隠れている。
 自転車乗りの姿もちらほら見られるようになって来た。たくさん荷物を積んだクロスバイクに乗った中高年が多い。野鳥の生息域を示した地図を見ていると、おじさんサイクリストが自転車を押して歩いてきたので、軽い気持ちで声をかけてしまった。荷物が多いので、「ホァンダオ(環島:台湾一周)?」と訊いたが、通じていない。私が何か困っていて助けを求めていると思ったようで、スマートフォンを出して翻訳アプリを起動しこちらに差し出してくる。しかしそれは英語と中国語の翻訳をするもので、あまりうまくいかない。なんでもない、と身振り手振りで伝えておじさんと別れる。お騒がせしてごめんなさい。
 芝生の広場で犬が寝そべり、鳥が餌をついばむ様子がなんとも平和で、犬に向かって手を振ったら、それを挑発と見なされて数頭の犬が吠えながら追いかけてくる。実は野良犬には要注意なのだ。
 基本的には迷う心配のない道なのだが、川の合流点、こちらは遡っているので自転車道の分岐点が要注意。橋へと上る立体交差の関係で、分岐の左右の関係が入れ替わっていることもある。
 大漢渓と新店渓の分岐(合流)店は新店渓へ。「渓」というと渓谷をイメージしてしまうが、川と言うことのようだ。
ビルの頂が雲の中 どっちに行けばいいの ひたすら川沿いを行く
 途中少し雨脚が強くなるが、引き返すほどではない。比較的細い新店渓の支流を歩行者および自転車用の橋で渡ると自転車道が途切れる。すぐにまた自転車道の起点があった。景美河濱公園とある。景美河が先ほど渡った支流で、その支流沿いに遡る自転車道のようだ。辿ってみることにする。前述のように川幅は狭まり、川面は少し下のほうに位置しているため、市街地との境の壁はなくなる。2kmほどで自転車道が途切れ一般道に出る。住宅街の狭い道路は、一方通行や変則的な交差点があり、どう走っていいのか難しい。一方通行は、日本なら自転車は除くということだが、台湾ではどうかわからない。念のため逆走を避け、回り道をするが迷路のようだ。たまたま本通りに出たので、コンビニに入りペットボトルのお茶を買う。蒸し暑いので飲み物の消費が多い。
 何とか自転車道を戻り、景美河濱公園へと戻る。少し一般道を走って、新店渓を遡る自転車道に復帰。どんどん進んで行く。大阪の淀川の河川敷の自転車道と似た雰囲気を感じながら走る。YouBikeで走っている人もいる。
 雨が一段落し乾いたベンチがあったので腰掛けて、朝買ったおにぎりを食べる。中の具はなんだろう。カリカリに揚げた肉だろうか。2つとも同じではないがどことなく似た食感。なんだかよくわからなかった。
新店渓の支流「景美渓」を渡る 景美渓 おにぎりの具は何だろう
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5.碧海吊橋そして雨中走行
 前方対岸になにやら鬼気迫る雰囲気の建物が見えてきた。なにやらお寺のようで、屋根に多数の竜の装飾が施されている。ギリシャ神話の髪の毛が蛇の神を連想してしまう。カメラでズームすると「慈聖宮」と記されている。宮ということは神社なのか。よくわからない。
 さらに川には堰があり落差はあまりないが激しく道が落ちている。この広大な新店渓から淡水河は標高差はほとんどないのにそこそこ流れがある。つまり水量が多い、さらにいうと台湾の水の豊かさを表している。要するによく雨が降るのだ。
 その堰を超えて上流へ行くと、それまでの市街地から少し緑が多い景色に変わる。そして吊り橋が見えてきた。碧海吊橋だ。大稻埕碼頭から24km、自転車道もここまでのようだし、ここで折り返そう。
 できれば吊り橋を渡って対岸を引き返したいが、歩行者しか渡っていない。自転車に乗車できなくても押して渡れればそれでいいのだが。
怒髪天を突くような屋根の装飾 流れの激しい堰
 自転車を止めて持参したワイヤーロックで柵にくくりつけ、露天の並ぶ車道に降り立つ。焼きそばや焼き飯を扱う店で、焼きそばを買う。調理しているお兄さんから見えないところにある看板を指差して注文。お兄さん、にっこり笑ってそれを見に来て作ってくれた。
 焼きそばを持って自転車に戻り、吊り橋のたもとへ。「自転車に乗って渡ってはいけない。押して歩いてください」という意味の看板がある。漢字なので意味はわかるのだ。というわけで押して渡る。少しゆれてスリリング。
碧海吊橋 屋台が並ぶ お兄さん、焼きそば頂戴
 対岸にも自転車道がありそちらに入る。河沿いの車道が高い位置にあり、路肩に張り出した歩道が庇のように張り出しているのでその下に入って、焼きそばを食べることにする。走るには気にならない雨だが、食事をするときは雨を避けたい。
 エビのたっぷり入った焼きそばだ。そういえばメニューには「虾仁」と書かれていた。それはカニではなくエビを表す、と何かの資料に書かれていた。
 食べているとなんだか雨脚が強まってきたぞ。これはやばいんではないか。吊り橋を渡る人もほとんどいなくなっている。焼きそばを食べ終えてしばらく様子を見るが、止みそうにない。少し弱まったような気がしたので、意を決す。合羽の上着を着てスタート。下半身は濡れるに任せるしかない。すぐにズボンが濡れる。そして前輪の水撥ねで靴も濡れてしまった。橋を渡って往路で辿った右岸に戻り、ひたすら来た道を戻る。20kmあるから1時間は走らないといけない。まあ、濡れてしまえば後はもう同じだが。雨のしのげるところを見つけたら休憩する。
都会と郊外の境界にある碧海吊橋 エビ焼きそば
 40分ほど走ったら雨はほとんど止み大稻埕碼頭戻る頃には、ズボンは乾きかけていた。でも靴はどうしようもない。
 大稻埕碼頭で走行距離は47km。雨は止んだし、どうせなら50kmに乗せておこう、と北に向けて走り出す。こちらは明日走る予定のコース。今日よりはましのようだが、やはりすっきりしない天気だから、場合によっては明日は走らないかもしれない。と進んでいくが、また雨が降り出したので引き返す。対岸にそびえる高層ビルは、外壁の塗装がまだらでなんとも古い感じ。台北の建物はほとんど鉄筋コンクリートのビルだが、ほとんど古いものばかり。
 出発の2,3日前に花蓮で地震が起こった。マグニチュード6.4、最大震度7。阪神淡路大震災を起こした兵庫県南部地震や新潟県中越地震クラスの大地震だ。すぐに台北との距離を計測。神戸と丹後くらいは離れている。阪神淡路大震災のときに丹後は地震の直接の被害はなく、普通に生活できていた。おそらく、今回の台北も問題ないだろう。もし台北行きを取りやめたら、それは風評被害の加害者となる。ということで、今こうやって台北にいる。
 花蓮は10年に一度くらいの割合で、マグニチュード5を超える大きな地震の多発地帯だと言うこともわかった。台北でも地震が起きているが、1909年以来大きな地震は途絶えている。ということは、高層ビルはその地震の後に建ったものだろう。現在の耐震基準を満たしているとは思えない。泊っているゲストハウスのビルも地震や火事が起これば危ないはず。何もおころないことを祈るばかりだ。
 しかしこの台北にいる限りは、花蓮で地震があったことを忘れてしまいそうだ。被災された方々に申し訳ない話であるが。
 もう一つ忘れかけていることは、今が冬であること。これだけ雨に打たれても、あまり寒さを感じない。靴の中が濡れて不快なだけだ。グローブは指切りのもので過ごした。
雨の復路 近代的な橋と 古い高層ビル
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6.台湾の自転車屋さん その2
 17時少し前にGAIANTストアに自転車を返しに行く。雨にぬれ、タイヤの水撥ねで泥んこになった自転車を返しても、いやな顔をせずに対応してくれた。
 GIANNTストアの2,3軒隣にもスポーツサイクル店があり、朝は店が開いていなかったのだが、今は空いているので寄ってみた。ここもレンタルをやっていて、ロードレーサーはGAIANTストアと同じ1000元/日だが、20パーセントOFFのキャンペーンをやっていたと昨年3月に借りた先人がネットに書いていた。現在もまだそれが続いていることが店先の黒板に書かれている。日本円で3000円/日くらいということだ。そのレンタルのロードレーサーも店先に並べられていて、要するにそれは中古車で10万円前後の販売価格の値札も付けられている。「環島」と書かれた札の付いたキャリア付きのクロスバイクも置かれている。ほかに、貸し出し用のシティサイクルや折り畳み自転車も並べられていた。ただしこちらのレンタル料は不明。
 「租賃」がレンタルと言うことのようだ。街のあちこちで「租賃」または「租」の文字を見かけた。レンタカー、レンタルバイク(自動二輪の方)、賃貸住宅、そして消費者金融みたいなものもあったような気がする。
 さて、先人の情報によれば、こちらには日本語の堪能な店員がいるとのことなので、店内に入り声をかける。がその店員は今いないようで、代わりに英語が喋れる若い男性店員が対応してくれた。開店時刻を聞くと、午後1時だという。明日乗りたい、ことを告げると、今夜から貸すよ、と勧められる。GAIANTストアでは前夜から借りると200元(約770円)/泊かかるが、こちらは前泊無料。先人の情報通り。そうか、遅い開店時刻をカバーするためのサービスだったわけだ。ただし、泊っているゲストハウスにはおいてもらえる場所がないことや、明日の天気によって走るかどうかわからないことを理由に断る。それでも、明日また来るかもしれないことを伝えると、明日は日本語が喋れる店員もいる予定で、あなたが再訪してくれることを楽しみにしています、と言ってくれた。GAIANTストアもそうだが、こっちの店も、気持ちのいい対応をしてくれる。
もう一軒の自転車屋さん 貸し値と売り値 レンタル2割引だよ
 来た道を歩いてゲストハウスに戻る。相変わらずの交通戦争。自転車を借りたら楽に帰れるが、その反面歩く方が安全だ。宿の近くのラーメン店に立ち寄る。メニューに書かれている白飯も一緒に注文したが、ない、と言われた。メニューにあってもこうやって断られることが結構ある。ダイソーでビーチサンダルと、靴の中敷きを買う。いずれも39元(約150円)。39均、ということらしい。白飯が食べられなかったので、宿で着替えてビーチサンダルに履き替えて今度はうどん店へ。うどんにドリンクバーがついていた。
 ゲストハウスのWiFiでインターネットに接続し明日の天気予報を確認。相変わらず曇り時々雨とすっきりしないが、雨は朝のうちだけらしい。ちなみに携帯電話は普段の機種で台湾の通信会社の電波を使って日本の番号がそのまま使える。通話料もパケット代も割高になるので、パケット代の定額サービスやレンタルWiFiの契約をする方法もあるが、宿や空港で無料WiFiが使えるのでメールでのやり取りや情報収集はそれで済ませればよい。
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7.台北街歩き
 11日朝、地面は濡れているが、降っているかどうかわからないくらいのごく弱い雨。昨日と同じような空模様だ。朝食をのために外へ出る。今日もすき家。ただし2日続けて朝食メニューでは芸がないので、冬季限定メニューの豚丼にクリームシチューをかけたようなものを注文。実際出てきたのは豚丼にグラタンソースをかけチーズをちりばめたもの。気づかずに食べて、支払いの時に値段が少し高いことに初めて違和感を覚える。まあいいや、実際にその値段のものを食べたんだし。店員が一人で切り盛りしていて忙しく、メニューの写真指さし注文を取り違えてしまったのだろう。
 すき家を出たら、行動食として店先屋台に並べられていたサンドイッチを2つ購入。ゲストハウスで荷物をまとめチェックアウト。渡された個人ロッカーのキーと部屋のカードキーを返却するだけ。部屋のカードキーは全く使わなかった。あかの他人との相部屋に鍵をかける意味がなく、ドアのカギはずっと開けっ放し。また、これらのキーは滞在中は自分で管理していいとのことで、昨日の外出中も持ち出していた。つまりチェックインからチェックアウトの間は全く放ったらかしにされていた。昨日自転車で事故でも起こして宿に戻れなくても、誰も気づかなかったということだ。いや、GAIANTストアの店員が気付くか。パスポートが預けられているということは、かえって心強い面もあるのかも知れない。
 もし今日走れなければ、旅のアドバイスをいただいた人のおすすめの「国立故宮博物院」へ行くつもりだったが、この空模様ならGAIANTストアへ向かおう。昨日と同じ道を歩いては進歩がないので、台北駅から雙連までMRTに乗ってみる。二駅で20元(約77円)。そして民生西路を西に歩く。歩行距離が2kmから1.5kmに短縮されたのだが、階段の上り下りを含む駅内での歩行考えると、あまり効率は良くない。
 台北には、歩道が二重構造になった通りが多いようだ。建物の1階が少し引っ込んでいて、つまり2階から上の床が覆いかぶさっている。どの建物も同じようになっているので、その2階から上の張り出し部分の下が通路として歩けるようになっている。アーケードのようなことである。豪雪地帯の新潟県上越市辺りの市街地では、家の軒を連ねた「雁木(がんぎ)造」となっているが、それと似ている。上越は雪対策だが、台北は雨対策だろうか。
 そしてその外側も歩ける幅で車道より一段高くなっている。ここを歩く人もいるが、スクーターなど自動二輪車の駐輪場になっている区画もあり、そこではアーケードに回るしかない。
大通り以外は静かな朝  台北駅 歩道のバイク駐車スペース
 店先屋台はそのアーケードを利用している。民生西路では、例えば提灯のような派手だけど簡素な装飾品を売る店がにぎわっている。春節(旧正月)近いからか、それとも通年そうなのかはわからない。ちなみに、今年の春節は2月16日とのこと。また、動物の内臓か芋虫のような昆虫か何かグロテスクなものを干した食材を売っている店もある。それらの店もアーケードに商品を並べているため、歩行者の渋滞が発生。アーケードの下は、公道なのか私有地なのかわからない。
 民生西路と交差する細い道には、屋台が収納された倉庫のようなものが見える。ここも、いわゆる夜市が行われる場所のようだ。
 朝買ったサンドイッチだけでは心もとないので、コンビニによっておにぎりを買っておく。そして、GAIANTストアへ。
 昨日と同じ若い店員が対応してくれたので、話は早い。今日も、ロードレーサでなく、オンロードを十分走れる仕様のMTBを選択。
 そして、今日は自分のペダルを出して交換をお願いする。あっさりとOKしてくれた。次にパンクの相談。その場合はどうすればいいか聞くと、「I don't know.」。ポンプや工具を持参している、ことを伝えると、貸してほしいといったと勘違いされて店の奥から携帯用ポンプを持ってきてくれる。「I wont to buy spare tube.」を連呼してようやくこちらの意図が伝わった。奥からチューブを持ってきてくれて、スマートフォン向かって何やら中国語を話、画面をこちらに見せてきた。翻訳アプリで変換された英文は「Pay to use.」、つまり「使ったら払って」。ありがとう、しえしえ。
民生西路 夜市の屋台か 大稻埕碼頭
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8.川沿い自転車道で淡水へ
 今日も大稻埕碼頭で体制を整える。路面はうっすら濡れているが、雨はもう降っていない。視程は昨日よりもよく、遠くのビルも割合はっきり見えるし、その向こうには山が徐々に姿を現している。ただし、今日の予定コースは標高800mの山間部を越える。下界は曇りでも、山は雨という可能性がある。
 昨日の夕方、大稻埕碼頭に戻ると駐車場に入るクルマの列ができていた。今日はもっと混み合うんだろうな。
 にぎやかな15台ほどのYouBike軍団がやってきた。老若男女入り乱れている。帆船のモニュメントをバックにならび、一人の男性が私に近づいてきてシャッターを切ってくれとスマホを差し出した。同声をかけるかわからないので、「Three、two、one、zero」と叫んでシャッターを切る。そのあと、2人の男性があとの人を放ったらかして自転車道を走っていった。一つのグループというわけではないのかな。
 私もスタート。昨日は借りるだけで精一杯だったが、今日はビンディングのお陰でペダリングも快適だし、パンクにも対応できる。日々これ成長なのだ。
 序盤は淡水河沿いの自転車道を20km程北上。大稻埕碼頭からそのまま右岸を北上するのだが、その先で流れ込む支流を渡るにはかなり迂回しなければならない。そこで支流の手前で左岸に渡る。しかしこれに難儀。まずはスイッチバック式のスロープで陸橋に登り、堤防の壁とクルマの多い広い車道を越えて歩道に降りる。次に歩道から階段で橋へと登る。こちらにはスロープがなく、代わりに階段の脇に雨どいのようなレールが設置されていて、ここに自転車の車輪をはめて押し上げるということらしい。そして、先ほど越えた車道、堤防壁につづいて淡水河を渡る。橋上は歩道を行く。橋の中央付近の歩道上には壊れたスクーターが置かれていた。事故かな。
YouBike軍団 淡水河右岸を北上 河を渡る
 左岸側は、普通の堤防が築かれ、階段を使って河川敷に降りる。日本の都市部の河川敷と似た景色が広がる。しばらく行くと自転車道は、河川敷から堤防上に乗り上げる。京都の桂川・木津川自転車道を走っている気持ちになる。
 対岸のビル群の向こうに山が姿を見せてきている。山頂部などは雲に隠れているが、雲の切れ間から中腹辺りはかなり覗いている。
 対岸の支流の合流点を過ぎると、川がくの字に曲がった区間。海のように広く、まるで入江のようだ。左岸は市街地から郊外の雰囲気となってきた。
大河を渡る 右岸の広い河川敷 堤防の上を行く
 すでに台北市から新北市に入っている。自転車道はずっと続いていて、4,5人の若者のYouBikeグループや、折り畳み小径車の中年男性と抜きつ抜かれつする。巡航速度は私の方が速いのだが、写真撮影等での停止が多いのでその隙に抜かれる。
 關渡大橋を右岸に渡る。この橋にはスロープがあってわかりやすかった。右岸側の自転車道は、川と車道に挟まれ少し狭苦しい感じ。でもすぐに開けた。雰囲気は南の海岸リゾートという感じ。海でなく川なのだが。自転車道が途切れ、未舗装の細道や石畳の生活道路を走る区間もある。地上に現れたMRTの線路に沿って走る区間もある。
広々とした大河 まるで海岸 關渡大橋を渡る
 石畳区間には無人の気象観測所があった。日本でいうアメダスだ。百葉箱やその他観測機器が設置された広場、建物の上には風向風速計。説明板には「淡水気候観測所、昭和十六年」と記されていた。
 その先で「軍事重地立入禁止」の看板があり、細い脇道へ。軍事重地の方には閉じられたゲートがあり、警備の兵士が立っていた。
リゾートホテル 気象観測施設 雨の観光地
 しばらく行くと自転車道が復活。見上げる山肌にリゾートホテルが見られるようになり、たくさん人でにぎわうビーチに出た。川なのだがもう河口が近い。ここが淡水だ。キーボードとパーカッションの生演奏の音楽も流れ、華やかな雰囲気。対岸の山は左右対称の広い裾野を持ち、日本なら何とか富士と呼ばれそうだ。
 ここで一休み。サンドイッチを食べる。2つのうち1つはスタート直前に食べたので、もう一つを食べ、おにぎりは温存。スズメが多い。日本のスズメと同じ見た目だ。
淡水富士と呼びたい 賑やかな楽隊 スズメがたくさん
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9.陽明山へ登る
 淡水からは内陸、山に向かわねばならない。ということは、平和な自転車道を離れ、戦国の車道へと挑まねばならないのである。
 ビーチに隣接した大きな建物は、MRTの淡水駅。正面に回り込めば、YouBikeのステーションがある。そして、狭くてクルマやバイクの多い通り。両側の路肩にはぎっしりとスクーターが止められ道幅狭い。離合困難なのをもろともせずクルマやスクーターが突撃してくる。でも、当然慎重な人もいるわけで、安全運転のおばさんスクーターの背後についていく。そのおばさんスクーターが途中で止まってからは、一人で進まねばならない。この道は、「中正路」と呼ばれる老街(古い町並み)を行く通りで、観光客相手のカフェやお土産や名度が並んでいる。それを知ったのは帰国してからで、走っているときは命からがら無我夢中だった。
 すぐに大きな交差点に出て、これからたどるべき「101」という路線に入る。国道ではなく、日本の県道レベルの道のようだ。上り坂がきつい。大きな交差点は横断歩道を自転車を押してわたる。市街地の戦乱の道路を緊張しながら進む。早く郊外へと出たい。しかし、道順が複雑で時折間違える。引き返すには歩道を押していく。
 ようやく郊外に出た。依然クルマやスクーターが多いが、交差点のない一本道になったので、少し心が落ち着く。しかし曲がりくねった上り坂を、クルマもバイクも自分の好きなタイミングでそれぞれを追い越していく。クルマは対向車にかまわずセンターラインを越えるし、バイクは平気で路肩側からクルマを追い越している。
YouBikeステーション SLとレール 山に向かう
 完全に山間部に入り緑の中を行く。集落の入り口に交番があった。「鉄馬○駅、Help Station」と記された看板が立ち、塀には自転車のイラストが描かれている。台湾の交番には、自転車の工具やトイレを貸してくれるところがいくつもあると「世界ふしぎ発見」で放送していた。ちょっと寄ってみよう。若い警官にトイレを借りることを申し出る。TVではにこやかなお巡りさんさんが「さあどうぞ、トイレもありますよ」と愛想よかったが、ここでは必要最低限の対応だった。まあ、これが現実だろうな。
 いくつかの小さな集落を通過。派手な色をした寺の前を通過。たくさんの人でにぎわっていて、駐車場に入るクルマが渋滞しかけている。それを越えると交通量が減った。さらに小さな集落で「101」から分岐する「101甲」という路線に入る。これまでが嘘のようにクルマやスクーターが少なくなった。代わりに霧が出てきて、寒々とした雰囲気になった。
交番に立ち寄る 派手な寺院
 ブッシュの途切れたところから、霧越しにうっすらと下界のビル群が見える。霧の層は薄い、つまり今いる辺りのみで下界には霧が出ていないということだ。
 この日の最高気温は昨日より3度以上低い12~13度。ただしこれは下界での値。標高が上がれば10度に届いていないだろう。しかしたまに通り過ぎるスクーターなどの自動二輪に乗る人の中には薄着の人もいる。二人乗りの同乗の女性には脚を出した人もいた。
 その点自転車の登りは体の筋肉が熱を作り出してくれるので、今日もアウターの合羽は着ずにポロシャツ姿。手は、指切りグローブだ。
 空腹を感じてきたので、景色の開けたところでおにぎりを食べる。道路脇には庭園のような芝生が広がり、谷を隔てた隣の尾根にはお寺らしき派手で大きな建物が見える。大阪の能勢の妙見山を思い出す。小雨が降り、どこも濡れているので立ったまま食べる。標高は300m程。まだ標高差500m残っているが、行動食はなくなった。まあ大丈夫だろう。
 その先、梅か何かの木にピンクの花が咲き始めていた。霧の中で幻想的な風景だ。
雨の中の休憩 遠くに寺院 花が咲き始めていた
 小雨の中もくもくと登る。たまにブッシュの切れ間と雲の切れ間が重なり、下界がぼんやりと垣間見える。
 標高600m付近で、前方の山々とその鞍部が見えた。これからあの鞍部に向かうようだ。そのすぐ先に、「101甲単車加油駅」という看板や登りの立つ施設があった。東屋にテーブルといすが置かれている。でも誰もいない。「単車」は自転車、「加油」はがんばれという意味だ。
鞍部が見えた 自転車の休憩施設
 ザックを背負い両手にストックを持って歩いて来る人とすれ違った。私を見て声をかけてきた。よくわからなかったが、「ジャーヨウ(加油)」と言ったように思う。こちらは発音には自信がないので、「ニイハオ」と答える。
 標高780m付近で大きな鳥居のようなものをくぐる。ここから陽明山の高原地帯に突入。さすがに寒くなってきたので合羽の上着を着る。そして指まで覆われたフリースの手袋を装着するが、昨日ザックの中で濡らしてしまった。完全に乾いてはいない。そして今小雨が降っているのでさらに濡れるに違いない。雨の日に走るつもりはなかったので、防水のアウターグローブを持ってこなかった。
 「崩爆地区小心通過」とかかれた標識があった。アイコンから「落石注意」であることがわかる。ちなみに「小心」の文字を初めて見たのは、到着直後のMRTの車内。「列車とホームの間が開いているので注意」という意味だと思われる注意書きの中にあった。
 登りは緩やかになり、湿原などのある高原地帯を行く。陽明山というのはいくつかの山の集合体の総称で、その一つ一つの山の登山口が次々と現れる。駐車場が何か所もあるが、どれもガラガラ。
 「国家公園陽明山」と書かれた看板に、アルファベットのスペルも記されていた。「ヤンミンシャン」と読むのか。薬師丸ひろ子がキャラクターを務めていた30年位前のCMを思い出す。「ちゃんとリンスしてくれるシャンプー」という商品名でキャッチコピーが「ちゃんリンシャン」。
 アクシデントが発生。カーブの手前でクルマに追い越された。そこへカーブの向こうから対向車がやってきた。両方ともぶつかる寸前で止まったのだが、なぜか再発進のとき対向車が私を追い越したクルマと、バンパー同士をこすってしまった。ハンドルを右に切れば十分に当たらずにいけるのに、相手のクルマに向かっていったように見えた。故意ではないのだろうが。とにかく小心ですよ小心。
 「目撃者として様子を証言してくれ」と言われたらかなりの時間のロスになる。ここで夕暮れを迎えてしまう、と思ったが、何も言われなかった。
 ぶつかられた方のクルマが目の前に止まり、運転手の中年男性が相手のクルマの方に歩いて行ったが、見た目は落ち着いた感じだった。これが、これが東アジアの別の国だったら、かんかんに怒り狂った様子を全身で表現しながら大声をあげて相手に迫っていく、という姿を想像してしまう。台湾の人は基本的に穏やかだと思う。例の国のように路上で立ち話する人がまるで喧嘩をするように声を張り上げることはなく、台湾の街はクルマやスクーターのエンジン音以外は静かである。その性格が、運転には反映されないのが不思議だ。
鳥居のようなものをくぐる 高原地帯を行く
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10.雨に打たれて士林へ下る
 峠らしいという峠はなく、高原地帯が終わって下りに差し掛かった。すると雨が激しさを増す。一気にズボンの太ももが濡れ、前輪の撥ね上げでズボンの裾と靴が濡れていく。後輪からの水撥ねを浴びてザックも泥んこになっていることだろう。視界が悪いので、ヘッドライトを装着。テールランプを持ってきていないが、たまたまレンタサイクルに付いていたのでそれも点滅させる。昨日借りた自転車にはついてなかった。
 路肩に展望スペースがあり、一段下の平坦なところに棚田が広がるような景色がうっすら見える。ああ、晴れていたら、せめて雨が降っていなければなあ。蛇行する車道には、車列が見えヘッドライトが濡れた路面に反射している。
 しばらく下って分岐を右に行く。道なりに行けば台北市内を走らねばならない。それを避けて北投へ降り淡水河沿いの自転車道に向かうつもりだ。しかし、インターネットの地図やGPSレシーバーにインストールした地図に描かれている道は、非常に細い。
 標高60m程下ったらなんと人気のない施設が表れた。「陽明書屋」とある。この先には行けるかどうかわからない。危険な賭けに出るのは止めよう。急坂を登り返す羽目となった。帰国してから調べたのだが、それは故蒋介石の別荘だった施設とのこと。
 メインルートに戻ると、東屋があったのでそこに退避して、地図を見ながら作戦タイム。やはり異国の道路事情が分からない中では、確実なルートを選ぶべきだろう。もし、北投へ向かう案内板があればそちらへ、なければ道なりに台北市街に降りることに決定。
 予想通り、下るにしたがって雨は弱まってきた。標高500m程で歴史的な街並みのありそうな集落の脇を通過。あとでわかったがこのあたりが陽明山の温泉だった。交差点を直進。GPSレシーバーを見るとメインルートから外れている。右折するべきだったと気づいて引き返す。クルマもすべて右折している。そうした周囲の流れをちゃんと見極めないといけないのだ。
 雨は小降りだが、道が濡れているので靴は泥水を浴びっ放し。ランドナーの泥よけがあれば、かなりましなのに。
展望台があったが 霧のため展望は良くない それに寒い
 結局、北投へ案内に出会わないまま、台北市街へ下る。標高200m程まで下ると雨は止み路面もほぼ乾いている。ビルの並ぶ市街地が見下ろせる。やはり下界はほとんど降っていないようだ。クルマが多くなってきた。バスも多い。直線的な下りを行く。
 行政機関のような大きな施設が並ぶエリアを通過。「中国文化大学」という字が目に入る。学校やホテルもあるようだ。そして懐かしいマクドナルドの看板も見えた。ようやく下界に降りてきたようだ。だが、雨と長い下りで体が冷えて、震えが止まらない。濡れたフリース手袋が冷たいので、指切りグローブに交換。当然こっちだって指が出ているので寒い。
 やがて市街地走行となり、下りから平坦な道となる。そしてクルマやスクーターがバトルロイヤルを繰り広げる「中正路」という広い通りを走行。淡水にも同じ名の通りがあったが、「中央本通り」というようなことだろうか。
 路肩を走っていればクルマもスクーターも避けて追い越してくれる。日が暮れてきた。前後にライトをつけてアピールしているので、かえって昼間よりも安心できる。しかし、曲者はバス。大量にいて、バス停の間隔も短い。すぐに進路をふさがれる。安全のためバスの背後で客の乗降が終わるのを待つ。なかなか進まない。
もうすぐ下界 道路は乾いている 戦乱の中正路
 気づけば士林にいる。道路沿いにはおしゃれな店が並びたくさんの人が行き交っている。屋台が並ぶ広場を通過。士林は台北の代表的な夜市のある繁華街だ。
 街並みを撮影するために一度停車すると、なかなか再発進できない。大縄跳びに入れない子どものようだ。赤信号で交通が途切れるのを待つ。
 そうやってクルマやバイクとのバトルを繰り広げるうちに、いつしか体が暖まっていた。ズボンの太もも部分はもう乾いている。
 このまま道なりに西に行けば淡水河に突き当たる。その手前で橋を渡る。淡水河右岸に合流する支流だ。橋を越えたら自動車専用の区間のようだ。漢字で書かれていてはっきりしないが、念のためそして安全のためそこの走行を避ける。とにかくトラブルを起こしてはならない。
 高い位置にある橋の車道からスロープで地面に降りる。土塁のような堤防らしきものを乗り越えないといけないが、その糸口がない。それに沿って少し北に進むと、乗り越える道があった。
繁華街の士林 夕暮れが迫る ようやく淡水河へ
 気づけば士林にいる。道路沿いにはおしゃれな店が並びたくさんの人が行き交っている。屋台が並ぶ広場を通過。士林は台北の代表的な夜市のある繁華街だ。
 街並みを撮影するために一度停車すると、なかなか再発進できない。大縄跳びに入れない子どものようだ。赤信号で交通が途切れるのを待つ。
 そうやってクルマやバイクとのバトルを繰り広げるうちに、いつしか体が暖まっていた。ズボンの太もも部分はもう乾いている。
 このまま道なりに西に行けば淡水河に突き当たる。その手前で橋を渡る。淡水河右岸に合流する支流だ。橋を越えたら自動車専用の区間のようだ。漢字で書かれていてはっきりしないが、念のためそして安全のためそこの走行を避ける。とにかくトラブルを起こしてはならない。
 高い位置にある橋の車道からスロープで地面に降りる。土塁のような堤防らしきものを乗り越えないといけないが、その糸口がない。それに沿って少し北に進むと、乗り越える道があった。
 そして、淡水河沿いの車道に出た。ちょうど、午前中に右岸から左岸へと渡った橋のたもとだ。しかし、その川沿いの車道と堤防壁を越えて自転車道に到達するまでが最後の難関。雨どいレール付き階段で自転車を押し上げて橋に上がると、自転車道を下に見て川を渡ってしまう。また、階段で地上に降りる。仕方ないので車道をしばし北上。本当は、大稻埕碼頭のある南に向かいたいのだが、道路を逆走するのは危険だ。
 そしてようやくスイッチバック式のスロープにたどり着いた。これを上り下りしてやっとのことで淡水河沿いの自転車道に到達。昨日の夕方にも今日の午前にも通った勝手知ったる道。これで迷う心配もクルマにはねられる心配も限りなくゼロに近づいた。対岸のビルが川面に移っている。逆さ富士ならぬ、逆さ摩天楼だ。次々に現れる橋もライトアップされて美しい。上空には飛行機。松山空港に離陸する直前のようで、ライトを灯して飛んでいる。
 GIANNTストア到着は、18時半ごろ。若い店員でなく、店長と思しき中年男性が迎えてくれた。自転車を見て小さく「おお」と声を出した。泥んこにしてごめんなさい。でもそのあと、いやな顔をせずに対応してくれた。あまり細かい引継ぎはされていないようで、借りていたスペアチューブを返すと「Yours? Mine?」という反応を示し、ペダルの交換をしていることもわかっていなかった。もちろん、悪意はない。おおらかなのだ。そして最後は「しえしえ!」と大きな声。こちらこそありがとう。
 隣の隣の自転車屋も空いていた。結局、開店が午後ということネックとなり今日こちらで自転車を借ることはなかった。今は寄らないでおこう。
平和な自転車道 夜景を見ながら 飛行機も見ながら
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11.台北の夜 その2
 明日未明の飛行機に乗るため桃園空港へと移動しなければならないが、MRTは深夜まで運航しているのでそれまで台北駅周辺で過ごすことにする。どこかの夜市で過ごすこともできたのだが、もうくたびれた。昨日、そして今朝とは別のコースを歩いて台湾駅へ。
 麺類の店先屋台に立ち寄る。昼ご飯は、軽めの行動食のみだったので空腹だ。4種類のメニューはすべて100元でわかりやすい。が、店内の座席に就くとおばさんが「カレー味の2つのメニューはない」という。ということで残りの2つのうちの片方を注文。店の外の屋台で調理された料理が、屋内へと運ばれてくる。イカやエビやアサリなど海鮮の入ったもの。麺はうどんだ。言葉が通じなくても、お互い慣れているので、スムーズにいく。
 食べていると、壁に「先払い」という意味だと思われることが書かれている。実際、後から来た家族連れは、料理が届いたらお金を払っている。私は、食べ終わってから払った。外国人には柔軟に対応してくれているようだ。
 台北駅の北に位置する中山の地下街も見物。ぶらぶら歩きまわっているのでGAIANTストアから少なくとも2km以上歩いているはず。脚が棒になった。しばしベンチに座って休憩。
店先屋台 海鮮うどん 春節が近い
 台北駅の地下街で、ラーメン屋へ。先ほどのうどんだけでは物足りないのだ。牛肉麺とご飯もののセットを頼むが、そのセットはないという。まただ。小籠包のセットをすすめられ、承諾。日本ブランドを含めラーメン屋で出てくるのはたいがい牛肉麺で、その名の通り牛肉が入っている。そして、麺もスープもうどんに近い。その牛肉麺とセットの野菜炒めが出てきて、それを食べているうちに小籠包が到着。小籠包は熱いイメージがあるが、適温だった。
 台湾の食堂では水が出てこないこともある。飲み物は買うようだ。というわけで、店を出てからコンビニでお茶を買い、ベンチに座って飲む。ズボンはすっかり乾いたが、靴の中は濡れていて不快。新しい靴を買ってもいいが、今履いている靴を入れる余裕がザックにない。ヘルメットが一番かさばる。脱いだ靴を捨てるのはもったいないし。ついでにお土産を買いたいが、ザックに入れるには相当コンパクトなものを選ばないといけない。そしてザックは自転車の水撥ねで泥んこ。拭いたけどまだ汚い。
 その時目の前の地下商店街にかばん屋を発見。キャリーバッグ(キャスターの付いたスーツケース)が並んでいる。ああいうのを持っていない。今ここで買おう!
 中年男性の店員は、「サイズは?」などと、積極的なセールストークを畳み掛けてくる。さらには「これが頑丈でおすすめ」とスマートフォンを差し出し、それを踏みつけている動画を見せる。ちょっと落ち着いて考えさせてよ、と思いながら吟味する。ちょっと大きめのサイズを選択。1200元(約4500円)。すぐ使うことを告げ、値札などを外してもらう。3桁の数字を合わせるロック式で、その数字の設定の仕方などを教えてもらった。自転車のワイヤーロックと同じようなことだ。さてベンチに戻って荷物を入れ替える。ザックもスーツケースに入れる。これは身軽だ。自転車のペダルや工具などいろいろまとまって重たかった。
牛肉麺と炒青菜 小籠包 お土産にこれを6箱
 次は靴だ。店はすぐに見つかり、今度は中年の女性店員。今まであった人で一番日本語を分かってくれた。ぺらぺらというわけではないが。490元(約1900円)のデッキシューズを購入。試し履きしてそのまま使用する。再びベンチに戻り、キャリーバッグに脱いだ靴を収める。
 そしてお土産。「日月潭」という台湾中央部の山岳地帯にある台湾最大の湖の名を冠した箱入りのお菓子を見つけた。抹茶味や小豆味などいくつか種類があり4箱レジに持っていくと、お姉さんが「あと2箱まとめて買った方がお得だわよ」というのにそそのかされて言いなりになる。
 これで、21時半を過ぎたのでMRTの駅へ。22時発の快速に乗り込む。キャリーバッグは専用の置き場がある。
 桃園空港に到着。閉店しているフードコートの座席で過ごす。深夜、未明、早朝発の飛行機に乗ると思われる人たちがたくさん時間をつぶしている。フリーでしかもパスワードもなしのWiFiも使用可能。ロシアで飛行機墜落のニュースが出ている。メールチェックをして日本の天気予報を見たら特に調べることもなくなった。周囲の人の多くはスマートフォンをずっといじっている。よく続けられるなあ。こちらは、本を読みかけても1ページも進まないうちに集中力が途切れてしまう。目をつぶって、うとうとするが眠れない。WiFiに接続してすぐに切断して、また本を開いてすぐ閉じる。こんなことを繰り返す。
 ここで飛行機街をしている人の多くは外国人なのだろうが、街中や列車の中の台湾人の多くは、スマートフォンをいじっていた。歩きながら、店先屋台で料理が出来上がるのを待ちながら、LINEやゲームなど当たり前。まるでコントでのチンピラに絡まれるシーンのきっかけのような、派手なぶつかり方をしている歩行者も見られた。
 淡水河の畔の野鳥の案内板の前で出会ったおじさんサイクリストは、私が中国語をしゃべれないとわかるとすぐにスマートフォンを取り出し翻訳アプリを使ったし、そのあとの碧海吊橋近くでは、2台のスマートフォンを並べていじっているおじさんを見かけた。どちらも、50代後半かそれより上と思われる熟年世代。日本なら若者のスマホ依存を憂う年頃。「ながらスマホ、みんなでやれば怖くない」「犬も歩けば、スマホ依存症にあたる」といった世界だ。
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12.雪国へ帰国
 関西空港へ向け2:45に離陸予定だった飛行機が35分遅れるという案内が出ている。他の便もほとんどが遅れている。世界中で遅れが発生している。ちなみに乗り込んでから客室乗務員が「機材繰りのため遅れが出て申し訳ありません」と言っていたが、具体的にはよくわからない。インターネットのニュースで報じられていたロシアの飛行機墜落と関係あるかどうかもわからない。
 フードコートでの数時間に続いて、飛行機の中で朦朧として過ごした。飛行機の客室乗務員はすべて日本人でなんだか安心する。往路は一人を除いて外国人だった。飛行機は往路のものより新しく心なしか少し座席が広く感じる。さらに、偏西風の影響で飛行時間は往路より30分以上短い2時間半。離陸して1時間半を過ぎると「これより着陸準備に入ります」という放送が入る。
 通路側の席だが、窓の外に朝日と雲海が見える。そして雲の中に突入してしばらくすると、瀬戸内の市街地が見えた。
 ちなみに、台北はこの日から晴れが続く予報。つまり、一日遅い日程だったら、平野部にほとんど雨が降らなかった日に川沿いコースを走り、晴れの日に陽明山越えコースを走れたわけだ。近年は日を選んで走っているので、こんなに雨に打たれたのは何年ぶりだろう。陽明山では自然の景色が楽しめたはずなのに、何にも見えなかった。
 でも、走り終えた今、充実感に満たされている。やっぱり、走らずに帰国するのとは雲泥の差だ。また少しだけ再訪したい気持ちもわいてきている。今度は、高雄や台南など南の方がいいかな、なんて。
 とにかく今回は、過去2度の海外旅行と比べて、自分がやろうと思ったことを実行できた。最大の障壁は言葉の壁。日本語をわかってくれる人がいることを期待したが、実際にはほとんどいなかった。でも、日本人客に対応するために日本語の説明書きが用意されている店は多かったし、漢字を読んでそれなりに理解することができた。最も緊張する対人コミュニケーションも、片言の英語と、身振り手振りで何とか切り抜けた。一度言って通じなくても、諦めずに繰り返してみる。これが結構有効だった。向こうも外国人を前にして焦っている。聞き逃したり、よく聞けばわかることを取り違えたりすることだってある。同じことを繰り返せば、わかってくれた、という場面が何度もあった。
 また、自転車を持参しないと言うことは、一つのかけだった。大荷物である自転車を持って移動するのは大変。カートのある空港はまだいいけど、駅や列車は相当につらい。でも、確実に自転車があると言うことは安心で、過去の2回でも自転車の走行については計画を全うすることができた。今回は本当にレンタルできるかどうかずっと不安だったが、案外あっさりと借りることができた。お陰で随分楽をすることができた。特に今回のような短期決戦で、自転車持参は効率が悪い。
 関空に降り立つと風が冷たい。入国審査を経て鉄道に乗り換え。往路はJRだったので、今度は南海電車に乗ってみる。なんとうっすら雪が見られる。橋を渡った泉佐野や岸和田は家の屋根や畑が一面真っ白。そんな状態が大阪市内まで続く。
 新今宮でJRに乗り換え。ホームも線路も真っ白だ。JR環状線は混雑。大阪駅で福知山線に乗り換え。ここまでくると雪はもうない。午前中の福知山線篠山口行きは空いている。篠山口には積雪はないが、小雪がちらちら降っている。
 駐車場に止めたクルマへ。朝食がまだなので、まずはラーメン屋。もう昼前なのだ。そして本格的に丹後に向けてスタート。与謝野町で眠くなり、クルマを止めて一寝入り。日差しがさんさんと降り注ぎ、車内はぽかぽか。
 しかし京丹後市に入ると、路上に雪がある。昨夜空港から家に電話した時には、予報ほど雪は降らなかったといっていたのだが、どうやらそのあと降ったようだ。進むにつれ雪の量が増え、路上の電光掲示板には「大雪警報発令中」。家に帰ると、かなり積もっているではないか。除雪しないと車庫にクルマが入らない。結局、1時間半ほどかけて、車庫の前や家の周りを除雪し、ようやく家の中へ。
 やっと休めるよ。
屋根が白い 線路も白い 我が家は雪国
 数日後、旅の余韻に浸りながら色々なことを考えてみる。今回は台北と新北のみだったが、過去に台湾を走った人の記録を読めば郊外がいいという。海岸線の道路の道幅は広く、自転車あるいは自動二輪車用に設けられたレーンはほとんど通行がなく空いているとのこと。そして、出会う人が優しい、という。そんなところも走ってみたい。となると、輪行か。台湾の列車には、時間帯によっては輪行袋に入れなくても、走行できる状態で乗せられるらしい。また、郊外でも自転車を借りられるのだろうか。今回のようなGAIANTストアでなくても、スポーツサイクルが借りられる所があちこちにありそうだが、その場所や細かいルールなどは現地に行ってみないとわからない。また、輪行袋に入れなければならない場合に、借り物では対応できるかどうかわからない。やっぱり持って行くのが一番確実な気がする。でも大変だなあ。苦労して持って行くのなら、もう少し日程を増やしてしっかり走らないと。とにかく、輪行についてはもっと研究が必要だ。鉄道を味方につければ心強い。例えば台湾一周1100kmの「環島」を一度の旅で走るには日程的なことを含めて厳しい。でも、数回に分けるとなればかなり現実味がわいてくる。列車を使えば、そういう分割式環島も可能だ。
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13.データと動画
◎自転車走行
1日目 淡水河・新店渓自転車道 55.0km
2日目 陽明山 68.8km
 計 123.8km
※地図をクリックするとスクロール・拡大・縮小できる地図やプロフィールマップが見られます。
◎費用
航空券 45130円
高速道路通行料・駐車料金 2800円
鉄道運賃(日本) 4730円
鉄道運賃(台湾) 1304円
宿泊料(二泊) 3920円
飲食費 7271円
土産代 1151円
自転車レンタル料 2301円
両替手数料 508円
  計 69115円
 この時のレート、1元(ニュー台湾ドル)=3.83円で計算。
 帰国直前に買ったキャリーバッグ(約4500円)とデッキシューズ(約1900円)は、今回の旅を終えてからも使うものなので、計上していない。
 円から元への両替は、到着時の桃園空港の銀行出張窓口で。多めに2万円分両替したが、手数料は30元(約115円)と格安。帰国直前に元を円に戻すときにも利用したかったが、深夜のため窓口が閉まっていた。関西国際空港に戻って日本の銀行の窓口で両替したら、1元=3.21円で計算。つまり、1元辺り約0.62円が手数料。つまり16パーセント強の歩合制。両替600元(約2300円)のうち400円ほどが手数料となった。キャリーバッグとデッキシューズを買って元の残金を減らしたのは結果的に正解だった。
◎参考資料
・サイクルスポーツ誌
  2016年12月号「俺たちの晩秋ライド・海外弾丸ライド」
  2018年2月号「5万円でいく大満足じてんしゃ旅・台湾冒険野郎」
・るるぶ台湾'16
・Webページ
  台北市内でロードバイクをレンタルしてサイクリング。陽明山の神の手の秘密。
  台湾台北でのロードバイクレンタルまとめ
  トラベルコ(航空券予約)
  じゃらん(宿泊予約)
◎動画
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