向春の道南 太平洋・噴火湾・津軽海峡沿岸を行く
0.目次
1.旅立ち
2.残雪の小樽へ
3.苫小牧から豊浦へ
4.室蘭本線跡を行く
5.礼文華峠・静狩峠を越えて長万部へ
6.風に乗って走るわ森
7.順風満帆恵山岬
8.津軽海峡向かい風
9.函館散策
10.函館から小樽輪行の旅
11.桜咲く舞鶴へ
12.データ
1.旅立ち
 春先の北海道ツーリングを数年前から狙っていた。道南の太平洋側および噴火湾沿いは、3月末にはほぼ根雪が解けている。怖いのは寒の戻り。10cmも積もれば、予備日なしの短期決戦はその時点でアウト。また、天気が周期変化するこの時期には、晴れは続かず、3日に1日くらいは冷たい雨が降る。なかなか計画が実行できない。
 2018年3月下旬、千載一遇のチャンス到来。月末まで晴天続きの予報。この時期は週間予報が日替わりとなることが多いのだが、今回は自信満々のブレないお日様マーク。この冬は雪が多めだったが3月に入って急速に雪解けが進み根雪はすでにない。そしてこの後の気温も高めで路面凍結等の心配もなさそう。
 ということで、3月26日深夜、舞鶴発小樽行きのフェリーに乗船。シーズンオフとあって空いた船内。2輪車は私だけ。自分以外の自転車がいないのはそう珍しくないが、オートバイもいないということは初めて。まあ、輪行できないからねぇ。
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2.残雪の小樽へ
舞鶴港から乗船 小樽上陸 残雪
 27日夜、小樽に上陸。路肩には雪が残っている個所もあり、また大きく積み上げられた雪の塊もみられるが、路面に雪はない。路面凍結もない。牛丼を食べてから、水天宮の近くの「おたるないバックパッカーズホステル杜の樹」にチェックイン。今回唯一の相部屋の旅人宿。でも宿泊は私一人。玄関に自転車を入れさせてもらった。
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3.苫小牧から豊浦へ
「杜の樹」の夜と朝 苫小牧から国道を行く
 28日、6時50分に宿を出て小樽駅へ。暖かい朝。道内ですでに10度を超えているところもあるという。自転車を輪行袋に収めて、7時33分発の苫小牧行きの普通列車に乗り込む。ちょうど通勤時間帯のため、徐々に人が乗り込んでくる。大きな輪行袋を持っているので肩身が狭い。でもそれも札幌まで。そのあとの車内は比較的空いてくる。9時49分、苫小牧に到着。自転車を組み立ててまずは市内へ漕ぎ出す。スーパーマーケットで飲み物と行動食を買って室蘭を目指して西へ。信号もクルマも多い片側2車線の道を行けば、左手に太平洋が見えてくる。徐々に郊外となるが、依然クルマが多い。周囲には全く雪がないが、路肩には細かい石が散らばり、雪解けから間もないことをうかがわせる。細かいが尖ったバラスを踏む感触がなんだか嫌な感じ。路側帯が広くてクルマはあまり気にならないのだが。
国道をそれてみる 噴火湾を見ながら 魚の干物
 白老でなんだか車体がふわふわする感触。まるでサスペンションのようだ。後輪タイヤの空気圧が減少していた。パンクだった。すぐ先の廃れたドライブインの駐車場に入り、後輪を外す。チューブには大きめの穴が開いている。その割に空気の抜け方が緩やかだったのは、タイヤとチューブが癒着していたせい。タイヤもずいぶんすり減っている。タイヤ交換してくるべきだった。しかし、チューブの穴は接地面側に空いているのに、タイヤに刺さった異物が見つからない。チューブを裏返しバルブの位置から等距離の個所を何度も調べるが何も刺さっていない。考えられるのはリム打ちパンク。ふつうはリム側に穴が開くはずだが、今はタイヤの接地面がすり減って薄くなりバラスの突起を吸収できずにチューブを穿ってしまったと言うことだろうか。空気圧も少し不足していたようだ。念のため何度もタイヤをチェックしてからチューブを交換。25分後に、再スタート。
 少し雲が薄くなり、青空が透けて見えるようだ。白い山々もうっすらと見えてきた。信号も少なくなり、快適なシーサイドツーリングなのだが、すり減ったタイヤに不安を感じながら走る。
 観覧車がある遊園地のような施設が見える。「登別マリンパークニクス」という水族館を中心としたテーマパークだそうだ。登別といえば山間部の温泉が有名だが、駅前にもこうした施設を作り家族連れなどを呼び止めようということか。この辺りは、2031年春に札幌まで延伸予定の北海道新幹線の計画路線から外れているわけだが、それはどういう影響があるのだろうか。個人的には当たっても外れても一長一短のような気がするが、その辺りの話はまた後程。
 市町境を越え、洞爺から室蘭に入ると「ラーメン山岡家」を発見。猛烈な吸引力で吸い込まれた。西日本にはほとんど店舗がないチェーン店。24時間営業でこうした郊外にある。食券を買ってトイレへ。チューブ交換で汚れた手を洗っていたら、若い女性店員がトイレの前まで「ラーメン出来上がりました」と伝えに来るのには驚いた。
 ラーメンと卵かけごはんのセットを食べたら走行再開。20分で東室蘭駅。
 あああ懐かしい。この駅から苫小牧まで輪行したのは10年前の夏だった。今日は、10年前に走った東室蘭から伊達市の長和駅までを輪行する。その距離は30kmもなく、列車がやって来るまで1時間以上ある。走った方が早いのは明白だが、先ほどのパンクでもう心が折れた。輪行袋に自転車を収めるため、前後のホイールを外す。
 前輪のタイヤを見て呆然。こっちもそこそこすり減っている。ホイールを外すついでに、前後のタイヤを交換しようと思っていたのだ。加重の大きい後輪には状態の良いタイヤを履かせようという狙いだが、前輪タイヤもあまりいい状態とは言えない。果たして手間をかけてローテーションする値打ちがあるだろうか。
 結局、タイヤ交換を断念し、1時間ひたすら列車を待つ。列車と言っても1両のみのレールバスがやってきた。16時17分、東室蘭を出発。外は肌寒かったが、車内はポカポカ。座っていれば目的地に近づくし、パンクの心配もない。危うく、本日の宿泊予定地の豊浦まで乗っていきそうになるが、16時52分、意を決して長和で下車。
ずっと噴火湾沿い 東室蘭駅 長和駅
 自転車を組んで出発。沈みゆく夕日に向かって走り出す。細かくアップダウンを繰り返す。洞爺湖の最寄りの洞爺駅は、観光地の駅らしく垢ぬけた雰囲気。
 豊浦への最後にしてこの日最大の標高差100mほどのアップダウンを越える。登りの途中で前後にライトを点灯。輪行しなかったら明るいうちに通過できただろう。いずれにせよ、峠には少し長めのトンネルがあるので、ライトを装着しなければないことには変わりはない。国道ということもあり、クルマ、それも大型車が通る。輝度の高いLEDの光を灯すことで、かえって安心して走れるというものだ。
 トンネルを抜け少し下ると豊浦の町明かりが見えてきた。町の入り口にホームセンターがあったので立ち寄る。自転車コーナーへ。お目当ては26X1-3/8のタイヤ。実用車と同じサイズなのは、こういう時に都合がいい。しかし、チューブは径や太さのサイズは合うが、バルブが英式しかない。細い仏式バルブでないと、リムの穴を通らない。
 というわけで、チューブの入手はできなかった。予備チューブはあと1本。明日パンクしたら、バンク修理キットを買って夜に宿で補修しよう。明日の日中に2回パンクしたら、…そういうことは考えないことにしよう。
 さてタイヤをどうやって運ぼうか。ハンドルポストとシートポストに引っ掛ける。楕円になったタイヤを股に挟むようで、ペダルをこぎにくい。が、豊浦の町まではほとんど下りなのでペダルをこがなくても進んでいく。豊浦駅の近くの「民宿みね」に到着。自転車は、玄関の前室に入れさせてもらった。海が近く荒れると風がきつそうな土地の造りだ。先ほどかったタイヤはハンドルにぶら下げておく。交換は明日だ。
 「暗くなって少し心配しました」という女将さんに「まあ、色々ありまして」と答える。「列車に乗ったため遅くなりました」という話はややこしくなるので、言わないでおく。
 通されたのは玄関を入ってすぐの、応接間。そこに布団が敷かれTVが置いてある。どうやら宿泊客用の部屋は満室のため、この部屋を用意してくれたようだ。今回はシーズンオフということで、直前にすべての宿を予約した上で出発した。当日予約なら断られただろう。ライダーハウスを含め宿が希薄なこの近辺で貴重な民宿。自転車の旅人が泊まることもたまにあるようだ。当然私が今シーズ初めてのサイクリスト。
 海の近くらしく海産物の種類が多い夕食をいただき、風呂に入ったら、布団に入ってテレビを見る。冬場は暖房費がかかるが、今夜も冷え込みは弱いので暖房を使わなければ暖房費はいらないと言ってくれた。とても親切な女将さん。
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4.室蘭本線跡を行く
虻田から豊浦へ(28日) 宿の前でタイヤ交換 豊浦を振り返る
 29日、7時に朝食。そして外でタイヤを交換する。きれいに晴れて日差しを浴びての作業。まったく寒くない。すり減ったタイヤを粘着テープで小さくまとめて、女将さんに捨ててもらうようにお願いすると、快く引き受けてくれた。しっかりと空気を入れてスタート。
 まずは港へ。港に隣接して運動公園があり、グラウンドではすでに子供たちが野球の練習をしている。駐車場の隅には除雪で集められた雪の山。それを見て、まだ雪解け間もない春先であることを思い出す。それほどの温かく、海も空も青いのだ。
 標高差100mほどのアップダウンを越える。登りの途中で振り返ると、丘の上に大きな建物が見える。10年前の洞爺湖サミットの会場となったホテルだ。
丘の上のホテル 一つ目の峠 丘の上のホテルその2
 アップダウンを越えると、内陸部を行く国道を離れ道道608号線へ。道沿いの川は増水して流れが速い。上流の山間部では急速に雪解けが進んでいる。昨日の夜のニュースでは、道北のサロベツ原野の豊富町では、洪水警報が発令されていると告げていた。大雨警報はもちろん大雨注意報すら出ていないが、洪水警報が単独で出ているのだ。
 大岸で海沿いへ出る。礼文華まで海岸沿いを走る。国道から離れた静かな道。なんとなく感じるところがあったのだが帰宅後に調べたら海沿いの車道はかつての室蘭本線の跡。まあ、使われなくなったトンネルが残っているので、見え見えだったのだが。
 山が海まで迫り、岩が切り立つ海岸の景色はいい。晴れているからなおのこと。道北や道東の魅力に負けて、どうしても後回しになってしまう道南の噴火湾沿いだが、来てみればこうした絶景に出会えるのだ。定番の夏ではなく、シーズンオフのこの時期だからこそ巡り合えた絶景だ。
大岸から礼文華へ 旧室蘭本線 漁港に群がるカモメ
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5.礼文華峠・静狩峠を越え長万部へ
 礼文華を過ぎたら国道に合流し、礼文華峠、静狩峠と続く今回の旅の最大の山岳ステージだ。最大標高は200m余りだが、長い峠道。ずっと国道を通っていれば、20kmもアップダウンが続く。礼文華峠、静狩峠はいずれもトンネルのため、その間の高原地帯の途中に区間最高地点がある。さすが山岳区間だけあって道路脇には雪が積もっているが、路面に雪はない。これは旅立つ前にライブカメラで確認済み。最低気温もこの時期にしては高めで路面凍結の心配もない。東京など関東地方では夏日となり、暑い暑いと言いながら半袖の薄着でソフトクリームを食べる人のインタビューを昨夜のニュースで見ていた。全国各地で3月の観測史上の最高気温を更新したという。そんな記録的な気象条件のおかげで、この時期に北海道を走ることができているのだ。
内陸部へ そして山間部 礼文華峠
 さんさんと陽光が降り注ぐ。その青空を背景に、渡島半島脊梁の峰々が白く映える。足元を見れば、残雪の合間に緑のフキノトウが顔を出している。5年前のゴールデンウィークの渡島半島日本海側で感じたよりもさらに少し浅い春。何度も訪れた北海道の初めて味わう季節と言える。
噴火湾を見下ろす 高原地帯 静狩峠
 静狩峠のトンネルを抜けて下っていくと、前方にに広い平原が見えてきた。緩やかに弧を描く海と原野の境目を、国道37号線と室蘭本線が仲良く伸びている。平坦で見通しの良い道では、クルマがびゅんびゅん飛ばしている。そして、隙あらば前のクルマを追い越している。自転車を追い越すクルマは反対車線までよけてくれるのだが、前のクルマを追い越す対向車は自転車をかすめていく。こちらは広い路側帯を走っているのでさほど恐怖を感じることはないのだが、場面による気の配り方の違いを痛感する。余裕があれば安全への配慮をするが、危険なことをする時の方が大胆になり細かいリスクに気づかぬふりをする。要するに自分の都合が最優先。まあ、交通事故も犯罪もなくならないわけだ。
山岳地帯を越え平原へ 道路わきにはふきのとう
 長万部に到着。風が強くなってきた。37号線から5号線と接続する国道は、中心街に入らず海沿いを行く。お目当てのラーメン屋はなく、長万部を外れていく。すると大きなドライブインがいくつも現れた。どこも「かにめし」と大きな看板。その一つに入る。大盛りのカニ飯を注文。森の「いかめし」と並ぶ、このあたりの名物なのだが、ご飯の上のほぐしたカニの身は乾燥してパサパサとした触感。基本的にカニという食材にあまり魅力を感じているわけではない。子供のころ、安いコッペガニは単なるおやつだった。カニが高級食材だと知ったのは大学生くらいになってから。でも、コッペとあまり変わらない。なんで大枚はたいて食べたがるのだろうか。今日のかにめしも、大盛りの量はすごいがそれでも消費税込みで1500円ほどするのは高い。まあ、話のタネということにしておこう。
まっすぐな道 かにめし 延々と続く道
 強風の中再スタート。追い風気味だが、真後ろでなく斜めからなのであまりありがたみを感じない。相変わらずクルマは飛ばしている。小さな川を越える橋で路側帯が狭まるので注意。路肩には小石が散らばり、新しいタイヤと高めの空気圧で昨日のような悪意ある刺激ではないが、あまり感触は良くない。
 噴火湾越しに白い駒ケ岳がぼんやりと浮かんでいる。今日はあの麓まで行かねばならぬ。
渡島富士「駒ケ岳」 蝦夷富士「羊蹄山」 今日も国道をそれてみる
 国道は基本的に海岸を走るのだが、たまにさらに海沿いに細い道が伸びている区間がある。そういう場面では、当然国道を逸れて細道へ。室蘭本線の踏切を越えて細道へレーンチェンジするときに、今まで走ってきた道の方を見ると富士山のような白い山。後志羊蹄山だ。渡島富士の駒ケ岳と、蝦夷富士の羊蹄山を見ながら走ることとなる。
 噴火湾に沿って反時計回りに弧を描いていく。長万部から南へと向かっていたが、八雲からは進行方向が南東へとなり真後ろからの順風となった。これはすごい推進力。室蘭本線と組んず解れつしているため、跨線橋を何度も超えるのだが、登りもすいすい。静狩峠を越えた時点で15.8km/hだった平均時速がぐんぐん持ち直してきている。
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6.風に乗って走るわ森
 八雲から先は自転車では未走区間だったが、スーパーカブでは走っている。2012年の夏のことだ。あの時は逆方向だったが、それでも見覚えある景色に出会える。
 高台の展望台で小休止。蝦夷と渡島の二つの富士が見える。気になるのは散乱する空き缶やペットボトルなどのごみの多さ。
 海と山が迫る狭いところに国道と高速道路と鉄道が絡み合う。トンネルが続く。その手前でテールランプを点滅させ、クルマが途切れるのを待つ。が、なかなか途切れない。だいぶやり過ごしてから数を風え始めたが30台以上。初めから数えたら50台を越えていたと思われる。
 いくつかのトンネルを抜けると、久しぶりに駒ケ岳が見えた。「しばらく見ないうちに大きくなったねぇ」と、親戚のおじさんのようなことを感じてしまう。もうすぐだ。
 国道を離れて森の市街地へと向かう。「富士見」というバス停があった。どっちの富士のことだろう。両方かもしれない。
 そして、森駅を通り過ぎて少し、「ビジネスホテルフレスコ森」へ到着。キューブ型というか、まるで積み木のような斬新かつコンパクトな建物だ。ロビーは照明の改装中で一瞬ためらったが、脚立の上の電気工事の作業員に「どうぞ」と促される。チェックインの手続きを終え辺りを見回す私に、またも脚立の上から「エレベーターはあちらです」という声。外部の業者の方がフロントの女性よりもホテルの接客の仕事をしている。
 今日の平均速度は19.7km/h。午前の山岳区間を越えてから4km/hも速度を上げた。ちなみに、平坦区間のみだった昨日は20km/hを越えていたが、それに迫るところまで回復したのは追い風のおかげ。
 いったん部屋に入り、体を休めながらインターネットで情報収集。
左に噴火湾、正面に駒ケ岳 森駅 フレスコ森
 夕食を摂るために外へと出る。夕日に赤く染まった駒ケ岳を見ながら、町役場方面へ。先程情報収集したカレー屋を探すがなかなか見つからず住宅街を右往左往。本通りに道案内の看板が立っているわけでもない。今のご時勢、あまりうろうろしていると不審者と思われ警察に通報されてしまいかねない。カレーを断念し、宿の近くに見つけたラーメン屋「次郎長」へ。森の石松ならぬ、森の次郎長だ。後でわかったが、ここは道南屈指の有名ラーメン店。函館の朝市にも店を出していて、本店がこの森の店舗。特盛りの塩ラーメンを食べたら、すぐ近くのスーパーマーケットで野菜サラダと明日の朝食を買う。
 スーパーマーケットの前には飲み物の自動販売機があるが、空き缶やペットボトルのリサイクルボックスが見当たらない。それは、ここだけでなくどこの自動販売機でも同様だった。北海道では道の駅などにゴミ箱を設置しなくなったのは10数年前のこと。自分のごみを持ち帰ろう、というわけだ。それがさらに進んだと言うことか。10数年前には、道の駅で捨てられないゴミは、コンビニエンスストアのゴミ箱に捨てられていた。コンビニエンスストアのゴミ箱が店先から店内に移って、自動販売機のリサイクルボックスに紙くずやパンやお菓子のパッケージなども捨てられるようになるといういきさつもあったのかもしれない。道路脇に散乱するごみの量との相関は大きいと思われる。昨日の八雲から森への道中の展望台など、無人で周囲に民家もないクルマが立ち寄るポイントなどは、ごみを捨てやすいのだろう。
 私はと言うと、旅の途中に空き缶やペットボトルなどのゴミはあまりでない。飲み物は、コンビニで売っている1L入り紙パックのお茶を買っている。これを、500mlのペットボトル2本に移して携行している。紙パックは買ってすぐにコンビニのゴミ箱に捨てる。ペットボトルは、空のものを家から持ってきたり、列車乗車の前にコンビニで買った飲み物のものだったりしたものを繰り返し利用している。だから、自動販売機とセットの利子来るボックスがなくなったことにはずっと気付いていなかった。今回、暖かいものがのみたくなって、久しぶりに缶入り飲料を買ったので、そのことに気付いた。のみ終えてからずっとフロントバッグに入れていた空き缶はホテルのゴミ箱へ捨てた。
夕暮れの森 赤富士「駒ケ岳」 森の次郎長
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7.順風満帆恵山岬
 30日、天気予報通りの快晴の空のもと走り出す。亀田半島をぐるりと回りこんで本日の目的地は函館。昨日走ってきた国道5号線は半島をショートカットする。まずは海沿いの道道1028号線を行くつもりだったのだが、間違えて国道278号線へ向けて内陸へ向かってしまう。そうだ、函館本線の踏切を超えなければならなかった。どうせそのうち合流するから、とそのまま国道278号線へ。今日も駒ケ岳が良く見える。その駒ケ岳の北側を時計回りに回り込む。
 同じ国道でも、5号線と比べて278号線は、交通量が激減。近くに海を感じるが、海べりとまでは行かない駒ケ岳の裾野を行く。緩やかにアップダウンがあり、少しだけ残雪が見られる木立の中のまるで高原のような風景や馬が佇む牧場沿いを進んで行く。別荘と思しきおしゃれな建物のウッドデッキを囲む柵が外側に倒れている。屋根からの落雪が柵をなぎ倒したようだ。
 はるか前方にはなだらかな白い山が見えた。丸いドームのついた施設を頂いている。かつてスーパーカブで登った「木地挽(きじびき)山」かと思ったが、後で調べたら横津山だった。
 今は森町の一部となった旧砂原町に入る。読み方は「さわら」だが、どうしても「サハラ砂漠」を思い浮かべてしまう。頭の中のBGMは、中森明菜の「SAND BEIGE-砂漠へ-」となった。
 海が近づいてきた。海側を並行して走る道道1028号線へとレーンをかえる。集落の中を行く道だ。いくら交通量が少なくても国道は味気ない。生活観のある街中を走るほうが楽しい。6年前にスーパーカブでこのあたりに来たときには、国道を走った。反対方向なので、海側の道には入りにくかった。やはり、島や半島を回るのは時計回りがいい。
駒ケ岳の麓をスタート 牧場もある
 駒ケ岳を回り込み、砂崎を過ぎると進行方向が東から南東へと変わる。真後ろからの風に押されてスピードアップ。
 また国道を離れ、道道43号線で鹿部の街中へ。立て続けに2軒のコンビニ入る。ローソンで紙パックのお茶を買い、セイコーマートでは納豆巻きの弁当とバナナを買う。今後あまり補給できる店がなさそうなことを見越しての買い物だ。紙パックのお茶は、この季節のこの辺りのセイコーマートには置かれていなかった。函館や小樽のセイコーマートにはあったのだが。立地によって売り上げは大きく違い、品揃えも違うと言うことだろう。
 「道の駅しかべ間歇泉公園」で小休止。その名前に表される通り、温泉の施設が併設されている。つまり海のそばに置かれた舟の上のテーブルとベンチに陣取る。もちろん舟と言っても、すでに使われていないものを改装したものだ。道路を隔てて反対側にある道の駅主要施設の一角からは湯気が上がっている。足湯のようだ。まだ走り出してあまり立っていないし、靴や靴下を脱ぐのも、さらに後でまた履くのも面倒なので、離れた場所から眺めるだけにしておく。
 駒ケ岳がくっきりと見えるが、手前に3階建ての建物が立ちはだかっているのが残念。また、もうひとつの富士、羊蹄山が今日もまた噴火湾越しに良く見えている。かなり内陸にあるはずなのだが、まるで海上にそびえているようだ。
快晴と追い風 しかべ間歇泉公園 羊蹄山がくっきり
 風が強い。そして冷たい。一昨日、昨日、今日と気温が下がってきている。寒さをこらえられず走り出す。今日は一番の長丁場。すでに30km近く走っているが、まだ100kmほどの行程を残している。
 その先はずっと海を見ながら走る。次々に現れる集落では、昆布が干されている。これまでにも、夏の利尻や礼文、あるいは襟裳岬辺りで昆布が干されているのを見てきたが、いずれも地面に敷かれていた。ここでは、洗濯物のようにさおに吊り下げられ、風にゆらゆら揺れている。地域の違い、それとも季節の違いによるものだろうか。その足元には巨大な玉砂利のような大きくて丸い石が敷かれ、地面にも干せるようにも見えるのだが、まあその辺はよくわからない。
 空と海はひたすら青く、クルマはほとんど通らず、強い追い風に押されて快走する。平均速度は23km/hほどの私にしては驚異的なハイペース。しかし、心の中には不安もある。今日の天気予報によれば、風は北西のち西。今は順風だが、恵山岬を回りこんで津軽海峡沿いに出たら真っ向からの逆風になることが予想される。125kmの行程の疲れのたまった終盤、函館の手前30kmは厳しい時間になりそうだ。
 海と山がせめぎあう荒々しい断崖の麓、トンネル、そして漁村。そんな景色が繰り返される中を進んで行く。
海も空も青い 三味線滝 昆布が風に揺れる
 手前にまるで海に流れ落ちるような滝があった。実際には海との間に道路があるのだが、それほど海と山が迫っていると言うことだ。疲れのたまった名は「三味線滝」。水音が三味線の音色のように聞こえたという。こうした海沿いの断崖を流れる滝はそのあとにも見受けられた。
 滝を越えるとすぐに旧南茅部町。合併により今はもう函館市。しばらくの間漁船集落が点在していたが、そのあと途切れずに家並みが続くようになる。いくつかの集落が連なっているのだが、その境界が見た目にはわからない。なんと15kmほども家並みが続いていた。このように書くと結構都会のように思うが、その風景は干してある昆布が揺らめく極めてのどかで静かな漁村そのもの。そして、建物はほとんどが木造の民家。つまり、店などの施設はほとんどない。たまに、小さな個人商店や郵便局や公民館があるくらい。移動スーパーのトラックが止まって店を開いている。たまに行き交うクルマは、漁業関係者のものか、高齢者の福祉施設のもの。
 尾札部でようやく集落が途切れた。風をしのげそうな岩陰を見つけ、そこで小休止。鹿部で買った納豆巻きとバナナを食べる。駒ケ岳は近すぎて見えないが、相変わらず羊蹄山は噴火湾に浮かんでいる。
とどほっけ 恵山岬灯台 奥に恵山
 銚子岬をトンネルで越えると旧椴法華村。「とどほっけ」と読む。そののどかな中心集落から国道は内陸に入り恵山岬をショートカットする。ここまできて江山岬に寄らないわけにはいかないので、岬に向かう道道231号線へ。漁港を越え緩やかに登って約4km。灯台のそびえる恵山岬。ほとんど人がいない。資料館は閉館。これは閑散期のためでなく、ずっと閉館することになってしまったようだ。頂上付近に木が生えていない山は恵山。火山のため植生がないようだ。 しばらく散策してきた道を戻る。灯台を越えて海まで降りると、満潮時には水没する海岸の温泉露天風呂があるのだが、この先の向かい風を恐れて脚を伸ばすことができなかった。
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8.津軽海峡向かい風
元気に泳ぐ鯉のぼり 小さな峠越え 奥に見えるは下北半島
 漁港までは下りなのだが、そのあとは早速向かい風の洗礼を浴びる。ペダルが重く、前に進まないではないか。
 どうにか国道まで戻り、岬をショートカットする標高差100mあまりの峠越えにとりかかる。海岸沿いに岬を回る道は通じていないのだ。内陸部のため風の影響が少ない。
 下りに差し掛かったところで山の向こうに青い海が見えた。津軽海峡だ。そして島のようなものが見える。本州、下北半島があんなに大きくはっきり見えるのか。
津軽海峡と下北半島 恵山を振り返る
 海沿いまで下る。うれしいことにここは追い風だ。「道の駅 なとわ・えさん」に立ち寄る。建物の屋上から津軽海峡を眺める。すばらしい晴天だ。下北半島が大きい。植生のない恵山も存在感を漂わせている。
 さあ、函館市外に向けて走り出そうと自転車を止めたところに戻ったら、自転車が倒れていた。風のせいだ。この日は5回以上も自転車を倒してしまった。そしてここから恐れていた向かい風との真っ向勝負を挑むこととなる。
駒ケ岳 恵山 旧道を行く
 旧南茅部のように連続はしていないが、集落が現れる間隔は短くなってきている。そしてその集落も大きく、新しい家も見られる。店もある。基本的にはどれも漁村なのだが、住んでいる人は漁業従事者だけではなさそうだ。ここはもう函館中心部の通勤圏内なのだ。
 集落に入り、道路の海側にも家が立ち並ぶ区間に来ると一瞬風が弱まりスピードが上がる。それでも20km/hには届かない。向かい風をまともに受けると、11km/h前後まで速度が落ちてしまう。23km/hほどあった平均速度もどんどん下がり、20km/hを切ってしまう。
 女那川、中浜から国道は集落の裏山のトンネルへと向かう。当然海沿いの旧道へと舵を切る。集落を抜けると、奇岩の間を縫う細い道。そして奇岩を貫く細いトンネル。それを路線バスが抜けて行く。2日前の、大岸、礼文華の間の道と似た雰囲気だ。ということは鉄道の跡地と言うことか。
柱状節理 路線バスが通る 景色はいいが逆風
 国道に合流ししばらくいくと、集落の裏山の中腹に道が走りトンネルがある。その先には橋梁もあった。間違いない。後で調べると、戸井線の跡だった。しかし、建設途中に太平洋戦争が始まり一度も列車が走ることはなかったと言う。今は集落から階段がつけられ、高台の線路跡は津波の避難場所になっているようだ。。
戸井線の遺構 波が立っている
 潮首岬が本州に一番近いポイント。相変わらず下北半島が大きく見えるが、その両脇にもぼんやりと島影のようなものが見える。右は、津軽半島。そして左は尻屋崎。下北半島は大間崎、つまり「まさかり」のブレード部分が大きく見えているほか、尻屋崎、つまり柄の先端部分が分かれて見えているということのようだ。夏にはここまでは見えないはず。空気の澄んだこの時期ならではの眺めだ。
 相変わらず風が強い。潮首岬を回り、進行方向が西南西から西北西へと変わり、何か影響があるかと期待したが、依然真正面から吹いてくる。景色は少し変わって、前方に鉄筋コンクリートのビルが立ち並ぶ函館市街、あるいは湯の川温泉街が見えてきた。シンボルの函館山も見える。でもなかなか近づかない。海はやや荒れて白い波が打ち寄せている。ここまでは指切りグローブで走ってきたが、風の冷たさにフリースの手袋に交換。気象庁の観測によれば午後の風速は10m/s近くだった。
 前方に上り坂が見えてきた。さほど長いものではないが、それなりの勾配で一直線に登っているため威圧感がある。坂の手前で左に分岐する細道があるが、GPSレシーバの地図には記されていない。行き止まりで引き返すのが嫌で坂道に挑む。向かい風と上り坂のツープラトン攻撃だ。その場では気づかなかったが、このあたりが函館空港。滑走路などの施設がある海岸段丘の端に登った。また、細道はちゃんと先まで通じているものだった。
 登りが終わると下り。そして湯の川温泉街へ。松倉川にかかる汐見橋のたもとに「一文字」というラーメン屋を発見。吸い込まれる。夕食にはまだ早いので、セットや大盛は止めて、ノーマルな塩ラーメンにしておく。
 店を出ると日が傾いてきている。あとでわかったが、道路の向かい側には名物バスラーメンの本拠地のようだ。夜になると車内がラーメン屋となるバスがやってくるのだ。
 幸いなことに風が弱まってきた。日差しによって暖められた地表付近の空気が膨張し上昇気流が発生する。陸上より温度変化の緩やかな海面から陸地に向かって風が吹く。一言でいえば空気の対流現象。これが海風。一日の気温変化の大きな初夏の時期の、気温が上がる昼頃から午後にかけて最も強い海風が吹く。今日のように海岸に沿って吹く風も、経験的に昼頃から午後が一番強いと感じられる。
折れそうな心を癒す 徐々に近づく函館山
 湯の川温泉は大きなビルが立ち並ぶ大都会の雰囲気。ただし、並んでいるのがオフィスビルではなく、温泉旅館なのである。道路は片側2車線で、クルマの通行が多い。温泉旅館街を抜けると、道の両側には大型店舗が並ぶ。広大な駐車場を突っ切り浜に出てみる。赤く染まる巨大な陸繋島、函館山がもう近い。わずかであるが、残雪で白いまだら模様となっている。
 函館を訪れるのはこれで5度目。うち1回はグループでのパック旅行。湯の川温泉に泊まり市内観光をしたが、その時も風が強かった。前日には強風で信号機が倒れたとニュースで告げていた。自転車で函館を走るのは3回目。そのうち1回は今はなくなった夜行列車の「はまなす」で深夜に到着し、24時間営業の入浴施設で夜を明かし、やはり今はない江差線の始発に乗り込んだ。午前6時台の列車にもかかわらず、翌年の廃止が決まっていたせいか鉄道ファンで満席だった。そして、もう1回は松前半島から走ってきた。ちょうど今回と反対方向で函館山を目指したわけだ。
 駅へ向かう道路案内に従って、海岸の道から内陸へ。駅の手前の交差点で今夜の宿「ホテルプロモート函館」の建物を発見。ずいぶん立派な建物。ビジネスホテルのはずだが、まるでシティホテル。ロビーに入ると、ヘルメットを見たホテルマンに「オートバイですか」と声をかけられる。自転車であることを告げると、ロビーのクロークルームに自転車を入れさせてもらった。これはありがたい。
 市街地や函館山を一望できる7階の部屋で一休み。そして、夜の街に繰り出す。ホテルは函館駅から徒歩圏内。道中に飲食店などたくさんあるので自転車を出す必要はない。年度末で週末。観光客よりも地元の人が多いようだ。そんな街中を適当に歩いて見つけた「四代目」というラーメン屋へ。塩ラーメンとご飯もののセットを食べる。ホテルへの帰り道、自転車屋を発見。スポーツサイクルの店のようで、店の前の自転車スタンドにはファットバイクが数台かけられている。まだ営業しているようだが、明日ゆっくり訪れることにしよう。セイコーマートで野菜サラダを買ったが、夕方からの塩ラーメンの波状攻撃で満腹になって食べられなかった。
美しい夕景 ホテルの部屋から函館山 函館と言えば塩ラーメン
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9.函館散策
 31日、小樽からフェリーで帰路に着く。がそれは深夜の話。小樽への移動は午後にして、函館でのんびり過ごそう。渡島半島を、今回を含めて3回の遠征で走ることができた。今後函館に来る機会はあまりないかもしれない。
 朝食はホテルで。バイキング形式なので食べ放題だが、今日はあまり走らないのでほどほどに。まずは、函館駅前の朝市へ行ってみよう、と市内を走りだす。道を間違えて遠回りになってしまった。と思ったら、後輪の空気が抜けていく。ええっ、3日前にパンクして、タイヤもチューブも新品に買えたばかりなのに。広い通りの中央分離帯部分が公園になっているので、そこで後輪を外す。ビスが刺さっていた。これならタイヤの新旧は関係ない。雪解け間もない路肩には忍者のマキビシが撒かれているような状態だ。これで予備チューブを使い果たしてしまった。
ファットバイク(30日夜) ホテルを出ると すぐにパンク
 駅の駐輪場に自転車を止め、まずは駅へ。自動券売機で特急列車の指定席を確認。十分空きがある。ということは自由席で大丈夫だろう。乗車券と特急券を購入。
 次に朝市へ。こちらも混雑していないけれど、ガラガラでもない。ちょうどいい加減。でも、特に買い物をするつもりもないし、まだ食事をするタイミングでもない。駐輪場に戻って自転車に跨る。函館山に向かって進み金森赤レンガ倉庫群へ。道中には青森へのフェリーターミナルがある。内陸側を見ると、木地挽山が白い。きじびき高原と呼ばれるなだらかな山容だ。
 赤レンガ倉庫群は結構にぎわっている。そして次々に人が増えている。ここだけはシーズンオフとは思えない。ゴールデンウィークや夏にはどうなるのだろうか。
 倉庫の中に入れるようになっている。入口から様子をうかがうと、いろいろな店があるようだ。お土産物屋もあるけれど、コンビニやドラッグストアなどもあるようだ。倉庫の中には入らず、外観を見ながらしばし過ごす。風が強めで日差しやや弱いが、海の香りを心地よく感じる。徐々に人手が増していくようだ。さあ、また駅の近く、中心街へ戻ろう。
 昨夜見つけた自転車店「チルノワ(CHILLNOWA)」へ。今日も店先にファットバイクが並んでいる。建坪はそう大きくないが、2フロアを店舗としている。1階はファットバイクをはじめとする完成車と小物などが置いてある。チューブがないか聞いてみたがフレンチバルブの26X1-3/8はなかった。やはり完成車が並んだ2階へ。こちらにも店員がいて、今回のツーリングのことなど少し話をする。1階に降りて、ボトルケージ増設用のベルトを購入。古いランドナーには標準ではボトルケージが1つしか付かないのだ。すでに増設してあるが、それは着脱の勝手があまり良くないのでいつか新しいものに変えようと思っていたのだった。ファットバイクの試乗ができないか尋ねてみたが、今は試乗用のものがない、と断られた。
赤レンガ倉庫と函館山 ここは賑わっていた 「チルノワ(CHILLNOWA)」
 次に、函館のご当地バーガーの店「ラッキーピエロ」へ。ご当地バーガーといっても、その土地の特徴的な食材を使っているというような特別の個性があるわけでもないが、とにかく大人気のローカルチェーン店らしい。函館しない及びその周辺のみに出店し、他エリアからの出店依頼は断っているとのこと。また、マクドナルドやモスバーガーは過去になかなか出店できず、現在でもその店舗は非常に少ない。確かに、赤レンガ倉庫の近くの「ラッキーピエロ」は賑わっているようで、大きな窓から覗く店内には隙間なく人の姿が見えていた。
 駅の近くにある「ラッキーピエロ」も満席のようで、入り口を入ってすぐのカウンターの前には注文待ちあるいは空席待ちの客が数名。なんとなく注文待ちかな、と思われる人の背後につく。この店でゆっくりしようかと思ったが、席が空くのを待つのも、周囲に人がぎっしりいて落ち着かないのも嫌だし、天気がいいので、テイクアウトにする。注文したのは「ラッキーエッグバーガー」。確かにボリュームがある。
 広い中央分離帯の中の公園のベンチでハンバーガーを食べる。食べ終わったがまだ時間に余裕があるので、先ほど買ったボトルケージ増設用のベルトを取り付ける。
 そろそろ駅へと移動しよう。再び自転車を駐輪場において、朝市へ。すでに昼を過ぎしまった店もあり人でもまばら。フードコートへ入る。ほとんどが空席だ。ハンバーガーだけでは心もとないので、ラーメンを食べよう。道南らしいイカめしと塩ラーメンのセットを注文。が、お店の大将(店員?)、こちらが喋っているのに、ガチャガチャと自分で作業を始めて「え?」と聞き返してくる。さらに、自分はぼそぼそと小さな声で何を言っているのかわからない。出てきたイカめしは、ちょっと干からびていた。
 フードコート内はWiFiが使えるが、パスワードなどのセキュリティはかかっていないのでログインの必要なことはしないでおく。
「ラッキーピエロ」 ラッキーエッグバーガー 長万部で特急を下車
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10.函館から小樽へ輪行の旅
 フードコートで過ごした後は、駐輪場の自転車を回収し輪行袋に収める。そして、札幌行きの特急のホームへ。函館始発ということもあり、自由席も半分は空席。車両の最後部の席を確保し、背もたれと壁の間に輪行袋を置く。混み合う
ことが多いこの路線でこんなに余裕をもって座れるのは珍しい。
 14時56分、発車。市街地を抜け、疎らな残雪のある広い畑や牧草地帯の中を抜けていく。そしてだんだん木地挽山が近づいてくる。新函館北斗駅では、北海道新幹線の車両もみられた。
 大沼あたりで乗り降りがあり、少し乗客が増えてきたがまだ席には余裕がある。森からは海沿いを行き、一昨日自転車で走った風景を逆回しの早送りで復習。
 空いた特急の座席は快適で、このまま札幌まで乗っていたいが、長万部で下車。特急はこの後函館本線を離れ、登別、洞爺、室蘭、苫小牧、千歳と観光地や都市が続く室蘭本線に乗り入れる。私は函館本線の各駅停車へと乗り換える。小樽到着は少し遅くなるが、30分程度。路線距離が縮まり、特急料金もいらない分3000円くらい安くなる。それに、13年後に北海道新幹線が札幌まで延伸したら函館本線は並行在来線となって、JRとしては廃止される。第三セクターなどでかろうじて生き残るかもしれないが、まああるうちに乗っておきたい。
 1日に3本しかない長万部から札幌への函館本線の各駅停車。1両編成のレールバスだ。車いすなどのスペースに輪行袋を置く。もちろん車いすの人が乗ってきたらすぐに譲るつもりだ。
 発車時刻が近づいてきた頃、輪行袋を抱えた若い男性が急ぎ足で乗り込んできた。なんと輪行袋のファスナーが開き、フォークやタイヤなどが飛び出している。そして、4人掛けのボックスシートを輪行袋ともに1人で占領してしまった。車内は空いているとはいえ、マナーはよくない。輪行に関しては、ルール違反だ。まじめそうな青年に見えるのに。
 16時39分、出発。内陸に入り、車窓から見えるのは雪景色となった。駅と駅の間隔が長く、乗降客が少ない。落葉樹の林間を抜けて到着するのは、小さな集落にある無人駅。典型的なローカル線だ。さほど標高が上がるわけではないのに、かなりゆき深くなってきた。はだけた輪行袋の青年は降りていった。
 蘭越を過ぎると函館本線は尻別川の流れに沿うようになり、時おり後志羊蹄山がぼんやり見える。改正の昨日は遠くからもはっきりと見えたのに、今日は霞と夕暮れで輪郭がはっきりしない。
 昆布駅、その由来の昆布と言う地名、北海道らしいが完全な内陸部にあるのはなぜだろう。
 ニセコで6人くらいの外国人が大きな荷物を持って乗車して来た。欧米またはオーストラリア人のように見える。スキー客のようだ。4人は家族連れのようだ。残りはその友人か、それともただ居合わせただけか。家族連れといっても二人の息子はもう高校生以上で成人しているようにも見える。荷物だけでなく体もでかい。男性は皆、身長180cmを超えているように見える。一気に車内が狭くなった。
 「ひらふ駅からは交通機関がないため、比羅夫集落へお越しのお客様は倶知安でお降りください」との車内放送。そのひらふ駅は駅舎が民宿になっているが、夜の帳の下りた駅舎は暗い。シーズンオフのため休業中なのか、たまたま客がいないのか、それともこれで営業しているのか。
各駅停車へ乗換え はだけた輪行袋のお兄さん 内陸は雪景色
 単線のため倶知安駅で20分ほど停車。小樽到着は、19時50分。
 自転車を組み立ててフェリーターミナル方向へ走り出す。フェリーに乗り込む前の夕食をどこで取るか。フェリーターミナルに近いイオンの中の食堂街が手っ取り早いが、朝里の山岡家まで足を伸ばすことにする。3日前の室蘭の山岡家でサービス券をもらったし。小樽駅からフェリーターミナルまで約4km。そこからさらに4kmで朝里。市街地を外れ、日本海沿いの国道5号線を行く。ここも当然、路肩には細かい石が散らばる。スペアチューブがないのでパンクしませんように。歩いてフェリーターミナルに向かってもフェリーに乗り遅れない距離であるのだが、やはり歩くのは嫌だ。分厚く砂がたまっているところもあった。タイヤをとられる。歩道には残雪に覆われた区間もあった。圧雪となりてかてかに凍てついている。
 朝里駅近くに来ると、明るい光が辺りを照らしている。郊外型の店舗が並ぶそれなりに賑やかな通りだが、この時間しまっている店も多く薄暗い。煌々と輝く山岡家の明かりが暖かく迎えてくれるようだ。
夜の小樽 ラーメンを求め朝里へ 残雪の道
 ラーメンと卵かけご飯の定食に、サービス券で煮たまごのトッピング追加。
 船内で食べる食料を補給するため、イオンに寄ったがすでに閉店。フェリーターミナル入り口のセイコーマートで、翌朝と昼の食糧を買う。そして港へ。
 やはり、空いているので、乗船開始時刻は出航45分前の22時45分。たくさんのクルマが乗り込む夏やゴールデンウィークなら、1時間半前に乗船開始なのだ。自転車は当然私の1台のみで、自動二輪が1台。どうないナンバーのスーパーカブだった。ちなみにナンバープレートは白色。
 いつものように、帰路の船内ではリラックスして過ごす。
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11.桜咲く舞鶴へ
 4月1日、20時45分舞鶴港へ。スーパーカブに続いて下船。なんと桜が満開。こんなに早いのは記録的。
閑散とした二輪の部屋 駐車場から望むフェリー 月が迎えてくれた
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12.データ
◎自転車走行
3月26日 舞鶴市内 1.5km
3月27日 小樽市内 2.8km
3月28日 小樽市内・苫小牧-室蘭・長和-豊浦 81.0km
3月29日 豊浦-森 108.1km
3月30日 森-函館(亀田半島・恵山岬経由) 125.2km
3月31日 函館市内・小樽市内 20.2km
4月 1日 舞鶴市内 1.8km
 計 340.6km
◎費用
フェリー料金(含自転車) 23950円
駐車料金(舞鶴市内) 3800円
鉄道運賃 9270円
宿泊料(四泊) 12500円
飲食費 13917円
土産代その他 2142円
  計 65579円
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