動かざることオフトの如し?

最初に言っておきたい。
この企画は、オフトの選手交代を批判するものではなく、オフトの選手交代を事実として検証するものである。
『オフトは選手交代が下手』
『試合展開が固まると動けない』

これ、就任して半年、1stステージとナビスコ予選リーグを戦った上で、レッズサポーターの間で公然と囁かれるオフト評である。「公然」というのは、某掲示板の電波評論化諸氏のみならず、radipaの大原ニュースレターあたりでもそういう論調が垣間見えてきているからだ。実は、私自身も10年前から「オフトの交代下手」という考えにとり憑かれているフシがある。北澤ではなく武田の投入。タバコをふかしながらウロウロするオフトの姿は、あの悲惨な結末の記憶とも相まって、忘れようにも忘れられるものではない。
・・・いや、俺自身の回想録などどうでもイイ。問題は、実際にオフトは交代が少ないのかどうか。そして試合結果との因果関係はどうなのか、だ。客観的な事実の検証なしに交代下手だの何だのとオフト批判を展開し、ひいては「あんなの10年前の監督だ」などと誹謗する事は、全くの無意味である。


【 時 間 別 交 代 状 況 】
浦 和

浦 和
磐 田

磐 田
神 戸

神 戸
札 幌

札 幌

浦和の交代は神戸の半分

というわけで、まずは1stステージ+ナビスコ予選リーグでの全21試合の交代選手数を調べてみた。比較対象の相手としては、
・交代をうまい事、勝利に結び付けていそうな磐田
・四苦八苦しながら交代でなんとか勝利を得ようとする神戸・札幌

の3チームである。要は、強いチームと弱いチームをサンプルとしたわけだ。神戸と札幌は既に監督が交代しているので、「個人のクセ」は薄まっていると考えてよいだろう。

【 総 交 代 選 手 数 】
・浦和30人(1試合平均1.4人)
・磐田45人(1試合平均2.1人)
・神戸55人(1試合平均2.6人)
・札幌52人(1試合平均2.5人)

いきなり笑ってしまった。
オフト、思いっきり交代が少ないのだ。予想通り過ぎる(笑)。
選手層や試合展開によって交代のカードは切り方が当然変わってくるわけだが、浦和の交代選手層が神戸の半分とは思えず、その逆にスタメンの充実度が高いというわけでもないだろう。他の12チームについて調べる気力はないが、このサンプル比較に関する限り、オフトは明らかに交代が少ない。

【 交 代 人 数 別 試 合 数 】
    0人   1人   2人   3人   4人
・浦和 3試合  8試合  8試合  2試合  0試合(延長6試合)
・磐田 1試合  5試合  7試合  6試合  2試合(延長5試合)
・神戸 0試合  2試合  6試合 11試合  2試合(延長7試合)
・札幌 0試合  2試合  8試合 10試合  1試合(延長4試合)

劣勢に立たされる事が多い神戸と札幌は、交代枠をフルに使って状況の打開を図ろうとしている事が見て取れる。もちろん、その交代が効果的(=追い付いたり逆転したり)かどうかは別問題だ。浦和は、どちらかと言うと磐田と似た傾向にあるが、磐田以上に動かない。例えば磐田には川口というスーパーサブがいて、浦和にはいない、そんな差だけとは思えない。
それにしても、交代枠をフルに使った試合が僅かに2試合とは、改めて考え込んでしまう・・・。


残り10分、オフトの重い腰

それでは、その交代が、どういった時間帯になされたのか。それを可視化したのが右の長大なグラフだ。
縦軸は時間帯、横軸は交代の延べ人数。一番下まで見ていくと、なぜか「121分」なんつー数字も出てくるが、まぁこれはご愛嬌だと思ってくれ(笑)。後半開始からの選手投入は「46分」、後半44分あるいはロスタイムでの交代は「90分」というふうに見て頂きたい。

まずは、浦和以外の3チームを考察してみよう。

興味深いのは、神戸ベンチの挙動不審ぶりだ。スタメンの故障の可能性は否定できないが、前半終了間際にベンチが慌しく動く事が、ままある。ハーフタイムを境にしての選手交代も多い。後半30分を迎えるまでに、積極的な交代を見せている。その影響か、終盤には交代枠が残っていないようにも見える。不甲斐ないスタメンに対する怒り、交代が機能しない焦燥、そんなものが見えてくると言ったら言い過ぎだろうか。
札幌は、神戸よりも動きが遅い。残り30分を切ったところで交代のカードを切ってくるというのがパターンだ。そして、そろそろ残り10分かな〜?といったタイミングで怒涛の選手交代を見せている。これもまぁ、大変だなぁ、という印象だ。
磐田は、残り20分で1枚目、残り15〜10分で2枚目のカードを切ってフレッシュな選手に入れ替えていく。展開によっては残り5分で最後のカードを切って悠々と逃げ切り・・・といった具合である。このグラフからも余裕のある試合運びがうかがえて、なんだかムカつく。
いずれのチームにも言える事は、交代カードを使って状況の打破を試みる最初のタイムリミットが「残り10分」前後にあるという事だろうか。試合の趨勢が決するポイントが、そのぐらいの時間帯なのだろう。

で、浦和であるが。

ハーフタイム、後半15分および35分以降にパラパラと交代の山が見えるが、神戸のように早めに仕掛ける傾向とは正反対で、札幌のような「これならどうだ」といった続けざまの交代も、磐田のような終盤の定番パターンも持ち合わせてはいない。試合の趨勢が決しつつある「残り10分」を切ってからおもむろに交代カードを使い出す、といった感じだ。サポーターの抱く「交代が遅い」という印象とピタリと一致していると言っても差し支えないだろう。


雑感:オフトが動かない正当な?理由

オフトの交代が客観的に少なく、遅い事は事実として判明した。が、それが悪い事なのかどうかというのは、また別の問題である。どういう事かと言うと、それで勝っていれば何の問題もないのだ。

【 交 代 人 数 別 試 合 数 】 ★勝敗別★
    0人   1人   2人   3人   4人
・勝ち 2試合  5試合  2試合  0試合  0試合(延長2試合)
(1試合平均1.0人)
・分け 0試合  1試合  1試合  0試合  0試合(延長2試合)
(1試合平均1.5人)
・負け 1試合  2試合  5試合  2試合  0試合(延長2試合)
(1試合平均1.9人)

交代人数と試合結果の因果関係を見てみると、やはり負け試合の方が選手交代が活発(それでも少ないが)だ。負け試合(10試合)の中身を見てみよう。

【 負 け 試 合 の 交 代 状 況 】
          1人目 2人目 3人目 4人目
3/ 3 0-1 横 浜 63分 79分 −
3/ 9 0-1 F東京 60分 81分 85分
3/16 1-2 清 水 60分 85分 −
4/20 1-2v V東京 45分 87分 −  −
5/12 1-5 名古屋 60分 85分 −
7/13 2-3v 磐 田 64分 −  −  −
7/27 1-3 京 都 −  −  −
8/ 7 0-2 鹿 島 75分 81分 83分
8/10 1-2 名古屋 87分 −  −
8/17 1-2 市 原 63分 86分 −

  • 横浜戦 残り10分までに2枚のFWを投入し、ベンチに残っていたのは室井と池田学の2人のCB。パワープレー要員として投入の手もあるだろうが、この選手起用を消極的とは言えないだろう。(サブにCB2人もどうかと思うが)
  • 東京戦 残り10分から同様にFW2枚を投入した。その前の早い段階で既にトゥットが投入されており、試合内容も押し気味で、特に交代が遅れたとは感じられない。逆に、バランスを崩してまで攻め手を打ったという印象だ。
  • 清水戦 試合内容は決して悪くなかった。永井の投入は残り5分だが、これはエメルソンを引っ張れるところまで引っ張ったという事だろうか。
  • 名古屋戦@5月 大量リードを奪われた試合展開だった。ハーフタイムで一人代えた後は残り5分まで動きがなかったが、この試合はツゥット・エメルソン・田中抜きで、攻めのカードがなかった。ベンチには山田と城定が残っていたが、この試合展開では山田の代わりに先発出場していた新人の平川に少しでも長い時間をプレーさせる事の方が重要であっただろうし、路木を城定に代えたところで誰が喜んだであろうか?
  • 京都戦 問題の試合。この試合は0−2でリードされた前半32分にエメルソンが退場になっている。その後、試合は1点差となったが、最終的には78分にも失点を喫して1−3で負けた試合だ。
    【オフト談】「2対1の状況なら、選手交代を考えていた。リスクを背負っても、前線に選手を入れたかった。1人少なかったので極力、15分・10分に賭けたかった」
    1人少ない状況で、同点にするための戦術的変更が難しいというのは良くわかる。素人考えの例えだが、後ろの選手を外してFWを入れる、という単純な状況ではないだろう。だから、終盤まで我慢した、と。1点差ならリスクを負ってでも攻める価値がある、と。
    【オフト談】「後半の残り15分で戦術的な変更を考えていたが、その瞬間に3失点目を喫した」
    2点差となり、2点差を追い付く可能性とリスクを天秤にかけた結果、戦術的な交代は取り止めた、というわけだ。ここまでは、実に当たり前の理屈であると私は考える。もちろん、戦術変更の前にとどめを刺されて敗戦・・・という「采配と結果の因果関係」に全責任を負うのは監督なので、ここでオフトに非難が集まるのは当然と言えば当然なのだが。
    ところで、この日の駒場は気温が30.6度。湿度が66%。しかも8日間に3試合の強行日程の3試合目。中2日。単純にフレッシュな選手を投入するという意味での選手交代すらなかったのには異議を唱えたいところだ。この試合のサブは路木・阿部・長谷部・永井。サカつくじゃないので、具体的な起用や俺的なフォーメーションを披露するつもりは毛頭ないが、異なる特色を持つこれらのプレイヤーを使い切れば、さらなる失点の可能性を減じつつ得点の可能性を上げるという手段もあったのではないか。
    それより何より、ホームで「無抵抗に見える」やり方で負けるという事は許されないのではないか。実際の選手起用方法や結果とは別のところで、実はここがもっとも不興を買っているところなのだろう。オフトの談話は「1点差ならリスク覚悟で攻撃的に行こうと思ったが、2点差になったので・・・」というところで途切れてしまっているが、無言の先に続く言葉が「だから打つ手がなくなり交代をやめた」なのか「いくつかの選択肢の中で、交代しない方がベターな結果が得られると思った」なのかが問題なのだ。一つ目のアイディアが閉ざされるとアウトというのでは、交代下手の汚名を返上する事は難しい。
  • 鹿島戦 そういう目で見ると(私はそういう目で見るつもりはないが)、この試合での残り15分からの交代は遅すぎる、という事になる。文句があるとすれば、この気候の中ではもう少し早めに選手を代えた方が良いのでは・・・ということぐらいだ。
  • 名古屋戦@8月 やはり87分まで交代がなかったが、これは京都戦と状況が酷似している。すなわち、1点リードを許し、前半のうちに1人が退場になっているという事だ。京都戦で明かした「戦術的な変更」は、この試合では井原→田中の交代として日の目を見たが、京都戦では「残り15分で」と言っていたオフトが、この試合では「残り3分」でようやく動いたのだ。なぜそこまで動けなかったのかは知る由もない。
  • 市原戦 この試合もまた、京都戦、名古屋戦のコピーのような試合だ。前半のうちにエメルソンが退場になっている。ただし、この試合では後半16分に先制された直後にFWの田中を投入している。もっとも、田中の位置はFWではなく2列目の位置で(これは結果的に成功)、リスク承知の戦術変更は後半41分のことだった。

    いずれにせよ、ワールドカップ中断明け以降の試合では、交代の遅さ・少なさが目に付いているとは言える。中断前も同じような采配だったのだが、最近は、選手を交代しない(遅い)理由が自分的にはみつからない。もちろん、これをもってオフトを一切支持しないなどと言うつもりはない。単に10年前の印象そのままという事なのだから。


    【 先 発 メ ン バ ー 変 更 】
     OUTIN
    J-1西部・井原・坪井・内舘・山田・城定・土橋・鈴木・アリソン・福田・エメルソン
    J-2変更なし
    J-3西部(不調)/土橋(故障)山岸/田中
    J-4城定/田中トゥット(復調)/路木(復調)
    J-5変更なし
    J-6山岸(故障)西部
    J-7変更なし
    N-1変更なし
    N-2エメルソン(停止)田中
    N-3田中/鈴木(遠征)/アリソン(停止)エメルソン(停止明け)/石井/平川
    N-4平川アリソン(停止明け)
    N-5エメルソン(停止)/坪井(故障)永井/室井
    N-6内舘/山田/トゥット(停止)坪井(復帰)/平川/阿部
    J-8山岸・井原・坪井・内舘・山田・路木・石井・鈴木・福田・エメルソン・トゥット
    J-9鈴木(停止)/石井アリソン(停止明け)/室井
    J-10エメルソン(停止)/路木(停止)/室井 田中/平川/鈴木(停止明け)
    J-11井原(停止)/トゥット(停止)室井/エメルソン(停止明け)
    J-12山田(停止)/エメルソン(停止)/室井 井原(停止明け)/トゥット(停止明け)/路木
    J-13福田(故障)石井
    J-14石井/田中山田/エメルソン(停止明け)
    J-15アリソン(停止)/路木阿部/室井

    半年かけて「ダメ出し」作業?

    選手交代以前の問題として、オフトは先発メンバーについても固定させる傾向が強いと言われる。これも10年前から同じ事は言われていて、結果的には都並一人が欠けただけでガタガタになってしまった日本代表を覚えている人は多いだろう。もっとも、この時のオフトは、最終予選の最中にオフトジャパンの象徴的存在だった高木を外してカズ・中山・長谷川の3トップに変更という大胆なフォーメーション変更も施していて、それは少なくとも私の中では大ヒットだったのだが。

    【 出 場 選 手 数 】 ★先発人数/総ベンチ入り人数
    浦和 20人/24人 磐田 19人/26人 神戸 20人/24人 札幌 23人/32人

    メンバー固定の指標として、先発出場を記録した選手数およびベンチ入りを記録した選手数をカウントしてみた。対象は、同じようにJとナビスコの合わせて21試合である。

    レッズは決して少なくはない。札幌が実に32人をベンチに入れ、23人もの選手を先発起用しているが、この裏には、既に数人の選手が登録抹消・追加されているというチーム事情がある。それを考慮に入れると、リーグ戦での控えメンバーを起用する事も多いナビスコを加えた21試合で20人前後の先発起用というのは、標準的と言って構わないと思う。

    では、その中身はどうか。右の表は、先発メンバーの変更とその要因をあらわしたものだ。(要因には多分に推測を含んでいる)

    印象とは異なり、前の試合とメンバーが変わらなかったケースというのは、たったの4試合しかない。では、それで「柔軟にメンバー変更を施している」かと言えば、それは違う。先発を外れた選手は、その多くが出場停止または故障であり、ベンチから先発に昇格した選手の多くは出場停止明けで復帰したに過ぎない。逆の見方をすると、出場停止の選手の代わりに出場した選手は、あくまでも「代替」の先発メンバーなのだ。ワールドカップ明けの緒戦のメンバーから石井とアリソンを入れ替えたメンバーがレギュラーで、田中がFWの準レギュラー。かつ平川が右・左・2列目とユーティリティ的に穴埋めをしている・・・というのが1stステージ終了時点での形だ。

    しかし、逆の見方もできる。
    開幕時点のメンバーで名前が消えているのは西部・土橋・城定の3人。率直に言って、サポーターからの評判は乏しくない選手たちであるが、こうして見ると、(浦和の選手にこういう表現をするのは気が引けるが)ダメ出し作業を進めているという気はする。と同時に、坪井・平川という真新しい選手を積極的に登用している事実も考え合わせると、巷間言われるほどにガチガチに固定だとは言えないのではないか。
    練習では(試合前日でさえも)5対5、8対8等が多く用いられているようだ。そこには、昨年のチッタのようにレギュラー組とサブ組を厳密に分け隔てるような構図は見られない。
    もちろん、好みの選手が使われない、昨年と同じポジションで使われない、だからオフトはダメなんだという理屈の前には、何を言っても無駄なのだが。


    とりとめのない数字を列挙してみたが、あなたはどう感じるだろうか。レッズナビが楽しみだ。
    (このページは2002年8月17日22時5分に掲載しました)


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