当科での子宮動脈塞栓術(UAE)について


●初めに:血管造影の技術を利用した塞栓術は、骨盤損傷による出血に対して通常の技術では、止血が困難となった患者さんへの止血目的として導入されました。後に、この技術は外陰部の血腫、分娩時の裂傷、弛緩出血、子宮頚癌、絨毛性腫瘍、頚管妊娠等からの止血困難な出血に対しても応用され、非常に有用であることが明らかとなってきました。子宮動脈塞栓術(Uterine arterial embolization:UAE)は、この技術を子宮筋腫の治療に応用しようとするものです。
UAEの際には、通常は右大腿動脈を穿刺し、血管カテーテルを挿入します。透視下に、カテーテル先端を子宮筋腫を栄養していると思われる子宮動脈内に留置します。
次に、ゼルフォーム(2週間程度で溶解するスポンジのようなもの)あるいは金属コイルを血管内に入れ、血管を塞栓します。

●最近、日本国内においても、主として放射線科の施設より、子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術が、有効であったとの報告が見られるようになってきました。UAE自体は、新しい手技というわけではありませんが、もし、全ての筋腫症例に有効であれば、非常に有力な治療法となる可能性があります。その有用性については、いろいろと報告はあるようですが、その一方で、その効果を疑問視する部分があるのも事実です。これは、主として筋腫の大きさやその部位によると思われますが、現時点では統一した見解は見られず、それが、保険適応への障害になっていると思います。

●当科でも、放射線科に依頼し、7年前より、進行した子宮癌に対する動注(子宮動脈内に抗癌剤を注射する)化学療法、頚管妊娠や分娩後の大量出血例に積極的にUAEを活用してきました。このような場合には、UAEは非常に有力な治療法となり、特に産科症例では子宮全摘術を回避することが可能であった例も経験しています。

●そこで、現時点での、子宮筋腫の患者さんでのUAEの適用に関する当科での考え方ですが、やはり、それ単独で筋腫を治療すると言うよりは、内視鏡下手術をより安全に行うという方向での利用法を考えており、以下に、その例を挙げさせて頂きます。


症例1:36歳の患者さんで、他院で子宮全摘術を勧められ、迷っている内に大量出血となり、当科初診されました。粘膜下筋腫でしたが、出血量も多く、そのままでは子宮鏡下筋腫摘出術による止血は困難と考え、緊急UAEを前処置として行い、その後に、子宮鏡下筋腫摘出術を行いました。

UAE前のMRI画像:子宮後壁に粘膜下筋腫を認めます。
UAE前:左子宮動脈の造影。筋腫核への豊富な血流を認めます。
スポンゼルによる塞栓後:筋腫核は造影されません。
UAE後のマルチスライスCT画像:筋腫核には造影効果を認めず、壊死に陥っていると考えられます。
子宮鏡下筋腫摘出術施行時の所見
子宮鏡下筋腫摘出術終了時の所見:筋腫核は完全に切除され、出血は殆ど認めません。