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不安障害 (Anxiety Disorders)

1.不安とは
2.全般性不安障害 (Generalized Anxiety Disorder)
3.心的外傷後ストレス障害 (PTSD / Posttraumatic Stress Disorder)
4.強迫性障害(OCD/Obsessive-Compulsive Disorder)
5.パニック障害(Panic Disorder)
5.社会恐怖症(Social Phobia)
6.恐怖症(Phobia)
1.不安とは

四つの要素
不安の機能
統計

四つの要素
不安には、四つの要素があります。

1.認知的要素 認知とは、考えのことです。不安や恐怖に伴う考えは、主に、「悪い事が起こるのではないか」「失敗するのではないか」「嫌われているのではないか」など、悲観的なものの見方をするものです。しかし、不安を感じることによって慎重になったり、行動する前に十分に考えたり準備したりするので、その考え方が悪い、というわけではありません。ただ、不安を感じやすい人は、実際にはそうである可能性が低いにもかかわらず、また、実際にそうなったからといって、それがものすごく悪いことではないにもかかわらず、絶えずそのことばかりを心配してしまう傾向にあります。例えば、飛行機が墜落する可能性は、もちろん、自動車事故で死亡する可能性よりもかなり低いものです。しかし、不安を感じやすい人は、飛行機に乗る予定のある日の一ヶ月前から、毎日そのことばかりを心配したりします。また、中間試験に失敗したからといって、人生がすべてめちゃくちゃになってしまうわけではないのに、不安を感じやすい人はそのことばかりが気になって、ご飯も喉を通らなくなってしまいます。このように、物事に対して、必ず悪い結果が待っていると考えてしまったり、失敗したらそれはとんでもなく悪いことなんだ、と思ってしまう考え方をするのが、不安の認知的要素です。

2.感情的要素 不安の感情的要素とは、もちろん不安を感じることです。不安障害の種類によって、何について不安を感じるのかは異なりますが、不安を感じやすい人は、物事に対して、また、未来に起こる可能性のあることに対して、極度の不安、心配、恐怖を感じます。誰にでも、何かについて不安や恐怖を感じることはありますが、その不安や恐怖がしだいに大きくなり、極度のものとなって、毎日の生活に支障をきたしてきたり、本人が自分の感情に対して絶えられない苦悩を感じる場合、不安障害が発達している可能性があります。

3.行動的要素 不安の行動的要素とは、極度の不安や恐怖によって導かれている行動のことです。例えば、クモが怖くて怖くて仕方がない人は、クモがいそうな場所は避けるようになりますよね。この、避ける、という行為が、この人にとっての不安の行動的要素です。もし、自分の体臭が気になって、他の人はどう思っているんだろう??と不安に思っている人にとっては、一日に何度も自分の匂いをかいだり、お風呂に入ったり、デオドラントを使ったりする行為が、その人にとっての不安の行動的要素です。不安障害をもつ人の中には、極度の不安に耐えられないという他にも、この、行動的要素があまりに極端になってしまったために、毎日の生活がきちんと送れなくなっている人もいます。例えば、自分の家に泥棒が入るかもしれない、と、絶えず不安な人は、出かける時に何時間もかけて、家のすべてのドアや窓にカギがかかっているか確かめなければ、安心して外出できないかもしれません。知らない人に会うのに恐怖を覚える人は、家から一歩も外に出られなくなるかもしれません。これらは極端な例ですが、このように、不安障害をもつ人は、この行動的要素によって、生活や行動範囲に制限が出来てしまうのです。

4.身体的要素 人間は、不安や恐怖を感じると、自動的に体がその不安や恐怖に反応するように出来ています。これは、人間を含めるすべての動物にいえることで、その種類によってどのような体の反応が出るかは異なりますが、人間の場合、不安を感じると交感神経が興奮します。交感神経が興奮すると、心拍数が上がって胸がドキドキしたり、汗をかいたり、顔が熱くなったり、息苦しくなったり、場合によっては頭がクラクラしたりします。これらの反応は、危険が迫ってきた場合に、敏速な動きをしたりすぐに走って逃げたり出来るように、体が準備をしている証拠なのです。実際には危険は迫っていなくても、不安に感じてこのような身体的反応が出ることはたくさんありますが、不安を感じやすい人の場合、一般的にはそうならないと思われる状況でも、不安を感じて体がそれに反応しやすいのです。

さて、これらの四つの要素は、お互いに深く関係しています。例えば、「自分は女の人と話すのが上手ではない」(認知的要素)と不安に思っている人は、女の人と話す機会があっても、「うまく話せない」と信じているわけなので、当然不安を感じます(感情的要素)。不安を感じると、心臓がドキドキして、汗をかいて、頭に血が上った感じがします(身体的要素)。すると、それらの体の反応を感じて、「こんなに緊張していたら、絶対にうまく話せるわけがない」「頭に血が上って、頭の中が真っ白だ」などと考え(認知的要素)、その考えによって、ますます不安になるのです(感情的要素)。さて、このような状況が何度も続くと、その人は女の人と話す機会を避けるようになるでしょう(行動的要素)。何度やってもうまくいかないからです。そして、避けていくうちに、ますます女の人と話すのが怖くなり、もちろん、話す機会がないので、それ以上話すのが上手になることもないでしょう。その為、「自分は女の人と話すのがうまくない」という考えは、どんどん強くなっていくのです。

このように、感情、認知、行動、身体的反応は、一つの「輪」となって、お互いがお互いの存在を守っているのです。極度の不安を感じる人の場合も同じで、不安障害を治療するに当たっては、この中のどの要素がその障害の発達と維持に一番影響しているのか、どこからなら一番無理をせずに変えられるのか、と、「輪」をどこかで断ち切ることに焦点を当てることになります。


不安の機能
極度の不安や恐怖を感じる、不安障害をもっている人にとって、不安を感じることはとても怖いことです。たとえ不安の度合いがそれほど高くなくても、毎日いつもいつも常に不安を感じていたら、心身ともにきっとものすごく疲れてしまうでしょう。不安を感じることでいっぱいいっぱいで、ほかの事をする気力も時間もなくなってしまうかもしれません。しかし、本来は、「不安」というものそのものは、もともと人間に備わっている大切な機能で、体に害を与えるものではありません。不安や恐怖を感じて動悸がしたり、汗をかいたりするのは、身近に迫ってきている危険から身を守るために、とても大事な機能なのです。人間や動物は危険を感じると、交感神経が興奮し、心拍数が上がり、周囲の動きや音に敏感になって、何かがあったら敏速に動けたり走り出せたりするように、体が勝手に危険に対する準備をしてくれるのです。

例えば、家でテレビを見ていたら、なんだか家が揺れたような感じがするとします。ちょっとだったけど、びっくりしますよね。地震かな??と不安になるでしょう。しかし、ここで不安になることで、心拍数が上がったり、無意識のうちに体のあらゆる感覚に集中したり、耳をすませていたりするわけで、そのおかげで、もし次に大きな揺れが来たとしても、敏速に動くことが出来ます。もしそこで不安を感じていなかったら、次に起きる揺れに対して、きっとすぐには動けないでしょう。いや、大きな地震に対して人がどういう行動を取るのか、それによって本当に危険が回避できるのか、というようなことは分かりませんが。。。一つの例です、念のため。

ともかく、不安を感じることによって、体は危険に対する準備が出来るのです。極度の不安や恐怖を感じやすい、不安障害をもつ人は、その必要のないところでも不安を感じることが多く、それによって体が危険に対する準備をしてしまうため、それによって更に不安が増す、という悪循環に陥ってしまいますが、本来、不安そのものは、悪いものでも怖がるものでもないのです。そのおかげで、動物も人間も、自分の命を守れるのですから。


統計(アメリカでの)
不安障害は、うつ病と深く関わっています。これは、不安を感じやすい人や、落ち込みやすい、など、うつ症状の出やすい人は、共通して不安やうつを起こしやすい考え方をするためだと言われています。アメリカでは、なんと不安障害をもつ50%から60%の人が、同時にうつ病でも苦しんでいるのです。また、不安障害の殆どは、圧倒的に女性に多く起こるようです。しかし、もちろん、男性には絶対に起こらない、というわけではありません。あくまでも統計上の話し、です。また、女性に比べて、男性は不安を感じてもそれを認識したがらなかったり、その為に治療を受けるということに躊躇したり、というように、文化的な男女差もあるので、一概に「女性にしか起こらない」とは、全く言えませんので、あしからず... 年齢的には、不安障害は若い人に多く見られ、年配の人にはあまり起こらないようです。


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