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DSM IV
(Diagnostic and Statistical Manual)
アメリカ精神医学会 精神疾患統計マニュアル
改訂版第四版


DSM IV とは、アメリカの精神医学に関わる医師、心理士たちの間で使われている、いわゆる精神疾患者の診断のためのマニュアルです。DSV IV はそれまでのDSM III を改定する形で1994年にできたのですが、医師や心理士たちは精神疾患の診断を下す際に、必ずこのDSM IVに載っているいわゆるチェックリストを一つずつ見ていくんですね。

このチェックリストはあくまでも医療関係者が診断を下す際に参考にするためだけのものであって、例えば特定の症状が3ヶ月以上あること、というチェックリストがあるとして、実際の症状が2ヶ月半しか出ていなくても、医師がその診断を下すのにふさわしいと思ったら必ずしもDSM IVに全て合っていなくてもその診断名をつけることもできます。だからいくらDSMが診断の聖書と呼ばれていても、そこにある基準は絶対的なものではないんですね。殆どの精神障害の定義でさえ議論の余地のある精神医学界で、その精神障害一つ一つの診断に基準を作ったのですから、完璧になんて作れるはずありませんから。(DSM IVをめぐる批評)

さて、DSM IVは4つの要素から成り立っています。それらの要素はAXISと呼ばれています。

AXIS I 人格異常と精神遅滞を除いた全ての精神障害
AXIS II 人格異常と精神遅滞
AXIS III 精神に影響を及ぼすと思われる身体的状態
AXIS IV 精神的ストレス
AXIS V Global Assessment Functioning (患者の現在の精神機能を数字で表したもの 0から100)

5つめのAXIS Vは、患者さんがどれだけ日常生活を快適に送れているか、というのを数字で表すものです。1が精神的な混乱により最も自他の生命の危機に近い状態を示し、100がもっとも精神的に健康な状態を示します。ちなみに0は情報が不十分で判断できないということです。(BBSで教えて下さった通りすがりさん、ありがとうございました)このGAFからもわかるように、DSMとは心の病気も体の病気と同じように、医師が客観的に診断を下すことができるように作られたものです。ここには二千以上の精神障害を診断するためのチェックリストが入っていて、アメリカの心理士や精神科医の間では"診断の聖書"と呼ばれているんですね。

利点
DSMの一番の利点は、なんといってもつい主観的になってしまう精神障害の診断に一つのスタンダードを作ったことでしょう。心の病気というのは体の病気と違って、文化、価値観、信仰などがとても深く関わっているものです。ある文化では常識と考えられていることが、他の文化では異常と見られるということがたくさんあります。また、同じ文化の中でも個人的な価値観や倫理観などによって、心の異常と正常の境界線は変わってきてしまうのですね。そういう意識下での個人個人の考え方を排除し、客観的且つ普遍的に精神障害を診断する、というのがDSMの一番の目的です。(文化に対する考慮を排除したわけではありません。医師側の主観的なものの見方を診断に持ち込まないようにしよう、ということです。)

問題点
しかし、DSMに対する批判やDSMができたことによる問題もいくつか指摘されています。まず、DSMにある診断チェックリストの信頼性に対する疑問です。これは今でも多くの心理士、精神科医の間で問われている問題で、一つの普遍的なスタンダードを作るといってもなかなか難しいようですね。また、DSMができてから1994年にDSM IVに改定されるまで、障害の名前、内容、あるいは分類などは変わっていきましたが、障害の定義そのものは見直されていないため、もし最初の定義に問題点があってもわからないのでは、という意見もあります。何年かに一度は全ての障害の定義を白紙から考え直す必要性があるのではないか、と言われているのですが、それもまた大変そうですよね。

また、もうひとつの大きな問題としてアメリカでは、多くの心理士、特にまだ仕事を始めて間もない新米たちが診断を下すにあったて、DSMに頼り過ぎているのでは、とも言われています。例えば、何かの症状が6ヶ月以上見られた場合、というチェックリストがあったとして、その患者にまだ5ヶ月しかその症状がない場合、多くの新米さん達は、たとえ他の全てのチェックリストにマルがついていたとしても、そこでその診断名をつけるのはやめてしまうんですね。DSMというのはあくまでも診断を下す際のガイドラインで補助的な役割であり、絶対的なものではないんだ、ということを常にわかっている必要があります。

日本でのDSM IV
日本にDSM IVを導入するかどうかにあたっては、DSMは診断名を下すにあたってのガイドラインであり、治療方針ではないのだから導入する必要はない、といった意見もあるようです。ただ、診断名がついたことによって保険が下りる場合もありますから、その場合には、治療法に役立たなくても治療するお金がもらえるということで意味ありますよね。また、DSMの目的とする普遍的なスタンダード、というものへの疑問もあるようです。こうした共通の概念にあまり意味はないのではないか、という意見です。

でも、診てもらう心理士さんやお医者さんによって診断名があまりに変わってしまう、というのも怖い気がしませんか?精神障害は身体疾患と違って、特に人格障害なんかだと、診断名をつけるにあたってお医者さんの間で意見が食い違うことは本当によくありますが、それでもやっぱり診てもらう側としては、どこで診てもらっても自分にはこの診断名がつくんだ、ってわかった方が安心ですよね。もちろんどう診断されたかによって治療法も変わってきますし。ただ、さっきも言いましたが、心の健康、病気、っていう境界線は文化によってかなり違ってくると思うので、アメリカのDSMをそのまま日本で使う、というわけにはいかないでしょうね。私個人的には、日本でもDSMに見合う基準を一から作って欲しいと思うのですが、みなさんはどう思いますか?

注 意
ここに書かれている全ての情報は、私が個人的に教科書や他の文献をもとに集めたもので、必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せているつもりですが、もし間違いがあった場合には、掲示板あるいはメールで一言教えて頂けると本当にうれしいです。

また、ほとんどの情報はアメリカで使われているDSM IVに基づいています。日本ではそうじゃない、ちょっと違う、などという点がありましたらどんどん指摘してください。
出来るだけみなさんからの情報も繁栄させて、より正確で役立つページを作っていきたいと思いますので。