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DSM VI
不安障害 (Anxiety Disorders)
1.不安とは
2.全般性不安障害 (Generalized Anxiety Disorder)
3.心的外傷後ストレス障害 (PTSD / Posttraumatic Stress Disorder)
4.強迫性障害(OCD/Obsessive-Compulsive Disorder)
5.パニック障害(Panic Disorder)
5.社会恐怖症(Social Phobia)
6.恐怖症(Phobia)

2.全般性不安障害
(Generalized Anxiety Disorder)

症状
原因
治療法

全般性不安障害は1980年のDSM−IIIで初めて一つの障害として 認められた、比較的新しい診断名です。それまでもこの障害の症状は頻繁に 患者さんの間で見られていたのですが、それ自体が独立した障害だとは 思われていなかったようです。

症状
全般性不安障害をもっている人は、毎日の小さなこと全てに過度に不安に なったり、心配になったりします。その不安や心配の対象はこれといって 決まっているわけではなく、特別に不安や心配の種がある、 というわけでもないのですが、ただ、起こりうる限りの悪いこと全てを想像しては不安になってしまいます。 会社に解雇されたらどうしよう、テストで悪い点を取ったらどうしよう、 あの人は私のことを嫌っているんじゃないだろうか、 夕飯は何を食べればいいんだろう、家が火事になったらどうしよう、などなど、 とにかくなんでもいいんですが、不安で不安で仕方がありません。

こんな小さなことを、しかも実際に問題があるわけでもないのに 心配するのはやめよう、と思うのですが、どうにも気になって、 ちょっと心配事はとりあえず置いといて、明日までのレポートがあるから そっちを終わらせよう、というふうに心配事を頭の端に追いやることが できないんですね。とにかく心配することを止められないんです。

いつも常に心配してるために、疲れやすくなる、イライラする、 ボーっとする、眠れなくなる、緊張感が続く、などという症状も出てきます。 こういう状態が六ヶ月以上続くと、全般性不安障害と診断されます。

ただし、このような症状が薬物使用のためだったり、不安の対象が DSM IV AXIS I の他の障害に関するものである場合は全般性不安障害とは 診断されません。たとえば摂食障害の人が体重の増えることを常に心配していたり、 社会恐怖症の人が人前に出ることに不安を感じたりする場合、それは全般性不安障害 ではありません。この障害のポイントは、ある特定のことだけを心配するのではなく、 日常生活の些細なことすべてが不安や心配の種になることなのです。だから 全般性、なんですね。

全般性不安障害はとてもよくある障害で、アメリカでは全人口の約4%が DSM IVでのこの障害の基準に当てはまるといわれていますが、治療を求めるほど 重い症状の人は少ないようです。

原因
まず最初に考えられるのが遺伝的要素です。不安になりやすい性格が 遺伝的な要素をもっていることは多くの研究で明らかにされていますが、 最近では全般性不安障害という障害自体も 遺伝するのではないかという考えも出てきています。

他の原因としては、この障害をもちやすい人というのは無意識のうちに 危険に対してとても敏感であるということです。少しでも危険なことが 起こる可能性があるとそれを敏感に察知し、その少しの可能性に無意識のうちに とらわれてしまうのです。しかしこの敏感な反応はイメージを伴わないため、 その内容が具体化しません。つまり小さなことでもあまりにいろいろなことをいつも 心配しているため、一つ一つの心配ごとについてよく考える余裕がないんですね。 だから解決法を見い出すことも出来ず、心配の種はいつも心配の種として 残ってしまいます。この過程は、問題を具体化するのに必要な イメージを作らないことでそのイメージに伴う更なる不安を避けているために 起こるものです。わかりやすく言うと、何か問題が起きてそれを解決しようと したら、その問題について具体的に詳しく考えなくてはどうやって解決したら いいかもわかりませんよね。でもその問題について考えればそこにある 不安な気持ちにも向き合うことになるわけです。

例えば入りたい大学が あってでも成績が足りない、という問題があるとき、それを解決しようと したら、どうやって成績を上げるか、今の成績のままで入れる確率は どのくらいか、他の大学出はなぜダメなのか、なんてことを具体的に 考える必要があります。でもそういうことを考えるということは、 自分の成績が足りない、入りたい大学に入れないと思う、という いやーな気持ち、不安を感じずには出来ないわけです。だってそこに不安が あるから問題になったわけで、問題とは常に(少なくともちょっとの)不安と 一緒にあるものだからです。それが、全般的不安障害にかかりやすい 人というのは、その問題以外のどうでもいいような小さいこと、 ありとあらゆることまで心配することで、本当の大きな問題と直接 向き合うことそしてそこに伴う不安な感情を避けているのです。 しかし、その感情を避け続けているうちは具体的に問題を考えることが 出来ず、その問題は長期化し解決されることはありません。

治療法
全般性不安障害に対する治療法は比較的弱く、まだあまり研究されていませんが、 徐々に進歩しています。


アメリカで一番多く処方されている薬はベンゾジアゼピン系の 軽い精神安定剤です。この薬には短期間での効果はありますが、同時に 認知、運動機能の低下(不注意になる、運転能力の低下など)、精神的、 身体的な依存(薬をやめるのが難しくなる)などの副作用もあります。 そのため、患者に短期間の大きな問題があるような場合のみ、 数日間分、長くても数週間分だけを処方することが多いようです。また 最近の研究では、抑うつ剤の方が副作用も少ない上にベンゾジアゼピン系の 薬と 同じくらいの効果が現われる、という結果も徐々に出てきています。

精神療法
全般性不安障害に対しての精神療法は、短期では薬と同じくらい、更に 長期ではそれ以上の効果があるとみられています。

1.不安についての基礎的な知識をもつ
まずは、不安のメカニズムについてと、不安や恐怖と、認知(考え方)、不安によって起こされる行動、身体的反応の関係について、基本的な知識をもつことが必要です。このことは、 「不安とは」に詳しく書いてあります。ここでは、 自己モニタリングの目的を理解し、それを毎日行うことも大切です。

2.リラクゼーション
次に、不安からくる緊張を、どのように抑えるかを学びます。これは、毎日不安で苦しんでいる人にとっては、不安の根源を見直すのと同じくらい、重要です。なぜなら、不安の根源は、不安を感じやすくする考え方にあるのですが、その考え方を直すには時間がかかり、その間にも毎日極度の不安を感じていると、心理療法そのものの効果を疑ってしまう可能性があるからです。根源を見直している間にも、なるべく本人が不安を抑えることが出来るように、認知的要素について話す前にリラクゼーションの方法や自律訓練法を紹介して、少しでも不安障害の症状を軽くする努力をしましょう。これによって、不眠、イライラする、疲れやすい、緊張感が続く、などの身体的症状が減っていきます。リラクゼーションの具体的な方法については、呼吸法とPMRがありますが、どちらも 「心理療法でよく使われるテクニック」に詳しく書いてあります。

3.不安を感じやすい考え方を直す
前の段階で、考え方と感情の深い関係を習ったので、ここでは、不安を起こしやすい考え方を、少しずつ直していきます。具体的には、「認知の歪みを直す」に書いてありますが、不安障害をもつ人は、何事も悲観的に考えてしまう傾向にあるので、その悲観的な考え方を見直すことで、不安の程度と、不安を感じる頻度を減らしていきます。例えば、「泥棒が入るかもしれない」とか「会社を首になるかもしれない」と、毎日たくさんのことで不安を感じている全般性不安障害をもつ人は、実際に家に泥棒が入る確率はどのくらいか、今までの人生の中で、何千日のうち、何日実際に泥棒が入ったことがあるのか、会社を首になることは、そんなに悪いことなのか、実際にはそのあとにどのような選択肢があるのか、また、そうならないために、心配するだけの他になにができるのか、など、不安の元となっている考え方そのものに挑戦していきます。日々たくさんの不安材料を抱えている人には、これはもうそれはそれは大変時間と労力のかかることです。しかし、毎日不安材料の一つづつをこうして検証していき、慣れていくと、それほど努力しなくても、自然ともっと論理的な、確率の高い、不安を起こしにくい考え方が出来るようになってきます。(例えば「泥棒が入る可能性はすごく低いから、心配しなくても大丈夫」とか、「首になってもまた仕事を探せばいいのよね」なんていう考え方です。)

4.イメージを伴う不安への曝露
さて、この曝露の段階でまず一番大事なのは、その人にとって何が本当の問題なのかを気付かせることです。日々感じている不安の対象をはっきりさせ、それらを「本当はたいしたことないもの」と、「本当に問題なもの」に分けます。「本当に問題なもの」つまり、不安を感じて当然なほどの問題を見つけたら、次は問題から逃げずにそれに直面し、イメージを伴った感情的なレベルでその問題について考え、それに伴う不安を感じさせます。このイメージを伴った不安というのがとても大事で、これによってそれまでの、すべてについて不安だけどなんで不安なのかどうすればいいのかわからない、だからまた不安になる、という不安の堂々巡りはなくなるのです。特定の問題以外の、日常生活での些細な事柄に対する不安は消え、また、その特定の問題への解決策を考える 余裕も出てくるというわけです。

これらの治療は子供たちにも効果があるとされ、ある研究では、 重度の全般性不安障害をもつ子供たちが認知行動療法と更に家族心理治療を 受けたところ、その子供たちの95%が 不安の程度をDSM IVにある基準の更に下(つまりDSM IVによればその程度の 不安では全般性不安障害とは 診断されないというレベル)まで低下させることができた と報告しています。

5.Time Management(時間の管理)
全般性不安障害をもつ人の中には、実際に日々、たくさんの心配するべきことを抱えている人もいます。例えば、仕事がとても忙しくて、家に帰れば家事もやらなければならず、その上、子供の受験で色々と気を使わなければならず、更に、3人の子供達と家のローンのために家計も苦しい、というような具合にです。そのため、それらのストレスと上手に付き合っていくことも大切になってきます。

まず出来ることは、たくさんあるやるべきことの中で、何が本当に大切なのか、何を一番にやらなければならないのか、と、やるべきことに順序付けをしていくことです。一日は24時間しかなくて、その中でも、健康に生きていくためには食事を取ったり、睡眠をとったり、ボーっとする時間を持ったり、と、他の色々なことをこなすには時間は限られています。なので、その「やるべきこと」を、絶対に今日やらなければいけないこと、今週中にはやらなければいけないこと、時間があったら出来ればやっておきたいこと、今月中にはやらなければいけないこと、いつでもいいけどその内にはやりたいこと、と、その緊急度によって分けていきます。そして、絶対にやらなければいけないこと、から、一つづつこなしていきます。時間がなかったり疲れているときには、今日中にやらなければいけないこと以外は、後日に回しましょう。こうすることで、やらなくてもいい事からやってしまい、疲れているにもかかわらず、絶対にやらなければならないことをしなくてはいけない、すなわち、ますますストレスと不安を抱えてしまう、ということが少なくなるはずです。

その他には、何に対しても完ぺき主義にならず、パーフェクトではなくても、とりあえずいいと思えるレベルまで出来たらやめること、一つの仕事にいつまでも、完璧に出来るまで取り掛かっていないこと、他の人に手助けしてもらえるように聞き、たとえその結果、自分がやった方がうまく出来るだろうになーと思っても、助けてくれた人のやった仕事に満足すること(ありがとう、も言ってね)、出来ないと思った仕事や事柄はきっぱり断る強さを持つこと、などが、ストレスを減らし、不安を減らす方法としては有効です。


最後に
全般性不安障害に対する治療法はまだあまりよく研究されていませんが、 とにかくすべてが心配で心配でたまらないという場合、とりあえず立ち止まって 何が本当に問題なのか、そしてそれをどうやって解決したらいいのか、 落ち着いてじっくり考えてみることが大切なようです。

注 意
このページに書かれている すべての情報は、私が個人的に教科書や他の文献をもとに集めたもので 必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せている つもりですが、間違いがあった場合には掲示板 あるいは メール にて教えていただけると本当に嬉しいです。

また、ほとんどの情報はアメリカで使われているDSM IVに基づいています。日本ではそうじゃない、ちょっと違う、などという点がありましたらどんどん指摘してください。
出来るだけ皆さんからの 情報も反映させて、良いページを作りたいと思っています。