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1.うつ病
(Major Depression)

1.気分障害の分類
2.うつ病 (Major Depressive Disorder)
3.気分変調性障害(抑うつ神経症) (Dysthymic Disorder)
4.躁鬱病(双極性障害)(Bipolar Disorder)


症状 原因 治療法

うつ病はアメリカでは最も多い精神障害で、人口の約17%が人生で一度はうつ病を経験すると言われています。気分が落ち込む、やる気がなくなる、わけもなく悲しくなる、などの状態は誰でも一度は経験するものですが、そのせいで仕事や勉強、毎日の生活にも影響が出てくる場合、心理療法を受ける必要性が生じる可能性が出てきます。うつ病治療の認知的行動的要素は、うつ病患者のみならず、その他の人達にとっても毎日を精神的に楽に、楽しく過ごすためには役立つものだと思います。また、一日中布団から出れない、食事やお風呂に入ることすらできない、などの症状が重いケースの場合は、薬物治療によって症状を軽減させる事も出来ます。

症状
うつ病と診断されるにはまずうつ病エピソードを経験して、更に、躁病エピソード、混合性エピソード、軽躁病エピソードを今までに一度も経験した事がないことが条件になります。うつ病エピソードの特徴は、気分がふさぐ、憂鬱になる、今まで楽しかった事に急に興味を覚えなくなる、イライラする、集中力がなくなる、食欲がなくなったり逆に今までより沢山食べてしまう、睡眠時間の増減、疲れやすい、理由もないのに罪の意識を感じる、死にたくなる、などの症状が毎日殆ど一日中、最低2週間続くことです。

DSM-IV上では、うつ病の診断をつける時にはその程度や性質など、注釈をつけることも多いです。うつ病の程度は軽、中、重と別れていて、重の場合は幻覚や妄想などの症状が表れる事もあり、その時はそれらの症状が状況に対して適切なものであるかどうかも知る必要があります。(気分調和・気分不調和) また、鬱の症状が2年以上続くと慢性型となります。更に、これが初めてのうつ病エピソードなのか、あるいは過去に何度か同じような状態を経験しているのかも治療に当たって重要になってきます。

うつ病には更にいくつかのタイプがあります。
(1)緊張病型:一日中布団から起き上がれない、体が動かないなどの症状が伴い、それが重い場合には話し掛けても何の反応も示さなくなったり、自分の力では食べることも寝返りを打つ事も出来ないこともある。
(2)身体症型:睡眠パターンの変化、食欲の増減、身体的な痛みなど、症状が体にあらわれる場合。
(3)非定型:うつ病によく見られる睡眠時間や食欲の減少とは反対に、普段より眠くなる、食欲が増す、などの症状を伴う。
(4)季節性うつ病:日照時間の短くなる秋や冬に見られるうつ病で、寒い時期の長い北の地方で多く見られ、概日リズム(circadian rythm)の乱れが原因と思われる。治療には高照度光療法が効果がある。
(5)産後うつ病:産後4週間以内に表れるうつ病。ホルモンバランスが関係していると思われる。


原因
気分障害には不安障害同様、様々な要素が関係しています。特にうつ病は、不安障害、特に全般性不安障害、恐怖症、パニック障害と多くの要因が重なっています。また、うつ病をもつ殆どの人達がうつ病の症状と同様に不安障害の症状を見せるのに対して、不安障害をもつ人達がうつ病の症状を見せるとは限らず、うつ病を引き起こす要因の一つとして「極端な不安」が挙げられるとも言えそうです。ここで述べるうつ病の原因の多くは不安障害の原因と重なりますが、これらの原因は一つ一つがそれのみでうつ病を引き起こしているわけではなく、いくつもの要素が重なり合って始めてうつ病を引き起こすようです。その為、同じ環境に置かれた二人、あるいは同じ要素を持つ二人でも、強く不安を感じるに留まる人と、うつ病を引き起こしてしまう人に分かれるのです。

1.遺伝など身体的要素: 不安障害など他の精神障害同様、うつ病にも遺伝の要素が関係しています。しかし、Diathesis-Stress Modelが提案するように、遺伝の影響は遺伝的な「脆弱性」、つまり「そうなりやすい性質」を作り出すだけで、例えばうつ病になりやすいからと言って必ずうつ病になるというわけでもなければ、うつ病になったからと言ってそれが遺伝のせいだと言うわけでもありません。また、うつ病に対しての遺伝的脆弱性はうつ病のみに有効なわけではなく、他の気分障害や不安障害を引き起こす可能性も高くなるようです。たとえうつ病への遺伝的脆弱性をもっていたとしても、その人がうつ病を発達させるか、不安障害を発達させるか、あるいは何も発達させないのか、それは環境や性格、文化や精神状態、他の身体的要素などに左右されるため、うつ病に遺伝は関連しているものの、その影響はそれほど大きいものとは言えないようです。

遺伝以外の身体的要素には、セロトニンなどの神経伝達物質(neurotransmitters)や、概日リズム(circadian rythm)などが含まれます。一般的にうつ病患者はセロトニンのレベルが低く、その為に感情をコントロールする事が難しいのではないかと言われています。また、コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレスの多い環境下ではコルチゾールのレベルが高いのですが、うつ病患者もコルチゾールレベルが高いことが分かり、しかもうつ病患者はコルチゾールの分泌を抑制する働きが低いらしいのです。その為、コルチゾールなどのホルモンもうつ病に関連しているのではないか、とも考えられています。

その他、季節性うつ病で明らかなように、うつ病には概日リズムも関係しているようです。概日リズムとは一日の中での人の体内リズムの事で、睡眠や日照時間と強い関連をもっています。概日リズムは一定の範囲内で人によって大きく違い、例えば一日何時間眠れば体が一番調子が良いか、何時から何時まで眠れば良いか、などです。大体の人は、夜の間、一日6時間から8時間眠るのが一番体に合っていると考えられます。夜の間は外も暗い為に眠り、日が昇って外が明るくなると起き、昼の間に活動してまた夜になって暗くなると眠る、と言うのが一般的です。しかし、様々な理由でこの概日リズムが崩されるケースも多くあり、例えば夜勤など夜の間働いている人達は、必然的に朝明るくなってから眠る事になります。不眠症など、なかなか夜眠れない人は睡眠時間も短くなって体のリズムが乱れがちだし、更に、アラスカや北部に住む人は冬の間日照時間が短い為、なかなか明るい環境で活動する事が難しかったりします。このように様々な理由で概日リズムに乱れが生ずると、うつ病にかかりやすくなるのです。もし概日リズムが一番の要因と見なされた場合は、明るい光にあたる(高照度光療法)、不眠症を治療する、乱れた生活ペースを元に戻す、夜勤などやむを得ない時には昼間眠る時には出来るだけ部屋を暗くし、夜仕事前に起きる時には出来るだけ明るくして昼間のような環境を作る、など、体のリズムを生活形態に合わせることが必要になってきます。

2.ストレス: 一般的に、悲しいことやショックなことを経験したり、心配事を抱えていたり、無理をして多忙なスケジュールをこなしたり、と、ストレス下にいる人はうつ病になりやすい傾向にあります。もちろん、ストレスを感じていてもうつ病にかからない人もいれば、ストレスを全く感じていなくてもうつ病になる人もいます。しかし、ストレスが強ければ強いほど精神的負担も大きく、結果的にうつ病のみならず、不安障害やアルコール依存症など、他の精神障害を発病する確率は高くなると言えるでしょう。

ここで大切なのは、様々な出来事に対する感じ方は、人によって大きく違う、ということです。他の人から見て大した事じゃないと思われるようなことも、本人にとってはものすごく辛い事かもしれないので、そんな時は「大丈夫だよ」「頑張れ」「悩むことないよ」など、本人の体験しているストレスを軽視するような発言は避けた方が良いようです。例えば、 失業は誰にとっても生活の大きな変化と、ある程度の感情の揺さぶりをもたらしますが、大学卒で親元で暮らし、近いうちに結婚の決まっている25歳の女性が失業するのと、体の弱い小学生の子供を二人抱えている40歳のシングルマザーが失業するのでは、その意味は恐らくかなり違うものになるでしょう。

別の例を挙げると、ある男性は会社の配置換えで新しい部署に移り、慣れない仕事に戸惑ってはいますが、新しいことに挑戦できる喜びでやる気も大いにあります。しかし、別の男性は、同じように配置換えで違う部署に移った為に、今まで20年間培った知識や能力を全く発揮できず、右も左も分からない状態で朝から晩まで20歳も年下の人達に文句を言われながら仕事をしています。この場合、起きた出来事は同じ「会社での配置換え」ですが、その出来事のもつ意味は二人にとって大きく異なっているでしょう。このように、ストレスとは「何が起きたか」よりも、その出来事がその人にとって「どんな意味をもつのか」によってその程度が変わってくるのです。その為、何が起きたのかを聞くことにはあまり意味はなく、その出来事を本人がどう受け止めているのか、を知ることが重要になってきます。自分の状況や周りの環境を悲観的に否定的に受け止めている人程、うつ病になる可能性は高いわけです。

3.認知的要素: 前の「ストレス」のところでも述べたように、その人が自分の状況や起こったことをどう捕らえるか、というのはうつ病の発病に大きく関わっています。一般的に悲観的、否定的な考え方をもつ人はうつ病になりやすいですが、それは、悲観的な人達は自分の今の状況を絶望的なものだと認識しやすく、また、自分にはそれをどうすることも出来ないと信じ、更に、これからも状況は良くならない、と思い込む傾向が強いからです。このように少しでも悪い事柄を実際よりも絶望的なものだと考えてしまう傾向をCatastrophizingと言い、その事柄を自分には処理できないものだと思い込んでしまう傾向をHelplessnessと言い、これからも状況はよくならない、と決め付けてしまう傾向をHopelessnessと言います。(「心理療法でよく用いられるテクニック:認知の歪みを直す」

更に、この中のHelplessnessの中でも特に、うつ病の場合は過去に自分にはどうすることもできない状況に陥ったために、他の出来事もどうせ自分には変えることは出来ないんだ、と思い込み、状況を改善する意思をもたなくなってしまうようになる場合があり、これをLearned Helplessnessと言います。このLearned Helplessnessには子供の頃に幼児虐待を体験したケースが多く見られます。それは、子供であった為にどうすればいいかわからず、また、周りの大人も信じてくれない、見て見ない振りをする、など、実際に虐待などのトラウマ的な出来事を改善することが出来なかった、という経験に基づいて、自分には悪い状況を改善することは出来ないんだ、と言う間違った考え方を学んでしまう為なのです。

このように悲観的なものの見方をすると、当然今の状況や問題、また将来に対しても不安を抱きやすくなり、精神的苦痛も大きくなるため、うつ状態に陥りやすくなるのです。

4.対人関係: うつ病と、周りの人達からの精神的支援には強い関係があります。一般的に、周りに精神的に支えてくれる友達や家族がいる人は、そうでない人と比べてうつ病になりにくく、また、うつ病になった場合にも回復が早いと言われています。上でも述べたように、強いストレスを受けたりつらい出来事があったりするとうつ病になりやすいのですが、その時に心の拠り所となる人が周りにいると、うつ状態に陥りにくくなるのです。一人で悩んでいると悲観的になってしまいがちですが、友達や家族に相談したり、その問題について話さなくても心の支えとなってくれる人が側にいてくれると、精神的にゆとりが出来て、問題や将来について、それほど悲観的にならずにすむのだと思います。

対人関係の中でも特にうつ病に関係する大きな要素として、夫婦関係が挙げられます。夫婦の間がうまくいかなくなるとうつ状態になりやすく、また、うつ状態になると夫婦の関係は更にうまくいかなくなる傾向にあるのです。この傾向には男女差が見られ、アメリカの研究の結果によると、一般的に男性は、うつ病になると妻と精神的に距離を置くようになり、夫婦間で問題が起こりやすく、女性の場合は、夫婦で問題が起こり始めるとうつ病にかかりやすくなるようです。つまり、夫婦間の問題とうつ病との因果関係が、男女の間では逆になっていると考えられるようです。

このように、周りの人達との関係や精神的支えというのはうつ病に強い影響をもっていて、その為、対人関係を改善させることによってうつ病を改善する、という心理療法もある程なのです。(対人関係療法)しかし、他の心理療法でも、本人の社会的スキルや対人能力を向上させることによって対人関係を改善し、周りの人とより良い関係を築くことはうつ病からの回復に欠かせないものと考えられています。

治療法
薬: うつ病の場合、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressants)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAO inhibitors)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、選択的セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)などに代表される、坑うつ剤の投与は多くのケースで見られます。うつ病の場合、他の精神障害に比べて自殺の恐れが高い為、重度のうつ症状がある患者には、薬の服用によって症状を比較的短期間で改善する必要があります。しかし、薬で症状は改善されても、慢性的うつ病や複数のうつ病エピソードを経験している場合は特に、再発を防止することが重要なため、長期に渡る服用が必要な場合が多く、うつ病の症状がなくなっても薬を飲み続けることが大切な時もあります。

心理療法: うつ症状を軽減させるに当って、まず最初の第一歩は、自分の中にうつ状態を維持している「何か」があるらしい、ということを理解することです。これは直接的に、「このせいで自分は落ち込むんだ」「これをなくせばうつ状態から抜け出せるんだ」というような、原因、という意味ではなく、うつ症状を軽くするために、自分にも何かできるんだ、ということを実感するという意味です。そこでまず最初に必要になってくるのが、自分はどれほど頻繁に、どの程度落ち込むのか、そしてどのようなうつの症状が出ているのか、それを知ることです。

たとえば、症状が軽い場合は、毎日半日ぐらいはなんとなく気分が落ちこんで、何事にもやる気が出ない、というのみに留まっていても、症状が重くなってくると、一日中、朝起きてから夜寝るまで常に自分がなんの存在価値もないと思え、訳もなく罪悪感を覚え、生きていること自体が無意味で苦痛を伴い、もういっそ死んでしまいたい、と思い続けるかもしれません。毎日文字通り泣いて暮らしたり、体を動かす気力もなくて布団から一歩も出られない、という場合もあります。この場合はうつ状態の頻度も高く、程度も重いわけです。その症状も、前者の場合は「気分が落ち込む」「やる気が出ない」となりますが、後者の場合はそれに加え、「罪悪感を感じる」「死んでしまいたいと思う」というふうに、更につらい症状が出るわけです。こうして自分の症状やその頻度、程度を自分で観察して記録することを、セルフモニタリング(serf-monitoring)と言います。セルフモニタリングには、自分のうつ症状の状態を客観的に知るという目的がありますが、それ以外にも、自分で客観的にモニターすることによって、どういうわけだか症状が軽くなる、という利点もあります。なぜ軽くなるのか、その原因は良くわかっていませんが、セルフモニタリングにはその行為自体に、本人の気持ちを楽にする効果があるようです。

うつ病の回復にはさまざまな心理療法が効果的とされていますが、ここではアメリカでもっとも人気のある、認知行動療法と対人療法について書いてみたいと思います。

認知行動療法 認知行動療法とは、クライアントの物の考え方(認知的要素)と日々の過ごし方(行動的要素)に焦点を当てたものです。この二つの要素をどのくらいの割合でとりあげるのか、それは個人やその状況、症状によって変わってきますが、一般的に、まず最初に行動的要素から入り、うつの状態を少しでも軽くしてから認知的要素について考えていくようです。これは、クライアントの行動を変えることによる効果は比較的すぐ表れるのに対して、考え方を変えるのには結構時間がかかってしまうからのようです。うつ状態でつらい思いをしているクライアントにとっては、まず、行動を変えていくことによって少しでも気持ちを楽にすることが先決で、うつ症状に強い関わりをもつ「物の考え方」については、それからゆっくり変えていきましょう、ということですね。そしてこの療法を始める前に大切なのが、なぜうつ症状を軽くするのに考え方や行動を変えていく必要があるのか、を知ることです。そのためまず、感情、考え方、行動、そして頭痛や胃痛など体に症状が出ている場合は身体的反応の関係についてを知る必要があります。これらの関係については、「心理療法でよく用いられるテクニック」に詳しく書いてあります。

行動的要素とはつまり、その人が一日をどのように過ごすか、ある事柄に対してどのような行動を取るか、ということです。具体的には、うつ状態の人は大抵の場合、あまり何かをやる気力が起きず、できれば何もしたくない、と考えがちです。しかし、何もしたくないから、と、本当になにもせずにぼーっと過ごしていると、結局体が動いていない分、頭の中で色々と考えてしまうんですよね。うつ状態の人が目的なく何かを考えるとき、それは大体自分のうつ症状についてか、自分についての悪い部分についてです。そしてそれは、考えれば考えるほど悪化しがちです。例えば、「あーなにもしたくない」「なぜ自分はこんなに落ち込んでいるんだろう。理由もないのに、こんなのおかしい」「自分は変なのではないか」「社会の一員として、こんなことでは許されない」「もっと頑張らなきゃいけないのに、なぜ頑張れないの」などなど、考えれば考えるほど、自分がだめな人間のように思えてきます。行動療法の第一歩とは、こういう時間をなるべく減らしましょう、というものです。その方法は色々ですが、一番簡単なのは、タイムスケジュールを作ることです。自分にやる気があるないに関わらず、この日のこの時間はこれをしましょう、と、自分で自分に時間割を作るのです。もちろん時間割を作ったところで、100%その通りにいくことはありません。でも、それはそれでいいのです。大切なのは、ただ何もせずにぼーっとしている時間を減らす、ということです。ですから、時間割にはやらなければならないことの他にも、自分がかつて好きだったこと、今でも少しなら楽しめること、というのをたくさん入れましょう。そしてその時間がきたら、嫌だなーと思っても、とりあえずそれを始めてみるのです。それでやっぱりどうしても嫌だったら、何か他のことをすればいいのです。一見単純な方法に思えますが、うつ状態でなにもしたくない、なにをしてもうまくいかない、なにもしなければ余計落ち込む、という悪循環にはまってしまっている場合、この方法はなかなか効果的です。

うつ状態の中でも、ただ落ち込んだりやる気がなくなるという以外に、人と話す時緊張してしまう、自分がうまくやれるか心配になる、など、不安的要素も多く見られる場合は、PMR呼吸法などを使って、体をリラックスさせて不安を軽減する方法を学ぶ場合もあります。

認知的要素とは、物事に対してどのような解釈をするか、ということです。うつ状態になりやすい人は、物事を必要以上に悲観的に捉えてしまう傾向にあります。例えば自分が何か失敗したとして、それを必要以上に大ごとに考えてしまったり、自分のことを責めてしまいがちなのです。そのため、うつ状態に陥ってからもそんな状態の自分が許せなかったり、もっと頑張らなければいけないのに、と自分に更なるプレッシャーをかけ、結果的にうつ状態が悪化する、という場合もあります。気分が落ち込むことは誰にでもあることですが、何もしたくない、誰とも会いたくないと感じて、少しぐらい何もしなくても家にいても、一日ぐらい仕事を休んでもいいだろう、というふうに思えれば、うつ状態と言うのはしばらくすると自然に軽くなる場合も多いのです。しかし、たとえ何もしていなくても、仕事を休んでも、「何もしたくないなんておかしい」「仕事をサボっているなんて、本当はとてもいけないことだ」というふうにその状態をとても悪いことのように考えたり、「これからずっとこんな気持ちのままなんだ」「良くなることなんてない」と先のことに対しても悲観的になったりすると、ますます気分は落ち込み、症状も重くなるのです。そしてうつ状態になりやすい人というのは正に、あらゆる事柄に悲観的になりやすい人の場合が多いようです。そのため、必要以上に物事を悪く捉えないような考え方をする必要があります。

これは言葉にしてしまうと簡単なようですが、考え方を変えるというのは実際とても大変で、時間のかかるものです。考え方というのは自分では普段あまり意識しないもので、たとえそれが悲観的だろうと、歪んでいようと、その考え方で日常を生きていると、なにか事柄が起こった時、ほとんど自動的にその考え方を使ってしまうものです。ですから、最初は自分がどんな考え方をしているのかもよくわからないし、それを変えようと思ったところで、なかなかうまくはいきません。しかし、だからといって、自分では変えられない、というわけではないのです。時間をかけて根気強くやっていくうちに、自分が一番楽に呼吸ができ、しかも社会的にも受け入れられる、悲観的でも楽観的でもないニュートラルな考え方、というのが身に付くはずです。この、認知のゆがみを直すことについては、「心理療法でよく用いられるテクニック」に詳しく書いてあります。

対人関係療法 対人療法とは、対人関係がうつに強く関係している(対人関係)ことを受けて、うつ状態の人の対人関係を改善することで、うつ症状を和らげよう、というものです。実際に、うつ状態になると何事にもやる気が起きず、人にもあまり会いたくないと思うようになります。しかし、何もせずに一人でいると、考えはどんどん悲観的、絶望的になり、症状が悪化する恐れがあります。そんな時、周りの人とより良い関係を作ることで、自分が悩んでいることを聞いてもらったり、そのこと自体については触れなくても、一緒になにかをしたりおしゃべりをしたり、人間関係が心の支えになることが多いのです。

最後に
上の説明だけを読んでいると、うつ病を治すのは簡単に思えるかもしれません。また、うつ病でも軽度の場合は、気分が落ち込む、やる気が起きない、などの、誰にでもあるような症状のため、あるいは「本人の気の持ちようでどうにでもなるじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、うつ状態と言うのは、どうして落ち込んでしまうのか、エネルギーが沸いてこないのか、イライラするのか、どうして前みたいに明るく楽しく精力的に活動することができないのか、本人が一番理解に苦しみ、どうにかしようともがいているものです。実際のカウンセリングは、上記の治療法に書かれていること以外の様々な要素やテクニックを含み、その人その人に合わせた様々なやり方で進められていくものです。それでも場合によっては時間がかかってしまうものです。うつ状態になったり、周りの人が落ち込みがちになった時は、まず、「なぜ普通にできないのか」と自分やその人を責めるより、「もっとがんばらなきゃ」と更なるプレッシャーをかけてしまう前に、専門家に相談して自分自身に手を差し伸べてあげることが大切です。

注 意
このページに書かれている すべての情報は、私個人が教科書や他の文献をもとに集めたもので、 必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せているつもりですが、 間違いがあった場合には、掲示板あるいは メールにて一言教えていただけると 本当に嬉しいです。

また、ほとんどの情報はアメリカで使われているDSM IVに基づいています。日本ではそうではない、ちょっと違う、などの点がありましたらどんどん指摘してください。
出来るだけ皆さんからの情報も反映させて、より良い ページをつくっていきたいと思っています。