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DSM IV
不安障害
1.不安とは
2.全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder)
3.心的外傷後ストレス障害(PTSD/Posttraumatic Stress Disorder)
4.強迫性障害(OCD/Obsessive-Compulsive Disorder)
5.パニック障害(Panic Disorder)
5.社会恐怖症(Social Phobia)
6.恐怖症(Phobia)


4.強迫性障害
(Obsessive-Compulsive Disorder/OCD)
症状
原因
治療法

強迫性障害(OCD)は時間をかけて徐々に発達していく障害で、治療をするのは 比較的難しいといわれています。その症状の度合は本人の気分や状況によって 変わることもよくあるようです。たとえば気分が良い時にはあまりその症状が出ないのが、何か問題が起きたり不安を感じた場合には症状の出る頻度も高くなり、より極端になる、という具合です。OCDは英語で言うとObsessive-Compulsive Disorderでその名前の通り、この障害はObsession(強迫観念)かCompulsion(強迫行為)のどちらか、あるいは両方の要素をもっています。強迫観念とは不適切な衝動や考えのことで思想をさし、強迫行為はその思想に対応して起こる儀式的な行動(ritualistic behaviors)のことをいいます。どちらも本人にとってはどうすることも出来ないと感じられるもので、その人はこれらの要素に対して無力感(out of control)をもつというのが特徴です。詳しくは次の「症状」に書いてあります。


症状
OCDをもつ人は強迫観念か強迫行為どちらか一つ、あるいは両方の要素をもっています。

強迫観念 = 繰り返し起こる不適切でどうにも抑えきれない考え、衝動、あるいはイメージ。これらの考え、衝動、あるいはイメージは普段の生活に関する心配事が単に大きくなったというようなものではなく、本人は極端な不安や苦痛を感じ、それらを無視するかあるいは他のことを考えたりしたりして気を紛らわせようとします。また、このような考えや衝動、イメージをもつ本人はそれらが論理的にありえないこと、ばかばかしいことだとわかっていますが、その考えなどがあまりにも強いために、頭の中から追い出すことが出来ません。その内容は時としてとても極端で奇妙なこともあります。

強迫行為 = 強迫観念(不適切な考え、衝動、イメージ)を抑えるために繰り返し行われる行動で、それは実際に行われる目に見える動作もあれば、頭の中でだけ行われることもあります。目に見える行動の例としては、「一日に何百回も手を洗う」「物の順番を揃える」「何度も同じことを確認する」等があり、頭の中で行われることの例では、「神に祈る」「数を数える」「同じ言葉を頭の中で繰り返す」等があります。

これらの行動は必ずしも強迫観念に基づいているわけではなく、単にそれらをきちんとこなすことが規則であり、その規則に厳正に従うことだけを目的に行われる場合もあります。これらの強迫行為は本人の苦痛や不安をなくす、あるいは和らげるために行われたり、あるいは何か恐ろしい出来事が起こったり、ひどい状況になるのを防ぐために行われます。しかし実際にはその行動は、恐ろしい出来事や本人の苦痛とは何の現実的な関係もなかったり、たとえあったとしてもそれを防いだり和らげたりするのには、その行動をやりすぎていたりします。例えば、そうしないと自分は死んでしまうという強迫観念につき動かされて、毎日一時間ごとにベッドの下にもぐる人がいるとします。しかし実際には、その二つの要素には何の関係もありませんよね。ベッドの下に潜ったから自分はまだ生きていられるのだ、あるいは今日は潜らなかったからもう死んでしまうのだ、というのは論理的ではありません。

他の例としては、火事になるという強迫観念を抑えるために一日に300回、ガスコンロに火がついていないことを確認しなければいけないという人がいるとして、ガスコンロをチェックすること自体は火事を防ぐのに有効ですが、300回というのは明らかにやりすぎです。本人も、「自分が死ぬ」「火事になる」という考えそのものに加えて、「ベッドの下に潜る」「300回確認する」という行動も非論理的でばかばかしいことだとわかっているわけですが、それらの衝動や考えはとても強くて頭の中から追い出すことが出来ず、行動することによってその強迫観念が弱くなったり、強迫観念によってもたらされる不安や苦痛が和らぐために、そういった非論理的な行動を起こさずにはいられないのです。子供の場合には、こういった強迫観念や強迫行為が非論理的だとは気付かない場合もありますが、大人がOCDをもっていてなおかつその非論理性に気付かない場合、「低洞察力の強迫性障害(OCD With Poor Insight)」と診断されます。

OCDをもっている人は、儀式的行動をしたり強迫観念をどうにか頭の中から追い出そうとするのに少なくとも一日に1時間以上は費やします。この障害が重度になると、一日の大半の時間を儀式的な行動に取られて外へ出ることも他の何かをすることも出来なくなります。たとえ時間は取られていなくても、この強迫観念や強迫行為によってその人の日常生活、学校、仕事場などで社交性や人間関係に支障をきたします。しかし、もし他のAXIS Iの精神障害をもっていて強迫観念の対象がその精神障害である場合は、OCDとは診断されません。例えば摂食障害の人が食べ物について不安を感じたり、身体醜形障害の人が自分の容姿に固執したり、心気性の人が、自分は大きな病気にかかっているのではないかと心配してどうしようもない時、それはOCDではありません。更に、こういった症状が薬物やお酒などの影響である場合もOCDとは診断されません。


原因
強迫性障害(OCD)の原因の大きなものの一つに、遺伝や脳障害などの身体的なものがあります。普通、OCDは強迫観念の発達から起こり、やがて儀式的行動(強迫行為)へと発展していきます。OCDが最初に起こる原因としては、セロトニンの量に問題があると見られています。そしてOCDが発達していく(悪化していく)過程では、身体的要素に加えて学習的な要素もあるようです。儀式的行動(強迫行為)によって不適切な考えや衝動、イメージ(強迫観念)による不安が和らぐことを覚える(学習する)に連れて、その行動の頻度が増えてどんどん極端になっていく、つまりOCDがより重くなっていくのです。


治療法
OCDの原因の一つは生物学的な異常ですから、治療も、それらの異常(遺伝や脳障害など)によって乱されたセロトニンの量をコントロールすることが一番重要とされています。今の段階では抗うつ剤が最も有効な薬とされていて、それでもセラトニンの量が正常にならない場合、脳内手術でセロトニンの量をコントロールすることもあります。しかし、薬だけの治療だと、患者さんのなんと約90%が、薬の投与を止めた後にOCDを再発させてしまうというデータもあり、心的療法も不可欠とされています。 

精神療法 「原因」の所でも述べたように、OCDが最初に起こってしまう原因は脳障害や遺伝など、生物学的なものです。だからその生物学的な異常を治さない限り、OCDを治すことは出来ません。しかしOCDが悪化していく過程では、儀式的行動(強迫行為)が強迫観念によってもたらされる不安などを和らげてくれることを一度覚えてしまったために、その症状がますます重くなるという学習的な要素もあるため、その一度学んだ考えをもう一度逆の方向に学習していく必要もあります。そのためには行動療法(Behavioral Therapy)が有効だとされています。行動療法では、患者がCompulsionとしての行動を起こすのを文字どおり、食い止めます。一日に50回も手を洗う患者には、飲みたい時やトイレの後など洗う必要のある場合以外は、水道のない部屋にいさせるなどして水に触れさせません。最初は「無理矢理やめさせる」といった感じで厳しいものですが、強迫行為を制御された患者は次第にその行動に執着しなくなり、症状は良くなっていくと言われています。しかしこれはあくまでも、薬物療法などで脳内のセロトニンの量をコントロールした上で行われて初めて有効なわけで、この行動療法だけやっていてもOCDを治すことは出来ません。

最後に
OCDとは、とにかく、自分がなぜこう考えてしまうのか、なぜこのイメージが自分につきまとうのか、そしてそれらを消すためになぜこの行動をしなければならないのか、周りの人にはもちろん、その本人にもまったくわからないという精神障害です。まったくわからないけれど、どうしてもこの考えを、衝動を、そしてこの不安と苦痛を頭の中から追い出したり心の奥から取り除くことが出来ずに、儀式的な奇妙とも見える行動に走ってしまうのです。ここには精神的な強さや性格、人間性は一切関係していません。ただ脳の中に異常があるというだけなので、薬を飲んだりまたは他の方法でその異常を治す治療をするしかありません。



注 意
このページに書かれている すべての情報は、私個人が教科書や他の文献をもとに集めたもので、 必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せているつもりですが、 間違いがあった場合には、掲示板あるいは メールにて一言教えていただけると 本当に嬉しいです。

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