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DSM VI
不安障害
1.不安とは
2.全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder)
3.心的外傷後ストレス障害(PTSD/Posttraumatic Stress Disorder)
4.強迫性障害(OCD/Obsessive-Compulsive Disorder)
5.パニック障害(Panic Disorder)
5.社会恐怖症(Social Phobia)
6.恐怖症(Phobia)
パニック障害
(Panic Disorder)

症状 原因 治療法

パニック障害とは、パニック発作と呼ばれるものを経験した人が、その発作に伴って極度の恐怖を感じ、発作が起こることを常に不安に思い続けている状態になってしまう障害です。ということは...そうです、パニック発作を経験しない限り、パニック障害にはなりません。では、パニック発作とはなんでしょう??

パニック発作とは、危険に対応するための心理的、身体的反応が、実際に危険はないのに起こることです。動悸、汗をかく、足が震える、立ち眩むなどの反応は、本当は危険に対処するために体が自動的に行うものですが、パニック発作では何の危険もないのに突然そうした反応が起こるのです。この発作は比較的短時間(平均で数分〜15分程度)で自然に収まりますが、発作の起こっている時には急激な不安や恐怖に襲われます。

パニック発作には三種類あります。
(1)ある状況におかれると必ず発作が起こる。(Situationally Bound/Cued Panic Attack)
(2)発作が起きるのはいつも同じ状況下だが、その状況になると必ず起こるというわけではなく、起きる時もあれば起きない時もある。(Situationally Predisposed Panic Attack)
(3)状況に関係なくまったくランダムに起こる。(Uncued-Unexpected Panic Attack)

アメリカでは、パニック障害は主に思春期の終わりから30代半ばまでの女性に多く、その殆どの人たちが他の不安障害も抱えているようです。また、うつ病や広場恐怖症 との関わりも深く、時にはあまりにも発作を恐れるあまり、身体的に興奮したり体に刺激を与えるものや状況(スポーツなど)を避けるようになることもあります。


症状
パニック発作の症状には、一般的に次のようなものがあります。(次にある全てではなく、そのうちのいくつか)
心ぱく数が上がる。汗をかく。震える。息が苦しくなる。胸部の痛み。喘息のようになる。立ち眩みや気を失って倒れる。現実感がなくなったり、自分が自分の体から離れて遠ざかっていくような気がする。気が狂うのではないかという恐怖。死ぬのではないかという恐怖。感覚がなくなる。寒気がしたりのぼせたりする。

この中でも特に、気が狂うのではないか、死ぬのではないかという、破局に対する恐怖(Catastrophic thoughts)はパニック障害には重要で、この恐怖のために、普通なら自然に収まっていく発作がパニック障害へと更に発達してしまうのです。パニック障害に発達すると、パニック発作が起こってしまうことや、その結果ひどく悪いこと(心臓麻痺や死など)が起こるかもしれない、ということに、常に不安を抱くようになります。

パニック障害をもつ人の多くは、同時に他の不安障害ももっていると言われています。特に、パニック障害が悪化するとそれが行動化し、発作の起こりそうな活動や場所、起こってしまうと困る場所などを避けるようになります。(広場恐怖症

原因
他のあらゆる心の病気と同じように、パニック障害にも、もともとなりやすい資質、というのがあります。遺伝などもありますが、特に不安に対してとても敏感で、不安だと感じることは良くないことだと思ってしまうというのがよくある傾向です。パニック障害が起こってしまう一番大きな原因が、この、不安と感じることとパニック発作に対する恐怖です。アメリカでは、全人口の8%から12%が、人生で少なくとも一度はパニック発作を経験する、という研究結果がいくつか出ています。しかし、その中でパニック障害に発達してしまうケースは、3%ほどなのです。その他の人たちは、パニック発作を経験したにもかかわらず、ストレスやその時特有の状況が発作を起こしたものと考え、発作そのものをそれほど怖がることはないんですね。

しかし、パニック発作からパニック障害へ発達してしまうケースでは、その一度の発作があまりに極度の不安を起こしたため(心臓麻痺で死ぬかもしれない、頭が狂うかもしれない、自分をコントロールすることが出来なくなるかもしれない、などと考える為)、次の発作が起こるのを常に恐れている状態になってしまうのです。

なぜパニック発作をそれほど重要視しない人と、極度の恐怖を感じる人がいるのでしょうか。そこにはいろいろな原因が考えられますが、例えば過去に心臓発作を起こした経験があったり、家族や身近な人が発作で死亡しているために発作そのものに敏感になっているケース、健康や病気についての怖い話や注意などを常に聞いて育っている場合、などが主なケースのようです。

そのようなケースでは、パニック発作は身体的に何の害もないにもかかわらず、発作が起こると死に至るのではないか、気が狂ってしまうのではないか、意識を失うのではないか、など、発作に伴う身体的な症状(動悸、発汗、胸部の痛みなど)を間違って解釈してしまうことがあります。また、そういう発作に伴う身体的な症状を、最初の発作の時に経験した恐怖や痛みなどと関連付けてしまい、発作が起こると自動的に恐怖や痛みが起こってしまうために、更に発作に対する恐怖が深まってしまいます。この、身体的症状の間違った解釈や、恐怖などの感情との関連付けによって、パニック障害は維持されていくのです。

広場恐怖症
広場恐怖症とは、パニック障害が悪化して行動化した場合に起こる恐怖症です。広場恐怖症を伴うパニック障害の場合、パニック発作が起こりそうだと感じられる場所や、発作を起こしそうな活動、発作が起こったら困る場所などに恐怖を感じ、その場所に行くことやその活動をすることを避けるようになります。

パニック発作が起こりそうだと感じられる場所
広場恐怖症を伴うパニック障害の場合、一番最初に発作が起こった場所を避けるようになるケースが多いようです。例えば、最初にあるスーパーで発作が起こったとすると、そこへ行くとまた発作が起こるような気がして、そのスーパーには行かなくなったりします。そうすると、そのまま放っておけば、その「避ける」という行動が一般化し、最初は発作の起こった特定のスーパーだけを避けていたのが、段々と、場所に関わらずスーパーそのものに行くのも怖くなり、少しでもスーパーと共通する要素のある場所、例えばデパート、コンビニ、ひいてはたくさん人の集まる銀行や駅などにも恐怖を感じるようになり、それが重くなると一歩も家から外に出られなくなったりもします。

パニック発作を起こしそうな活動
パニック発作が起こるときには、必ず発作に伴って身体的な症状(動悸、発汗など)があらわれます。広場恐怖症を伴うパニック障害の場合、その身体的症状を経験することによって、逆にパニック発作が起こってしまうかもしれないという恐怖が発達し、動悸や息切れ、発汗などを起こす活動を避けるようになるケースもあります。よくある例としては、階段を走って上る、サウナなどの室温も湿度も高い部屋にいる、スポーツをする、恐怖映画を見る、Hをする、などの活動が避けられることが多いようです。

パニック発作が起こると困る場所
パニック障害をもつ人のなかには、発作が起こると困る場所、というのを考えて、その場所には行かなくなる人もいます。例えば、パニック発作が起こると気を失うかもしれない、と思う人は、大勢の人の前で意識がなくなって倒れるのは恥ずかしい、と思うかもしれません。発作が起こると気が狂って、自分が何をしてしまうか分からない、と思う人も、人がいるところで発作が起こると困ると思うでしょう。発作が死に至るかもしれないと思う人は、知っている人がいないと、病院などに連れて行ってもらえなくなり、そのまま死んでしまうかもしれない、と思うかもしれません。また、車を運転している時に発作が起こると、それが事故につながるかもしれないと考えて、車の運転が怖くなる人もいます。そうなると、結果的に、人が大勢集まる場所(駅やスーパーなど)が避けられたり、知っている人と一緒ではないと、一人ではどこにも行けなくなったり、車の運転も出来なくなったりするのです。また、発作が起こっても簡単にそこから逃げ出せない場所(映画館や電車の中,エレベーターなど)も、避けられることがあります。

治療法
 パニック障害は、それに伴う極度な不安と恐怖を抑えるために、薬が処方されることが殆どです。その中でも、アメリカでは、ベンゾジアゼピンやベータブロッカーなどの坑不安剤や、比較的副作用の少ないSSRIなどの薬が処方されることが多いようです。特にベンゾジアゼピンなどの坑不安剤は、即効性が高く、飲むと比較的すぐに不安が抑えられることから、パニック発作が起こりそうな時の緊急時用の薬として処方されたりもします。しかし、アメリカではいくつかの理由から、パニック障害には薬のみよりも、認知行動療法のみ、あるいは薬と心理療法の両方で治療する方が効果的だと考えられています。その理由を見てみると...

1.一番の理由は、薬を飲んでパニック障害の症状が消えても、薬を飲むのを止めたあと、またパニック障害の起こる可能性がとてもとても高いということ。これは特に、即効性の高い坑不安剤において言えるもので、薬のみの治療を受けている場合はもちろん、たとえ同時に心理療法を受けていたとしても、薬と心理療法を止めたあと、長期で見るとまたパニック障害を発達させているケースがとても多いです。

2.薬と心理療法を同時に受けていた場合、心理療法によって不安が減ったとしても、ただ単に薬が効いているんだ、と思い込んでしまい、薬を止めたあとでまた症状が出ることがあります。

3.緊急時用の薬が「お守り」のような存在になってしまうことがあり、それなしではどこへも行けない、という風に、不安や恐怖を改善するどころか、逆にそれを助長させてしまう可能性もあるのです。

4.薬を飲むことによって、不安やパニック発作が抑えられてしまいます。もちろんそれが薬を飲む目的だし、それ自体はいいことなのですが、心理療法を成功させるには、不安やパニック発作を、最初はセラピストの指示の元、たくさん経験することが必要になってきます。そのため、薬によってそれが抑えられてしまうということは、どうしても、心理療法の効果も低くなってしまうのです。また、不安や発作が減ってくると、心理療法を受けよう、という動機を保つのも、難しくなってしまいますよね。薬のみでは、長期で見るとまたパニック障害が起こる可能性がとても高いとしても、薬を飲んでる限りでは、極度の不安や恐怖は感じないわけですから、心理療法を受けていたとしても、クライアントの身の入り方が違ってしまったりします。

そんなわけで、最近のアメリカでは、心理療法のみ、あるいは心理療法と即効性の低い(つまり時間をかけてゆっくり効果の出る)薬を同時に使った治療が、一番効果があるとされています。では、その噂の(笑)心理療法を見てみましょう。

心理療法
  (1)不安の機能とパニック発作の3つの要素を理解する。(教育)
パニック障害の心理療法で大切なのは、患者さんが「不安」の本来の機能について理解し、パニック障害が起こる背景には、不安やパニック発作の認知、行動、身体的反応の要素が深く関係しているということを理解することです。感情(この場合は不安や恐怖)、認知(考え)、行動、身体的反応の関係については、「心理療法でよく使われるテクニック」にも書いてあります。 パニック障害の場合の認知的要素とは、発作が起こった時に、「死ぬかもしれない」とか「ものすごく悪い事が起きる」と考え、発作に対して極度の恐怖を持つことです。行動的要素とは、パニック発作に伴う極度の恐怖を避けるために、パニック発作を起こしてしまう可能性のある場所や活動を避けることです。また、身体的反応とは、パニック発作に伴う心拍数の上昇、発汗、立ちくらみなどのことです。パニック障害が起こるのは、この三つの認知、行動、身体的反応がループを作り、お互いの存在がそれぞれを維持、助長しているからです。

例えば、熱くてむっとしている地下鉄の駅にいると、汗をかいたり動悸がしたり、時にはくらくらすることがありますよね。パニック発作を体験したことのある人は、それらの体の反応が発作の始まりを意味していると考え、「発作が起こるかもしれない!」という恐怖を体験します。パニック発作が起こったら心臓発作が起こって、そのまま死んでしまうかもしれない、と思ったら、それはものすごく怖いですよね。それからは、地下鉄に乗る必要がある時はいつでも、いつパニック発作が起こるか、起こったらどうしよう、という不安を体験することになるのです。そしてその恐怖が、もう地下鉄には乗らない、という風に行動に表れてきます。しかし、今度は地下鉄ではなく、少し閉鎖感のある普通の電車の駅に行くとします。すると、駅という状況や、電車、構内アナウンス、ホームに立っている人たちなど、「地下鉄の駅」を思い起こさせるさまざまなものがそこにはあって、それによって過去に地下鉄の駅で起こったパニック発作のことを思い出し、それによって不安を感じます。怖かったことを思い出すわけですから、当然不安になりますよね。しかし、不安には、そうです、心臓のドキドキや発汗など、体の反応が伴うわけです。すると、その反応を受けて、また発作が始まるかも!という不安が更に大きくなるのです。きっと今度は地下鉄だけでなく、駅そのものを避けるようになるでしょう。このように、パニック発作や不安には、認知、行動、身体的反応の「輪」が不可欠なのです。この三つの要素の「輪」を理解することが、パニック障害を克服する大きな第一歩となります。

さて、その三つの要素の関係を理解したら、「不安」というものそのものは、もともと人間に備わっている大切な機能で、体に害を与えるものではないんだ、ということを知る必要があります。この不安の機能については、「不安とは」に詳しく書いてあります。

(2)身体的反応に働きかける
身体的反応(動悸、息切れ、発汗、立ちくらみなど)を抑えるには、体がリラックスする方法を学ぶ必要があります。主に使われているものとしては、腹式呼吸法と、Progressive Muscle Relaxation(PMR)と呼ばれるものがあります。これらはどちらも、「心理療法でよく用いられるテクニック」に詳しく書いてあります。パニック障害の場合、本来なら危険に対して起こるはずの身体的反応が、何の危険もないところで頻繁に起こってしまうところに問題があります。なので、どうやったら危険のないところで抑えられるか、というところに焦点を当てます。そこで、パニック発作が起こるかも、と思った時には、腹式呼吸法が有効です。PMRも筋肉をリラックスさせるのには効果がありますが、腹式呼吸のほうが、どこでも立ったままでもすぐに出来るので、急に極度の不安を感じた時などには便利です。PMRは、家で毎日10分間でも時間を取って繰り返すと、PMRをやっていない時でも、筋肉をリラックスしやすくなります。どちらの方法も、一見簡単そうですが、その効果を十分に実感するには随分練習が必要なので、いっぱい繰り返してリラックス上手になりましょう。

(3)認知のゆがみを直す(Cognitive Restructuring)(認知的要素に働きかける)
他の不安障害や鬱病と同じように、パニック障害をもつ人も、不安を感じやすい考え方をしやすくなっています。例えば、友達を食事に誘った時、友達が「今日は予定があるから、行けないや」って断ったとします。すると、不安を感じやすい人は、「本当は友達に嫌われているのではないか」「避けられているのではないか」と、悪いほうに考えがちです。職場で新しい仕事を任された時なども、「失敗するのではないか」「自分には出来ないのではないか」など、とかく小さなことから、悪い結果ばかりを予想してしまいます。このように悪い結果ばかりを予想してしまうことを、Overestimationといいます。また、試験で悪い点数を取った時も、「留年するのではないか」「やりたい職業に就けないのではないか」など、実際にはそれほど大きなことではなくても、その状況が耐えられない、自分には出来ない、と実際よりも物事を大きなものとして、悪い出来事として捉えがちです。これをCatastrophizingと言います。

こういった考え方をしてしまうのは、多くの場合無意識に起こっていることで、何か物事が起こるたびに、自動的に不安を起こしやすい方に考えてしまうのです。このような不安を起こしやすい考え方(認知の歪み、と言います)は、その考えが実際に起こる可能性が高いのかどうかを、「証拠」を見つけることで一つ一つ分析していくことで、その歪みを直すことが出来ます。

例えば! 友達に食事にいくのを断られて、避けられているのではないか、と思った時、実際に避けられているという証拠は他にあるのか、その考えが正しいという可能性はどのくらいか、友達が誘いを断ったのには他の理由がある、という可能性はあるか、などと検証していきます。それらを検証していく中で、「そういえば前に誘った時は一緒にご飯食べたよなー」とか、「誘いは断られたけど、その日の昼間には二人で色々しゃべったっけ」とか、「前に私とその子が映画を見に行く約束をしていた時、その子は他の子の誘いを、映画見に行くから、って言って断ってたな」などなど、「友達は実際に誰かと約束があったわけではなく、本当は私のことが嫌いで私を避けてるんだ」という考えを否定する、様々な証拠が見つかってくるはずです。実際、本当は自分は避けられているんだ、と言う考えを裏付ける証拠の方がずっと少ないかもしれません。

この、「不安を起こしやすい考え」の検証を続けていくことで、自分が物事に対して、非論理的に、必要以上に悲観的な見方をしていたことに気が付くはずです。このようにして不安を起こしやすい考え方を見直していくことは、一見パニック障害や発作そのものに関係がないように見えます。しかし、パニック障害の裏には、パニック発作に対する過剰な(非論理的な)不安や恐怖の体験、というのが不可欠なので、自分は不安を起こしやすい考え方をしているんだ、ということをきちんと認識することが大切になってきます。

(4)Exposure(行動的要素に働きかける)
パニック障害をもつ人が、不安や恐怖を感じる場所や活動を避ける傾向にあることは広場恐怖症のところで書きましたが、この「避ける」という行動は、逆に不安や恐怖を大きくしてしまいます。その場所を避けている限りは不安を感じることも少なく、不安を感じてもそれを抑えることが出来る、不安を感じても発作が起こるとは限らない、発作が起きてもそれは体や脳に害を与えるものではない、ということを学ぶ機会がなくなってしまうからです。動悸や発汗は怖いものではなく、それらの身体的反応が発作や不安と直結して関係しているものではない、ということを本当に理解するには、実際に恐れている場所に行き、実際に体験してみるしかないのです。そのため、パニック障害の治療には、Exposureがとても大切になってきます。

Exposureとは、日本語では「さらす」というような意味で、その意味の通り、患者さんの恐れている場所や活動に、患者さんをさらしていくものです。しかし、発作をものすごく恐れている人に、「では今から発作の起こりやすそうな所に行って自分で体験してみて下さい」と、いきなり言うのはダメです。(笑) Exposureにもいくつかの段階があり、それを少しずつこなしていき、不安を感じて避けている場所に行くのは、その最後の過程になります。

1. 身体的反応へのExposure
ここでは、パニック発作によって、不安や恐怖と直結してしまった身体的反応を患者さんに体験してもらいます。パニック発作を恐れている人は、発作が起こると(交感神経が興奮すると)起こる身体的反応、心拍数の上昇や震え、発汗などに対して、極度の不安を感じています。そこで、それらの体の反応は、ただ単に交感神経が興奮しているだけであって、実際に体に危害を加えるものではないし、怖がるものではない、ということを理解するために、セラピーの中でわざとその体の反応を起こし、不安の程度やなぜそれほど怖いと感じるのか、その元となっている考えを検証していきます。

身体的反応を起こすために用いられる主なものとしては、頭を30秒間左右に激しく揺さぶる、椅子に座った姿勢で頭を30秒間下に下げ、突然上体を起こす、階段を1分間走って上り下りする、出来るだけ長く息を止める、などがあります。これらの行動によって、もちろん心臓はバクバクするし、汗もかき、顔は熱くなり、くらくらしたり汗をかいたりしますよね。パニック発作の時に起きる身体的反応も、これと同じなのです。ただ単に交感神経が興奮しているだけですから。そして、これらの行動をいくつか試してみて(ちゃんと間には休憩とってね)、その中でも患者さんが、「これはパニック発作と一緒だ!」と感じるものを選びましょう。

その選ばれた行動を、何度かセラピーの中で続けて(一度に、じゃないですよ)、身体的反応が起こったときに感じる不安の程度を書き留めます。(例えば1から10の段階を使って。) そして、なぜ不安なのか、その背景にある考えも検証します。例えば、「気を失うかも」「心臓発作が起こるかも」と考えて不安になる人には、「今まで、パニック発作の間に気を失ったことは??」「実際に気を失ったとして、それはそれほど悪いことなのか??」「心臓発作が起こった経験はある??」などなど、不安を起こしやすい考え方を検証するのと同じ方法で、証拠の検証をします。これを、不安の程度が低くなるまで、極度の恐怖を覚えなくなるまで、続けます。身体的反応に対しての不安を感じた時に、前に習った呼吸法を使ってみるのもいいでしょう。

しかし!!! ここで注意点です。これらの身体的反応を起こす行動は、健康な人には、スポーツをするのと同じように何の害もありませんが、心臓病をもつ人や妊婦さんなど、激しい運動をするのはよくない、とされている人たちには、勧めてはいけません。害はないといっても、実際に交感神経が興奮することには変わりなく、それによって血管が縮まったりするからです。そのように、体の状態からして、激しい運動などをしないようにお医者さんから言われてる人には、身体的反応へのExposureの代わりに、認知的要素に集中するようにしましょう。

2.避けられていた活動へのExposure
さて、身体的反応が怖いものではないとわかり、動悸や発汗に不安を覚えなくなったら、次は、それらの体の反応を起こすために避けられていた活動を、実際にしてみます。例えば、サウナやスポーツ、階段の上り下りやコーヒーを飲むこと、暖房をつけて窓を閉めて車を運転すること、などの活動が、交感神経を興奮させるものとして避けられている場合が多いようです。この前の段階と違うところは、前の身体的反応へのExposureでは、セラピーの中で、カウンセラーの人と一緒に故意に身体的反応を起こしているのに対して、この段階ではセラピーの外で、患者さんが実際に不安を感じている活動をしてみる、というところです。

まず、実際にその活動をする前に、いくつかある、避けられている活動の中で、一番不安に感じている活動は何か、次に不安を感じる活動は何か、一番不安を感じずに出来そうなものは何か、と、不安を感じる順にランクをつけていきます。そのランクの一番低いもの、(一番不安を感じない活動)から、実際に体験していきます。ここで大切なのは、一つの活動に対して、不安が感じられなくなるまでこつこつと続けていくことです。患者さんがその活動を実際にやってみて、まだ不安を感じるような場合は、その同じ活動を、不安がなくなるまで続けるのです。

3.避けられている場所、環境へのExposure
身体的反応への不安がなくなり、その反応を起こす活動も恐怖を感じずに出来るようになったら、今度は怖いから避けられていた場所や環境へのExposureです。このような場所や環境には、主として、映画館で映画を観る、一人でスーパーへ買い物に行き20分間そこにいる、車で高速を走る、エレベーターに乗る、などがあります。これらの行動は、その行動そのものは身体的反応を起こすものではありません。しかし、行動や環境がパニック発作によって直接不安や恐怖と関係付けられているため、その行動をしたりその環境に置かれると、極度の不安を感じ、そのためにパニック障害をもつ人は動悸や息切れを体験してしますのです。

パニック障害をもつ人は、当然(ですよね)、これらの行動をすることや環境に置かれることを嫌がります。ものすごく不安になったり怖いからです。そのため、なぜこの段階が必要なのか、行動そのものは怖いものではないということ、認知、行動、身体的反応の関係などを、患者さんが十分に理解してからこの段階に進むことが大切です。ここでは、この前の段階と同じように、行動や環境を怖い順にランク付けして、そのランクの低い方(不安を最も感じない方)から実際にやっていきます。そして、一つの行動に不安を感じなくなったら、次のランクの行動に移っていきます。その行動に対する不安の元となっている考え方も、一つづつ検証していきます。

このようにして、怖がって避けていた活動や行動を一つづつこなしていくことによって、最終的には、パニック発作を怖がることも、その恐怖によって特定の活動や行動、環境を避けることもなくなるわけです。

最後に
パニック障害は、パニック発作が起こることやその結果について、間違った認識をしていることが元になっている障害です。パニック発作は誰にでもランダムに起こる可能性があり(不安を感じやすい人なら特に)、その発作をどのようにとらえるかが、パニック障害を発達させる人とさせない人との大きな違いになってきます。パニック発作が起こると、確かに、心拍数が上がったりクラクラしたりしますが、それは実際に体に危害を加えるものではないので、不安に感じる必要はないんだ、ということを理解することが大切です。

注 意
このページに書かれている すべての情報は、私個人が教科書や他の文献をもとに集めたもので、 必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せているつもりですが、 間違いがあった場合には、掲示板あるいは メールにて一言教えていただけると 本当に嬉しいです。

また、ほとんどの情報はアメリカで使われているDSM IVに基づいています。日本ではそうではない、ちょっと違う、などの点がありましたらどんどん指摘してください。
出来るだけ皆さんからの情報も反映させて、より良い ページをつくっていきたいと思っています。