こころの病気トップ

DSM IV
不安障害
1.不安とは
2.全般性不安障害
3.心的外傷外後ストレス障害(PTSD)
4.強迫性障害(OCD/Obsessive-Compulsive Disorder)
5.パニック障害(Panic Disorder)
5.社会恐怖症(Social Phobia)
6.恐怖症(Phobia)


3.心的外傷外後ストレス障害
(Posttraumatic Stress Disorder/PTSD)

症状
原因
治療法

PTSDとは名前のとおり、大きな心的外傷、つまりトラウマを経験した人にだけ 現れる障害です。トラウマとは、死ぬかもしれないと思ったり、 激しく傷つけられた出来事のことをいいます。そのトラウマ的出来事について 激しい恐怖や絶望感を経験すると、それがPTSDとなって後に現れる ことがあるのです。子供の場合、その恐怖や絶望感は混乱状態、あるいは 興奮状態となって現れることもあります。


症状
トラウマ的経験のことが常に頭の中にあり、度々それを再経験します。 再経験というのは、直接フラッシュバックとなってまさにその出来事を 頭の中でもう一度体験したり、それが悪夢となって現れたり、また、 その経験を思い起こさせる何かを見た時に不安発作が起きたりする ことをいいます。 フラッシュパックとはその出来事を思い出してしまう、というような 生易しいものではなく、頭の中でだけ記憶が蘇っているはずが 本人はまるで実際にそれを経験しているような錯覚に陥るのです。 また、トラウマ的経験に関係する事、物、人、場所などを避けたりも します。この回避行動は徐々に 範囲が広がる傾向があり、時として広場恐怖症にまで悪化することもあります。 また、それ以外のことに関しても無感覚になったりします。 無感覚になるというのはいろいろなことに対する興味を失ったり、 周りの人から心理的に遠ざかったような気がしたり、あるいは 人に対して感情(たとえば愛情とか)がもてなくなることをいいます。 この無感覚は、時として解離状態をつくることがあり、その場合、 自分の心が体と遠く離れてしまったような気がします。 アメリカでは、PTSDをもっている人達がこの回避行動と 無感覚を自発的に起こそうと、お酒や薬物を乱用してしまうケースが特に 女性に多く見られます。

別の重要な症状としては、身体的にいつも興奮状態にある、ということです。 よく眠れない、イライラして怒りっぽい、集中するのが難しい、神経が 過敏になり、小さな音などですぐにびっくりする、などが興奮状態の 現れです。このような興奮状態は、体が常に危険に備えているために 起こるものです。

こうした再体験、回避行動、興奮状態などの症状が一ヵ月以上続き、 そのために人間関係や仕事場など、日々の生活に支障をきたすとき、 PTSDと診断されます。PTSDは短期間で治まることもあれば長期に渡る こともあり、また、トラウマ的経験から何か月、あるいは何年か経ってから初めて症状が現れることもあります。


原因
PTSDの原因はただ一つです。それはもちろん、心的外傷、つまりトラウマです。あるすさまじい出来事が起こり、そこで「自分は死ぬかもしれない」と 思ったり、身体的に激しく傷つけられたりしたとき、その出来事が 心的外傷となってPTSDを発達させるのです。


治療法
PTSDは精神障害の中でも、治療が成功する確率の高い障害です。きちんと 治療を受けていれば、トラウマの呪縛から逃れることは多くの人にとって ほとんど約束されているといってもいいほどです。その治療の方法としては、 系統的脱感作法 (systematic desensitization)という治療法が多く使われています。 これは三つの段階から成る治療法です

(1)リラクゼーション対処法 (coping strategy) -- この段階では、患者はまず身体的にリラックスする方法を 学び、常に緊張している体をほぐしてあげます。リラクゼーションの中には、呼吸法とPMRがありますが、どちらも「心理療法によく用いられるテクニック」に詳しく書いてあります。また、Coping Strategy では、周りのストレスや問題とどのように向き合っていくかを学びます。 例えば何か問題が起きたときに、それが起きたことに関していつまでも 自分を責めて、「自分にはどうすることもできないんだ」と考えるのでは なく、たとえ全面解決できなくても、今自分には何ができるのか、 どうすれば少しでも良い状態にもっていけるのかを前向きに考える 練習をするのです。

(2)不安階層表の作成 (fear hierarchy) -- 身体的緊張が少しでもほぐれ、 問題に対して少しでも前向きになれたら、次に、トラウマ的経験についての 不安階層表をつくります。不安階層表とは、PTSDの原因となった 出来事の細かい点について、怖さの順序を付けることです。例えば、 銀行でいきなり強盗が入ってきて脇腹を刺された、という出来事が PTSDの原因だとして、銀行に入ってから刺されるまでの細かい出来事に 怖さの順序を付けるのです。何が怖いか、というのは人によって 違うので、この場合の不安階層表も人によって異なりますが、例えば 私だったらきっとまず「銀行に入る」というのが一番下(一番 怖くない)で、次に「自分の順番を待つ」、「自分の番号が呼ばれる」、 「窓口のお姉さんと話しをする」などの順番になり、その他の 細かい出来事が続いて、最終的には 「ナイフが自分の脇腹に刺さる」というところが一番怖いのではないかな、 と思います。これは時間的に順番になる必要はなく、例えば人によっては 自分が刺されるところよりも、最初にその強盗犯と目が合った時の方が 怖いと思うかもしれません。あるいは、その犯人が自分を刺す前に そこにいた子供を殴ったとしたら、そっちのほうが怖かった、と思う人だって いるかもしれません。とにかく、その人にとっての怖さの順に、こと細かく その出来事について順番を付けていきます。

(3)曝露 (exposure) (さらす段階)-- この段階では、PTSDの原因となったトラウマをもう一度、故意に再体験します。再体験といっても実際にその時と同じ 状況をつくることはできないので、患者は頭の中でその出来事をもう一度 経験することになります。まず、体がリラックスしている時に、前の段階で つけた怖さの階級の一番下、一番怖くない出来事を思い出し、その状況を 言葉にして細かく説明します。細かく説明する、ということは、 細かく思い出して細かい所まで良く考える、という意味だから、もちろん その時の感情も伴ってきます。その時自分はどう感じていたか、何を 思っていたか、など、とにかく細部にわたって説明するわけで、それが 再体験となるのです。そしてその、一番怖くないことについての 再体験を、その箇所についての恐怖が消えるまで繰り返します。恐怖が 消えるのにかかる時間は人によって異なりますが、何度も何度も 思い出して説明していくうちに、トラウマ的出来事全体のなかの、 小さなことについての恐怖心はだんだん薄れていきます。例えば 今までは「銀行に入る」ということを思い出した時点で、その強盗の 出来事のすべてが思い出されて怖くてたまらず、それ以降どの銀行にも 入れなかったとします。しかし、「銀行に入る」ということだけに 集中してそれだけを再体験していくうちに、その「入る」という行為 そのものに対する恐怖は次第に消えていくわけです。そしてその恐怖が 消えたら、次は怖さの階級の次のことについての再体験をします。 さっきの銀行強盗の例でいうと、「座って自分の順番を待つ」という 出来事ですね。そしてその待っていた間についても再体験を繰り返し、 その恐怖が消えたら次の階級についての再体験をする、ということを 繰り返します。一般に、怖さの階級が上になればなるほど、つまり 怖い事柄になればなるほど、恐怖が消えるまでの時間は長くかかり再体験を 繰り返す回数も増えていきます。しかし、最終的には、一番怖いと 思った部分についての恐怖も消えていくわけです。そして結果的に、 PTSDも消えていく、という仕組です。

この方法は、「怖いこと、嫌なことから逃げれば逃げるほど、それについて もっと怖くなり嫌になる」という人間の心理に基づいていて、あまりに 怖かったためにそれが頭から離れない、という場合、だったら一度きちんと その怖さと向き合ってみましょう、というものです。ちなみのこの Exposureという方法は、恐怖症にも有効です。

最後に
最初にも言いましたが、PTSDは治療が成功する確率の高い障害なので、PTSDの症状がある場合はそれを忘れようとするのではなく、きちんと治療を受けて、その恐怖から解放されましょう。逃げれば逃げるほど、追ってくるものです。



注 意
このページに書かれている全ての情報は、私個人が教科書や他の文献をもとに集めたもので必ずしも正しいとは限りません。出来る限り正確な情報を載せているつもりですが、間違いがあった場合には、掲示板あるいはメールにて一言教えて頂けると本当にうれしいです。

また、ほとんどの情報はアメリカで使われているDSM IVに基づいています。日本ではそうではない、ちょっと違うなどという点がありましたら、それもどんどん指摘してください。
出来るだけみなさんからの情報も繁栄させて、より良いページを作っていきたいと思っています。